※この作品はR-18です。

サムライガールの幼馴染みは王様を目指す(裏)   作:ボルメテウスさん

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聖剣の襲撃者

夕暮れが完全に夜に変わる瞬間、家の隙間から不快な声が響いた。

振り向く間もなく背筋が凍るような殺気が肌を刺す——反射的に身を捻ると、金属音と共にコンクリート壁が火花を散らした。一筋の銀色の光跡が闇の中に浮かぶ。

 

「おっと……まさか避けられるとは」

 

嘲笑う男が柱陰から姿を現した。白色の髪を逆立て、十字架形の槍を肩に担いだ悪魔祓いの法衣が似合わない粗暴さだ。

 

「全く、いきなり襲ってくるとはな、それで俺に一体何の用だ」

 

そうしながらも、警戒心を解かずに静かに問いかける。今にも消え入りそうな街灯の明かりが揺らめきながら二人の姿を照らしていた。どこからともなく吹く風が、薄汚れた看板のチェーンをカランカランと鳴らしている。

 

「ヒャハッ!忘れちまったのかぁ?前に魔女さんと一緒に叩き潰されたフリードだよ!せっかく手に入れたエクスカリバーですぐに殺そうとしたのになぁ!」

 

牙のような歯を見せつけながら笑う男は、床に唾を吐き捨てた。両手に握られた二本の聖剣が月光を弾いて鈍く輝く。

 

俺は眉間に皺を寄せたまま記憶を探る。

 

「……ああ、あの時の?」

 

思い当たる節はあるが、正直大して印象に残っていない。

 

「何だよその適当な態度は!!」

 

怒号と共に飛びかかるフリード。咄嗟に横へ跳ぶと、地面を抉る斬撃が路面に亀裂を入れた。

 

「別に……覚えててもどうでもいいからな」

 

淡々と返す俺に更なる罵声が飛ぶ。

 

「ふざけんなクソガキがぁ!てめぇのせいで恥かいてんだぞ!」

 

「知るか」

 

漆黒の闇が掌から滲み出すように広がった。まるで空間そのものが歪む錯覚。指先が触れる空気が重くなる。

 

「あれ?まさか逃げるつもりじゃねぇだろうな?」

 

嘲笑混じりの問いかけが耳に入るが、既に意識は別の次元へ飛んでいた。体内に潜む力へのアクセス。

 

深淵より引きずり出した刃は赤黒く脈打っていた。

 

禍々しい深紅の刀身からは粘つく黒霧が漏れ出し、周囲の街灯さえ恐怖で震えるかのように明滅する。刃紋は暗紫色の血管を思わせ、握る柄からは熱い瘴気が立ち昇った。

 

対するフリードの両手には神々しい聖剣が二振り──清浄な黄金の光を放ち、埃まみれの路地裏全体を昼間のように照らし出している。

 

それに対して、相変わらず、このアーマード・ダークネスの刀は厄介な代物だ。制御が甘ければ忽ち禍々しい力によって人間など即座に死に至る。それにまだ若い俺では完全に使うことなんて到底できない代物だが……

 

フリードの聖剣は眩しすぎるくらいの神聖な輝きを纏っているのに比べて、この刀は不気味な闇を放っているのだ。

 

「おいおいマジかよ……それが例の化け物鎧ってやつか?」

 

「流石にそこまで使うことは無理だけどな……刀なら問題は無いけどな」

 

こちらを見上げる白髪頭が怯えの色を隠せていない。まあ当然だ。本来であれば星系規模で展開されるはずだった侵略兵器の断片──アーマード・ダークネスを部分的にとはいえ取り扱う時点で常識外なのだから。

 

これまでならば、これだけで俺の中にあるエンペラ星人の血は暴走したが、少し前の1件もあり、この力だけならば制御は簡単だ。

 

フリードは顔を引き攣らせながらもエクスカリバーを構え直す。

 

「どっちにしても邪魔なんだよオイ!このクソガキィッ!!」

 

