※この作品はR-18です。

サムライガールの幼馴染みは王様を目指す(裏)   作:ボルメテウスさん

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ラグナロク

「では太郎よ、試練を与えよう」

 

 オーディン様は杖を軽く鳴らし、空を見上げた。

 その視線の先には、まだ何も起きていない――はずの平穏な空がある。

 

「王とはな、座して選ばれるものではない。

 災いに晒された時、どう立つかで決まる」

 

「……随分、抽象的だな」

 

「近いうち、この地に“騙し、嘲り、混乱を楽しむ神”が現れる」

 

 その言葉に、ロスヴァイセの表情が強張った。

 

「まさか……オーディン様、それは……」

 

「うむ。名は出さぬがよい。

 狡猾で、戯れ好きで、だが決して侮れぬ北欧の神じゃ」

 

 ――ロキ。

 口に出さずとも、答えは明白だった。

 オーディン様はそう前置きして、杖に体重を預けた。

 声は低く、どこか苦々しい。

 

「他の神話と手を組む? 共存する?

 ロキはそういった“秩序的な妥協”を、心底嫌っておる」

 

 俺は黙って聞いた。

 さっきまでの冗談めいた雰囲気は完全に消えている。

 

「奴にとって異なる神話は、対話の相手ではない。

 踏み込むべき領土であり、壊すべき価値観じゃ」

 

「……侵略思想、ってことか」

 

「近いな。だがもっと厄介じゃ。

 ロキは戦争をしたいのではない。

 “世界が混ざり合うこと”そのものを否定しておる」

 

 混ざり合う、か。

 

 異なる神話。

 異なる信仰。

 異なる正義。

 

 確かにこの世界は、それらが無理やり同じ場所に押し込められている。

 

「特に奴が憎んでおるのが――」

 

 オーディン様は一拍置いた。

 

「聖書の神じゃ」

 

 ロスヴァイセの肩が、わずかに揺れた。

 

「北欧の土地に、別の信仰が根付いた。

 神の名が書き換えられ、祈りの向きが変わった。

 ロキはそれを“侵略”と捉えておる」

 

 なるほどな……。

 

 北欧神話の世界に、

 天使だの悪魔だの、聖書体系の存在が入り込んでいる現状。

 

 それを“世界が広がった”と見るか、

 “縄張りを荒らされた”と見るか。

 

 ロキは後者だ。

 

「だから奴は考える。

 交渉ではなく、同盟ではなく――攻め込むべきだと」

 

 オーディン様の視線が、俺に向く。

 

「聖書の神を中心とした秩序を崩し、

 世界を再び“混沌”に戻す。

 それが、奴なりの正義じゃ」

 

 正義、か。

 

 皮肉な話だ。

 混沌を愛する神が、己の中では筋を通している。

 

「……つまりロキは、力を誇示したいんじゃない」

 

 俺は口に出して整理する。

 

「世界そのものを、

 “受け入れられない形”に作り替えたいんだな」

 

 オーディン様は、ゆっくり頷いた。

 

「そうじゃ。

 そしてその混乱の中で、誰が立ち続けるかを見ておる」

 

「……俺みたいなのを?」

 

「 “王の器”と目される人間がどう動くか。

 ロキも、儂も――見ておる」

 

 背中に、妙な冷たさを感じた。

 

 試練とは、戦いそのものじゃない。

 混乱の中で、何を選び、誰を守り、何を壊さないか。

 

 それを測られる。

 

「だから太郎よ」

 

 オーディン様は、静かに告げた。

 

「ロキは必ず、

 聖書の神話圏を狙う。

 そして、その渦中に――お主も立つことになる」

 

 俺は息を吐き、軽く肩を回した。

 

「……随分と面倒な爺さんの知り合いだな」

 

「ふぉっふぉ、今さらじゃ」

 

 笑いながらも、オーディン様の目は真剣だった。

 

(ラグナロク、か……)

 

 確かにこれは、

 ただの戦いじゃ終わらない気がしていた。

女王は誰にする?

  • アルファ
  • ララ·サタリン·デビルーク
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