術者の理想とする現実に改変する力。
術者の「こうなって欲しい」というイメージを魔力を消費して引き起こす事象であり、その性質から必要となるのは明確な心象であるので特定の決まった呪文は存在せず、詠唱は本人が呼びやすければ何でも良いとされている。言葉だけを聞けば万能のイメージを持つが、実際には実現可能な事柄と不可能な事柄が存在する。
例えば火球を出して標的に向かって飛ばす、風を刃のように飛ばして木を切るといった物理的な手段で代替可能な事柄は大抵実現できるが、「特定の人物が死ぬ」といった呪いの類は実現不可能なために発動しない。
では、本編をどうぞ。
ヴァイツェン公国の首都に到着した翌朝。
勇者一行は首都の中心に位置する大公の城を訪れていた。流石は一国の主が住まう場所だけあって、その地位と権威を示すに相応しい威容を誇っている。石造りの城壁は高く、堅牢な印象を抱かせる。城への出入り口である城門の両サイドには衛兵が立っており、油断ない目つきで城へ来訪者の様子を観察していた。それだけで彼らが如何に自らの仕事に誇りを持ち、大公閣下への忠誠心が高いかを窺い知ることができる。
「勇者様方、お待ちしておりました。どうぞお進みください」
門番にも話は通っていたのか、勇者一行は難なく城の内部へと入る。
本来、彼らのような他国の人間が支配者や高位の人物に会う場合は謁見の間――権威や格式を示すために豪華に装飾され、玉座の置かれた格式ある部屋に案内されるのが筋である。ただ、どうやら今回の面会は内密のようで通されたのは大公閣下の執務室であった。
「閣下、お客人をお連れいたしました」
「ああ、入れ」
扉の前に立っていた衛兵の一人が扉をノックし、中にいる人物へと呼びかければ直ぐに入室を許可する声が返ってきた。
開け放たれた扉から室内へと四人が足を踏み入れれば、そこは上質な調度品や絵画が飾られつつも邪魔にならない程度に配置された上品な一室だった。
「よく来たな、勇者一行よ。しばし待たれよ」
その最奥、重厚感のある机に向かい事務仕事をこなしている壮年の男性が一人。
彼は幾つかの書類にサインすると、それらを封筒に入れてから口を閉じる部分に溶かした蝋を垂らし、それが固まる前に印章を押す。それから机に置かれたベルを鳴らせば、少しして初老の執事服の男が入室してきた。彼は幾つかの指示を執事に出し、執事は封筒を受け取って部屋から出て行った。
部屋の戸が閉まってから、男性は口を開いた。
「さて、呼び出しておいて待たせて済まなかったな」
「いいえ、閣下がご多忙な身であることは存じております」
これに答えたのは、勇者のフブキだった。
これは元から取り決めていたことで、こういうのに慣れている彼女が適任だと思ったからだ。
「そう言ってくれると助かる。さて、自由にかけてくれ」
「感謝いたします」
許しを得たことで、それぞれがソファーに腰掛ける。
「フブキ姫は兎も角、他の者らは、余に会うは初めてになるか。余こそがラインハルト・フォン・ヴァイツェンである」
名前:ラインハルト・フォン・ヴァイツェン 種族:人間 職業:大公/英雄
体力:7078 魔力:1769 総合戦闘力:8847
「お、お初にお目にかかります。魔法使いの大神ミオです」
「余の前にて、気負う必要などない」
「拝謁の栄に浴し、身に余る光栄に存じます。僧侶の牧氏あのくと申します」
「……」
「戦士・金華バクニである、ます!」
「普段通りの口調で構わぬ。余も堅苦しい言葉は嫌いだ」
順々に挨拶をしていく。
デュラハンを見て大公は何か気になった様子だったが、直ぐに意識がそれる。
「前衛と後衛が二人ずつ、良いパーティであるな。フブキ姫」
「はい。彼らのおかげで、ここまで順調に旅を続けることができました。それと姫呼びは止めてください。今は勇者ですので」
「それは重畳。時に勇者殿、御身らは旅の資金に窮しておると聞く」
何処から情報を仕入れているのか。
どうやら大公には勇者一行が金銭的に困っていることを、知っている様子のようだ。
「余としては勇者一行への資金提供することに吝かではない。だが、無償と言う訳にはいかぬ」
「ど、どうしてでしょうか?」
大公の言葉に、ミオが訊ねる。
魔王を討伐するということは世界に平和をもたらすことであり、それは個人のみならず国としても利益になるはずなのだ。もろ手を挙げて、とまではいかないまでも協力的な姿勢は見せてもいいのではないかと。
