※この作品はR-18です。

Holo Quest   作:轟th

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・記憶読み
 青魔法に分類される魔法。
 名前の通り、目を合わせた相手の記憶を覗き見ることのできる魔法。覗けるのは対象の記憶の中で最も印象に残っている場面となっており、主に諜報員や密偵などが用いることが殆どである。その危険性から一般には公表されておらず、知っているのも国に属するごく僅かな人間のみに限定される。
 基本的に相手が精神的か肉体的に疲弊し、心に隙間が生じた状態で使うのが常套とされているが、実はそんな面倒な手段を用いずとも魔力に圧倒的に差があれば心の障壁を無理やりこじ開けて覗くことも出来る。ただし、これをすると見れる映像は途切れ途切れになる上、対象は精神を崩壊させるので裏技のようなものである。


では、本編をどうぞ。


scene.20

 翌日のこと。

 勇者一行は再び、イースター遊技場を訪れていた。

 本来ならもう関わらずに首都を出発したいと考えていたが、賢者の居場所を知っているかもしれない男が所在不明となったので仕方なかった。情報を集めているおかゆの話によれば、ここのオーナーなら知っているかもしれないという一縷の望みにかけて話を聞きに来たのだ。

 

「フブキ、今日は賭け事は駄目だからね?」

「わ、分かってるよ。流石に私も懲りたから」

「ぬぅ、しかし本当であるか? ここの支配人なら賢者の所在を知っているというのは」

「猫又さんからは、そう聞いている。彼女も確証がある訳ではないようだが」

 

 それでも充てもなく彷徨うよりマシだと、こうして足を運んでいるのだ。

 因幡からVIPカードを渡されていたので特に面倒な手続きもなく、隠し壁を抜けてVIPエリアへと通ることが出来た。先日は大勢の客でにぎわっていたが、流石にまだ日も高いのもあって店内に客の姿は多くはなかった。

 

「へぇ、ここがVIPエリアなんだ」

「ここで非人道的な遊戯が行われていたとは……恐ろしいのである」

 

 ミオとバクニは、興味深げに店内を見回す。

 そんな彼らを尻目にデュラハンは近くにいた従業員に声を掛け、自分たちの来訪を因幡やオーナーに伝えるように頼む。

 そうして暫く待っていると、やってきたのは因幡だった。

 

「これはこれは、あのく様。お越しいただきありがとうございます」

「急に押しかけてすまないな」

「いえいえ、支配人も首を長くしてお待ちしておりました」

 

 こちらへ、と案内する因幡の後について、勇者一行は移動する。

 移動と言っても別室という訳ではなく、VIPエリアの少し奥まった場所に一人の人物が立っていた。

 

「彼女が当カジノのオーナー、兎田ぺこら様にございます」

「ようこそ、ようこそ。勇者御一行の皆様」

 

 そう挨拶したのは、フリフリのバニードレスに身を包んだ兎獣人の少女だった。明るい青色の長いストレートヘアに赤い色の瞳、年齢は十代後半から二十代前半といったところか。もしかしたらフブキやミオと大して変わらないかもしれないが、因幡から紹介されなければ彼女が支配人とは信じられないであろう。

 

「それで、あんたが話に聞いていた僧侶のあのく?」

「ああ、そうだ」

「ふぅーん……本当にスロットを当てたの?」

 

 ぺこらはジロジロとデュラハンを眺め、首を傾げる。

 それに控えていた因幡が答える。

 

「はい、間違いありません。念のために監視を付けていましたが、一切のイカサマなしに正攻法で突破しています」

「ふんっ、まあいいわ。それより、ここに来たってことはぺこーらとの勝負を受けに来たってことで良いのよね?」

「勝負の前に一つ、聞きたいことがある。賢者、その所在を知らないか?」

「……ぺこらに勝てたら、教えてあげる」

「……分かった。それで? 勝負の方法は?」

「ポーカーで勝負よ!」

 

 一同は少し離れた場所にあったスペースへと移動する。

 ぺこらが半円形のゲームテーブルの直線側に立ち、対戦相手となるデュラハンが向かいに座る。

 

「ルールは知ってる?」

「いや、教えてくれ」

「形式はスタンダードなドローポーカーを採用。互いの手持ちのチップは六枚、これを先に全部失った方の負け。ゲームが始まると互いに参加費としてチップを一枚支払い、その後に五枚の手札が配られる。手札を確認して役が揃っているかの確認をし、必要ならチップを更に支払い、交換したいカードを捨てて山札から同じ枚数のカードを引く。簡単に言えば、相手より良い役を揃えるゲームになるわ。詳しい説明はは、こっちの紙に書いてあるから確認して」

