※この作品はR-18です。

Holo Quest   作:轟th

37 / 43
・死霊
 この世に未練を残した魂の末路。
 基本的に生物は死後間もなく、その魂は成仏するが、強い未練や恨みを抱いた魂は消滅せずに現世に残り続ける。やがて残留した魂は闇の飲まれ、生者にとって害をなす魔物と成り果てた存在。
 生物のように肉体を持たない為、如何なる物理攻撃も通じず、聖水や純銀の短剣、神官の祈りといった特定の手段でしかダメージを与えることが出来ない。なお、聖剣の持つ破邪もまた死霊にとっては特攻となるが、こちらは例外なので殆ど知られていない。


※今回も駆足気味になったので、最後があっさりです。


では、本編をどうぞ。


scene.37

「あ~、疲れたぁ……」

 

 その日の夜、勇者一行の泊まる宿屋にて。

 割り振られた部屋のベッドに、ダイブするようにフブキは寝転ぶ。野宿では味わえない、柔らかな感触に安らぎを感じていた。

 

「お疲れ、随分張り切ってたね」

「そりゃあ、こっちからお願いした立場だからね……力を抜くわけにはいかないよ」

 

 一緒の部屋、隣り合ったベッドに腰掛けるミオが労いの言葉をかける。

 昼間は心行くまで遊んだ後、夕方になってからはデュラハンに以前頼んだ稽古をつけてもらっていたのだ。少なくとも全力で楽しんでいたのに、軽く休んだと思ったら訓練に精を出すさまに付き合いの長いミオも感心していた。

 

「それで、どうだったの?」

「んー? ………うん、凄く強かったよ」

 

 よっと、腹筋の力だけで起き上がりながら答える。

 互いに木剣を持っての訓練はフブキが果敢に攻めて、デュラハンから一本を取ったら勝ちというものだった。

 内容は至ってシンプル、勇者と僧侶という職業を考えれば勝負にならないのが普通だ。例え手にしているのが聖剣でないとしても、戦闘力という点だけで見てもその差は歴然であり、手を抜いたところで負ける通りはないはずだった。ところが蓋を開けてみれば、どれだけ挑んでもデュラハンから一本も取ることは出来なかった。それどころかフブキの方が木剣を手放したのも、一度や二度ではない。

 勝負は一時間ほど続けたが、結果は言うまでもなく惨敗だった。

 デュラハンの様子からも、まるで大人と子供程の差を感じる程だった。

 

「多分だけど、先生より強いと思う」

「先生って……騎士団長ってコト?」

 

 ミオの問いに、フブキは頷いて応える。

 彼女が勇者として旅立つのに先立ち、本格的に剣の師事をしたのがコーンフィールド王国を守護する騎士団の団長であった。以前から手習いを受けてはいたが、本格的に指導を受けたのは僅か一ヵ月と短い期間ではあった。それでも王国の中でも精鋭と言われる騎士たちを纏める実力は本物であり、そんな師と比べてもデュラハンの方が上のように思えたのだ。

 

「……思ったんだけど、私たちってあのくさんのこと、殆ど知らないよね」

「えっ? まぁ、一緒に旅するようになって数ヶ月程度だからね」

 

 それは無理からぬことであった。

 街と言った比較的安全な場所でない限り、毎日が魔物との戦闘や移動で必死なのだ。少しの油断や慢心は死と直結するこの世界で、他人のことを根掘り葉掘りと気にする余裕はないのだ。共に旅をする上で最も大切なのは、相手が信用できるのか―――そして背中を預けるに足る人物なのかどうかだ。

 そう言った意味ではデュラハンも、そしてバクニも信頼できる仲間である。

 

「でも、まさかバクニ君が既婚者だとは思わなかったね」

「ほんとう、吃驚だったよ! あの人と結婚できるって、どんな人物なんだろうね?」

「んー、聖母みたいな人かな?」

「えー? 肝っ玉母ちゃんみたいな人かもよ」

 

 そうして二人は冗談交じりに話をする。

 されど、明るく話すフブキであったが、内心では疑問が解消された訳ではなかった。

 

(あのくさんって、本当に何者なのかな?)

