※この作品はR-18です。

サムライガールの幼馴染みは王様を目指す(裏)   作:ボルメテウスさん

219 / 484
戦乙女の寝室

 ロスヴァイセは、廊下を歩くたびにわずかに身体を揺らしていた。

 普段は背筋を張り、鎧に守られた騎士の姿しか見せない彼女が、今は薄手の室内着のまま、俺の腕に体重を預けている。

 

 布越しに伝わる柔らかさ。

 酒と女性特有の甘い香りが混じり、やけに生々しい。

 

「……護衛は……XXさんに……」

 

「もう引き継いである。今夜は問題ない」

 

 そう答えると、彼女は安心したように小さく息を吐いた。

 寝室の扉を開け、ベッドに腰を下ろさせると、シーツが静かに沈む。

 

 ロスヴァイセはぼんやりと俺を見上げていた。

 灯りに照らされた白い首筋、鎖骨のライン。

 鎧の下では完全に隠れていた“女性”の部分が、無防備に晒されている。

 

「……すみません……酔ってしまって……」

 

「無理もない。ここ数日、気を張りっぱなしだったしな」

 

 俺は彼女を横にして、毛布を掛ける。

 指先が一瞬、太腿に触れてしまい、はっとする。

 筋肉の張りと、その下の柔らかさ。

 ロスヴァイセが微かに身じろぎした。

 

「……冷たい手ですね……」

 

「外に出てたから」

 

 誤魔化すように答え、立ち上がろうとした――その時だった。

 

 きゅっ、と。

 予想以上に強い力で、彼女が俺の手を引いた。

 

「……行かないで……」

 

 酔いに任せた声。

 だが、その瞳は真っ直ぐで、どこか切実だった。

 

「少しだけ……そばに……」

 

 引かれるまま、体勢を崩し、俺はベッドに腰を下ろす。

 そのまま、自然と横並びになる形になった。

 

 距離は、吐息が触れるほど近い。

 ロスヴァイセの体温が、はっきり分かる。

 肩が触れ、腕が触れ、柔らかな感触が意識を否応なく刺激する。

 

 彼女は天井を見つめたまま、静かに呟いた。

 

「……太郎さんは……安心します……

 強いのに……押し付けない……」

 

「……それは、褒め言葉か?」

 

「はい……」

 

 そう答えて、彼女は小さく身を寄せてきた。

 胸元が、腕に当たる。

 意識しない方が無理だった。

 

 それでも、俺は動かない。

 静かな寝室で、互いの呼吸だけが重なっていた。

 ロスヴァイセの体温が、すぐ隣で確かにある。肩が触れ、腕が触れ、逃げ場のない近さが、思考を鈍らせる。

 

「……太郎さん……」

 

 呼ばれて、視線が合った。

 灯りに照らされた瞳は潤み、酒に浮いた熱が、まだ消えていない。

 

 言葉はなかった。

 ただ、自然に距離が詰まり――触れるか触れないかの間で、迷いがほどけた。

 

 唇が重なる。

 

 一瞬。

 けれど確かに、はっきりと。

 

 酒の苦みが、わずかに舌先に残る。

 それと同時に、女性特有の柔らかさが、驚くほど穏やかに伝わってきた。力は要らない。ただ、受け止めるだけでいい。

 

 ロスヴァイセの息が、微かに震える。

 胸元が上下し、寄せた身体が、さらに近づく。

 

 長くは続かない。

 互いに分かっている。今は、ここまでだと。

 

 唇が離れ、視線が逸れた。

 それだけで十分だった。

 

 静寂が戻る。

 彼女は小さく息を吐き、目を閉じた。

 

 ――何も言わず、何も約束しない。

 ただ、その一瞬だけが、確かにそこにあった。

女王は誰にする?

  • アルファ
  • ララ·サタリン·デビルーク
  • エミリア
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。