 

 ポーカーは、手札の強さを競う単純なゲームである。

 しかし、そこに賭けの魅力が加わると一変して複雑な心理戦が始まるゲームでもある。例え手札に何の役も揃っていないブタだとしても、相手をハッタリであたかも強い役が揃っているかのように思わせることでゲームを下ろさせることも出来る。即ちポーカーとは心理戦の占める割合の高いゲームである。

 

(こいつ、本当にポーカーは初心者みたいね。スロットで当てれたのも偶然?)

 

 ルールに目を通すデュラハンに、ぺこらは冷静に観察していた。

 それを少し離れた即席の観客席から心配そうに見守るフブキたちと、ぺこらの勝ちを確信している因幡の姿があった。勝負を観戦するなら近くにいるものだが、相手の手札を盗み見る可能性や仲間と結託してイカサマをすることを考慮して協力できない距離を取ることで公平性を保つのだ。

 少しして細かい部分や役の確認を終えたデュラハンが顔を上げる。

 

「大体のことは理解できた」

「ならディーラーはぺこらが務めるから、あんたはそこにある山から勝負に使うトランプを選ぶといいわ」

 

 ぺこらの指さした先には従業員が運んできたカジノカートがあり、その上には箱に収められたトランプが幾つもあった。近付いて手に取って見れば分かることだが、どれもセキュリティシールが貼られており、つまりはカード自体にイカサマは仕込まれていない証明となっていた。外装を見た限りでは、どれも同じようには見える。

 

「これは全て同じなのか?」

「表も裏も、どっちも同じものを用意してあるわ」

「成程……なら、これを使おうか」

 

 デュラハンはトランプの山から一つを選び、それをぺこらへと放って渡す。

 受け取った彼女がシールを切り、中から出したトランプをテーブルの上に綺麗に扇状に広げる。

 

「トランプはジョーカーを除いた五十二枚、確認した?」

「確かに、問題ないようだな」

「ならシャッフルをするわよ」

 

 素早くトランプを回収すると、ぺこらはシャッフルを始める。

 一切の淀みなくオーバーハンドシャッフルでカードを混ぜ、リフルシャッフルで数字が更にばらける様にシャッフルする。その流れるような指捌きから、彼女が普段からカードに触れていることは明白であった。

 

「カットをどうぞ」

 

 カードを切り終えたぺこらは、デュラハンの前に山札を差し出す。

 目の前の山を適当な場所から半分にし、残った半分をその上に置いてからぺこらへと戻す。

 

「それじゃあ、ディールするわ」

 

 カードの山を手に取り、ぺこらは小さくほくそ笑んだ。

 この時点で彼女は自らの勝利を確信していた。

 

(この勝負も余裕ね)

 

 彼女の自信には、確固たる理由があった。

 一見すればカードの並びがランダムになるようにカットしたように見えるが、実際には混ぜる際に特定のカードが常に決まった位置にあるように操作した。最初の並びが揃った状態からのシャッフルであればほぼ確実に好きな順に並び変えることが出来、それが可能なのは彼女の卓越したシャッフル技術と、これまでの経験による賜物であった。故に、例え相手が何処でカットしたとしても、ぺこらには自分の手札が有利になるよう配ることが出来るのだ。

 

「あのくへ、ぺこらへ、あのくへ、ぺこらへ」

 

 一枚、二枚と配られていく。

 そして三枚目を配ろうとした瞬間。

 

「――動くな」

 

 ぺこらの喉元にナイフが突きつけられる。

 手元のカードに集中していたとはいえ、彼女にはデュラハンがナイフを抜いてから自分に向けてくるまでの動きが全く見えなかった。

 

「―――っ!」

「あのくさん! いきなりどうしたんですか!?」

 

 因幡は目を見開き、フブキは思わず驚きの声を上げる。

 それに対し、、デュラハンは至って冷静に答えた。

 

「俺はゲームに関しては素人だが、カードの配り方ぐらいは知っている。山札の上から二番目を配ろうとしたな」

「っ!」

 

