サムライガールの幼馴染みは王様を目指す(裏) 作:ボルメテウスさん
黒歌の瞳が揺れる。月明かりに照らされた彼女の顔は儚く脆い硝子細工のようで、今にも砕け散ってしまいそうだった。
「……うん」
か細い返事が震えていた。
俺の指が黒歌の肩に触れた瞬間、彼女の全身が硬直するのが伝わってくる。過去のトラウマがまだ鮮明に刻まれているのだ。
「怖がらなくていい。今日はただ話を聞きに来ただけだ」
優しく囁きかける。だが自分の言葉があまりにも空虚に響いて虚しくなった。
彼女は俯いたまま唇を噛み締めている。牙のように尖った犬歯が柔らかな口唇を裂きそうで危うく見えた。
「私の罪を……もう一度掘り返すの?」
搾り出すような声が夜気を切り裂く。そこに込められた無数の痛みが胸を抉った。
「そうだ」
即答せざるを得なかった。甘やかすことで彼女を救うことなどできない。むしろ傷口を広げるだけだと分かっていたからだ。
「だって……私は白音を……」
続く言葉が霧散する。彼女の黒い尾が床を叩くように揺れ動いた。激しい感情の波に抗おうとする本能的な仕草だ。
「知っている。だからこそここで向き合わなければならない」
俺の声が冷たすぎる。それを自覚していても感情を曝け出すことができなかった。彼女を救うためには冷静さを保たねばならない。
黒歌が顔を上げた。その瞳に映るのは恐怖と諦念と、ほんの僅かな希望の欠片だ。
「妹との暮らしを捨てる覚悟はあるか?」
訊ねた瞬間、彼女の表情が歪む。瞳孔が大きく開き、顎が小さく震えた。まるで世界の終焉を告げられたかのように。
「そんなこと言われたら……わたし……どうしたらいいの……?」
嗚咽混じりの囁きが宙に溶けた。彼女の背中が丸まり始める。長く伸ばした黒髪が瀑布のように垂れ下がり顔を覆い隠した。
黒歌の爪が無意識に床を掻く。鋭い鉤爪が木材を抉り火花が散った。それは怒りなのか哀しみなのか定かではない。
「時間が欲しいよね」
「……うん」
かすれた声で黒歌が答える。その間も俺の視線は彼女から離れなかった。逃げ場を奪うようで心苦しいが大切な局面なのだ。
「じゃあ」
一歩近づくと黒歌の全身が強張る。距離を詰められるのを恐れているのだ。彼女の本能が攻撃されるという幻想に囚われている。
「これが最後のチャンスになるかもしれない」
言い切った言葉に黒歌の首が微かに上下した。ほとんど確認できない程度の動きだ。
「……わかった」
長い沈黙の末に絞り出された承諾。その響きは枯れ枝が折れるように脆く弱々しかった。
「・・・どちらしても、分かっていた事だから、あの時から」
「黒歌」
「それを、こうした形でも良いからしてくれた太郎には感謝している。だけど、もしもの時は一緒にいてくれる」
その言葉に対して、俺は。
「あぁ」
そう、返事する事しかできなかった。
女王は誰にする?
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アルファ
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ララ·サタリン·デビルーク
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エミリア