 

 全て、とはいかないまでも魔物に関する豊富な知識。

 僧侶とは考えられないほど、本職の騎士を上回る卓越した剣の腕前。

 そして着用者を弱体化させる指輪の類似品を常備しながらも、それを感じさせない自然さ。

 

(ううん、止めよう。仲間を疑うなんて良くないよ)

 

 これまでの幾つもの窮地を、彼がいたからこそ脱することができたのだ。

 もしデュラハンが敵ならば態々、勇者である自分を助けるような行動をとるとは考えられない。それに疑念を抱いているのも自分一人だけ、誰にだって他人には言いたくない秘密だって一つや二つくらい持っているもの。何より疑わしいと思ったのもたった三点だけ、それだけで仲間を訝しむようでは仲間とは呼べないのではないか。

 

(そうだよ、あのくさんは信頼できる仲間だよ)

 

 そう、自分に言い聞かせるようにフブキは独り頷く。

 けれど胸中に生じた小さな棘は、信じたいと願う彼女の心を静かにむしばんでいった。

 そうして翌日のこと。

 

「今日は~、ミオとデート~♪」

 

 ルンルンと鼻歌を歌いながら、フブキとミオは並んで市場を歩いていた。

 船が出航できるようになるまで六日あり、流石に連日海で全員で遊ぶ気にはならなかったので残りは各々自由に過ごそうと言うことになっていた。ただ流石に依頼や港町から離れるような用事がある場合は、必ず仲間に共有することだけは約束していた。という訳で今日は女二人、仲良く港町を観光することにしていた。

 市場と云えど、やはり首都とでは並ぶ食材にも色々と差はあった。

 首都では黄の領土内における様々な特産品が相応の価格で取り揃えられており、魚介類も塩漬けや燻製といった加工品が多く並んでいる。対して港町では新鮮な魚介類が多く並んでおり、首都では見かけないような頭や骨がついたままの大きな魚や巨大なイカやタコといった食材がお手頃な価格で売られている。

 

「同じ大陸でも、商品も結構違うもんだね」

「本当だね。あっ、見て! あそこで何か美味しそうなものが売ってるよ!」

 

 フブキが指差した先では、美味しそうな匂いを漂わせる屋台があった。

 近付いて確認してみれば店主と思しき男性は熱々に熱された鉄板の上で小魚や、切れ端といった部位を幅広で長方形のブレードを持つ包丁ですり潰すように刻んでいた。ミンチニなったそれに幾つかの調味料や食材を加えてから形をある程度整えながら焼き、両面が焼けたら今度は高温の油へと投入する。こんがりときつね色になったら取り出し、紙袋に入れるとそのまま客へと渡していく。渡された客は熱々のものを少し冷ましてから豪快に齧り付くと、満面の笑みを浮かべている。

 

「美味しそう……」

「うん……食べようか?」

「賛成!」

 

 二人も他の客と同じように並び、注文すると少しして完成品が手渡される。

 火傷に気を付けながら齧り付けば、表面はサクサクと香ばしい食感をしていたが、中の肉は柔らかくて噛めば噛むほど肉汁が溢れてくる。しかも旨味も強くて、その味に二人の食欲が刺激されどんどん口の中に運んでいく。

 

「ん~! 美味しいねぇ!」

「うん、すごくおいしい」

「おかゆさんも来れれば良かったのにね」

 

 実は二人は外出するに際し、宿にいたおかゆにも声を掛けていた。

 部屋にいた彼女は顔こそ出したが、昨日の疲れが残っているからか、欠伸をしながら留守番する旨を告げたのだ。因みにデュラハンとバクニにも一応声を掛けようとしたが、デュラハンは部屋におらず、バクニは奥さんへの手紙をしたためると言って冒険者ギルドの方に向かっていった。