夜風が止んだ瞬間。

 

金色の閃光と暗紫の靄が交差する。

 

「死ねやぁぁぁっ!」

 

両手に握ったエクスカリバーが同時に襲いかかる。一本は上段から袈裟懸けに──もう一本は脇腹めがけて水平に。

 

反射的に振るったアーマード・ダークネスの刀が両方を受け止めた途端。

 

「グオォッ……!?」

 

凄まじい衝撃波が走る。街路樹の枝葉がばらばらと地面に落ちるほどの圧力。しかし最も異様だったのは接触部だ。

 

エクスカリバーから発せられる純粋な聖光が、深紅の刃に触れただけで焼け焦げるかのごとく燻る黒煙を上げている。

 

金属音が連鎖する。目にも留まらぬ速度で繰り出されるフリードの双剣が宙を切り裂く。その軌道に残るのは聖光の尾──いや違う。光すら追い抜く速度で生成された残像自体が質量を持ちつつあるのだ。

 

「チッ……!」

 

舌打ちと共に左足を引く。右肩をわずかに掠める銀線。続いて胸元へ迫った第二撃を刀身で受け流す。衝撃が腕骨に響いた。痺れる感覚すら置き去りにする猛攻が続く。

 

(速すぎる……)

 

思考の隙を与えない連続攻撃。街灯がフリードの動きに合わせて明滅しているように見えるほどだ。まるで多重に分裂した敵と対峙している錯覚。

 

しかし──

 

「見えている」

 

研ぎ澄ませた五感が捉える。殺気という名の毒針が突き刺さる位置を。

 

次の刹那。フリードの右側面からの斬撃に合わせて腰を落とす。滑るように地面を蹴った脚が弧を描くと同時、カウンターの刃が閃いた。

 

「うぉっ!?」

 

フリードが慌てて後退する。左頬から細く血の糸が垂れていた。予想外の一撃に歪む口元。

 

「へっ……やるじゃん」

 

「お前こそ。思ったより生きが良いな」

 

言葉とは裏腹に互いの呼吸は荒い。フリードの額には脂汗が滲み、俺のこめかみを冷たい汗が伝う。それでも構えは崩れない。闇と光が拮抗する空間で、再び鍔迫り合いが始まろうとしていた。

 

高速移動の余波で砕けた瓦礫が舞い上がる中、二人の影が交錯する。

 

「終わりだぜェ!」

 

フリードの叫びとともに渾身の一刀が振り下ろされる。直撃すれば肉片になるほどの威力。だが――

 

「遅い」

 

既に踏み込んでいた俺の刀が彼の胴へ吸い込まれていく。刹那の交差。

 

金属を殴りつける鈍い轟音。

 

「……ゴフッ!?」

 

フリードの体が大きく仰け反る。肋骨数本が折れた感触があった。追撃を仕掛けようとする俺に対し、彼は驚愕の表情を浮かべたまま距離を取る。

 

「まじかよ……俺の動きについて来れる奴なんて初めて見たわ」

 

「初歩的な話だ。速ければ必ず殺気が出る。それを読めばタイミングは計れる」

 

淡々と語る俺にフリードは嘲笑を浮かべる。

 

「だったらこれならどうだァッ!」

 

両手のエクスカリバーが唸りを上げる。先程までの倍近い速度で乱舞する金の軌跡。爆音が響き渡り、夜の帳が切り裂かれていった。

 

それに対して、俺は自分自身の腕にあるブレスレットと刀を交差させる。

 

交差させる事によって、刀には赤黒い炎が宿り始め、刀身を包む込む。

 

そして……

 

「なっ……!?」

 

フリードのエクスカリバーを受ける度に、炎の勢いが増して行き……

 

とうとう、赤黒い炎は全てを燃やす力を得てしまったのだ。

 

エクスカリバーに触れれば、一瞬にしてエクスカリバーが赤黒い炎に包まれて行く。フリードは驚きを隠せなかったが……

 

