※この作品はR-18です。

Holo Quest   作:轟th

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・ロホークラ
 物語の舞台である異世界。
 文化レベルは中世から近世ヨーロッパに近いが科学は殆ど発達しておらず、今でも魔法が主流となっている。有史以来、魔物の脅威に晒され続けている為か、人々は比較的まとまった生活圏の中に居住地を構えている。昔は大小多くの国家が存在していたらしいが、現在では国家として数えられるのは四つのみである。隣接する白と青の領土に関しては国境沿いに過去に作られた砦があるが、他の領土については海を隔てていることもあって国境線が曖昧になっている。


では、本編をどうぞ。


scene.14

「な、何とか戻ってこれた」

 

 激戦を生き延びた勇者一行は、エステルに戻ってきた。

 ただし帰ってこれたのは翌日になってのことだった。

 

「流石に、馬がなくなるのは想定外だったな」

 

 そう言いながら、デュラハンは肩をすくめる。

 あれからミオが目覚めるのを待った勇者一行は劇場跡を後にし、そのまま森を抜けて馬を繋いだ場所まで戻ってきた。流石に乗船予定だったアロス共和国行きの船には間に合わなそうになかったが、夕方には宿でゆっくりと休むことが出来るはずだった。ところが、いざ森の入り口まで戻って見れば馬は一頭も残さず居なくなっていたのだ。

 一頭ならロープが緩んでいたとも考えられるが三頭ともとなれば話は別であり、おそらくは偽勇者たちが逃げる際に連れて行ったのだろう。流石に疲労感も残る中で歩くのは止めようと四人で話し合い、結局は森の入り口で野宿をしてから徒歩で町へと帰る羽目になった。

 

「まさか人に敵を押し付けるだけじゃなく、馬まで盗むとは思わなかったよ」

「許し難き卑怯者! 見つけ次第、警邏に突き出してくれる!」

「落ち着け、バクニ。あの手の類は、いずれ相応の罰を受けるものだ」

「それよりギルドに行って情報でも集める?」

 

 ぞろぞろと四人はギルドに向かう。

 ギルドのある建物の中に入れば喧騒で溢れていたが、日常的に冒険者で混雑するのはいつものことなので慣れた様子で四人はカウンターを目指していく。見れば職員の方も慌ただしくしており、もしかしたら何か問題が発生したのかと思いながら四人を代表してフブキが声を掛ける。

 

「すみません。今、宜しいですか?」

「えっ、今は忙しくて……って、勇者様!?」

 

 驚愕に目を剝く職員。

 その叫びに、騒がしかった建物がシーンッと静まり返る。

 

「えっ、何? どうしたんですか?」

 

 思わぬ反応に、四人は周囲を見回す。

 全員がまるで幽霊でも見たような驚き、一体何事かと思わず互いに顔を見合わせる。

 

「ご無事だったんですね!?」

 

 職員の女性は、喜びに満ちた表情でフブキの手を取る。

 その声が合図となったのか、わぁっと冒険者たちが歓声をあげた。

 

「良かった!」

「話を聞いたときは冷や冷やしたぜ!」

「流石は勇者様たちだ!」

 

 男性陣はバシバシと肩を叩かれ、女性陣は同性から抱き着かれたりする。

 どういうことかと四人が困惑していると、奥の部屋から騒ぎを聞きつけて誰かが出てくる。

 

「おいっ、騒がしいぞ。どうしたってんだ!?」

「ギルマス! それが、勇者様たちが戻ってこられたんです!」

「……はぁっ!?」

 

 このギルドを預かる男は、驚きの声を発する。

 それからフブキたちの存在を確認し、バクニと同等の体躯の男は目を見開いた。

 

「たまるかぁ」

 

 方言が出る程度には、驚いたようだった。

 それから受付では他の冒険者たちもいて落ち着いて話せないということで、一行は奥の部屋へと通される。

 

「それで、あの騒ぎは何だったんですか?」

 

 席に着くなり、フブキが代表して訊ねる。

 テーブルを挟んで向かいの席に座ったギルマスは、職員にお茶の準備を頼んでから口を開いた。

 

