大精霊が落とす至高の遺物。
一度きりの消耗品。瀕死の重傷、あるいは肉体の損傷が著しくない死後数刻以内の者を蘇生できる権能を持つ。生命の理を書き換える唯一無二の品であり、使用後は光の塵となって霧散する。損なわれた肉体が再生の限界を超えている場合、その奇跡は発動しない。
その価値は金貨百枚を優に超え、王侯貴族が喉から手が出るほどに渇望するが、それが本物であると証明する術は存在しない。
では、本編をどうぞ。
目を覚ました時、フブキはどこか見覚えのある天井を見上げていた。
視界いっぱいに広がる木製の天井を暫く寝ころんだまま眺めていれば、それが自分たちが泊まっていた宿の部屋であることに思い至る。
部屋……いや、建物の外がやけに騒がしい気もするが、そんなことより自分はどうしてこんな所で眠っていたのだろうかと思いながら、何があったのかと記憶を探ろうとしたところで部屋の戸が開け放たれる。そちらへと視線を向ければ入ってきたのはおかゆであり、脇には桶のようなものを抱えている。
「あっ、フブキちゃん。目が覚めたんだね?」
「おかゆさん、私……ッ!」
反射的に体を起こそうとし、全身に衝撃が走る。
全身の肉という肉に灼けた釘を打ち込まれたような激痛に、声にならない悲鳴が喉で止まる。
「~~~~~ッ!!」
「無理しない方がいいよ~。多分、全身筋肉痛になってるってあのく君も言ってたから」
再び布団へと崩れ落ち、額からは熱によるものではない、脂汗がどろりと流れ落ちる。
おかゆは布団の脇に腰を下ろすと、桶の中から水で濡らした布巾を取り出して滴らない程度に絞る。それをフブキの額に乗せてくれて、ひんやりとした感触が
「気が付いてるかもしれないけど、ここはボクたちが泊まった『水禽の宿』だよ」
「……私、どれくらい眠っていたんですか?」
「大体、丸一日かな。お医者さんの見立てだと、疲労が原因だろうから休みなさいだって」
「……そう、ですか。ミオや、他の皆は大丈夫でしたか?」
「あー、ミオちゃんも怪我とかはしてないよ。今は、別の部屋で休んでるから出てこれないけど」
おかゆの、少し歯切れの悪そうな答え方に引っかかるものを感じる。
それにフブキが指摘するより早く、おかゆは話を続ける。
「一度死にかけたって聞いてたバクニ君は元気に筋トレしてるし、拳が酷い状態だったころさんも大精霊の力で直してもらったから問題ないよ。二人ともお医者さんに診てもらったけど、本当に重傷だったとは思えないくらい元気だって」
「それは、良かったです」
二人が無事と聞き、フブキは安堵する。
特にバクニは自分の身代わりとなってベリアルに串刺しにされて死にかけた所か、あの瞬間、確かに彼が死んでいたのをフブキは目撃していた。水薬程度ではとても回復できなかっただろうに、あの大精霊の羽根のおかげで死の淵から戻ってくることが出来た。そうでなければ今頃、自分の無力さに苛まれ、悔やんでも悔やみきれなかったことだろう。
「それからミオちゃんと一緒に助け出した魔法使いのお爺ちゃん、かなり衰弱してたけど一命は取り留めてるって。今は別の宿で仲間に看病してもらってるみたい」
「人命救助できたんですね」
「それでボクは見ての通りだから、こうしてフブキちゃんの看病してるんだ」
「あのくさんは?」
「昨日も説明したんだけど、村の人たちが話を聞きたいって朝から連れ出されていったよ」
面子を考えれば、彼が説明役として最適なのは間違いないだろう。
自分が眠っていたので仕方がないが、面倒を押し付けたことに申し訳なさが募る。
それと同時に、建物の外から漏れ聞こえてくる騒がしさにもある程度の察しがついた。
「おかゆさん、あの外から聞こえる音って……」
「……うん。あれは村の人たちが魔物が倒されたことを喜んで騒いでる音だよ」
「ああ、やっぱり」
おかゆの言葉に、フブキは複雑な心境を抱く。
村人たちは元凶たるベリアルが討たれたことに喜んでいるのだろうが、彼らは忘れてしまったのだろうか。自分たちの今の生が、身代わりとなった犠牲者たちの死の上に成り立っていることに。あるいはそれに気付いていながら笑い合っているのかと、そう考えるだけで嫌悪や怒りといった負の感情が、胸の奥で澱み始める。
