※この作品はR-18です。

サムライガールの幼馴染みは王様を目指す(裏)   作:ボルメテウスさん

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オーディンの問いかけ

 オーディン――さっきまで爺さん呼びしていた男は、杖を軽く鳴らしながら言った。

 その声音には、もはや冗談めいた軽さはない。

 

「儂がこの地に来た理由は一つ。

 お主が、どのような“王”になるのかを見るためじゃ」

 

 空気が張りつめる。

 だが、俺自身は不思議なほど落ち着いていた。

 

「……それだけか?」

 

 自分でも驚くくらい、声は平坦だった。

 “王”という言葉は、今の俺にとって珍しいものでも、否定したくなるものでもない。

 

 オーディンは片目を細め、楽しそうに笑った。

 

「ほう。動じぬか。

 大抵の者はそこで膝を折るか、虚勢を張るかのどちらかじゃが」

 

「俺は、王になるために生きてるわけじゃない。

 ただ、成り行きでそう見られてるだけだ」

 

 事実だ。

 俺は誰かの上に立ちたいわけじゃないし、支配したいとも思っていない。

 必要だから動いてきただけだ。

 

 そのやり取りを聞いて、ロスヴァイセが深いため息をついた。

 

「……オーディン様。

 またそうやって、人を勝手に試すようなことを……」

 

 呆れた声。

 怒りよりも、諦観が勝っている。

 

「若者を“王になるかもしれぬ存在”などと呼び、勝手に見定める。

 それがどれほど失礼なことか、分かっておられるのですか?」

 

「分かっておるとも」

 

 オーディンはあっさり答えた。

 

「だがなロスヴァイセ。

 儂は北欧を預かる神じゃ。未来を見ぬわけにはいかん」

 

 そう言って、俺に視線を向ける。

 

「太郎。お主は“王になる器”を持つ。

 それが覇王か、守護者か、それとも破滅を招く王か――

 それを見極めるために、儂は来た」

 

「……なるほど」

 

 だから最初から話しかけてきたわけか。

 妙に距離が近かったのも、雑談が多かったのも。

 

「それと、もう一つじゃ」

 

 オーディン様がニヤリと笑う。

 

「北欧との繋がりを強くするために、

 ロスヴァイセをお主に勧めるのは、本気じゃぞ?」

 

「オーディン様ッ!!」

 

 ロスヴァイセが即座に声を荒げた。

 

「なぜ、なぜそういう話になるのですか!?

 私は“政治的な駒”ではありません!」

 

「駒などとは言っとらん。

 ただ、優秀で、真面目で、少々不器用なヴァルキュリーが、

 未来の王の隣に立つのは悪くないと思っただけじゃ」

 

「それが余計なお世話だと言っているのです!!」

 

 ロスヴァイセの怒りが、さっきよりもはっきりとした形で噴き出す。

 羞恥ではなく、純粋な憤りだ。

 

 俺は二人の間に視線を走らせ、軽く息を吐いた。

 

「……なぁオーディン様」

 

「なんじゃ?」

 

「俺はまだ、王でも何でもない。

 それに、人を“繋がりのため”で選ぶ気もない」

 

 ロスヴァイセが一瞬、こちらを見る。

 驚きと、ほんのわずかな安堵が混じった表情。

 

「ただ」

 

 俺は続ける。

 

「もし北欧と関わることになるなら、

 それは“俺自身が納得した結果”であってほしい」

 

 オーディン様はしばらく黙り込み――

 やがて、楽しそうに笑った。

 

「ふぉっふぉ……やはり面白い男じゃ。

 よいぞ太郎。ますます見届けたくなったわ」

 

 ロスヴァイセは頭を抱えた。

 

「……本当に、この方は……」

 

 呆れながらも、なぜか少しだけ視線を伏せている。

 

(……ややこしいことになってきたな)

 

 だが同時に、はっきりした。

 この爺さん――オーディンは、本気で俺の“行く先”を見ようとしている。

 

 逃げ場は、もうなさそうだ。

女王は誰にする?

  • アルファ
  • ララ·サタリン·デビルーク
  • エミリア
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