その疑問に答えたのは、デュラハンだった。
「他の貴族への示しがつかないから、ですね?」
「然り」
「えっ、どういうこと?」
「貴族は見栄と体裁を何よりも気にし、自分たちの地位――特権階級が脅かされるのも嫌う。分かり易く言えば見返りが不透明な上に、大公閣下が自分たち貴族の権力を無視した独断専行をしたってみなす可能性が高い。これは場合によっては大公自身の政治姿勢に対する不満の現れとして、反発が起こることもある」
「で、でも、魔王は世界にとっても脅威なんだよ? それを排除するための行動なんだから……」
「そうだとしても、無条件の協力を貴族は絶対に認めない」
「頭の痛い話ではあるがな。そこで勇者一行には仕事を頼みたい」
「仕事をですか?」
「左様。これだ」
そう言って大公は引き出しから一つの封筒を取り出し、差し出してくる。
フブキが立ち上がってそれを受け取り、再びソファーに座ると中身を確認していく。
「泥棒事件の捜査資料?」
「然り。近頃、この公都をネズミが騒がしていてな……兵も手を焼いていると聞く。そこで勇者一行にはその捕縛、あるいは或いは素性を明らかにすることを望む」
「なるほど……」
「同封している許可証を見せれば、街の兵も手を貸してくれるであろう。結果次第で、報酬に色を付けるつもりだ」
「……承知しました。精一杯、努力させていただきます」
「頼んだぞ」
「失礼します」
フブキが代表して承諾し、他の三人も立ち上がって大公に一礼する。
そして勇者一行が退出して部屋に一人残されたレオンハルトは天井を見上げた。
「まさかな……彼が生きているはずがない」
その呟きを聞く者は、誰もいなかった。
◆
宿屋へと戻った勇者一行は早速、貰った封筒をテーブルの上に置いて中の資料をそれぞれ見る。
室内にはフブキを初め、ミオとデュラハンの三人がいる。因みにバクニは「頭を使う作業は不向きだ」という理由から同席しておらず、代わりに冒険者ギルドへと赴いて短期で出来る依頼をこなしている。
「なになに……窃盗事件が起き始めたのは今から二か月ほど前からと」
「どうやら犯人は貴族ばかりを標的にしているみたいだな」
「目撃証言は殆どなし。精々、怪しい人影を見た程度」
「犯人の人相、性別、規模も一切が不明」
「盗まれているのは絵画や彫刻といった貴重品と……女性の下着!?」
思わぬ情報に、読んでいたミオは思わず叫ぶ。
それにデュラハンとフブキが彼女の持つ資料を覗き込めば、確かに盗品の欄には女性物の下着と記されていた。
「……本当だな」
「何で下着なんて盗んでるんだろう?」
「性欲を満たすため、じゃないか?」
フブキの疑問に、デュラハンが何となくで答える。
盗品である財宝や下着は一見無関係に見えても、根本には満たされない欲求やストレス、精神的な問題が隠されていることが多い。貧困や借金といった資金不足な者は宝石や貴重品といった換金しやすい物を盗み、己の性欲発散を目的にする者は下着などの特定な品物に性的な興奮を覚える性的倒錯などが上げられる。
「被害の比率としては金品系が八割、下着類やその他で二割か」
「……あれ? もしかしてミオの下着を盗んだのも、この犯人なんじゃない?」
「あー、あれかー」
絶対はないが、可能性はあった。
盗まれてから数日たっているので、ミオとしてはもう諦めていた。そもそも新しいものは公都に着いた日に買い足していたし、今更手元に戻ってきたとしてもナニに使われたかも分からないものを使いたいとは思わなかった。
「他に、何か目ぼしい情報はある?」
「えーっと、盗まれた品物はブラックマーケットで売られてるみたい。出品者は不明」
「じゃあ、そのブラックマーケット? を調べたら何か得られないかな?」
「……無理、だろうな」
フブキの発言に、デュラハンが返答する。
ブラックマーケットは表で禁止られているような多様な取引が行われる都合、普通な方法では辿り着くことの出来ない秘匿性の高い場所で行われる。入り口は一見すると普通の建物に見えたり、特定の合言葉や紹介がないと辿り着けなかったりする。公の秩序が及ばないため、独自のルールや力を持つ者が支配している場合があるので無理に突入はリスクが高い。例え踏み入ることが出来たとしても、出品者や購入者の情報は極秘扱いと言われて終わりだろう。
「……駄目かぁ」
「まあまあ。そんなに落ち込まなくてもいいって」