逃げられてしまったとはいえ、村を苦しめていた魔物を倒そうとしたこと自体は勇者として間違っていたとは思わないが、その結果として『自分勝手な人々』が救われてしまった事実にフブキは言いようのない虚しさを抱く。
元凶さえ消えれば、過去の罪も消えるというのか。
村人を救えたことは誇りではなく、拭いきれない後味の悪さとして心に残っている。
尤も、そんな胸中を晒すこともなくフブキは当たり障りのない返事を返す。
「魔物には、逃げられちゃったんですけどね」
「でも聞いた限り、奪っていた大精霊の力も失っちゃってたんでしょ? なら悪いことも出来ないと思うけど……」
「それなら、良いんですけど」
「その辺りも、あのく君が上手いこと話してくれてると思うよ」
そこまで話したところで、おかゆは桶を抱えて立ち上がる。
あまり長いこと居座っては、フブキが休めないとの判断だろうが、その前に忘れないように大切なことを伝える。
「そう言えば洞窟から出る前に、大精霊から言付けを預かってたんだった」
「何か言われたんですか?」
「落ち着いたら一人で来るように、だって」
「つまり身体を休めて万全な状態で来いってことですね」
「そうだね。ちゃんとちゃんと休まないとね」
「はーい」
「もう少ししたらお医者さんを呼んでくるから」
そう言って、おかゆは部屋を出て行く。
フブキはそんな彼女の後姿を見送ってから、ゆっくりと天井へと視線を移す。
「……私、正しいことをしたんですよね」
自問するように、ポツリと呟く。
誰に向けて言うでもない、その独白は静寂に溶けるようにして消えていった。
フブキは深くため息を吐くと、再び目を瞑る。
自分は勇者として間違ってはいない筈だと、そう強く思うことで徐々に意識を夢の中へと委ねていった。窓の外からは相も変わらず村人たちの歓声が聞こえてきて、その声を聞く度にフブキの胸には言いようのない嫌悪感が芽生えていくのだった。
◆
村のお祭り騒ぎは三日三晩続いた。
それは自分たちを脅かす魔物がいなくなったことによる安堵感と、これまでの鬱屈とした生活に対する鬱憤の発散もあったのだろう。村人たちは昼も夜も関係なく、飲めや歌えやの大騒ぎであった。
その間に勇者一行で宴に参加したのは、フブキとミオを除いた四人のみであった。
当初は二人が出られないのに自分たちだけ楽しむのはどうなのかと躊躇していたのだが、流石に主役が誰一人として祝いの席に顔を出さないというのも気まずさがあり、フブキからの後押しもあって二日目から個々に参加することにしたのだ。
デュラハンとしては馴れ馴れしく肩を組み、酒を勧めてくる村人や気安く肩を叩いてくる村人に嫌気が差していたのでバクニを身代わりにして最低限の付き合いで済ませていた。因みにバクニは勧められるまま肉を食らい、酒を飲み、豪快に笑っていたので村人からも大層気に入られていたので問題はなさそうであった。
そうして迎えた四日目、フブキも回復したので解放されると思いきや。
「えっ、まだ村から出られない?」
「……はい、残念ながら」
デュラハンと、若干二日酔い気味のバクニを前にフブキは申し訳なさそうにする。
この場にはミオを除いた五人が集っているが、女性陣は何かを知っている様子だった。なお、バクニは半分ダウンした状態なのでいつも以上に黙り込んでいるが、一応は起きているらしい。
「どういうことだ? フブキさんはこれから大精霊の所に改めて行くとして、その要件が済めば直ぐ出発できるだろう?」
「それが、その……そう言う訳にもいかなくなってしまいまして」
「……もしかして、ミオさんがいないのが理由か?」
「………はい、そうです」
デュラハンの問いに、フブキは困ったような表情を浮かべる。
何と言うか言い難い事情があるといったところか、そう考えていると助け舟をおかゆが出す。
「あのく君は、発情期って知ってる?」
「知ってるぞ。動物が子孫を残そうと本能的に異性を求める時期だ」
「うん。その発情期なんだけど、ボクたち獣人にも備わってるだけで……」
