サムライガールの幼馴染みは王様を目指す(裏) 作:ボルメテウスさん
法廷の大理石床が足裏を冷たく叩く。数百年前に建設された悪魔専用裁判所の内部は荘厳な彫刻に彩られていたが、今ここに漂うのは張り詰めた敵意だった。
「被告人黒歌。前へ」
低く轟くハーデスの声が石壁に反響する。その髑髏の仮面から漏れる仄暗い光芒が黒歌の怯えた瞳を捕らえた。彼女は漆黒の着物の袖を震える両手で握りしめている。
「人間風情が我ら悪魔の審判を汚すか」
前列に陣取る冥界貴族が唾棄するように呟いた。その首に吊るされた宝石が権威の象徴であるかのように不気味に輝いている。彼らの背後では数千の視線が黒歌へ突き刺さっていた。
「貴公等の法廷は既に機能不全だ」
俺は無慈悲に言い放った。太い革靴のヒールが床を砕くような音を立てて進む。
「悪魔の駒を使い眷属悪魔を玩具扱いするのは見過ごせない」
「我らの内政干渉を許すと思うか?」
老いぼれ悪魔の大法官が杖を突き立てる。腐朽した木製の柄が軋む音が虚しく響いた。
「なら試してみろ。冥府の秤に逆らえばどうなるか教えてやる」
俺の足取りが加速する。外套の裾が翻り周囲の視線を灼熱で焦がすようだった。
「待てッ!」
大法官の制止の叫びを無視して黒歌の隣に立つ。彼女の震える肩が微かに寄り添ってきた。
「これより公開裁判を開始する」
ハーデスの宣告が空間を震わせた。黄泉の炎が検事席と弁護席を囲むように立ち昇る。地獄の王の威光に圧倒され貴族たちが一斉に沈黙した。
「まず事実確認だ」
俺は懐から水晶板を取り出した。黒歌が殺害した上級悪魔の生前の犯行記録が収められている。
「被告人黒歌は主君を弑逆したわけではない」
「証拠は!」
反論する検事が玉座に近づこうとした瞬間、ハーデスの蒼炎が検事の足元を舐めた。憤怒の咆哮を上げる検事の膝が震えている。
「見ろ」
水晶板に映し出された映像が宙に投影される。そこには地下実験室で怯える黒歌の妹──塔城小猫の姿があった。鎖で拘束され"駒"に繋がれた無数のケーブルが少女の身体を蝕んでいる。
「禁断の改造だ」
老練な悪魔審問官が呻くように呟いた。
「悪魔の駒で人間以下の生物を超越種に変換する試み……倫理違反の極致だ」
「まさかナベリウス家分家がこれほどの蛮行を?」
貴族たちが互いを見合わせ始めた。一族の名誉が地に堕ちる恐怖に顔色を失う者もいる。
「まだある」
俺は二枚目の水晶板を掲げた。映像には実験データ改竄の証拠が綴られていた。
「被験者は全て死亡。それでも研究は続けられた」
貴族たちのざわめきが一層大きくなる。「我が家の財源だった筈だが」「責任問題になるぞ」と囁き合い始めた。
「偽証罪の適用も辞さない」
俺は淡々と続けた。太陽系外縁から届くような冷酷な視線を周囲に浴びせる。
「更に此処に証人がいる」
振り返ると黒歌が覚悟を決めた表情で一歩踏み出した。艶やかな黒髪が法廷の灯りを浴びて虹色に煌めく。
「私が──妹を守る為に手を汚しました」
凛とした声が静寂を破った。彼女の背筋がピンと伸び美しい立ち姿を見せている。
「けれど悪魔の駒が壊れたのも研究データの消失も全部嘘でした」
涙ぐんだ瞳が映し出す情景は惨憺たるものだった。
「悪魔に救いを求めた私は愚かでした」
黒歌の絶叫に似た嘆願が石壁に反響する。涙で霞む視界の向こうで貴族たちが狼狽していた。
「証拠は揃った。ハーデスさん」
俺は裁判長席に向かって告げた。青銅色の頭蓋がゆっくりと振り返る。冥府の神は無言のまま指を鳴らした。地獄の底から湧き上がる焔が天井高く噴き上がり荘厳な光景を作り出す。
「悪魔共よ耳を貸せ」
冥王の声が雷鳴のごとく響き渡った。
「被告人黒歌は被害者であり正当防衛成立である」
地獄の鉄槌が下された瞬間だった。貴族たちが悲鳴を上げる。
「更に眷属悪魔虐待および人体実験に関しては悪魔側に重大な瑕疵あり」
老若男女問わず悪魔貴族たちが膝から崩れ落ちる。財産没収どころか爵位剥奪もあり得る極刑宣告だ。
「黒歌の身柄は教会預かりとする」
冥王が黒歌に目を向けた。「その方が安心だろう」と言外に伝えている。
「異議ありッ!」
悪魔王派の代表が喚いたが地獄の門番が現れて鎮圧する。黄泉の炎に焼かれ黒煙を上げながら退場する醜態が晒された。
「太郎……」
黒歌が涙を拭いながら俺を見つめた。彼女の瞳は朝日に照らされる水面のように輝いている。
「良くやった」
俺は微笑みかけた。法廷の空気も和らいでいる。これで一件落着だ。
「だがまだ終わりじゃない」
ハーデスの低い呟きが会場に響き渡った。「今回の事件は氷山の一角だ」と続けると悪魔貴族たちが凍りつく。
「すべての真相を暴くまで裁判は終わらない」
冥王の宣告に一同が慄然とした。それは新しい闘争の幕開けを意味していたのだ。
女王は誰にする?
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アルファ
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ララ·サタリン·デビルーク
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エミリア