 

「疲れてたみたいだから、仕方ないよ」

「昨日もどこかに行ったと思ったら、あのく君に背負われて戻ってきたもんね」

 

 合流した後は自分の足で歩いていたが、激しい運動でもしたのか少し疲れた様子だった。

 白い首筋には虫に刺されたのか、赤い斑点があることにフブキは気付いていた。

 

「あー、うん……そうかもね」

 

 対してミオは何か察しているのか、気まずそうに頬を掻く。

 どうしたのかと振り返ったフブキは、通りの向こうに見覚えのある人物がいることに気付く。

 それは遠目に見ても紛れもなく、部屋に居なかったデュラハンだった。何処に行っていたのかと思えば、どうやら一足先に独りで街中を歩いていたのかとフブキは納得する。それから手を上げて、彼の名前を呼ぼうとした―――直後にそれに気付く。

 

「―――え?」

 

 デュラハンの隣に、見覚えのない女性が歩いていた。

 たまたま同じ方向に歩いている訳ではないのは、女性が彼の腕に自らの腕を絡めるように抱き着いていることから間違いなかった。デュラハンの背丈から逆算して女性の背丈はフブキと同じくらいか、あるいはそれより少し低いかもしれない。流石に顔こそ見えないが、綺麗な銀髪の少女であることは間違いなかった。

 

「あれ? あの人は……?」

「ん? どうしたの、フブキ?」

 

 フブキの様子を訝しみ、ミオも同じ視線の先を見る。

 そして彼女と同じように見知らぬ女性と並んで歩く仲間の姿に、「えっ?」と驚いた表情を浮かべる。

 

「あ、あのくくん?」

「一緒に居るの、誰なんだろう……」

「さ、さぁ……?」

 

 首を傾げ、ミオは目を凝らす。

 距離もあって向こうはこちらに気付いていないのか、そのまま歩いて遠ざかっていく。

 

「ど、どうする?」

「うーん、どうしよっか……」

 

 二人揃って迷っていた。

 元よりデュラハンは僧侶ながら女性関係については、少々ルーズな一面を覗かせていることに二人も何となく気付いていた。積極的、というよりかは来るもの拒まずのスタンスだが、少なくともここまでの道中で彼が何人もの女性と肉体関係にあることは間違いない。

 そうこうしている内に二人は曲がり角へと差し掛かり、このままだと見失ってしまうと思ったフブキは反射的に尾行を決め込んで小走りで後を追う。

 

「あっ、フブキ!」

「お、追いかけないとっ!」

 

 ミオもその後を追いかけて走る。角を曲がって路地の奥へと進んでいけば、再び歩き続ける二人組が見つかった。そのまま一定の距離を保ちながら、気付かれないように注意を払いながら追跡を行う。

 

 

 

 

「どうしてこうなったかなぁ……」

 

 空を見上げながら、デュラハンはそうぼやく。

 その様子を、彼の腕に抱き着くように隣に歩いていた少女が気が付く。

 

「ん? どうかしたのか。デュラハン様」

「……あやめ、この姿ではあのくと呼んでくれと頼んだだろう」

「はーい♪」

 

 可愛らしく返事をして、あやめは手を上げる。

 二人は恋人さながらに腕を組みながら、一緒に市場を散策している。

 こうなったのは、遡ること数時間前。

 

「あー、流石に疲れたな……」

 

 目を覚ましたデュラハンは、ベッドから降りて大きく伸びをする。

 チラリと後ろを振り返れば全裸で寝転ぶおかゆの姿があり、顔や身体の各所にカピカピとした乾いた液体が付着していた。昨日は浜辺での遊びが終わって宿屋に帰ってからも性欲に負けてしまい、そのままハッスルしてしまったので彼女は未だ夢の中に居る。