「ああ……そういうことか」
流石にそこまで話されれば、デュラハンも大凡の事情を察する。
「俺の記憶違いじゃなければ、獣人は発情期がある程度分かるんじゃなかったか?」
「普段はそうなんだけど……ミオちゃんに関しては、ちょっと事情が違うみたいなんだよね」
「と言うと?」
「あの洞窟に居た魔物、ベリアルに強制的に発情させる毒?を打たれたみたいなの」
つまり、予定外の発情期が来てしまいミオは起き上がれない状態にあるらしい。
救出してから既に数日過ぎているが、その間一度とて部屋から出てくるのを見ていないので相当大変なのだろう。決まった相手がいるなら部屋に籠ってしっぽりと発散させればいいが、魔王討伐の旅をしている以上はそんな相手は居ない。かといって彼女の意思に反し、適当な男を宛がうのは色々と問題になるので自然と治まるのを待つしかない。
「だから申し訳ないけど、私たちはもう何日かは滞在することになりました」
「ボクはころさんと一緒に一足先に下山して、黒の領土を目指せる港町に行ってるから。そこで間に合うならみんなのことを待つし、タイミングが合うなら一足先に船に乗って渡っちゃって情報収集しておくね」
見れば、おかゆところねは既に旅支度を済ませていた。
確かに今からなら未だ復路の馬車に間に合うので、問題なく首都へと戻ることが出来るだろう。
「お願いします。ころねさんは下山した後は?」
「ん……あたしは、公都の方に戻る。おゕゆからの手紙を、届けないといけないから」
おそらくは、大公への報告書のことだろう。
勇者一行の活躍か今後のことを書き記しているなら、下手な相手に預けるのは心配だ。
「ころねさん。改めまして、今回はお世話になりました」
「んーん、そんなに畏まらなくてもいいよ~。こっちは好きでやってるだけだから」
「それでもですよ。お礼の言葉は、何度言ってもいいものです」
フブキはぺこりと頭を下げて感謝を示す。
ころねは照れ臭そうに頬を掻きながら、小さくはにかむ。
「じゃ、行くから」
「ころさん、ころさん。アレ、渡さなくていいの?」
「っ……わ、わがってる」
おかゆがころねの耳に何事かを囁くと、途端にころねは頬を赤らめて俯く。
どうしたのかと見守っていれば、やがて意を決したように荷物から布の塊を取り出してデュラハンに押し付けてくる。
「あ、あげる」
「ん? これは……パンか?」
中身を確認してみれば、それは幾つかパンが入っていた。
それも旅のお供であるライ麦パンや堅パンなどではなく、ここらではお目にかかれない真っ白なパンだった。しかもほんのりと温かいことから焼き上げてそう時間が経ってないのが分かるが、この温泉村にはこんなパンを売っている店はなかった筈だとデュラハンは首を傾げる。
「すっごいでしょ? ころさんは冒険者になる前はパン屋で働いてたんだよ。だから味はボクが保証するよ」
「わざわざ、俺の為に焼いてくれたのか?」
「ちがっ! これは、その……み、みんなで味わってもらおうとしただけ! 勘違いしないで!!」
ころねは耳まで真っ赤になりながら捲し立てる。
理由は何であれ、旨いパンを貰えたことは事実なので素直に受け取る。
「ころねさん、ありがとうございます!」
「ありがとうな、ころね」
「い、いいから!! 冷めちゃう前に、さっさと食べてよね!!」
ころねは益々顔を赤くし、いそいそと部屋から出て行く。
茹蛸のようになった親友の姿に、おかゆはクスクスと笑っている。
「ころさん、恥ずかしがっちゃって……かわいいんだから」
「追いかけなくていいのか?」
「おっと、そうだった。そう言えば、皆の等級はどんな感じ?」
「えっ、等級?」
おかゆからの思わぬ問いに、フブキは鸚鵡返しする。
言われてみれば、冒険者ギルドに寄ってもそのことを忘れていた。
「話によると、黒の領土に立ち入るには青銅以上じゃないとダメなんだって。
「じゃあ私たちも下山したら、ギルドに寄ってかないとね」
「伝えといてよかったよ。じゃあ、また会おうね、みんな」
「ああ、またな」