「実は昨日、お前たちがリバティたちを追いかけて行った後のことだ。お前たちは夜叉兵団と接敵する前に連れ戻すと言っていたが、万が一を考えてこっちでも緊急時に動けるよう準備は進めていたんだ。といっても町全体に伝えればパニックになりかねないから、腕の立つ冒険者たちに声を掛けておいたんだ」

「成程!」

 

 道理で、この時間の割に人がいたのかと納得する。

 ただ、デュラハンの見立てでは集められた冒険者の実力は決して高くはなさそうだったので、おそらくは迎撃が目的というよりは民間人が避難するまでの時間稼ぎのための人員だったのだろう。

 

「ところが正午頃、俺のところにリバティたちが五体満足で戻ってきたって報告が上がってきた。最初はお前たちが無事に連れ戻してきたのかと思いきや、帰ってきたのは三人だけときた。おまけにお前たちに貸した馬に乗っていたとなれば只事ではないと誰だってわかる」

 

 勇者一行の乗っていた三頭の馬は、ギルドから借りたものだった。

 馬の耳には偽装不能なピアスがつけられているので間違いはなく、それを他の者がさも当然のように乗って帰ってきていれば何があったのかと不審に思うのは当然だろう。ましてや、無謀にも格上の相手に挑もうとした馬鹿どもとなれば猶更である。

 

「直ぐに捉まえて部屋で話を聞けば、『夜叉兵団など恐るるに足らず、わざわざ勇者である俺様が相手をする必要はない。そこへ他の冒険者がやってきたので、功績を上げる権利を譲ってやった』なんてことをほざきやがった。馬について聞いてみれば、『どこかの誰かが親切にも森の入り口に用意しておいてくれたものだ』とぬかしやがる」

「それで、その三人は今は何処に?」

「……海上だよ」

 

 問いに、ギルマスは腕を組んでから答えた。

 ただ意味は分からず、どういうことかと全員の視線が集まる。

 

「実は事情を聴いていた際、それを部屋の外から職員が聞き耳を立ててな……それを冒険者たちに話してちまってな。後はもう分かるな?」

 

 はぁ、とギルマスはため息をこぼす。

 冒険者同士は決して仲間という訳ではないが、時と場合によっては協力し合う運命共同体となることもある。故に仲間意識が決して高いという訳ではないが、それでも最低限のラインは存在している。自分たちの不始末を他人に押し付け、更には馬を奪って逃げだすなどという行為を快く思わない冒険者も多い。しかも偽勇者たちは冒険者からすれば、普段から高慢ちきで鼻持ちならない性格なので不愉快に感じていた者もいる程だった。

 そんな状況下で、偽勇者たちが問題を起こしたとなればどうなるか。

 おそらくは部屋を出た偽勇者たちは冒険者たちに詰め寄られ、責め立てられたのだろう。

 

「あいつらは逃げるように、アミロース行きの船に乗り込んでいったよ」

 

 アミロースはエステルから出る定期船が向かう港町である。

 偽勇者たちのせいで乗り損ねたが、勇者一行はそれで黄の領土へと向かう予定だったのだ。

 

「あの、その定期船って次の出発はいつになるんですか?」

「ん? あー、出発したのが昨日の正午だから……アミロースに到着するのが明後日の昼くらいになる。そこで二日ほど停泊した後、エステルに向かって出航する。だから凡そ一週間は見た方がいいだろうな」

「いっ、一週間も!?」

「諦めて、この町で過ごしてくれ」

「そんなぁ……」

 

 ガックシと、フブキは項垂れる。

 そんな彼女を励ますように、ギルマスは続ける。

 

「まぁ、ここまでの道中、色々と大変な思いをしたんだろう。しばらくゆっくり休んだらいい」

「……そうさせてもらいます」

 

 こうして勇者一行の足止めが確定した。

 そんな彼らを元気づけるかのように、ギルマスは近くの床に置いておいた何かを手に取ると、それをドンッとテーブルの上に置いた。

 

「それから、これは餞別と言っては何だが飲んでくれ」

 

 それは誰がどう見ても酒瓶だが、ワインやエールとも違っている様子だ。

 デュラハンも、その銘柄には見覚えがなかった。

 