 体力的や性欲的にもまだ連戦できるが、流石に猿ではないのでおかゆを休ませる必要はあった。

 部屋に居る場面を仲間に見られても面倒なので眠る彼女を残し、デュラハンは早々に自室へと戻った。それから怪しまれないように身体を清めてから、軽装に着替えてから街の散策に出たのであった。なお、それから暫くしてフブキがミオを連れて彼の部屋をノックしたのだが、既に外出していたデュラハンが知る由もなかった。

 

「もうすぐ……黒の領土か」

 

 ぼんやりと海を眺めながら、そう呟く。

 彼が今いるのは漁港の端にある岬の突端、そこに丸太で組んで作られた古風な櫓の灯台だ。既に陽が昇っている為、灯火も付いていなければ見張り番もいないので誰も居ない。誰も居ない静かな場所では海風に乗って潮騒が鳴り響き、心地よい爽やかな香りが肺を満たす。

 そうして独りで考えるのは、自身の異常性について。

 元より自身が幽鬼として歪であることは自覚していたが、ここ暫くはそれが顕著なことに気が付いていた。

 

「心など……魔物にある筈がないのに」

 

 そう悩むことすら、怪物である自分には無用なもののはずだ。

 そうして悩んでいたからか、背後から忍び寄る人物の気配に全く気が付かない。

 

「わっ!!」

「っ!」

 

 いきなり真後ろから声を掛けられ、デュラハンは飛び上がる。

 バッと振り返ってみれば、そこには綺麗な銀色の長い髪に鮮やかな赤い瞳を持った少女がいた。

 

「あやめ……?」

「余ーだ余」

 

 悪戯が成功した子供のように、少女はにこやかに笑う。

 本来、青の領土で軍団と共に待機しているはずの、夜叉兵団の軍団長である百鬼あやめがそこにいた。服装こそ見覚えのある和装であるが、人間の街に潜り込むためか角は魔法で隠されている。

 

「吃驚した?」

「あ、ああ……しかし何故ここに?」

「えーっと、何でだっけ?」

 

 デュラハンの問いに、あやめは首を傾げる。

 彼女が物忘れすることがあるのは今に始まったことではないので、彼もとくに呆れたりはしない。

 あやめが腕を組みながら何とか思い出そうと唸っているのを眺めていると、トントンと何かが軽くデュラハンの足を叩く。視線を下に向けてみれば、何やら白くて丸っこい奇妙な生き物がそこにはいた。それは全体的にまるっとした真っ白い毛を持つ、額から一対の角を生やした奇妙な生き物であった。

 

「ヨッヨッ」

 

 あきっぱなしの口からは、可愛らしい鳴き声が聞こえる。

 ぽよ余と呼ばれる、あやめのペットのような、使い魔のような、良く分からない謎の生物だ。子供の頃から一緒に居るあやめ自身、これの正体については全く知らないが敵意がある訳でなく、寧ろ何かと助けてくれる――何より可愛い――ので常に行動を共にしている。

 

「久しぶりだな、ぽよ余。元気にしてたか?」

「ヨッヨッ!」

 

 デュラハンが屈んで手を差し出せば、ぽよ余は嬉しそうに顔を押し付けてくる。

 そうして暫く久しぶりの再会を喜んだ後、思い出したようにぽよ余は何処からともなく手紙を取り出す。受け取った手紙の差出人を確認してみれば、それは達筆な字で書かれた夜叉兵団の実質的なまとめ役である副団長の鬼童丸からであった。

 以下、手紙の内容は以下の通りである。

 

 

『拝啓、デュラハン総司令官殿。

 

 現在、私どもは青の領土にて、公国を睨み見張る役目を魔王様より賜っております。

 ところが先日、伝令にて若干の任務変更がございました。

 私ども夜叉兵団はこの場に留まり、百鬼軍団長のみ魔王城へご帰還なさるよう指示がなされました。しかしながら私たちが青の領土に侵出した際には妖魔軍団長の転送魔法により移動したため、帰りは自力で戻らなくてはなりません。幸いなことに黄の領土まで移動すれば迎えに来て下さると連絡を頂けたのですが、ご存じの通り我らが姫様を単独で行動させるには非常に不安がありました。しかし私共は持ち場を離れることは叶わず、どうしたものかと困っていた折、黄の領土に総司令官がいらっしゃると小耳にはさみました。