そうしておかゆと、ころねの二人は共に旅立っていった。
二人を見送った後、部屋にはフブキとデュラハン、そしてバクニが残された。
「えっと、じゃあ改めて私たちの予定を伝えます。と言っても、洞窟には私一人で行くので、お二人には宿でミオと一緒に待っていてもらうことになるんですが」
「大丈夫なのか?」
「はい。大精霊に呼ばれているのは私だけなので、一人で行った方がいいと思うんです」
確かに、フブキのいう通りである。
幾らベリアルが消えて大精霊が復活したとはいえ、勇者一人で行かせるのは少しばかり心配ではある。ただ、無理について行った結果、大精霊の機嫌を損ねるようなことになってはならない。その程度で逆鱗に触れるということはないと思いたいが、それでなくとも大精霊の協力を得ることは今後の旅にとっても不可欠なものになるだろう。その際に不興を買って手を貸してもらえなくなるのは避けなければならない。
「分かった。なら大人しく待ってるよ。バクニも……この様子じゃ動けないだろうしな」
「うぅ……面目、ない」
デュラハンは肩をすくめ、バクニは二日酔いの頭痛に苦しみながら呻く。
これでは付いて行った所で足手まといにしかなりそうにはなかった。
「あっ、そうだ。お二人とも……特にあのくさんは絶対に絶っ…~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~対に! ミオのいる部屋に入らないでくださいね!」
「あ、ああ……分かった」
「本当ですか? 様子を見に行って、中で呻いてるのを聞いても入っちゃダメですからね!」
随分と念を押すなと思ったが、よっぽどの状態にあるのだろう。
あるいは、それだけデュラハンのことが信用ならないということだろうか。
「それじゃあ、私は行ってきます」
「ああ、気を付けてな」
フブキは最後に念を押すように何度も釘を刺してから部屋を出て行った。
残されたデュラハンとバクニの二人だったが、何をするにも青い顔をするバクニを放置する訳にも行かないので一先ずは彼を部屋まで運ぶことにする。見た目では細身の人間が巨漢の戦士を運ぶところを見られては色々と面倒だが、幸いにも彼ら以外に宿泊客はおらず、加えてバクニも意識が定まっていなので肩に担いで部屋へと移動する。
敷かれた布団の上に放り投げ、戸を閉めた所でデュラハンは腕を組む。
「さてと……どうするか」
この後の予定について、どうしたものかと考える。
今から温泉に入るには時間帯的に早すぎるし、かといって宿の外に出ようものなら村の人に絡まれて面倒なことこの上ない。幸いにも食事は宿の方が無償で提供してくれるので、態々外まで足を運ぶ必要はないのは助かるが。
「暇だな……」
部屋の中でずっと閉じこもっているのは、性に合わない。
今なら仲間に見られる心配もないので、庭に出て素振りでもしながら汗を流すのも良いかもしれない。そんなことを考えながら、彼は一階へと足を運ぶ。
◆
一方その頃、部屋に籠っていたミオは。
「んっ……ふ、ぁ……んっ」
布団の中で一人、身を悶えさせていた。
ベリアルから打たれた毒――強制的な発情を引き起こす毒は、本人の意思に関係なく身体中に淫らな熱をもたらし、容赦なく官能を昂らせる。その効果はすさまじく、自ら慰めても尚治まらない熱となって内側で暴れ回っている。普段なら羞恥心の方が勝るが、現在の彼女にはそれを気にする余裕もなく、ミオは自らの秘部に手を伸ばして蕩け切った花弁を割り開きながら浅い抽挿を繰り返していた。
「ふーっ、ふーっ……」
グチャグチャと、粘ついた水音が部屋の中に響き渡る。
そこから生まれる疼きは快楽として彼女の理性を焼き、獣のように本能の赴くまま快楽を貪らせる。けれども、それだけでは足りないと言わんばかりに腰をくねらせ、陰核を押し潰し、蜜を絡めながら膣内をかき乱す。溢れて飛び散る蜜がシーツに幾つもの染みを作るが、そんなの知ったことじゃないと手の動きは激しさを増す。
口の端からは涎が零れ落ち、焦点の定まらない瞳は宙を彷徨っている。
額には大粒の汗が浮かび上がり、髪が張り付いて肌に貼りついている。