「これは?」

「これはヴォトカと呼ばれる酒だ。帝国からの貴重な品でな、以前そっちのギルドの長から譲り受けたんだ。これをお前たちにやるよ」

「でもいいのですか? そんな貴重なものを」

「貴重とは言ったがな、別に高級品って訳じゃないんだ。向こうでも決して高い酒って訳じゃないが、大層強いって聞いている。まぁ、今回は正式な依頼じゃなかったから報酬は出せないが、お前たちには感謝しているんだ。これはそれのお礼ということだ」

 

 結局、謝礼替わりとして四人は酒を受け取ることにした。

 なお、その日の夜に試飲してみようと一気に呷ったバクニが顔を真っ赤にして倒れてしまったので女性陣は敬遠し、デュラハンもチビチビと飲むだけに収めた。

 

 

 

 

 それから五日が過ぎた。

 最初は待機を余儀なくされた一行は暇を持て余していたが、やはり久しぶりに休めるということで思い思いに時間を潰すようになった。

 

「行ってきまーす!」

 

 フブキは今日もまた、ギルドへと出かけて行った。

 彼女はギルドの裏手にある訓練場にて、朝から鍛錬に励んでいる。ただ朝から晩までストイックにという訳ではなく、時にはミオを連れて町中をぶらぶらと歩いたりするなど適度な休憩も取っている。彼女なりに休日を満喫している様子だ。

 

「じゃあ、ウチも行ってくるね」

 

 ミオは小さな図書館に足を運んでいた。

 主に魔法に関する書籍や、歴史書に目を通しているようだった。蔵書量としては多くはなく、手書きの写本が殆どなので解読するには相応の時間を要する。その為、ミオは食事も忘れて読み耽ってしまうので、偶にフブキがやってきては彼女を息抜きや食事に連れ出している。

 

「小生も続くのである!」

 

 バクニは相も変わらず鍛錬に励んでいた。

 彼もフブキと一緒に訓練場に行ったり、あるいは宿屋の裏手で筋トレをしては汗を流している。やはり夜叉兵団の長に手も足も出なかったのが、相当悔しかったようで気合の入り方もいつも以上だ。

 そしてデュラハンはと言えば。

 

「はーい、順番に並んでくださいねー」

 

 ギルドにて、小遣い稼ぎに勤しんでいた。

 具体的には訓練場にて出た怪我人の治療や、あるいは体調不良の者の診察を行っては対価を得ていた。流石に馬鹿みたいな金額を吹っ掛けるような真似はせず、良心的な額を治療を請け負っていた。それは町医者の領分に踏み込むような行為に見えるが、医者のように手術や病気の診断といった専門的な対応は出来ないので一応は領分を犯さずにいる。

 そうして各々が自由に過ごしている中、ある問題が発生した。

 

「た、大変だ!」

 

 ギルドの扉を荒々しく開け放ち、誰かが飛び込んでくる。

 それは漁港で働く漁師であり、彼はかなり焦っているのが見て取れた。

 

「どうしたんですか!?」

「じ、実は――」

 

 職員が対応し、漁師の話は以下の通りだった。

 今朝方、漁船に乗って大陸棚外縁へと出た漁師たちは、そこで大破した船の残骸を発見した。この時代、船舶が魔物に襲われて沈没する事故も珍しくはないが、漂流していた残骸の様子から沈んだのは割と最近なことが分かった。漁師たちも驚きはしても慣れた様子で生存者の捜索や何処の所属かを示すための紋章旗を探し、やがて何名かの生存者を救出することが出来た。

 漁師たちは急いで彼らを連れて帰還し、港では生存者に対して救命活動を行うと共に詳しい事情を訊ねた。

 そこで発覚したのは、破壊されたのはエステルとアミロースを行き来する帆船だった。

 生存者曰く、航海は順調に進んでおり、今日の夕方にはエステルの港に到着できる予定だった。しかし、見張りをしていた者から外洋方面から一直線に向かってくる影があると報告があり、甲板に出て確認すれば海を切り裂くようにかなりのスピードで迫る何かを目撃した。帆船には当然ながら魔物を遠ざけるための簡易的な守護結界が展開されていたが、それはまるで意に返さず、進路も変えずに突っ込んできた。船側も直ぐに回避を試みようとしたが間に合わず、謎の物体に衝突されてしまった。