 不躾なお願いかと存じますが、もし姫様とお会いすることがあれば、迎えが来るまで共に行動させていただけないでしょうか。

 

 それでは、ご武運をお祈りしております』

 

 

 要約すれば、迎えが来るまであやめの面倒を見て欲しい、というものであった。

 確かに彼女は初めての場所や慣れない道だと方向感覚が狂って迷子になってしまうことがあり、普段は鬼童丸を始めとした部下の誰かが保護者のように付き添っている。

 

「成程……あやめ、迎えが来るのはいつなんだ?」

「ん? 今日だぞ」

「……因みに、帰還命令が出たのはいつだ?」

「うーんと……十日前?」

「この街に着いたのは?」

「昨日だな」

 

 あっけらかんと言い放つあやめ。

 彼女らがいた遺跡から船を使って黄の領土にに渡り、そこからこの漁港までまっすぐ進んだとして到着するには七日か八日は要することになる。それが約九日も掛かったことからして、既にあやめが迷子になったというのが容易に想像できた。

 

「文にはなんて書いてあったんだ?」

「鬼童丸から、迎えが来るまであやめと行動を共にしてくれというものだ」

「えっ、じゃあ一緒に居てくれるの!?」

「どうせ暇だったからな、問題ない」

「わーい!」

 

 デュラハンが頷けば、あやめは嬉しそうに抱き着いてくる。

 はた目には軽く飛びついたように見えるが、実際には相当な衝撃があるので生半可な者では踏み止まれない。

 

「あやめ、今の服装だと目立つから落ち着いた物に変えてくれ」

「はーい」

 

 デュラハンから離れて一歩下がると、下駄の先で足元を軽くトントンと叩く。

 普段の赤と黒を基調とした和服調の戦闘着から、白のフリルブラウスとオーバースリーブにハイウェストの黒いコルセットスカートという洋装へと変化する。これなら街中を歩いても目立つことはなくなったので、こうして二人と一体は街を散策することになった。

 特にあてがある訳ではなかったのでプラプラと、興味のある物や気になった物を見たり食べたりとする。デュラハンとしては売られている物に多少の差は感じても変わり映えしない人の営みに飽いていたが、あやめの方は目を輝かせて楽しんでいるのであれば悪くないかと思いながら彼女の横を歩く。

 そうして歩いていると、後ろを付いてくる覚えのある気配が二つ。

 

「……何をしているんだ、彼女らは?」

 

 振り返らずとも、少し離れた場所にフブキとミオがいるのが分かる。

 最初は偶然かとも思ったが、自分たちの後を付けているのは明らかだった。

 

「どうかしたのか、あのく様」

「……何でもない」

 

 不思議そうに小首を傾げるあやめの顔を見る。

 彼女とて背後の二人には気付いているだろうが、おそらく敵意がないから無意識にスルーしているのだろう。それをわざわざ伝えて変に意識されても困るので、デュラハンもあえて教えるようなことはせず再び歩みを再開させる。

 

「そこの仲良しなお二人さん! うちの商品をみてってくれよ!」

 

 そうして歩いていると、出店のオヤジから呼び止められる。

 立ち止まって見れば、そこは工芸品を売るお店のようで店内には様々な種類のアクセサリーが並べてあった。浜辺で拾ってきたと思われる綺麗な貝殻や何らかの動物の骨を加工して作られた櫛やネックレスなどの小物や、ひもを通したブレスレットなど様々なものが目に入った。

 

「へぇ~、たくさんあるな」

「どうだい? どれも海の恵みを利用した逸品ばかりだ。これ何かお嬢さんにお勧めだぜ?」

 

