サムライガールの幼馴染みは王様を目指す(裏) 作:ボルメテウスさん
ロスヴァイセが写真を見て沈黙してから、しばらく妙な空気が流れていた。
宇宙由来の戦闘アーマー。
銀色の装甲。
どう見てもこの世界の住人じゃない。
「……太郎さん」
ロスヴァイセが、慎重に言葉を選ぶように口を開く。
「その……“謎のヒロインXX”という方は……
今も、活動しているのですか?」
「してる。今も別宇宙で勤務中だ」
「勤務……?」
「銀河警察」
「警察……?」
理解が追いついていない顔だ。
無理もない。北欧神話の戦士に“銀河警察”は荷が重い。
「必要なら呼べる」
俺がそう言うと、ロスヴァイセは一瞬固まった。
「……呼ぶ、とは?」
俺は答えず、ポケットから小型の通信端末を取り出した。
魔導具でも神器でもない、完全にSF寄りの代物だ。
「ちょ、ちょっと待ってください!
今この場でですか!?」
「今が一番分かりやすい」
端末を起動し、短い信号コードを入力する。
この世界の言語でも、魔力波でもない。
――宇宙規格通信。
『……応答を確認』
ノイズ混じりの音声が、端末から流れた。
『こちら、銀河警察・特別遊撃部隊所属。
コードネーム:謎のヒロインXX』
ロスヴァイセの目が見開かれる。
「し、喋った……!?」
「喋るに決まってるだろ」
『ツッコミが聞こえるので、
どうやら現地はいつも通り混乱しているようですね』
淡々としているが、どこか軽い。
間違いない。
「久しぶり。XX」
『はい。
観測対象:エンペラ星人後継者・唯我太郎。
通信を受信しました』
「今、時間あるか?」
『あります。
ただし“正確にどれくらいあるか”は知りません』
「知らないのかよ」
『銀河規模で任務をしていると、
時間感覚はだいたい雰囲気になります』
ロスヴァイセが、そっと手を挙げた。
「……質問しても、よろしいでしょうか?」
『はい。
ただし、答えられないことは“知らない”と答えます』
真顔で言うな。
「で、では……
あなたは……人間、なのですか?」
『はい』
「では、先程の写真の姿は……?」
『アーマー装着状態です』
「身体は……機械では?」
『違います。
“中身は生身です”』
「年齢は?」
『20歳以上です』
「正確には!?」
『知りません』
即答だった。
ロスヴァイセは頭を抱えた。
「なぜ、なぜそんな重要なことを……!」
『銀河警察では、
“年齢を気にする暇があるなら任務をしろ”
という文化がありまして』
「文化の問題なのですか!?」
端末越しでも、XXが肩をすくめているのが分かる気がした。
『それより、太郎。
今回の通信は“監視”ではなく“要請”ですね?』
「察しがいいな」
『信頼していますから』
さらっと言う。
ロスヴァイセが、はっとこちらを見る。
「……信頼?」
『はい。
彼は、危険ですが――
放置するより、隣にいた方が安全だと判断しています』
「評価基準が独特すぎます……」
『よく言われます』
俺は一息ついて、要点を伝えた。
「北欧の神、ロキが動く」
『……なるほど』
XXの声のトーンが、ほんの少しだけ変わった。
『神話干渉型の混沌因子ですね。
こちらの宇宙では“非常に面倒なタイプ”です』
「対処できそうか?」
『完全な予測は不可能です』
「つまり?」
『やってみないと分かりません』
「正直だな」
『“分からないことを分かったふりをする”のは、
最も危険ですから』
その言葉に、ロスヴァイセが小さく息を呑んだ。
「……その考え方、
北欧の神々にも見習ってほしいものです」
『神々はだいたい見習いません』
「即答!?」
俺は苦笑しながら言った。
「来れるか?」
『はい』
「世界線、越えられるか?」
『問題ありません』
「宇宙船で?」
『当然です』
ロスヴァイセが限界だった。
「ま、待ってください!
宇宙船で世界線を越えるとはどういう……!」
『説明すると長くなります』
「説明してください!」
『私も完全には理解していません』
「理解していないのですか!?」
『ですが、
“来る”ことと“戦う”ことは出来ます』
その言葉に、不思議と不安はなかった。
「十分だ」
『了解しました』
通信の向こうで、何かが起動する音。
『到着まで、体感で数分。
現地時間では――』
少し間が空く。
『正確には知りません』
「最後までそれかよ」
『仕様です』
通信が切れた。
沈黙。
ロスヴァイセは、しばらく何も言えずにいたが、やがて静かに俺を見る。
「……太郎さん」
「ん?」
「あなたが“王になるかどうか”は分かりません」
「俺も分からない」
「ですが……
この状況で、
宇宙から“謎のヒロインXX”を呼ぶ判断をする方は――」
言葉を選び、彼女は続けた。
「少なくとも、
ロキの思惑通りには動かないでしょうね」
その評価には、皮肉と、ほんの少しの信頼が混じっていた。
(ああ……それでいい)
空を見上げる。
やがて、この世界の空に、 明らかに異物な“星の軌跡”が差し込んでくる。
女王は誰にする?
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アルファ
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ララ·サタリン·デビルーク
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エミリア