「……ぐっ」
もはや絶頂を迎えた数を覚えてないが、一向に熱は冷める気配を見せない。
それどころか、自慰行為を続けていればいるほど、更なる刺激を求めて疼きは増していく。
頭の何処かではいい加減止めないとと思いながらも、指は勝手に動いてしまう。
「い゛っ……!」
そうして、何度目かとなる絶頂を迎える。
発散させれば一時的には落ち着けるが、また直ぐに満たされない飢餓感となって襲い来る。
「……手、ふやふやだ」
愛液でびしょ濡れになった手を見れば、皮膚がふやけてシワシワとなっていた。
そして少しばかり冷静になれたことで、汗や愛液で濡れた身体に開けた浴衣が貼り付いて気持ちが悪いことに気が付く。
「お風呂、入りたいかも……」
ここ数日、寝ても覚めても自慰行為に耽っていた。
おかげで風呂にもろくには居れていないので、身体にべっとりと付着した諸々を洗い流したいと思い立つ。
換気もろくにされない部屋に閉じこもっていたのでミオは気付いていないが、年頃の乙女としてはあるまじき臭い……雌臭さとでもいうべきか、そんなものが充満していた。ただ今の彼女には、それすら気に掛ける余裕はなかった。
冷水を頭から浴びるだけでも気持ちいいだろうと、ミオは重い身体を起こして立ち上がる。
襖を開けて土間へと出れば、すぐ前の床にお盆に載せられた簡単な握り飯と飲み物の入った竹筒が置かれていた。おそらくはフブキか誰かが用意してくれたものだろうと判断し、空腹と喉の渇きもあったので有難くいただくことにする。
「いただきます」
手を合わせ、冷えたままの握り飯に齧り付く。
折角の米も硬くなっていたが気にせずに喰らい、そして竹筒の栓を抜いて水を一気に呷って胃へと流し込む。後は空の器を元の位置に戻してから、よろよろと覚束ない足取りで部屋を出る。
幸いにも廊下には誰も居らず、人気のない廊下を右往左往するミオの姿を目撃した者はいなかった。
普段ならそんなに遠くない温泉までの道のりも、今は随分と長く感じる。
そうして歩いていると。
「あれ、ミオさん?」
階段を二階へと上がってきたデュラハンと鉢合わせた。
ミオは出くわしたのが仲間であることに漫然と考え、デュラハンは様子のおかしい彼女に眉を顰める。
今の彼女の服装は浴衣を何とか着ているが襟は開けて片方の肩が見え、今にも乳房が零れ落ちそうになっている。
「大丈夫か?」
「えーっ……あっ」
足元もろくに定まらず、結果としてバランスを崩して倒れそうになる。
それ程距離も離れていなかったので、デュラハンは咄嗟に前から抱き締めるように支えに入る。
「ふーっ、危ないな……ミオさん?」
「―――――」
デュラハンの胸元に顔を押し付ける形になったミオは、そのままの姿勢で固まっている。
どうしたのかと彼が意識を向ければ、荒い呼吸音……いや、匂いを嗅いでいると表現するべきか。
「スーッ、はぁ……スーッ、はぁぁ!」
「えっと、ミオさん?」
問いかけるも、ミオからの反応はない。
代わりに返答するように、ただ鼻息が荒くなっていく。
明らかに様子のおかしいことに、一度引き離そうとするが。
「あ、あれ?」
ミオの肩を掴み、離そうとするもののビクともしない。
それどころかデュラハンの背中へといつの間にか回されていた手がきつく浴衣を掴み、抱きつくようにして胸元へと顔を埋めてくる。
「ちょっ、ミオさん!?」
顔を押し付けながら、彼の匂いを胸いっぱいに吸い込む。
普段なら汗臭いと思うだけの雄の臭いが、今は芳醇な香水を思わせる程に蠱惑的な香りに感じられて止まらない。吸えば吸う程に腹の奥が疼き始め、鎮火せずに燻っていた情欲の火は瞬く間に燃え上がり彼女に残っていた理性の糸を焼き切る。
ミオは本能の赴くまま、抱き着いた姿勢からデュラハンの足を絡めとって足払いをかける。突然のことに何の構えも取れていなかったデュラハンは、そのままバランスを崩してあおむけに倒れ込んでしまう。
「あだっ」
倒れる彼の上に、そのままミオが馬乗りになる。
