サムライガールの幼馴染みは王様を目指す(裏) 作:ボルメテウスさん
「お疲れさま」
グリムの声が背後から響く。振り返らずとも分かる。彼女の目は半目で相手を射貫くように睨みつけているに違いない。
「どうでもいいが、お前は随分と肝が据わってるな」
冥界から抜け出す途中で投げかけられた言葉は冷ややかだった。だがそれは責めるというよりただの観察だということを俺は知っていた。
「怖いものは怖いさ。けど仕方ないだろ」
「……仕方ない?」
「ああ。今の世の中だぜ?生き延びるためなら悪魔だろうが死者の王だろうが利用するしかない」
グリムの表情が読み取れない。赤頭巾が彼女の顔を覆っているせいもあるが、そもそもこの女は感情を容易に見せない。
「ふーん」
ベッドに横たわった瞬間、全身の力が一気に抜けた。天井がぐるりと回るような酩酊感。ハーデスとのやりとりで張り詰めた神経が一気に弛緩していく。
「太郎」
すぐ横から降ってくる声。目を上げると赤頭巾が目の前にあった。
「……何だ?」
「身体が強張ってるぞ」
彼女の細い指先が首筋に触れた。ぞくりとした寒気とも快感ともつかない衝撃が背筋を駆け抜ける。
「ちょっ!? グリム!?」
慌てて起き上がろうとしたが遅かった。既にグリムの掌は俺の右肩をしっかりと押さえ込んでいる。
「動くな」
その声はいつも通り低く平坦だったが、どこか有無を言わせぬ迫力があった。
「冥界の瘴気に当てられたんだろう。放置すれば明日には使い物にならなくなる」
グリムの指先が首筋から鎖骨へと滑っていく。その動きは医療行為のように正確無比なのに、奇妙なほど温かい。まるで熟練した整体師のような確かな技術だ。
「お前……こういうこともできるのか?」
「当然だ。生存のためなら知識は惜しまない」
淡々と言うが、その言葉に説得力があった。実際に彼女の指が触れた部分から徐々に凝りが解れていくのがわかる。
「ところで」
不意に彼女の声が近くなった。グリムが覆い被さるように俺を見下ろしている。赤頭巾の隙間から覗く碧眼が刃のように鋭い。
「今のお前の大胆さは疲労ゆえか? それとも本心か?」
「……何の話だ?」
「ハーデスに正面切って裁定を求めるなど。お前の性格ならもっと慎重に駆け引きをするだろう」
図星だった。確かに疲れていた。疲れていたからこそ無謀な一手を打ってしまった。あるいは──
「わからない」
「ふん。まあいい」
グリムの目元がほんの少し緩んだように見えた。
次の瞬間。
「んっ……!」
左肩を鈍く圧迫されて思わず声が漏れる。痛みではなく、長らく蓄積された疲労が解放される爽快感だ。
「やはり凝っているな。背中全体を揉みほぐすぞ」
宣言と共に彼女の指が背骨に沿って降りていった。布越しでも感じられる彼女の体温。冷徹な言動とは裏腹に存外に温かいことに戸惑う。
「……グリム」
「喋るな。集中が途切れる」
命令口調なのに妙に優しい声音。彼女の指圧が腰椎へと辿り着くと、溜まった老廃物が洗い流されるような解放感が全身を包んだ。
「…………」
無言のうちに施術は続く。時折布地が擦れる音だけが室内に響く。赤頭巾の一部が俺の胸板にかかってくすぐったい。しかし抵抗する気力もない。
不意に彼女の右手が脇腹に触れた。
「っ……!」
反射的に跳ねる身体をグリムが軽く抑え込む。
「動くなと言ったはずだ」
叱責めいた声色なのに、その手付きは驚くほど優しい。まるで壊れ物を扱うかのように。
「悪い……なんか擽ったくて……」
言い訳しながらも内心では別の理由を探している自分がいた。単なる按摩にしては近すぎる距離感。グリムの香水のような香りが鼻腔を掠める。理性の壁が少しずつ削られていく。
