※この作品はR-18です。

サムライガールの幼馴染みは王様を目指す(裏)   作:ボルメテウスさん

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シスターの過去

廃教会の冷えた空気の中、アーシアの告白は続く。その細い肩が震えるたびに、金髪の縁どりが微かに光を弾いた。十字架を握りしめる指は血の気がない。

 

「……それで逃亡を続けているうちに、この人たちに利用されたのです」

 

彼女の声は枯れ葉のように脆い。しかし信仰の灯は消えていなかった。追放された身でなお、「神のご意志」と呟くその姿に胸が痛む。

 

「哀れな」

 

思わず漏れた言葉にアーシアが顔を上げる。潤んだ瞳に映るのは俺の仮面の顔だろう。

 

ウィズがゆっくりと彼女に近づく。足音一つ立てないのはリッチー故か。灰色のローブの裾が埃を払いながら滑る様は幽霊じみて美しい。

 

「アーシアさん」

 

呼びかけた声は教会の鐘楼よりも温かい。

 

「あなたの能力……悪魔や堕天使さえ癒す力は貴重です」

 

氷の牢獄に囚われた堕天使たちの怨嗟が低く轟く中で、ウィズの声だけが澄んでいる。

 

「でも『魔女』呼ばわりする教会こそ正義なのでしょうか」

 

その言葉にアーシアの顔が歪む。信仰の拠り所を否定されることへの痛みだろう。だがウィズは穏やかに続ける。

 

「かつて私も誤解されました」

 

灰色の指が自分の胸元をそっと押さえた。まるでリッチーとなった古傷を愛でるように。 「この身は死者の骸ですが魂は生きています。あなたと同じく」

 

その瞬間アーシアの目から涙が溢れた。声も立てずに泣く姿は大理石の女神像のようだ。

 

「太郎さん」

 

突然ウィズが俺に向き直る。氷の女王の顔は暖炉のように燃えていた。「彼女を守りましょう」

 

その提案に心臓が跳ねる。国王として合理的判断を求められる俺にとって予想外の選択肢だ。戦力として見るなら回復役は有用。だが王道から外れた存在だ。

 

一方で……目の前の少女の祈りに手を差し伸べたい衝動がある。アーシアの純粋さが俺の中の何かを揺さぶる。

 

「危険を冒すつもりか?」

 

ようやく絞り出した言葉にウィズは微笑んだ。

 

「リスクより良心を選ぶ日があってもいいでしょう」

 

その慈愛の眼差しは太陽よりも眩しい。骨と死霊の体で聖母のような優しさを示す矛盾が逆に鮮烈だった。

 

心に錆びた蝶番が軋む。国王として正しいのは排除すべきだと分かっている。だが……この無垢な魂を見捨てられない自分がいる。

 

最終的には諦観と共に決断するしかなかった。いや、国王という肩書きより人としての意志を選んだ結果か。アーシアが救いを求めるように俺を見上げる瞳に負けて。

 

「……まぁ、なんとかしようか」

 

肩を竦めて言うとウィズの笑みが深くなった。

女王は誰にする?

  • アルファ
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