※この作品はR-18です。

Holo Quest   作:轟th

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・聖剣
 勇者を勇者たらしめんとする象徴。
 初代勇者が使っていたものとされ、長らくコーンフィールド王国の宝物庫に台座に突き刺さった状態で保管されていた。手入れもろくにされていないにも関わらず、百年以上経ってもなお錆びず綺麗な状態を維持している。
 所有者を選ぶことから選ばれし者のみが扱える究極の一であり、これを台座より引き抜けた者こそが世界を救う勇者であると古来より伝わっていた。担い手以外が聖剣を手にしても振るうことはおろか、まともに持って構えることすら出来ない。
 引き抜かれた時点では半覚醒であり、この状態でも剣として扱うことは出来るが真の性能を引き出すには勇者が本当の意味で、勇者へと至らなければならない。

※前話で載せた、おかゆの盗賊時の服装イメージを変更いたしました。
気になる方は、10話の後書きをご確認ください。


では、本編をどうぞ。


scene.11

「朝帰りとは、随分なご身分だね?」

 

 そう言うのは、仁王立ちするミオである。

 翌朝、まだ早い時間帯に宿屋へと戻ったデュラハンは何故か待ち構えていた彼女により正座させられていた。

 

「ミオ、ご機嫌ナナメだねぇ」

「触らぬ神に祟りなし、である」

 

 その様子を、少し離れた場所からフブキとバクニが窺っている。

 二人の反応から助けてくれるつもりはないらしく、自力でどうにかするしかないようだ。

 

「で? 何か弁明はある?」

「その、無事に依頼をこなせたことで羽目を少々外してしまってだな……酒場で飲みすぎたんだ」

 

 素知らぬ顔で嘘を告げる。

 おかゆとの甘い一夜は明け方まで続き、久しぶりに力を開放したのもあってか内外合わせて七回は射精してしまった。おかゆはその三倍以上は絶頂を経験しており、最後の方ではアヘっとした表情で意識が飛んでいた。発散出来たデュラハンは満足したので後悔ないが、流石に失神しても関係なく犯したのはやり過ぎたと反省している。

 因みにおかゆも今日は大切な用事があるらしく、デュラハンに身体を清めてもらうと急いで帰っていった。その際、何やら意味深な言葉を掛けられたのは謎であるが。

 

「ふーん? 本当に? その割に、全然お酒臭くないけど…」

「飲んではいたけど、頭から浴びた訳じゃないから」

「………」

「ミオ、そろそろ許してあげようよ。あのく君も反省してるみたいだし」

 

 そこへフブキが仲裁に入る。

 最もデュラハンの身を案じて、という訳ではなく、単に仲間内での争いを止めたいといった理由だ。

 

「……はぁ、分かったよ」

 

 ため息を一つ、ミオは降参するように両手を挙げた。

 疑惑が晴れた訳ではないが、彼女としても険悪なムードを作りたくはないので、ここで手打ちということだ。

 話は終わり、と言わんばかりにフブキがパンッと手を叩いた。

 

「はい! じゃあ改めて、今日の予定をすり合わせようか?」

「大公閣下との謁見が済んだら、この公都を出立するんだよね? まだ時間もあるから、今の内に買い出しとか済ませようよ」

「バクニは装備の手入れは済んでいるのか?」

 

 戦士のバクニへと訊ねる。

 前衛職として前に出て魔物を倒すだけでなく、時には仲間を守るために武器や防具を使う彼の装備は四人の中で最も酷使されていた。ここで軽んじてしまえば、重要な場面で壊れてしまい自分だけでなく仲間すら危険に晒す恐れがあった。

 

「万事問題なし! 既に鍛冶屋へ預けてある。これより受け取りに向かう予定である!」

「なら各々、必要な準備を済ませよう。ここを出発したら、また暫くは満足に買い出しは出来ないからな」

「じゃあ、ミオ! 買い物に行こうよ!」

「あっ、フブキ! 待って!」

 

 フブキが我先にと外へと向かい、ミオが遅れてそれに続く。

 

「あのく殿は如何なされる?」

「少し休むよ。時間になっても寝ていたら起こしてくれ」

「承知!」

 

 こうしてそれぞれが自分の目的のために行動を開始するのであった。

 

 

 

 

 数時間後、勇者一行は大公宮殿の執務室にいた。

 室内では主であるラインハルトが居たが、今日は政務に勤しんではいなかった。

 

「閣下、本日はどのようなご用向きでしょうか?」

「貴君らに会わせたい人物がいたが、遅れているようなので先に話を済ませよう。時に勇者とその仲間たち、世界が今どのような状況に置かれているか理解しているかね?」

 

 ラインハルトの問いに、四人は顔を見合わせる。

 デュラハンはちょこからもたらされた情報により情勢は把握しているが、そうでない他の三人は殆ど何も知らない状況であった。

 