直後に火傷をするような痛みが全身に走り回る。

 

「ぐぅぅ!!」

 

苦痛の声を上げてエクスカリバーから手を離すフリード。

 

「なっ……なんで俺の剣があんな事に……!」

 

だが、エクスカリバーはそのまま地面に落ちてしまう。

 

「これがお前の限界だな」

 

俺は静かに呟きながら刀を収めていく。

 

すると徐々にだが炎は収まっていった。炎を宿していない普通の刀に戻るまで待ってから俺はゆっくりと鞘に納めていく。

 

するとフリードはこちらを見て青ざめながら後退り始めた。

 

「嘘だろ……そんな馬鹿なことがあってたまるか!!」

 

混乱している様子のフリードに向かって俺は冷静に言い放つ。

 

「さて、こんなのを用意したんだ、てめぇからは」

 

そう近づこうとした時、俺はその攻撃を感じ、それを避ける。

 

「ふむ、噂程度で聞いたが、思った以上に厄介ようだな」

 

「何……?」

 

突然、闇が蠢いた。

 

空間そのものが軋むような異質な気配。フリードの狼狽えた声が風に乗って聞こえる。

 

「ま、まさか……こんな時に出てくるのかよ……!?」

 

俺は本能的に地面を蹴った。アーマード・ダークネスの刀が自然と構えられる。漆黒の刃が夜闇の中でなお赤黒い軌跡を描いている。

 

その刹那——

 

虚空を引き裂く鋭い光条が飛来した。まるで堕ちてくる天罰のごとき正確無比な軌道。回避動作に入った瞬間、頬をかすめた灼熱の痛み。

 

「ぐっ……!」

 

顔を庇いながら後方に跳躍すると、着地点に次々と光の槍が突き立っていく。地面が穿たれ、アスファルトが蒸発する激臭が鼻腔を貫く。

 

「おいおい冗談じゃないぜ……なんだそりゃ!」

 

フリードが叫んでいる。だが彼を助ける余裕はない。この光はただの魔法ではない。もっと根源的で暴力的な何かだ。

 

だが、それ以上の攻撃はなかった。

 

「・・・逃げられたのか」

 

見れば、フリードとエクスカリバーは既に消失している。恐らく転移術式だろう。安堵の息を吐きながらも警戒を緩めない。

 

刀を降ろそうとした瞬間—

 

『次は容赦しない』

 

低く響く男の声。明らかに別人のものだ。空気そのものが震えているかのような威圧感。そして声には深い憤怒と憎悪が込められている。

 

「誰だ?出てこいよ」

 

呼びかけるが返答はない。ただ確実なのは、「見られている」という事実だけだ。肌を刺す視線が未だ消えない。

 

周囲を睨み据えるうち、遠くからサイレンの音が近づいてきた。警察車両か消防車か。騒ぎを聞きつけた民間人が通報したのかもしれない。

 

「……タイミング良すぎだな」

 

ぼやきつつも危機感を抱く。公衆の面前でアーマード・ダークネスの刀を振り回せば、どんな騒動になるか想像に難くない。刀を納めようとするが……

 

「っ!」

 

やはり刃そのものが禍々しく脈動している。完全制御できるとは限らない力だ。特にさっきの光の槍は尋常ではなかった。堕天使の業火に等しいエネルギー量。

 

「とりあえず撤収だな」

 

刀を布で包み、素早くビルの屋上へ駆け上がる。眼下では人々が集まり始めていた。野次馬の喧噪を背に闇夜へ飛び出す。

 

あの声の主—コカビエルの名前が脳裏を過る。フリードごときに執着する理由はない。だが今回は明らかに違う。狙われたのは俺自身だ。

 

「面白くなってきたな」

 

独りごちた呟きは夜風に溶けていった。だが心中は穏やかではなかった。まだ夜は終わらない。寧ろ本当の戦いはこれから始まるのだと直感していた。

女王は誰にする?

  • アルファ
  • ララ·サタリン·デビルーク
  • エミリア
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