 オヤジはあやめに説明しながらも、視線はデュラハンへと向けられていた。

 明らかに男なんだから恋人に良い所を見せてやれよ、と言わんばかりの眼差しにデュラハンはため息をこぼす。

 

「あやめ、何か買ってやろうか?」

「えっ、いいの!?」

 

 喜びを露わにするあやめ。

 店先に陳列された商品は一瞥すれば値段も手の届く範囲だったので、これぐらいの出費なら問題ないと言う判断を下したのだ。そうして商品を改めて見回していくが、生憎とデュラハンにはデザインや素材の差は分っても、あやめにはどの商品が似合うのかよく分からない。それでも隣から期待に満ちた目で見つめてくるあやめが満足できるよう悩む。

 

「……これにしよう」

「あいよ!」

 

 商品を選んでオヤジに代金を支払う。

 そうして選んだのは染めたとは思えない鮮やかな赤色の一本足に、小振りながら真っ白な玉が付いた玉簪だった。選んだ理由としては普段の和装に合わせやすいことや、綺麗な銀髪に赤い飾りが似合いそうだと思ったからだ。

 それをあやめへと手渡せば、にぱぁっと嬉しそうに破顔する。

 

「ありがとう、あのく様。大事にするぞ!」

「気に入ってくれたなら何よりだ」

「おう!」

 

 あやめは両手で大事そうに簪を握り、軽くジャンプしながら全身で喜びを表現する。

 自らの選択が正しかったことにデュラハンは安堵し、そのままあやめの手を引いて店の前から離れて行く。

 そうして暫く歩いたところで。

 

「ねぇ、余……もう、我慢できそうにないよ」

 

 背を伸ばし、デュラハンの耳に小声でささやく。

 その声は甘えるような、何処か色っぽい含みを帯びており、見上げる瞳も潤んでいる。

 

「……仕方ない」

 

 デュラハンはあやめの腰に手を回すと、そのまま道の角を曲がる。

 後ろには物陰に隠れるフブキとミオの姿があったので、先ずは彼女らを振り切るために狭い路地裏を幾度か曲がりながら進んでいく。市場から離れたことで先ほどまでの喧騒が嘘のように静まり返り、デュラハンは鍵のかかっていない適当な建物の中へと入り込む。扉の前で外の様子を窺っていれば、フブキとミオが小走りで走ってきたが、やはり見失ったのか周囲をキョロキョロと見回してから何処かへと走り去っていく。

 撒けたことに安堵しつつ屋内を見渡せば、どうやら彼らが入ったのは倉庫のようだ。近くに無造作に積まれた粗末な木箱の中身を確認してみれば、補修用の補修用の麻縄や釣り針や銛の予備が収められていた。他にも固く密閉された樽があり、おそらく中身は長期保存用の魚の塩漬けやら安酒なのは匂いから推測が出来た。

 無人であることを確認したデュラハンが振り返れる。

 

「あやめ……」

 

 背後では、あやめがスカートを裾を持ち上げていた。

 興奮か、あるいは羞恥からか頬を赤らめながらも布地を捲り上げ、その下から真っ黒なショーツを露わにしている。

 

「我慢できないのか?」

「んっ♡」

 

 手を伸ばし、ショーツ越しに秘裂をなぞれば、あやめの口からは甘い吐息が漏れる。

 シュシュッと軽く擦っていけば指先に湿り気を感じ、そのまま指を滑らせてショーツの端から内側へと侵入させる。くちゃりと湿った音を立てながら中指は膣内へと呑み込まれるが、入り口に反して内側はきゅうきゅうと指に絡み付くように締め付けてくる。相変わらずの狭さに感心しながら指をゆっくりと動かせば、濡れそぼった膣内からはくちゅくちゅと卑猥な音が鳴り響く。

 

「こんなに濡らして、いつから期待していたんだ?」

「んっ、あっ♡ そ、それはぁ」

「それは?」

 