「ここも相当強張っている」
彼女の指が肋骨の縁をなぞるように動く。その軌跡に合わせて脈拍が加速していくのが自分でもわかる。
「お前……狙ってやってるわけじゃないよな?」
冗談めかして言ったつもりだったが、返ってきたのは意外な静寂だった。
「…………」
沈黙に耐えきれず振り返ろうとした刹那。
「!」
背中に覆い被さる重み。グリムの小さな身体が俺の上に載っていた。赤頭巾の布地が汗ばんだ肌に張り付く。
「静かにしろ」
耳元で囁かれる冷たい声。その直後に腰椎へと掛けられる強い圧。痛みと快感の境界線上で神経が麻痺しそうになる。
覆いかぶさる重みの中、彼女の吐息が首筋にかかる。湿った呼気が皮膚を這う感触に背筋が震えた。
「おい……何する気だ」
声がかすれた。答えはない。代わりに赤頭巾の端が揺れて、露わになった彼女の顔が目前に迫っていた。
半目の碧眼が細められ、長い睫毛の奥で微かに潤んでいる。その瞳に吸い込まれそうになる。普段の冷徹な光が今は柔らかく溶けていた。
「黙っていろ」
冷たく言い放つと同時に、彼女の唇が俺の唇を塞いだ。
「んむっ……!」
柔らかな粘膜が押し当てられる。その感触は驚くほど滑らかで温かい。医療行為などという建前を忘れるほど濃厚な味わいが口腔に広がる。
舌先が探るように入り込んできた。滑らかな表面が歯列をなぞり、俺の舌を探り当てる。絡みつく水音が耳朶を濡らす。
「ふ……っ」
呼吸を奪われた状態で喉の奥から声が漏れる。彼女の腕が後頭部を固定し逃げ場を与えない。細く華奢な指が銀髪を梳くように蠢いた。
唾液が絡まり合って溢れ出し、顎を伝って枕を汚していく。生理的な熱が急速に下半身へ集まり始めた。
「……っ」
唇が離れた瞬間、銀糸のような橋が二人の間に架かる。その艶めかしい光景から目が離せない。
「治療の一環だ」
彼女は淡々と言い放つが、頬が微かに紅潮しているのを見逃さなかった。だが追求する暇もなく、次の指圧が始まった。
彼女の小さな掌が背中のツボを一つ一つ押していく。通常の按摩なら痛みを感じるはずだが、先ほどの口づけの余韻が残る神経は刺激を快楽として受け取ってしまう。
「あっ……」
不意打ちのように声が漏れた。脊椎に沿って走る痛みと疼きの境界線が曖昧になる。そのたびにグリムの指が止まり、もう一度そこを押し込む。
「敏感になっているな」
嘲るような口調だが、声には抑制された熱が滲んでいた。彼女の吐息が背中にかかるたびに肌が粟立つ。
「当たり前だろ……こんな……」
抗議の言葉は途中で遮られた。今度は首筋へと口づけが落とされたのだ。軽く吸われただけなのに電流のような快感が走る。
「声を上げるな」
命令口調なのに声量は驚くほど小さく、囁きに近い。そのアンバランスさに思考が鈍る。
彼女の指先が肩甲骨の間に潜り込み、親指でぐっと押し込んだ。
「っあぁ……!」
意図せず喘ぎが溢れた。同時に臀部への刺激も加わり、拘束衣の中で自己主張が始まっている。
「こちらも解しておくぞ」
宣告と同時に赤頭巾の下から伸びてきた指が、ゆっくりと布地の上から輪郭をなぞり始めた。
「おい待て……そこは……」
制止の言葉も虚しく、彼女の指先が布越しに円を描く。焦らすような動きに先走りが滲み出てしまう。
「水分不足の症状だ」
言い訳じみた診断を下しながら、彼女の手の動きは止まらない。裾から侵入してきた掌が直に肌に触れた。
「っく……!」
その温度差に反射的に身体が跳ねた。グリムの体重が上半身を抑え込み逃げ場を失う。細く整った爪先が鼠蹊部をなぞり、確実に弱点を炙り出していった。