 それは疑問形ではなく、確信した問い掛けだった。

 ぺこらの持つトランプの束を見れば、確かに一番上のカードを保持したまま二番目のカードが半分出ている状態となっていた。これはセカンド・ディールと呼ばれる高等技法であり、熟練者による滑らかな指の動きで配られると先ず見抜くことは不可能である。

 デュラハンがそのテクニックの存在は知らなかったが、イカサマがあると念頭に置いた上で注視していたのだ。

 

「……見くびっていたわ。まさか、ぺこーらのセカンド・ディールを見破るなんて」

 

 この時、ぺこらはデュラハンの強さを理解していた。

 ただ目が良いだけではイカサマを見抜くことは出来ず、現行犯で不正の瞬間を指摘できなければ言いがかりだと撥ね退けられるだけである。しかし人間は目撃してから行動に起こすまでタイムラグが発生する為、イカサマを指摘するのはほぼ不可能である。

 

「代償としてチップを一枚、支払わせてもらうわ」

「分かった。ただ、ディーラーは別の人間に代わってもらうとしよう。そうだな……あそこの彼女にしよう」

 

 ぺこらはチップを支払い、デュラハンも刃を収めた。

 ただ一度でもイカサマをした彼女にカードを配らせるのは信用ならない、という理由から別の人物を指名する。ただ因幡を初めとして普通の従業員ではぺこらの不正をする可能性があり、かといってフブキたちではデュラハンに有利と判断されかねない。なので彼が選んだのは、近くを通りかかったバニー姿の女性――おかゆであった。

 店側からすれば雇って間もない従業員なのでイカサマが出来る程の知識や技術は覚えさせてはおらず、彼女が勇者の仲間であることは公になっていないのでデュラハン側に有利に働く心配もないと判断が出来る。

 

「因幡、悪いけど彼女にディーラーをお願いしたい」

「承知しました」

 

 了承し、因幡がおかゆを呼びに行く。

 ぺこらはデュラハンの一席挟んだ隣に座り、連れてこられたおかゆは先ほどまでぺこらが立っていた場所に立つ。それから因幡にディーラーとしてやることを聞き、覚束ない手つきで山札をシャッフルしてからプレイヤーの二人にカードを配る。

 そして改めて、それぞれが参加料のチップを一枚ずつ支払う。

 

「勝負!」

 

 互いに配られた五枚のカードを確認する。

 それぞれに手札を確認してから更に追加のチップを支払い、不要と思われるカードを捨てて同じ枚数のカードを新しく手にする。

 

「ぺこらは一枚ベットするわ」

「コールだ」

 

 これで場には六枚のチップが置かれた。

 もし手札が悪く、ゲームを降りる際にはフォールドを宣言することで参加費以外のチップは変換される。

 

「オープン!」

 

 ぺこらが手札を開示すれば、ぺこらはジャックとクイーンのツーペア。

 それに遅れて広げられたデュラハンの手札は、8のワンペア。

 

「ハッハッハ↑ この勝負、ぺこーらの勝ちね」

 

 優越感に浸るように笑い、ぺこらは六枚のチップを手にする。

 これで互いに手持ちのチップの枚数はデュラハンが四枚、ぺこらは八枚となった。

 

「この様子じゃ、ぺこらの勝利は確定ね!」

「ネクストゲームだ」

 

 デュラハンがチップを払い、ゲームの続行を宣言する。

 おかゆは全てのカードを回収し、カードを混ぜ直してから二人へと再びカードを配る。

 プレイヤーは先ほどと同じようにチップを支払い、不要なカードを捨てて新しいカードを手札へと加える。

 

(きtらあああああっ!!!)

 

 手札を見て、ぺこらは内心でガッツポーズをする。

 彼女の手札は三枚のスリーカードとワンペアという、フルハウスの役が揃っていた。

 

「……今回は強気に、残りのチップ全てをベットするわ!」

 

 全額を賭けるという、あまりの暴挙。

 本来、相手が持っている以上のチップを賭けることは許されていない。

 

「俺の残っているチップは二枚だ。四枚分の差分は手元にないぞ」

「分かっているわ。今回に限り、代わりに何か価値のあるものを賭けてくれていいわ」

「……なら、これかな」

 

 カードを持っていない手で、自らの荷物袋を漁る。

 やがて取り出したるは一つの首飾り、中央に小ぶりながら鮮やかな赤い宝石のはめ込まれたデザインのシンプルな十字架。銀色の輝きを放つそれを、デュラハンはテーブルの上に静かに置く。