見上げれば彼女は荒く浅い呼吸を繰り返しながら口の端からは涎が滴り、頬は熟れた果実のように赤らんでいる。焦点の合っていない潤んだ瞳、その奥にはギラギラと輝く獣欲を孕んでいるのが分かる。いつもの彼女からは想像もできないその表情は、正しく発情した雌の顔そのものだった。
「はぁ、はぁ……あのく君、ごめんね? ウチ……我慢でき、ない……っ!」
「ちょっ、ミオさん!?」
言うが早いか、ミオは浴衣を開けさせ、柔らかな乳房を露わにさせる。
サイズはフブキよりも大きいが、筋力が不足らないからか少しばかり垂れ気味ではあった。そうして剥き出しになった柔らかな果実は、その大きさに見合った重量感のある揺れ方をしており、淡い桜色の乳輪の中心では桃色の蕾がぷっくりと膨らんでいる。既に硬く勃起している乳首は、滴り落ちた涎が付着してテラテラとした淫靡な光沢を放っていた。
「あのく、くん……」
ミオはデュラハンの両手を掴むと、それを自らの乳房へと押し当てる。
手の平に感じるのはマシュマロのような柔らかさと火照った肌の熱さ、そしてその奥から伝わってくる鼓動の速さだった。
「んんっ……あっ」
自らの手に覆われているとは云え、男性に乳房を揉みしだかれるのは初めての経験だろう。
デュラハンの指が沈み込む度に腰が跳ね上がり、唇の隙間からは湿った吐息が洩れる。
「あんっ……あっ……あ、あっ……」
そのまま自慰行為でもしているかのように乳房を揉みしだいていた彼女だったが、次第に焦れったくなったのか、更なる快楽を求めて自ら腰を前後に動かし始める。元々下着も履いていない上に何時間も自慰に耽っていたのもあり、デュラハンの腹部はあっという間に濡れてグチュ、ズリュッと粘着質な音を響かせる。
目の前で腰を振る淫靡な雌の姿に彼の下腹部は否応なしに反応し、浴衣越しに彼女の臀部へと押し当てられる。
「あんっ、あのく君も、はっ……ウチに興奮してくれてるの?」
好意を抱いている相手に、自分を女として見られている事実にミオは笑みを浮かべる。
このまま一戦始めようかと誘惑に負けそうになるデュラハンの耳に、何処からか人の……女性の声が聞こえてくる。
「………でさ!」
「えぇ、そうなの?」
「じゃあさ、じゃあさ……!」
それは複数人の話し声だが、徐々に近付いていることが分かる。
このまま押っ始めれば自分たちの痴態を村の人間に見られる羽目になり、勇者一行としてそういった話が広まるのは非常に拙い。それにミオも今は発情して思考が追い付いていないかもしれないが、後で冷静になった際にそれを知ってしまったらどうなるか考えたくもない。
「まっ、待ってくれミオさん」
「あっ……ウチのこと、いや?」
断られると思ってなかったのか、不安そうな表情を見せるミオ。
それに少し罪悪感を覚えながらも、デュラハンは彼女に事情を話すことにする。
「い、いや、そういう訳じゃないんだ。ただ、流石に廊下でするのは人としてどうかと……所構わずは拙いと思うんだ」
「ウチとしては、あのく君となら、何処でもいいんだよ?」
「……っ!」
思わず雰囲気に流されそうになるが、直ぐに冷静になる。
倒れた姿勢のまま周囲を見渡せば殆どが鍵の閉まった客室であったが、半開きとなっている扉があることに気が付く。
「移動するぞ」
「きゃっ!」
勢いよく立ち上がりつつ、ミオの手を引く。
なるべく急ぎ足で、かつ足音を響かせないようにしながら鍵のかかっていない扉に体当たりするように飛び込み、即座に戸を閉める。締め切られた戸に背中を預けながら耳を欹てれば、二階へと上がってきた女性たちの声がはっきりと聞こえてくる。
「あーあ、あの僧侶さん、恰好良かったのにな~」
「何でも一緒にお酒を飲んでいた人曰く、僧侶と思えないくらいがっちりした身体つきだったって」
「わぁ、そんな人なら一夜だけでも夢見たかったよぉ」
「ほんと、そういう意味でスバルは当たりだったね」
「今夜にも声を掛けるって話だよ!」
きゃーきゃーと、楽しそうに騒ぎながら三人の女性は扉の前を通っていく。