「……お恥ずかしながら、私どもは旅を続けていたので。噂では魔王軍が暴れまわってるとは聞いておりますが」

「ふむ。貴君らも知っておくべき情報が二つある。一つはこの公都より北西にある古い遺跡に少し前より魔王軍が一つ、夜叉兵団が占拠しておる」

「まさか、この北方大陸にも魔王軍が本格的な侵略を!?」

「いいや、どうにもそうではないらしい。こちらの手の者に監視させているが合戦の準備をしている訳ではなく、かといって降伏や停戦などを考えているようすもない。現状はこちらから手を出さなければ被害も出ておらぬ故、膠着状態となっておる。せめて相手方の真意が分かれば、手の打ちようもあるのだが……」

 

 ままならない現状に、ラインハルトの苦々しい表情を浮かべる。

 

「勘違いしないで欲しいのだが、これは勇者一行に解決して欲しい訳ではない。あくまで情報の共有だ。実力の劣る貴君らでは夜叉兵団に太刀打ちできず、道半ばで命を落としてしまうだろう。それは余としても困るのだ」

 

 意訳:お前ら弱いから余計なことをするなよ。

 そう言われているようなものだったが、如何せんデュラハン以外の三人の実力は決して高いとは言えないレベルだったので致し方なかった。少なくとも勇者であるフブキには最低限、夜叉と渡り合えるぐらいには成長してもらわないと困る。魔王城のある赤の領土まではまだまだ距離があるので、彼女にはもっと頑張って貰わなければならない。

 

「はい……精進いたします」

「うむ。ではもう一つの件だが……正直に申せば、そこまで勇者一行に関わることではない。ただ耳にしておいた方が、実際に遭遇した際の対処もしやすかろう」

 

 そう前置きをしてから、ラインハルトは続ける。

 

「少し前より、我が公国にも勇者を名乗る者が現れたと報告が上がっている」

「えっ! 勇者って、私以外にもいるんですか!?」

「いや、それはあり得ない」

 

 勇者とは、厳密には職業ではなく称号なのだ。

 故に名乗ること自体は誰にでもできるが、本当の意味で勇者なのは紛れもなくフブキだけだ。

 聖剣の名を関する剣は多くあるが、それらは純粋な物理攻撃力が高いか、あるいは単に強力な魔力が込められただけの魔剣に過ぎない。彼女の持つ本物の聖剣は今だ覚醒にこそ至ってはいないが、やがては世界に救いをもたらす聖なる光となるとされている。

 

「僧侶の彼の言う通り、本物の勇者は貴君だけだ。故に、勇者を自称するだけの偽物に過ぎない」

「でしたら……気にすることはないのではないですか?」

「確かに捨て置いて問題はないが、覚えておいて損はあるまい。もし勇者の名を免罪符に悪事を働いた者が現れ、貴君らが疑われたとしても奴らの存在を知っておけば対処の仕方も変わるだろう」

「閣下の忠告、心に留めておきます」

「うむ」

 

 そうして話が終わったタイミングを見張ったように、部屋の戸がノックされる。

 ラインハルトが入室の許可をすれば、フードを目深く被ったマント姿の人物が現れた。マントの上からでも分かる輪郭から女性らしい人物はラインハルトの側へと行くと、くるっと回って勇者たちの方へと向き直った。

 

「閣下、そちらの女性は……?」

「勇者一行は戦力、協調性共に安定している。だが、先ほどのやり取りから気付いている通り、情報収集という点においては少しばかり問題があるようだ。そこで勇者一行より先行、あるいは裏から情報を得てくる斥候が必要と考えた。無論のこと、必要に応じて戦闘においてもサポートに回れる人材を……と、そこで白羽の矢が立ったのが彼女だ」

 

 彼女がゆっくりとフードを外せば、隠されていた綺麗な薄紫の髪と特徴的な瞳が露わになった。

 獣人特有の動物と同じ耳をピクピクと震わせ、ふよんと揺れるのはしなやかな尻尾。

 

「改めまして、盗賊の猫又おかゆです! これから勇者一行の皆さんの役に立てるよう尽力いたしますので……何卒、よろしくお願いします♪」

 

 ペコリと可愛らしく会釈する猫娘。

 どうやら彼女の今日の予定とは、このことのだったようだ。

 

「……か、閣下。どうして彼女を?」

「確かに彼女の功績により公国の膿を排除することにできた。だが、それだけで窃盗の罪が全て許される訳ではなく、そこで贖罪として勇者一行に同行してもらうことにした。無論、完遂した暁には恩赦を与え、更には褒賞も与えることを約束している」

「それは……強制、でしょうか?」

「無理強いはしない。そもそも、彼女が情報を収集し、一方的に貴君らに伝えるだけだ。それに対し、報酬を支払う必要もない」

 