「うん……じゃあ、情報屋とか!」
「そんなのがあっても、情報料は高い場合が多いぞ」
「むー……」
自分の案が否定され、フブキは頬を膨らませる。
それから三人はどうしたものかと考えるが、これと言って妙案が浮かぶ気配はなかった。
「……ちょっとした疑問なんだが、貴族は下着とかの管理ってしているのか?」
「えっ、どういうこと?」
「庶民は自分、あるいは家族が洗濯したり古いものを新しいのと入れ替えるだろう? 貴族はどうなのかと思ってな」
「えーっと、多分だけど……大体は使用人がしてると思うよ?」
「なら保管する場所はどうだ?」
「タンスやクローゼット、後はリネン庫とか? これは家によって違うと思うよ」
「成程な……」
デュラハンは腕を組み考える。
幾ら犯行時間が家主や使用人が眠る深夜だからとて、目撃情報がほぼないのは短時間に貴重品を盗んでいることになる。貴重品は物によるが執務室に隠している貴族は多いので、窃盗に慣れている犯人に貴重品が盗まれるというのは納得できる。だがフブキたちの話通りなら、下着類を盗むには保管されている場所を把握していなければならない。でなければ時間が制限されている状況で下着を盗むというのは不可能だ。
「二人とも、悪いけど被害に遭った屋敷で話を聞いてきてもらえないか? 犯人の目撃情報がないか、犯行のあった日の前後で何か普段とは違うことはなかったか。他にも些細なことでも構わないから気になることがあったら聞いておいてくれ」
「あのく君はどうするの?」
「俺はここ最近で羽振りの良くなった人間はいないか、貧民街に怪しい奴がいないか調べてみる」
「分かった。じゃあそっちはお願いするね」
「ああ」
こうして話が決まったところで解散となった。
◆
翌日、バクニを除いた三人は教会区を訪れていた。
理由は単純、フブキたちが集めた情報から犯人に繋がるかもしれないものがあったからだ。
「それで? 件のシスターはここにいるのか?」
「うん。この都に教会はここだけだし、きっと何か聞けると思う」
フブキとミオが情報が得たのは昨日のこと。
二人は被害に遭っている屋敷を訪れて話を聞けば、大体は調査資料に書かれている内容と同じであった。ただ、そこに載っていなかった内容として教会のシスターが屋敷の雑務を手伝いに来ているという情報があった。わざわざシスターが何の目的でと問われれば、主にハウスメイドの手伝いをする代わりに一部の食材や古くなった衣類を貰っているようだった。
これだけなら教会の慈善活動の一環と言ってしまえば終わるのだが、被害に遭った屋敷全てに共通することが問題だった。盗まれた日付の数日前には必ずシスターが手伝いとして働いていたのだ。勿論、盗みに関与している決定的な証拠ではないし犯人だと決めつけているわけでもない。それでも僅かな可能性がある以上は調べる価値はあった。
「にしても……いい教会だな」
「そうだね。皆明るくて、楽しそう」
教会と言っても孤児院を兼ねているのか、礼拝堂の直ぐ隣の芝生では子供たちが元気いっぱいに走り回っていた。幾ら教会が営んでいると云っても孤児院が経営難になっているところは多いが、この施設は恵まれているのか、孤児たちも楽しそうで生き生きとした表情を浮かべていた。
子供たちを尻目に、礼拝堂へと入ろうと扉に近付く。
そしてデュラハンが扉に手を掛け、少しだけ引いた――。
「へへっ!」
「っと!」
一人の子供が、勢いよく飛び出してくる。
幸いにもぶつかることはなく、男の子は元気に走り去っていった。
「危な――」
「待ちなさーい!」
「ぶっ!」
「きゃっ!」
直後、デュラハンの顔に何かがぶつかる。
不意を突かれたのもあり、デュラハンは堪えきれずにぶつかってきた誰かと一緒に地面に倒れる。どうやら彼の上に覆いかぶさったらしく、視界は薄暗くなり、顔面には柔らかい感触に包まれる。ちょうど顔を両サイドからサンドイッチするように挟み込んできていて、少し動いただけで弾力のある感触が顔を刺激してくる。
「あっ♡」
デュラハンが動くと、何やら艶めかしい声が聞こえてくる。
兎に角上から退かそうと手を伸ばした彼は、反射的に触れた何か――細長く柔らかい棒のようなものを掴んだ。
「んっ、ダメぇ♡」
「ぶっ!」
そんな声と同時に、頭が抑えられる。
デュラハンがもがもがとしていると、急に覆いかぶさっていた人物が離れた。いきなり視界が開けたことで眩しさに目を細め、それから状況を確認すれば、どうやらフブキとミオが彼の上にのしかかっていた人物を引っ張り上げてくれたことで助かったようだ。