少なくとも彼女たちは直ぐ側に半裸の女性と勃起状態の男性がいる事実には気付かなかったようで、そっと胸を撫で下ろす。それから見れば部屋の中は四畳半ほどのこぢんまりとした空間であり、壁一面の棚には糊のきいたシーツとふっくらとした布団が山のように積み上げられていることから二人が逃げ込んだのはリネン室のようだった。
一先ずの窮地を脱したデュラハンは念のため、気付かれないよう部屋を閉ざす。
そうしたところで、近くにミオの姿がないことに気付く。
彼女は何処だろうかと探せば、近くにある低く積まれた布団の上に上半身を沈めていた。
「あのくく~ん、ウチ……もう、我慢できないよぉ」
振り返ったミオは浴衣の裾を捲り上げ、ふりふりと臀部を左右に揺らす。
彼女の秘所は既にべっちょりと濡れており、薄暗い室内でも分かる程に雄を欲していた。
「ねぇ……来て、お願い。ウチのこと……めちゃくちゃにしてぇ……」
甘えるような声色、熱に浮かされたような潤んだ瞳。
普段の彼女とは似ても似つかない淫靡な姿に、デュラハンはゴクリと喉を鳴らす。
「全く、仕方ない……なっ!!」
デュラハンは浴衣を脱ぎ捨て、臨戦態勢に入っている肉棒を露わにする。
そうしてミオの背後に立つといきり立つ肉棒を解された蜜壺へと押し当て、そのまま一気に最奥まで貫く。
ミオもまた男性経験のない処女であったが、発情しきっていたおかげで膜が裂かれる痛みや異物が胎に押し込まれる感覚にも苦しむことはなかった。なので最初から快楽だけを得た彼女は挿入された瞬間、声にならない悲鳴を上げて軽くイッてしまう。
「くぁあっ! い、いきなり……そんなっ!!」
「ああ、これが欲しかったんだろう?」
パンッ、パンッ、パンッ! と、何度も腰を打ち付ける音が部屋中に響き渡る。
その度にミオの大きな尻が波打ち、結合部からは飛び散った愛液が二人の足元を汚していく。
亀頭が子宮口をノックする度に膣壁は悦びに震えて締まり、柔らかな肉襞はお返しとばかりに竿を擦り上げてくる。指では決して届くことのない、気持ちいい場所をゴリゴリと削られる快感に、ミオは腰をヘコヘコと動かしながら喘ぎ狂う。
「んっ、あんっ……いいっ、気持ち、いいよぉ……!」
肉と肉がぶつかり合い、汗と愛液が混ざり合う。
それは本来ならば清潔を保つための布を敷き詰めた場所で行われるべき行為ではなく、にも関わらずミオはそんなことを一切気にすることなく快楽を貪っていく。獣のような喘ぎ声と共に背中を弓なりに反らし、普段は片足に巻き付けている尻尾も思わずピンと立っている。
その様は発情した雌犬そのものであり、本人が知れば怒るかもしれないが、今の彼女には似付かわしい姿だった。
「は♡ あ゛っ♡ あっ、もっと、もっと乱暴にして……!!」
子宮口を突き上げられると、下腹部全体に痺れるような甘い疼きが走る。
卵巣もキュンキュンと疼き、胎の奥では本能のままに強い雄の子種を欲して、欲して肉棒から精液を搾り取ろうと肉壁が締め付けを増す。
「くっ、そんなに大声を出したら、さっきの戻ってくるぞ。そしたらミオさんの痴態を晒すことになるな」
「あ゛ぁっ♡ やっ、見ちゃダメぇっ♡」
いやいや、と首を左右に振る。
実際に戸が開けられる想像をしたのか、彼女の言葉に反して膣はヒクつき、肉棒をより強く食い締める。
尤も、魔法で防音と閉鎖の魔法で万が一にも誰かが入ってくる心配も、室内の痴態を聞かれる心配はないのだが。
(まぁ、それをあえて伝えない方が面白い)
そう考えて、デュラハンは腰を打ちつける速度を上げる。
もはや彼女が声を出さずとも、二人の奏でる濡れ音だけで十分に人を惹き付けるには十分だった。
「うぐっ、んんっ♡、あ♡」
それでもミオは与えられる快楽に口から出る嬌声を何とか抑えようと、歯を食いしばって必死に耐えようとする。
そんな彼女に、デュラハンは声を出させようと他の手段で持って責め立てる。
汗ばむミオの背中に覆いかぶさると、両手を回して抱き着くように彼女の乳房を鷲掴みにする。荒々しくも優しい手付きで掴まれる感覚に、ミオは思わず声を漏らす。
「んんっ♡」
こうして異性に乳房を掴まれるのは初めての経験だったが、これもまた新鮮な刺激だった。
