サムライガールの幼馴染みは王様を目指す(裏) 作:ボルメテウスさん
「引っ越しね……」
母さんが申し訳なさそうに言ったその言葉が、頭の中で何度も反響する。
いつもと変わらない朝食の席。トーストの焼けた香りとコーヒーの湯気が漂う穏やかな時間。なのに突然投げ込まれた爆弾のような言葉だった。
「駒王街の支店に異動って言われちゃって……。お父さんの転勤先なんだ」
母さんの声が遠い。
つまり、もう簡単に戻ってこられないってことだ。
「太郎……」
絶花が俯いたまま、拳をぎゅっと握りしめる。
そこから、かなり悲しそうにしている絶花の顔を見るのが辛かった。
親が病院を開業するということで引っ越すことになった俺は。
荷造りをしていた。
絶花は泣き止まないでいた。
「なんでこんな事になっちゃうの!?ずっと一緒だと思ってたのに……!」
彼女の涙声が胸に刺さる。握り潰されるような痛みが広がった。
「悪い……」
謝ることしかできない自分が歯痒い。
「バカッ!」
泣き腫らした目で睨みつけてくる彼女の瞳は怒りと悲しみで揺れていた。
「太郎のせいで今日から独りぼっちになっちゃうんだよ!?私どうすればいいの……!」
嗚咽混じりの声が部屋に響く。
何も言い返せない。
幼馴染として17年間共に過ごしてきた日々が走馬灯のように過っていく。喧嘩して仲直りして笑い合って……そんな当たり前だった日常が壊れてしまう恐怖を感じた。
「ごめんな」
それだけしか言えない自分が情けなくて仕方がない。
翌日-。
家具の大半がトラックへ積み込まれた我が家は伽藍堂になっていた。
「忘れ物はない?」
母さんの問いかけにも上の空で答える。
玄関先で見送りに来た近所の人々の中にはクラスメイトも混じっていて。
皆が泣きそうな顔をしている中でも特に絶花だけは目に涙を溜めて唇を噛み締めていた。
「じゃあ行ってくるよ」
精一杯笑顔を作るつもりだったけれどきっと引き攣った表情になっているんだろうなぁと思いながら車に乗り込んだ瞬間だった。
「嫌だよぉ~!!行っちゃヤダァ~!!」
堰を切ったように号泣しながら追いかけてきた絶花を振り返ることはできず……ただサイドミラー越しにその姿を見つめることしか出来なかった……。
ガラガラ……という音を立てて窓を閉める瞬間まで絶花の叫び声は耳に残り続けた-。
引っ越し先の駒王街は落ち着いた住宅街だった。
桜並木が美しい通り沿いに建つ新築マンションの一室。
家具付き物件を選んだおかげで最低限の生活環境は整っている。あとは段ボールを開梱するだけで良いのだけれどどうにも気乗りしない。
ベランダに出て一服-なんて柄じゃないけどポケットから携帯灰皿を取り出して一本だけ火をつけた。
「はぁ……」
ため息と一緒に煙を吐き出す。
夕暮れ時のオレンジ色の光がビル群の谷間に沈んでいく様はどこか寂しげで。
まるで今の自分の心境を映し出しているようだった。
ふと見下ろせば道路を挟んだ向かい側に小学校らしき建物がありランドセル姿の子供たちが下校中のようで賑やかな声が聞こえてきた。
ああいう風景を見る度に胸が疼く。幼い頃の思い出とかそういうものじゃなくてただ単純に自分が失ってしまった何かに対する喪失感みたいなものだと思う。
「・・・こっちに来て、またすぐに2人は出張だし、引っ越した意味、あるのかな」
私はベッドの上で枕に顔をうずめながらひとりごちた。
まだ荷解きされていないダンボール箱たちが部屋の隅っこに山積みになっている。テレビ台も机もまだ買えていないから、スマホを見るのも床に寝転がってやるしかない。
引っ越しはした。住所も変わった。でもそれが本当に意味のあることだったのか疑問だった。
高校卒業まではあと数年。それまでこの街で暮らす予定だけど正直に言ってメリットよりデメリットの方が大きい気がする。
両親の職業柄、仕事が忙しいのは仕方ないことだとはわかっている。けれどこうも頻繁に出張で家を空けるとなると寂しさよりも苛立ちの方が募ってしまう。
しかも今回は海外出張。期間も長くて三ヶ月は帰ってこないらしい。
「はあ……」
再び大きなため息が出たときだった。
電話が鳴る。
気になり、見ると絶花からだ。
「……太郎?」
「おう。どした?」
電話越しでも分かるくらい絶花の声は沈んでいる。
「ううん……なんか眠れなくて」
時計を見ると夜中の2時過ぎだった。
「お前まだ起きてたのかよ」
呆れつつもどこか安心してしまう自分がいる。
「うん……だってさ……」
そこで言葉が詰まる。泣いてるんじゃないかと不安になったけどそれは勘違いだったみたいだ。
「太郎が居なくなってから毎日つまらないんだもん!」
突然の大声に思わず耳を塞ぐ。
「いきなり大きい声出すなって!ビックリするだろ!」
「だって本当のことだもん!太郎がいないと学校行く気しないし部活にも集中できないし昼休みだって退屈だし放課後遊ぶ相手いないし帰り道一人だと怖いし夜一人で寝るのだって寂しいしとにかく全部ダメ!」
一気に捲し立てられて面食らう。
ここまでストレートに言われるとさすがに恥ずかしくなってくるぞ?
「おい落ち着けって。いくらなんでも言い過ぎだろ」
宥めようと試みるも逆効果だったようでさらにヒートアップしてしまう。
「言い過ぎじゃないもん!太郎が悪いんだからね!」
「はぁ?何で俺のせいなんだよ?」
全くもって心当たりがないので反論する。
しかし次の瞬間放たれた言葉に絶句することになった。
「太郎が私を置いて行ったからでしょ!」
絶花の言葉にぐさりと刺される感覚を覚えた。確かにその通りだ。俺が引っ越すことになったせいで絶花はこれまでの日常を奪われたんだ。
「……すまないな」
素直に謝罪の言葉を述べると少し間を置いて返事が返ってきた。
「……反省してるならいいんだけどさ」
拗ねたような口調だけど声音から察するに機嫌は良くなっているようだ。
「まぁこれからもたまには電話しようぜ?」
「・・・まぁ太郎の行動力だったら、普通に遊びに来る可能性はあるけど、それでも、寂しいものは寂しいし」
絶花の声が小さくなっていった。
「まぁ遊びに行くこともあるかもな。次は夏休みだから」
現状、集まっている中で、女王が選べない為、アンケートを行います。
興味がありましたら、ぜひ。
女王は誰にする?
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アルファ
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ララ·サタリン·デビルーク
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エミリア