「あまり動くな」
耳元で低く警告され、その声質が何故か甘美に響いた。彼女のもう片方の手が背後から胸元へと滑り込む。
「治療とはいえ……これは……」
弁解しようと開いた口に再び彼女の唇が覆い被さった。今度は最初から激しく貪るような口づけ。舌が絡み合う水音と互いの荒い息遣いだけが部屋に満ちる。
唾液を飲ませるように注ぎ込まれる液体が喉を通るたびに体内から熱が膨れ上がった。
「まだ……終わっていない」
彼女は唇を離さないまま呟いた。その間も下半身への刺激は続いている。焦らすような撫で回しから徐々に掌全体を使って扱く動きへと変わる。
「っ……ぅあっ……」
堪え切れず呻き声が漏れる。彼女の吐息が乱れ始めた。
「集中しろ」
そう言いながらも彼女の手指の動きはさらに巧妙になっていく。根元から先端へと搾り取るように上下する動作と同時に、裏筋への細かい摩擦が加わった。
「ぐりむ……っ…やめ……」
制止の言葉は途中で飲み込まれた。彼女の口づけがさらに深くなり言葉を奪う。同時に腰骨へと掛かる圧迫も強まり逃げ場がなくなった。
「ぁああ……!」
限界を迎える寸前で彼女の指が僅かに緩んだ。放熱を促すような穏やかな撫で回しに変わり、放出の兆候を逸らされる。
「まだだ」
命令口調に混ざる微かな震え。グリム自身も平静を装っているが興奮しているのは明白だった。
「なぜ……ここまで……」
困惑と欲求が入り混じった呟きに彼女は答えない。代わりに尻肉へと指が食い込んだ。弾力を確かめるような指圧が何故か前立腺へと連動し意識が飛びそうになる。
「治療だからな」
短く言い切りながらも彼女の動きは明らかに医学的範疇を超えている。赤頭巾の下から伸びる腕が増え、複数箇所への同時刺激が始まった。
首筋への口づけと手技がシンクロして波紋のように快感が全身へ広がる。自制心が瓦解していく感覚。
「太郎……」
初めて呼ばれる自分の名前が媚薬のように脳髄を浸す。その瞬間を待ち受けていたかのように、グリムの掌が強く握り込み、同時に首筋を強く吸い上げた。
「っ……!」
濁流のような奔流が下半身から噴出した。迸りを受け止めるグリムの手つきは冷静で無駄がない。放出の最中も指の動きは止まらず最後の一滴まで搾り取っていく。
「終わったぞ」
処置完了を告げる彼女の声は平然としていた。しかし襟元から覗く首筋が熱っぽく朱に染まっているのを俺は見逃さなかった。
荒い呼吸を整える俺を尻目に、彼女は床に落ちていた赤頭巾を拾い上げて羽織り直す。いつもの淡泊な佇まいを取り戻しているようだが……
独り言のように呟かれたその言葉が決定打だった。彼女の視線が一瞬だけ泳ぎ、すぐにいつもの半目に戻る。
「……また必要があれば呼び出せ」
そう言い残して踵を返す背中に向かって俺は何も言えなかった。ただシーツに残る生々しい痕跡と彼女の残り香だけが先ほどの出来事が現実だったことを証明していた。
グリムが去った後も鼓動は速いままだ。赤頭巾の赤い色彩が瞼の裏に焼き付いて消えない。あれが本当の"治療"なのか否か──そんなことを考える余裕すら奪うほどの熱がまだ身体中に渦巻いていた。
女王は誰にする?
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アルファ
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ララ·サタリン·デビルーク
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エミリア