両手の指の間からはみ出る乳肉は柔らかく、それでいて張りがあり揉みごたえがある。手のひら全体で乳肉の感触を楽しみつつ、合わせて人差し指で乳首を摘まみ、捻り、引っ張り、弾いたりとしてやれば連動するように膣肉が蠕動し肉棒を強く締め付けてくる。
「んあぁっ♡ あぁっ♡ おっぱいぃ、気持ちいぃのっ!」
乳房を責められながら、同時に膣を犯される。
自慰では決して得られなかった快楽に、ミオはあられもない声を上げる。
最早ここまで来ると声を抑えることなど不可能であり、それでも声が漏れぬようにと必死に布団に嚙みつく。
一方のデュラハンも胸を責めながら腰を振る姿勢は少々面倒であり、お互いにそろそろ限界を迎えようとしているのは察せられたので乳房から手を離すと、彼女の腰を確りとホールドして先ほどよりも激しく腰を振る。
「んぐっ! むぐっ、んんんっ♡!!」
少しでも気を抜けば、布団を離してしまう。
そうなれば恥も外聞もなく喘いでしまいそうで、ミオは一心に布団を噛み続ける。
本能では「交尾したい」と叫び、本の一欠けら残った理性は「早く
そんな相反する欲望の板挟みを受けながら、ミオは快楽に溺れる。
「いいぞ、ミオさん。そろそろ射精せそうだ」
子宮口をこじ開けんと言わんばかりに叩き付けられる肉棒。
その先端が膨らんでくるのを感じ取り、ミオは期待に目を輝かせる。
「いいよっ♡ 来て、ウチの膣に、一杯出して! ウチの子宮を、君で満たしてぇ♡!!」
その一言が引き金となり、最後のピストンを繰り出す。
亀頭が最奥の門をノックするのと同時に、溜めにため込んだ白濁液が肉棒を脈打たせながら噴き出される。ぴったりと隙間なく押し当てられたことで子宮口から直接注ぎ込まれる熱い迸りに、ミオは背中を仰け反らせながら盛大にイった。
「お゛っ♡ んほぉおおおおおっ♡!!」
獣のような咆哮を上げ、全身をガクガクと痙攣させる。
同時に膣は絶頂を迎えたことで強く収縮し、子種を一滴残らず絞り出そうと蠕動する。
数秒、あるいは十数秒か、どちらにせよ長い射精がようやく終わった所で、デュラハンは一歩後ろへと下がった。ズルッと脱力した肉棒が膣内から抜ければ、栓を失ったことで孔からは大量の精液がブピュッという音を立てながら逆流してくる。相変わらずだが、もはや液体というより半固体のような塊がボトボトッと床に落ちる。
「ふぅ……」
射精したことでデュラハンは一息つく。
これからどうするか、と考えていると肉棒に生暖かい感触が纏わりつく。
何事かと見れば、いつの間にかミオが彼の股間に顔を寄せており、愛液と精液で汚れた肉棒を舐めていたのだ。
ザラついた舌が這いずり回り、丹念に掃除していく。
「んっ、じゅっ…ちゅる」
そして今度はそのまま、デュラハンの男根を口に含む。
まだ余韻が残る中でのフェラチオは暴力的であり、一度萎えていたモノはすぐに硬度を取り戻す。
「ぷはぁっ……ウチ、まだ満足してないんですけど」
「困った狼ちゃんだ」
口では呆れるような物言いだが、下半身は正直である。
再び勃起した剛直にミオは妖艶な笑みを浮かべる。
「可愛がって、ください……ワン」
頬を赤らめながら、ミオはデュラハンを誘う。
それから二人は場所を変え、時間が許す限り互いの身体を求め合った。
なお、後にリネン室に立ち入った従業員は室内が妙に獣臭いことに首を傾げるのであった。
・フェニックス
オリュザ火山の山頂に住まう大精霊。
噴き出した膨大な光と熱そのものが、意思を持つかのように鳥の形を成した存在。
人の歴史が文字として刻まれるより遥か昔、世界に初めて火が灯ったその時から、大精霊は空の高みより万物を見守り続けている。過去にはその力を求める権力者に狙われた時もあるが、その悉くは塵と成り果てたため、以降は誰も手出ししようとしなくなった。
クリック? クラック! また今度。
フレアの立ち絵が適してる?(あるいは好み?)
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Aの画像
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Bの画像