何故か二人から白い目で見られながらも、デュラハンはゆっくりと立ち上がる。
「あー……ゴホンッ。済まなかった。大丈夫か?」
「ひぅ♡ だいじょぶです……」
そこに居たのは、修道服を着た紫髪の少女だった。
年の頃は十代半ばから二十代前半ほどの幼さを感じさせる容姿をしながら、その見た目の割に胸元は大きく膨らんでいてアンバランスな魅力がある。種族は獣人、ぴくぴくと動く耳とゆっくりと大きく振る尻尾から彼女が猫系であることが分かる。どうやらデュラハンが思わず掴んだのは、彼女の尻尾だったらしい。
「「あのく君」」
見れば、目の吊り上げたフブキとミオがいた。
何故だか分からないが、彼女たちが怒っているのは分かった。
「いや、待ってくれ。誤解だ。俺は何も疚しいことをしていない!」
「へー…」
「ふーん……」
「本当だって! というか、状況的に不可抗力だろ!」
彼の叫びが、虚しく木霊する。
その後、何とか許しを得られたデュラハンは改めてシスターと話をすることとなった。
礼拝堂の入り口から併設されたべストリー、聖具室へと移動した四人はテーブルを挟むようにして座る。席順としてはシスターの向かいにデュラハンが座り、その両サイドにフブキとミオがそれぞれ座る。普段であればフブキが主体となって話すべきなのだが、シスターに勧められるまま座ったらこういう形になっていた。
シスターは深みを帯びた紫玉の髪、星を宿したような輝きを持つ紫色の瞳は特徴的だが、何よりも目を引くのは身体から大きく突き出した胸部装甲だろうか。身長で云えばフブキよりも少しばかり低いにも関わらず、その胸はミオよりも大きく見える。
「先ほどは申し訳ございません」
「こちらこそ前をよく見なかったせいで、ぶつかってしまって」
「不意とはいえ、支えられなかったのは自分の落ち度です。その、尻尾は大丈夫でしょうか」
「ええ。でも初めてでした、あんな力強く掴まれるなんて……」
「ほー……?」
「へー……?」
フブキとミオが圧強めな視線を飛ばす。
デュラハンは両側から向けられる圧力に、何の反論も出来なかった。
いくら故意でなかったとは云え、尻尾というのは獣人にとって最も敏感でデリケートな部位だ。同性でも仲の良い相手でなければ触られることを嫌い、だから年頃の獣人が尻尾に触れることを許すのは恋人や夫婦だけと相場が決まっていた。それを不可抗力とはいえデュラハンのした行為は、下手をすれば警邏に突き出されても文句は言えない。しかし当のシスターは微笑ましいものを見るように目を細めるだけであり、怒っていないどころか寧ろ喜んでいる様子ですらあった。
ごほんっと誤魔化すように咳払いをしてから、デュラハンは話を始めた。
「改めまして、こちらは魔王討伐の旅を続ける勇者様の白上フブキさん」
「こんにちわ」
「こっちは、魔法使いの大神ミオさん」
「初めまして」
「そして、俺は僧侶の牧氏あのくだ」
「これはご丁寧に。ぼく……わたしはシスターの猫又おかゆです」
互いに自己紹介を済ませると、早速本題に入る。
「それで、本日は一体どのようなご用件で?」
「実は、猫又さんにあることをお伺いしたいのですが……」
「はい、何でしょう」
「その前に、貴方はこの近辺で起こっている強盗事件についてはご存じでしょうか?」
「噂程度には耳にしています。物騒ですよね、わたしも不安で不安で……」
しなを作りながら、おかゆは不安そうな表情を浮かべる。
何故か、テーブルに置いていたデュラハンの指先に、彼女の指先が触れる。
「それで猫又さんが事件があった屋敷に手伝いをしに行っていたと聞きまして」
「まさか! わたしが、犯人だとお疑いなんですか!?」
「いえ、違います。ただ猫又さんは被害にあったお屋敷に行かれておりましたので、何か事件の解決に繋がる手掛かりはご存じないかと思い本日は参った次第なのです」
「そういうことでしたか……申し訳ありませんが、何も心当たりはありません」
「例えば、屋敷で知り得た情報を誰かに話したりしていませんか?」
「どうでしょう? お手伝いさせて頂く内容も屋敷ごとに異なりますし、近くの洗濯場でご近所の夫人と世間話もしますけど、変なことを話したつもりはありませんが、何を話したかまでは覚えてなくて……ごめんなさい」
「……そうですか」