 

「これは?」

「曰く、あらゆる呪いから身を守ってくれる代物だとか」

「………っ、まさか、聖騎士の首飾り!?」

 

 その可能性に気付き、ぺこらは驚きの声を上げる。

 この世界には毒や麻痺といった肉体に異常を来たす物とは別に、「呪い」と呼ばれる状態異常が存在している。どちらも掛かれば戦闘時に限らず日常生活にも支障があるのは同じだが、厄介のは圧倒的に後者である。何故なら毒や麻痺は魔法や薬によって一般人にも対処できるが、呪いについては教会にいる神官にしか解呪することが出来ない。更には毒や麻痺程度の状態異常であれば装飾品によっては防ぐ術もあるが、呪いだけは防ぐ装備品は一般に出回っていない。

 唯一つ、聖騎士の首飾りだけは呪いに対して完全な耐性を獲得することが出来る。

 もし本物なら山積みの金貨と同等の価値がある代物である。

 

「確かに、この勝負の対価としては申し分ないわね……」

 

 何とか冷静に答えながら、ぺこらは冷や汗を流していた。

 まさか勇者一行の僧侶から、そんな貴重なものを持ち出してくるとは夢にも思わなかったのだ。

 

(落ち着け、落ち着くのよ。ぺこらの手は決して弱くない)

 

 心臓の鼓動が高鳴っている。

 フルハウスは最強とは言わないが、ポーカーのルール上では上から四番目。もしもフルハウスを手札に揃えることができれば、負ける確率はかなり低いと言えるだろう。

 

「オープン!」

 

 宣言と同時に、ぺこらが先に手札をテーブルに広げる。

 彼女の役は十と六のフルハウス、デュラハンの手札は七のフォーカード。

 

「どうやら俺の勝ちのようだな」

「そんな……嘘よ!!」

「これが現実だ。この勝負は俺の勝ち、と」

 

 愕然とするぺこらに、淡々と言い放つデュラハン。

 イカサマを仕込めない以上、フルハウスを揃えた彼女は確かに幸運だった。だが、更なる強運を引き寄せたデュラハンの勝利だった。

 

「さ、流石はあのくさんです!」

「本物の勝負師に買っちゃうなんて凄いね!」

「うーむ、これが本物のギャンブルであるか」

 

 デュラハンの勝利に、フブキとミオは喜びをあらわにする。

 因幡はこの結果に内心驚きながらも、主人が敗北した事実を受け止めていた。

 

「さて、これで俺の勝ちとなった訳だが。約束通り、賢者と会う方法を教えてもらえるかな?」

「……まだよ。勝負は三本勝負が基本、一回負けたくらいで何よ。ぺこーらはまだまだ本気じゃなかったわ!」

 

 まさかの逆ギレともいえる態度をとりながら、ぺこらはデュラハンへと指さす。

 確かに一本勝負とは誰も言っていなかったが、だからといって今になってルールの変更するとは思いもよらなかった。デュラハンとしては更にゲームに付き合う義理はないのだが、必要な賢者に関する情報が得られなければ意味がない。今の彼女は頭が沸騰している様子から、下手に断ると教えてくれない可能性もあった。

 

「こっちとしては、これ以上付き合う必要はないんだが……勝ったら何をくれるんだ?」

「はっ! もしぺこーらが三敗したら、今夜あんたの女にでもなってあげるわ!」

「要らん。それなら金の方がマシだ」

 

 ぺこらの提案を、デュラハンはにべもなくにべもなく断る。

 確かにぺこらの容姿は十二分に整っているが、幾ら節操なしと言われるデュラハンであっても流石に誰彼構わず手を出すわけではない。

 

「は、はぁ!? このぺこーら様が相手してやるってのに文句あるっての!?」

「さっさと勝負の続きをしよう。ただし、やるのは残り二回だからな?」

「良いわ、望む所よ!」

 

 そうして再び勝負が始まった。

 

 

 

 

「これで俺の勝ちだ」

「そ、そんな……」

 

 勝負の結果はデュラハンの圧倒的な勝利で終わった。

 ぺこらも持ち得る全てを手段を用いて挑み、何回か勝てても最終的には全てのチップを奪われていた。

 

「あんたっ! イカサマしてるでしょ!!」

「それは、どんな方法でだ?」

「そっ、それは……」

 