 つまり無償で働く情報屋、ということだろうか。

 彼らからすれば益があっても損はなく、寧ろ下手に信用も不確かな人間を雇い入れるより低コストで済むなら断る理由はなかった。

 

「……分かりました。猫又さん、これからよろしくお願いします」

「ありがとうございます」

 

 おかゆは笑顔で頭を下げる。

 思わぬ形で、勇者一行に新たな仲間が加わることとなった。

 

 

 

 

 その後、幾つかのやり取りを交わした後に彼らは宮殿を後にした。

 周囲の人の邪魔にならない場所にまで移動したところで、代表してデュラハンがおかゆに声を掛ける。

 

「それにしても、驚いたよ。こんな形で再会するなんて」

「驚いてくれた? 実は事情聴取を受けた時から大公様から取引を持ち掛けられて、二つ返事で快諾したんだ」

「けど、教会の方はいいのか?」

「神父様にも事情を全て伝えたら、迷わずボクの背中を押してくれたんだ。だから、これからも宜しくね♪」

 

 ぎゅっ、とおかゆはデュラハンの腕に抱き着く。

 押し付けられる柔らかな感触に喜ばしい思いをしつつも、今後のことに一抹の不安を覚える。

 

「猫又さん? ちょっといいかな?」

 

 ミオが笑顔で肩に手を置く。

 しかし、その額には青筋が浮かんでおり怒気が立ち昇っているように見えるのは錯覚ではないだろう。

 

「なになに?」

「頼もしい仲間には歓迎だけど……ちょっと、あのく君との距離感が近すぎるんじゃないかな?」

「え~、そうかな~?」

「そうだよ。それに、その……む、胸を押し付けるのも良くないよ」

「ボクは全然気にならないよ?」

「猫又さんはそうかもしれないけど、そんなに引っ付かれちゃ、彼だって迷惑だよ」

「あのく君、そうなの? ボクに抱き着かれて、うれしくないの?」

 

 ミオの発言に、おかゆは目を潤ませながら見上げてくる。

 ここで下手な発言をすれば火種を大きくしかねず、何といったものかと悩んでいると。

 

「あっ、そうだ! ボク、ミオちゃんに渡すものがあったんだった」

 

 おかゆは離れると、ゴソゴソと自らの荷物を漁る。

 やがて一つの紙袋を取り出すと、それをミオへと手渡した。

 

「はい、これ。忘れない内に返しておくね」

「ん?」

 

 受け取ったミオは、中身を確認する。

 そこには何日も前、関所の砦にて泥棒――おかゆにより盗まれた彼女の下着が収められていた。

 

「あ゛っ!」

「心配しないで。ちゃんと洗濯しておいてから」

 

 ミオが驚きの表情を浮かべる。

 それにおかゆは何かを思い出したのか、こそっと彼女の耳元に顔を近づけて囁く。

 

「あんなえっっちぃ下着を持ってるなんて、一体誰に見せるつもりだったの?」

「~~~~っ!!」

 

 俯いたかと思いきや、ワナワナと震え始める。

 何か拙いことになると察したデュラハンは、そっと距離を取る。

 

「こ、この、性悪ネコ~~~!!」

「きゃ~~っ♪」

 

 バッと顔を挙げたミオは、顔を真っ赤にしながらおかゆに掴みかかる。

 それをおかゆが軽やかに避けると、ミオは逃がすまいとして更に追いかける。

 

「待て~~~!」

「ミオちゃんが怒った~!」

 

 まるで子供の追いかけっこのような光景が目の前で繰り広げられる。

 ミオも本気で怒っていないのは分ったので、誰もとくには止めようとはしない。

 

「これぞ、仲良きことは美しきかな!」

「それを言うなら、喧嘩するほど仲が良いでは?」

「そうとも言う! ははは!」

 

 ミオの怒号とおかゆの悲鳴が飛び交い、バクニの豪快な笑い声が響く。

 その様子を静観していたフブキが呟く。

 

「これから今まで以上に賑やかになりそうだね」

「……そうだな」

「でも……楽しくなりそうだね」

「かもな」

 

 短く答えるデュラハン。

 これから騒がしくなりそうだが、使命の為にも確りしなければならない。

 

 




諸事情により人物紹介は飛ばします。
ですので、後書きでは今回のアンケートについての説明をいたします。

「活動報告」に「質問コーナー」を作るか否か。
趣旨としては本作を読者の皆様が読んでいて、「ここはどういうことなんだろうか」「どうして、こうしないんだろうか?」といった疑問が出てくることを考え、それに対して主が返答する場を用意しようというものです。
疑問や、おかしな点を感じられないのであれば何よりですが、もしかしたら有るけど感想の欄で登校するのは違うと思っている方もいらっしゃるかもしれないので、それを投稿する場所が必要なのかどうか。
いつも協力して頂いておりますが、今回も宜しくお願いします。


クリック? クラック! また今度。

フレアの立ち絵が適してる?(あるいは好み?)

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