申し訳なさそうに、おかゆは話す。
チョンチョンッと、彼女の指先がデュラハンの手に触れている。
「あの……」
「はい? どうかしましたか?」
「……いえ、何でもありません。それでは猫又さんは、怪しい人物を見ていませんか?」
「お屋敷にはわたし以外にも、日用品や食料品を納入する商人の下請けの方が出入りしてます。もしかしたら、そちらの方が何か心当たりがあるかもしれません」
「わかりました。本日は急な来訪にもかかわらず、ご対応いただきありがとうございます」
「いいえ、こちらこそ大したお話が出来ず申し訳ございません」
おかゆは悲し気な表情を浮かべる。
触れていた指先が、デュラハンの指を絡めようとしてくる。
「本日は、これにて失礼させていただきます」
そう言いながら、デュラハンは席を立ち、遅れてフブキとミオも立ち上がる。
目ぼしい情報が得られなかった以上、長居をするのは時間の無駄になる。
「では、俺たちはこれで」
「あっ、あの!」
去ろうとするデュラハンの手を、ぎゅっとおかゆは両手で掴む。
振り返れば、彼女は頬を赤くしてモジモジとしながら口を開く。
「皆様が盗賊を捕まえてくださるのですか?」
「……我々としても、現在は調査中でして。因みに猫又さんは犯人をどう思いますか?」
「そう、ですね……お金に困っているのでしょうか?」
「同じ女性として、犯人が下着を盗むことについても?」
「そういったものも、裏では高く取引されると耳に挟んだことがあります」
「……そうですか。そういえば、猫又さんは今日はお手伝いに向かわれないのですか?」
「一昨日行きましたので、数日は空けるようにしているんです」
「わかりました。では、何か思い出したことがありましたら、教えていただけると幸いです」
掴まれていた手をそっと放し、三人は教会を後にする。
おかゆから見えない場所まで来たところで、デュラハンは息を吐いた。
「ふぅ、一先ずは調査完了だな」
「その割に、随分と嬉しそうだったけど?」
「そうだね。鼻の下を、随分とのばしてたみたいだけど」
「……二人とも、何か怒ってる?」
「「別に~」」
よく分からないが、二人とも機嫌が悪い。
それに困惑しつつも、デュラハンは口を開いた。
「まぁ、彼女が嘘をついているのが分かった」
「えっ、そうなの?」
「あのく君、それは確か?」
デュラハンの発言に、二人は驚く。
「俺たちと、この国の兵士で犯人に関する情報で違う点がある。それは気付いてる?」
「えっ、そんなのあった?」
「……もしかして、性別?」
「そうだ。犯人の目撃がない為に、犯人の性別も分かっていない。だが、俺たち……厳密に云えばミオさんは一度だけ犯人を目撃している。それにより今回の泥棒が女性であることを知っている。なのに、あのシスターは俺が犯人が女性であることを示唆したのに驚かなかった。つまり、彼女は犯人の性別が『女性』であると事前に知っていたということだ」
「それじゃあ彼女が……」
「おそらく協力者、あるいは犯人そのものかもしれない」
「だったら捕まえないと!」
「ストップ」
道を引き返そうとするフブキを、デュラハンが制する。
「物的証拠でも見せない限り、白を切られるだけだ。兵士も、犯人と証明できなければ動いてはくれまい」
「じゃあ、どうするの?」
「言い逃れできないよう、現行犯で捕まえる」
「でも、いつ犯行に及ぶか分からないよ?」
「資料や屋敷の人間の話からして、彼女が手伝いと称して下身なり準備を行った二日か、三日後に犯行が行われている」
「じゃあ」
「ああ、今晩か、あるいは明日に彼女は動く」
こうして勇者一行による、窃盗犯確保の作戦が練られることになった。
◆ラインハルト・フォン・ヴァイツェン
年齢:43歳 性別:男性 身長:190㎝ 適正:大剣
装備:極光の大剣、竜鱗の鎧、大公の耳飾り
ヴァイツェン公国を治める大公閣下。
二十年前には自らも前線に赴き、仲間と共に平和のために戦った英雄。
現在は魔王の脅威、諸国との付き合いや国内の数え切れない問題に頭を抱えている。
イメージは「某帝国の総統」や「白の帝国の皇帝」になります。
民を慈しむ考えは同じだが、こちらは立場に縛られて派手に動けずにいる。
ではクリック? クラック! また今度。
フレアの立ち絵が適してる?(あるいは好み?)
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