 デュラハンにしがみ付くように、あやめは快感を堪える。

 膣壁を擦り上げるように指を曲げながら何度も何度も抜き差しすれば、ぐちゃりという大きな水音が薄暗い倉庫内に響く。指を動かすたびに零れる蜜液が、床へと飛び散っては幾つもの染みを作っていく。

 

「あぁっ、もっと、してぇ♡」

「お嬢様の望むままに」

 

 デュラハンは笑いながら指を二本に増やす。

 既に十分すぎるほど解れている膣内は難なく二本の指を咥え込み、むしろ歓迎するかのようにきつく締め付けてくる。先ほどまでは手首を前後に動かす感じだったが、今はもはや腕全体を動かして激しく膣内をかき混ぜていく。

 

「おっ、お゛お゛ぉ゛っ!」

 

 汚い喘ぎ声を上げると同時に、あやめは絶頂を迎える。

 ガクガクと身体を大きく痙攣させながら、秘所からは勢いよく愛液が吹き出して小さいながら水たまりを作る。

 ぐったりとした様子であやめが寄りかかって来るのをデュラハンは片手で受け止め、ズルリと抜き出された指はテカテカと粘性の強い液体で塗れており、まるで第二の口のようにパクパクと開閉を繰り返す膣口から透明な雫が糸を引く。

 

「随分と激しくイッたな。久しぶりだったのか?」

「う……うん、最近は忙しかったから」

「それで、満足したか?」

「んっ……今度は、こっちに」

 

 あやめはデュラハンから離れると、後ろを向いて尻を突き出す格好となる。

 自らスカートを捲り上げてショーツも膝まで下ろし、引き締まった臀部と愛液に塗れた陰裂が露わになる。

 デュラハンもズボンを脱ぎ捨てて既に臨戦態勢になっている肉棒を解放し、あやめの腰を掴むと肉棒の先端を濡れそぼった膣口へと当てがう。

 

「入れるぞ」

「うん♡」

 

 ゆっくりと腰を前へと突き出せば、難なく亀頭が飲み込まれていく。

 既に十分すぎる程に解れていながらも膣は狭いが、圧迫される感覚が心地よい。

 

「くぅ、はっ……やっぱり、デュラハン様の、おおきぃ」

「あやめは小さいからな。ほら、お腹のところ分かるか?」

 

 腰を最奥まで押し込めば、あやめの下腹部が内側からボコッと膨らむ。

 子宮を押し上げられる感覚に息苦しいという感情よりも、蕩けそうな程の甘い快楽が電流となって頭に走る。

 既に恍惚な表情を浮かべている彼女を尻目に、デュラハンもゆっくりと腰を動かし始める。カリ首で膣襞をゴリゴリと削りながら引き抜き、亀頭で子宮を殴るように力強く突き上げる。そうして久しぶりのあやめの膣内を味わうように、ストロークを長くしていく。

 

「あっ♡ んぅっ……久しぶりの、お〇んぽ! きもちい゛っ♡」

 

 あやめも、デュラハンの肉棒の感触を味わいながら悦ぶ。

 単純にサイズの大きい相手なら交わった経験もあるが、それらと比べてもデュラハンの肉槍は太さと長さが丁度よいのだ。膣内を余すことなく擦り上げ、子宮口を押し上げる感覚は堪らず、子宮内でも疼いてしまいそうになる。これも彼が自分の初めての相手だったからなのかは定かではないが、少なくとも自分の身体はすっかり虜となってしまっているのだ。

 パンッパンッパンッと腰を打ち付ける音と、ずちゅっずちゃっと淫らな水音が交じり合い、二人の荒い呼吸音が響く。あやめの細い肢体はデュラハンの腕に掴まれて固定されているが、それでも少しでも多く快楽を求めようと腰が前後に揺れ動く。

 

「あっ♡ はぁっ♡ すご、いぃ……!」

 

 小気味良い打擲音が、無人の倉庫に響く。

 容赦ないピストン運動に晒されながらも、あやめの膣内はきゅうっと締まって肉棒を逃がさないとばかりに咥え込む。

 

