サムライガールの幼馴染みは王様を目指す(裏) 作:ボルメテウスさん
冥府の主が放つ漆黒の威圧感が肌を刺す。冷たく乾いた空気が肺の奥まで侵食してきた。
「――グリムの噂は聞いていた。まさかその連れが人間とはな」
骸骨の帝王が低い声で嗤う。黄泉の底から湧き上がるような嘲笑だった。
「太郎といったか?」
「あぁ。あなたの領土に勝手に入って申し訳ありません」
素直に頭を下げる。下手に出るのが最も効率的だと知っている。
「用件を聞こうか? この死の領域で人間にできることなど限られているはずだが」
ハーデスの背後で瘴気が渦巻く。あの魔獣を従える冥王がこんなにも無防備に座しているのは計算なのか偶然なのか。いずれにせよ好都合だ。
「ひとつの案件でお呼びしたいのです」
「ほう?」
「これから起きるだろう数多くの事実。それを冷静に審理してくれる者が必要でしてね」
ハーデスの眼窩に揺らぐ蒼炎が僅かに燃え上がる。この男は退屈を嫌う。面白い祭りの匂いには敏感なのだ。
「俺に《調停役》になれと?」
「ええ。あなた程の公平性は地上では得難いものです」
嘘ではない。悪魔派閥にはサーゼクス、天使派閥にはガブリエルがいるが、いずれも政治的偏見を完全には拭えない。それに比べれば冥府の主は理想的だった。命に序列をつけない平等さこそ彼の本質だ。
「ふむ……愚かな人間どもが三つ巴で争い合う様を楽しんでいるところだが?」
「それ故に都合が良いんです。傍観者として距離を保ちつつ」
「……俺が《贔屓》する可能性は考えないのか? たとえば天国側へ肩入れしたり」
ハーデスの嗤いが濃くなる。しかしそれは単純な脅しではなく純粋な疑問の色が見えた。俺の真意を測る探りだ。
「その時は全力で止めますよ」
「ほう?」
「あなたなら分かるはず。三竦みのバランスが壊れた後の混沌を。俺が動かなければ最終的にはあなたにとっても利にならないでしょう?」
虚勢を張る。
「……面白い」
ハーデスは突如として椅子から立ち上がった。骨の指先から黒い閃光が走る。それは空中で蛇のように蜷局を巻き俺の喉元で停止した。
「ならば己の命を賭けて誓え。この判決が誤りだった場合、お前が償いを果たすと」
「……誓います」
迷わず答えた。代償は覚悟の上だ。
「よかろう。冥府の秤と杯を以て裁定してやろう」
ハーデスが掌を翳す。指先に浮かぶ六芒星が冥界の闇へと融け込んでいく。
「条件を一つ追加だ。この判決には双方の当事者を必ず召集すること。特に――」
「“被害者”として名乗り出るであろう妹も含めて?」
ハーデスの炎がわずかに揺れる。さすがだ。情報網は確実に掌握している。
「察しがいい。賢い子供は好きだ」
そうして、俺は息を吐く。
「それにしても、お前の中に何があるんだ?これまで感じた事のない何かが」
「・・・それは、俺も知りたい所ですけどね」
女王は誰にする?
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アルファ
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ララ·サタリン·デビルーク
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エミリア