 デュラハンがイカサマをしているのは明らかだったが、ぺこらにはそれを見抜けなかった。ただの豪運で片付けるには無理があり、何かしらの手段で手札を入れ替えていると考える方が妥当であった。

 そして彼女の考えは正しかった。

 デュラハンの行ったイカサマは単純なものだった。彼は最初にゲーム使うトランプの箱を選ぶ際、ぺこらに放り投げるのと反対の手で箱を一つ自らの陰の中に仕舞い込んでいた。全員の視線が彼女が受け取った箱の方に向けられており、更には積まれていた箱をあたかも吟味するように崩していた為、一つ消えていることに気が付かなかった。

 デュラハンは自らの影の中にある程度の大きさの物を収納することが出来、仕舞った物も目に見て確認せずとも自由に動かすことが出来る。そうして影の中で箱を開け、中からカードを取り出して準備しておく。

 そうしてカードのチェンジを行う際、それを手札に拾うように見せかけて影の中のものと入れ替えて必要なものを手札へと揃える。つまり彼にしてみれば、どんな初手だろうと好きな役を自由に造ることが出来たのだ。

 尤も、これは用意されていたカードが全て同じデザインであることが条件であり、更にはぺこらの持っているカードと被ってしまわないよう注意が必要だ。なので彼女が手札を公開して問題ないのを確認してから、デュラハンも手札を見せていた。

 

「さて、約束通りに賢者の情報を貰おうか?」

「くぅぅぅぅぅ………わ、分かった」

 

 約束は約束。

 苦虫を嚙み潰したような呻き声をあげながらも、ぺこらは情報を開示する。

 

「……賢者の居場所を直接は知らない。けど、その場所を知っている人間を知っているわ」

「それ、たらい回しにされないよな?」

「安心して。その娘は賢者の家で一緒に生活しているから」

「……なら、安心か?」

「………それじゃあ、別室に行くわよ」

 

 ぺこらは立ち上がると、ぐいっとデュラハンの服を掴んだ。

 彼女の思わぬ行動に、近付いてきたフブキが少し不安そうに尋ねてくる。

 

「あの、一体何処へ行くんですか?」

「……さっき、約束したでしょ。こ、ここ、今夜、相手をするって」

 

 問いに、ぺこらは顔を赤らめながら答える。

 どうやら先ほど自分がごねた際に口にした、三回とも負けたらデュラハンの一夜限りの情婦になるという約束を律義に果たそうとしていうのだ。

 

「いや、俺はそれを了承した覚えはないぞ」

「うっさい! 一度でも口にしたことを反故にするのは、勝負師の矜持に反するのよ!」

 

 羞恥に震えながら、ぺこらは必死に主張する。

 彼女自身、まさか自分が一度も勝てないとは思いもしなかっただけに、こんなにも辱めを受けるとは考えていなかった。それでも、賭け事を行う上で自分が発した言葉を無かったことには出来なかった。それをしてしまえば、自分がこれまで培ってきた勝負師としての評価が地に落ちてしまいかねない。

 

「因幡、お前からも何か言ってくれ」

「あのく様……ぺこら様を宜しくお願いします」

「おまえ!? 自分の主人が、俺みたいな奴の慰み者になろうとしているんだぞ!? 寧ろ全力で邪魔しろよ!?」

「ぺこら様はあのく様に負けて、その報酬を自ら捧げようとされています。ならば臣下である私は、主の意思を尊重いたします」

 

 因幡に救いを求めれば、何故か彼はぺこらの味方のようだ。

 ならばとフブキたちの方へと視線を向ければ、彼女たちもどうするべきか決めあぐねている様子だった。

 

「さっさと行くわよっ!」

「おい、引っ張るな!」

 

 ぐいぐいと袖を引っ張られて歩くぺこらを、デュラハンはノロノロとついて行く。

 

 




◆兎田ぺこら
 年齢:77歳 性別:女性 身長:153㎝(81B) 適正:トランプ
 装備:バニードレス、幸運のダイス
 体力:59 魔力:236 総合戦闘力:295

 イースター遊技場のオーナー。
 生粋の勝負師であり、勝つためなら如何なる手段も辞さない。
 約束を破るのは矜持に反すると、口約束でも絶対に守り通す。


イメージは2022の新衣装版です。
因みに、この年齢にしたのには一応、理由はあるので適当ではないです。


クリック? クラック! また今度。

フレアの立ち絵が適してる?(あるいは好み?)

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