「もっと、もっとぉっ♡」

「あやめ!」

「んっ! ぢゅる、んぅっ♡」

 

 抱き着くように前のめりになったデュラハンは、あやめの唇を奪う。

 下半身はまるで別の生き物のように絶えず動き続けながら、上では舌を差し入れて絡め合わせる。串刺しにされながら呼吸もままならない状況にあやめは悶え苦しむが、肉欲に溺れた思考はそれすら快感として受け入れていた。

 

「ん゛ぅっ♡ んんっ! んんぅっ!!」

 

 腰をさらに速く動かせば、あやめは声にならない声を上げる。

 高みへと上り詰める準備は整っていて、最奥を穿つ肉槍に支配されたあやめの身体は既に限界寸前だった。絶頂を促すかのように、膣内は収縮運動を繰り返し、腰の動きが激しくなるにつれてそれに合わせて身体がビクンッと跳ね上がる。

 

「ぷはっ、そろそろ出すからな! あやめ!」

「あっ、うんっ♡ きてっ、いっぱいだしてっ♡」

 

 デュラハンが口を離して宣言すれば、あやめはそれを待ちわびるように叫ぶ。

 更に激しい抽挿を受けながら、膣内で肉棒が脈動し始めるのを彼女は感じ取る。

 

「んぐっ! あっ、イクッ♡」

「俺もだ……あぁっ!」

 

 同時に二人は絶頂を迎える。

 あやめが全身を痙攣させ、デュラハンは膣の最奥で大量の白濁液を吐き出し、それを子宮で受け止めながらあやめは全身を痙攣させる。

 

「イグゥゥゥッっ♡」

 

 全身の神経という神経が焼き尽くされそうな、凄まじい快楽の奔流があやめを襲う。

 目の前がチカチカと白黒に点滅し、頭の中が真っ白になって何も考えられなくなる。ただ反射的に肢体を痙攣させ、膣肉を収縮させるだけで精一杯だった。身体は無意識に、膣奥で放たれる熱い奔流のすべてを子宮で受け止めようと蠢く。

 

「……ふぅ」

「んんっ♡」

 

 最後の一滴まで出し切ったデュラハンは一息ついてから、膣内からずるりと肉棒を引き抜く。ぽっかりと開いた穴からは逆流してきた白い粘液がぼと、ぼとと零れ落ち、それを見下ろしながらあやめは笑う。

 

「あははっ、相変わらずの濃さだぁ」

 

 絶頂後にも関わらず、あやめは前のめりの姿勢から身体を起こす。

 普通の女性なら脱力しているところだが、鬼である彼女はこの程度でへこたれるような柔な肉体をしていない。

 当然、この程度で満足する筈もなく。

 

「デュラハン様、まだ出来るよな」

「当然」

 

 デュラハンは不敵に笑い、今度はあやめを木箱の上に押し倒す。

 そんな二人を少し離れた場所から眺めていたぽよ余は、やれやれといった様子で移動する。こうなってしまえば後数時間は終わらないことを知っていたので、自分は自分で昼寝するのに丁度よい場所を見付けるとゴロンッと寝転がって目を瞑る。

 

「ヨッ」

 

 あとはごゆっくり~、と言いたげにぽよ余は幸せそうな寝息を立てていた。

 

 




◆ハトタウロス

 ミオの願いより生まれた使い魔。
 野生動物であるハトの頭部、羊の巻き角、筋骨隆々な牛頭人の肉体、狼の足と尻尾を持った架空の生物。ミオの、「フブキを助けたい」という純粋な願いより生まれた存在であり、彼女には出来ない「身体を張って助ける」ことができる。
 使い魔であるため、戦闘力は主人に準ずるので一定ではない。
 魔力をほぼ持たない代わりに、肉弾戦に特化した仕様となっている。


クリック? クラック! また今度。

フレアの立ち絵が適してる?(あるいは好み?)

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