 その勢いは凄まじく、たった一撃で帆船の横っ腹に大きな風穴を開け、その衝撃で何人もの乗員が海へと投げ出された。

 

『A』

 

 謎の物体はそれだけ言い残し、方向転換して沖へと戻っていった。

 無残にも船体が完全に水没した瞬間、海面が一気に引き込まれるような強い吸い込み流が発生し、近くにいた船員たちは悲鳴を上げる間もなく、沈んでいく船の闇へと引きずり込まれていった。運よく生き残れたのは最初に海に投げ出された者や何人かの乗客たちだったが、それでも漁船に発見されるまでに生き残れたのは更に少数だったという。

 痛ましい事故ではあるが、問題はそこではなかった。

 

「定期船の運航が暫くお休み!?」

 

 夕方、酒場へと集った面々にデュラハンはそう伝えた。

 もたらされた情報に思わずテーブルを叩いて立ち上がったミオに、座るように手で促す。

 

「今回の話を聞く限りはな。万能ではないとは云え、魔除けの結界を張っていた定期船が破壊された。襲ってきた存在が何かは分からないが、再び襲われる危険性がある中から当面の間は出航させることはできないということだそうだ」

「じゃ、じゃあ私たちの旅は……」

「ここで立ち往生だ。船が使えない以上、どうしようもない」

「そん……な」

 

 ガクリと、フブキは項垂れる。

 暗い雰囲気で包まれる中、デュラハンは何となく船を襲った相手に検討がついていた。

 

(まさか、あの海域の魔物がここまで来ているとはな)

 

 魔王城のある赤の領土、その周辺を囲う魔の海域。

 そこに住まう魔物が外洋を通ってここまで来ているとは思わなかったが、別に海域から出ることを禁じている訳でもなく、そもそも全ての魔物を従えている訳ではないのだから魔王の意思に反した行動をとるのも無理はなかった。

 

「じゃあ……私たちは、どうしたら?」

「……まだ、手はあると思う」

 

 不安げなフブキに、答えたのはミオだった。

 全員の視線が彼女に向けられる中、ミオは続きを喋る。

 

「その、確証がある訳じゃないんだけど、歴史書を読んでいたらある資料を見つけたんだ。この青の領土から黄の領土に向かって伸びる海底トンネルがあるみたいで、それを使えば船を使わずに渡れると思うの」

「海底隧道……よもや、そのようなものがあるとは」

「手書きの資料だけど、かなり昔に掘られたみたいで今では完全に放置されてるみたい」

「状態が分からないが、船が使えない以上は試してみる価値はありそうだな」

「よしっ! なら明日はその海底トンネルに向かおう!」

「ミオさん、因みにその入り口は何処に?」

「……この間の遺跡にあるみたい」

「……」

 

 再び、あの遺跡に赴く羽目になると思わず、全員が閉口する。

 おそらく夜叉兵団はまだあの遺跡に留まっているであろうことは予測でき、前回は団長であるあやめにより見逃されたが、もし相対してしまえば二度も許されるとは保証されていない。出来るなら誰だって虎の尾を踏むような行為をしたくないと思うのは当然のことだった。

 

「……やるしかないね。行くしかないよ、うん!」

 

 みんなを鼓舞するように、フブキは発言する。

 こうして勇者一行は、再び件の遺跡に赴くこととなった。

 

 




◆リバティ・ウェルディング
 年齢:23歳 性別:男性 身長:174㎝ 適正:剣、魔法(赤)
 装備:鋼鉄の剣、みかわしの服、剛結の指輪
 体力:3542 魔力:885 総合戦闘力:4427

 勇者を自称する冒険者の青年。
 自分こそが世界を救う勇者と信じて疑わないが、実力と心構えは伴っていない。
 なお、状況を判断する能力と逃げ足の速さは高い。

イメージは、よくある悪徳勇者。
勇者を名乗るが、世界の平和を守るためではなく名声と莫大な保証金が目当て。


クリック? クラック! また今度。

フレアの立ち絵が適してる?(あるいは好み?)

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