サムライガールの幼馴染みは王様を目指す(裏) 作:ボルメテウスさん
グラウンドは血と魔力の残滓に覆われていた。魔方陣の青白い光が地面を這い、リアスたちの影を歪ませる。朱乃の金髪は煤け、羽は半分以上が失われている。腕は力なく垂れ下がり、肘から先は無残に炭化していた。
「くっ……まだだ……」
リアスが剣を支えに立ち上がろうとするが、片膝が崩れる。腹部から流れ出る血が彼女の衣服を赤黒く染めていた。隣では木場が肩口から出血し、青ざめた顔で息を荒げている。小猫は瓦礫の陰で震え、肩から胸にかけての大怪我で呼吸すらままならない様子だ。
唯一の救いはアーシアの治癒魔法による応急処置だけだが……
対峙するコカビエルは悠然と宙に浮かんでいる。漆黒の翼が風もなく広がり、周囲の光を飲み込むように揺らめく。右手に握られた光槍から溢れるエネルギーが大気を歪ませる。
「どうした?その程度か」
嘲りを含んだ声が降ってくる。六枚の翼が威嚇するように広がり、青白い雷光が閃く。その背後では巨大な魔方陣が地面いっぱいに展開し始めていた。直径百メートルを超える魔法陣が校舎全体を覆い尽くす勢いで拡大していく。
「あと十分でこの街は消し飛ぶ。私一人を相手に時間稼ぎすらできぬとはな」
コカビエルの嘲笑が校庭に響く。リアスたち全員が身動きできない状況を見据えながらも、彼はわざと魔法陣の最終段階を遅らせているのだ。獲物が死に際に藻掻く様を楽しむ狩猟者の目つきだった。
魔方陣から放射される青白い光が徐々に強まり、上空の雲を掻き消していく。その中央には禍々しい紋章が浮かび上がり、刻一刻と文字列が完成へと近づいていた。
「グレモリーのお嬢様……最後まで観衆役を務めさせてやろう」
金属と金属が擦れる甲高い音が夜の闇に響き渡る。重厚な鋼鉄の足音が一歩ずつ近づく度に地面が微かに震えた。月光が雲間から洩れ、その光条がゆっくりと闇の中の輪郭を照らし出す。
最初に現れたのは両腕を覆う巨大な手甲。暗闇に浮かぶ黒曜石のような装甲が月光を受けて紫紺の煌めきを放つ。指先の三本の爪が虚空を切り裂くように開かれる。
次に現れたのは腰から下の下半身。膝から爪先まで伸びる装甲板が規則正しい金属の輝きを放つ。歩行するたびに関節機構がギシリと軋み、漆黒の装甲が月光を不気味に反射する。
そして胸部装甲が月光の中に浮かび上がる。心臓部に埋め込まれた紫水晶が怪しく脈動し、内部から青白い光が漏れている。こ
最後に現れた頭部装甲。目の部分には赤く光るレンズが埋め込まれており、それがゆっくりと焦点を合わせていく。口元を覆うマスク部分には牙のような棘が並び、その形状は古代の生物兵器を思わせる。
全身を覆う漆黒の鎧は月光の中でわずかに紫色の光沢を帯びている。各部の接合部分には蒸気のようなものが噴き出し、装甲内部から低い唸り声のような機械音が響く。
「なんだっこれは」
「一体」
その姿を見た全員は驚きを隠せなかった。
アーマード・ダークネスの事を知らない一同にとって、そこから溢れ出る闇はコカビエル以上の絶望を与えてしまう。
「この鎧は……」
「おいおい、なんだこの鎧は!」
コカビエルは嘲笑を止めた。眼下に立つ漆黒の巨躯を見下ろす瞳が細くなる。
「ほう……人間如きがその姿を選ぶか」
太郎は無言で右腕を前に突き出した。指先から滴るような闇が地面に落ち、そこで漆黒の波紋が広がる。校庭の芝生が波紋に触れた瞬間、腐食するように枯れていく。
「ならば試してやろう。お前の底力を」
コカビエルの手元で光槍が膨張する。魔方陣の完成まで残り九分三十秒。勝利を確信していたはずの堕天使が初めて眉間に皺を寄せた。
「面白い。その鎧がどれほどのものか──」
言葉の途中で、突然太郎の肩部装甲が砕け散った。紫水晶が青白い光を撒き散らしながら粉々に割れる。破片が月光にきらめきながら落下する中、露出した金属フレームから黒煙が噴き出した。
「うっ……」
呻き声と共に膝をつく太郎。頭部装甲の赤いレンズが不安定に明滅する。全身から聞こえる金属疲労の音と蒸気漏れの悲鳴。
「なんだ……このままじゃ……」
弱々しい独白が兜内部から漏れる。周囲の生徒たちが呆然と見守る中、アーマード・ダークネスの巨体がゆっくりと傾いていった。月光を遮るように倒れる影が校庭に長い尾を引く。
残されたのは破損した漆黒の鎧と、その内側から溢れ出す漆黒の液体だけだった。
その闇はまだ蠢いていた。
「面白い……本当に面白いぞ」
コカビエルの唇が吊り上がる。破壊されたアーマード・ダークネスの残骸を見下ろす堕天使の瞳に、新しい愉悦の色が灯る。
「これほどの力を持ってなお制御できないとはな」
砕けた金属片から滲み出る闇が地面を侵食していく。校庭の隅で木場が息を飲む音が聞こえた。
「しかし安心しろ。その苦しみもすぐに終わる」
女王は誰にする?
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アルファ
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ララ·サタリン·デビルーク
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エミリア