サムライガールの幼馴染みは王様を目指す(裏) 作:ボルメテウスさん
ロスヴァイセは、廊下を歩くたびにわずかに身体を揺らしていた。
普段は背筋を張り、鎧に守られた騎士の姿しか見せない彼女が、今は薄手の室内着のまま、俺の腕に体重を預けている。
布越しに伝わる柔らかさ。
酒と女性特有の甘い香りが混じり、やけに生々しい。
「……護衛は……XXさんに……」
「もう引き継いである。今夜は問題ない」
そう答えると、彼女は安心したように小さく息を吐いた。
寝室の扉を開け、ベッドに腰を下ろさせると、シーツが静かに沈む。
ロスヴァイセはぼんやりと俺を見上げていた。
灯りに照らされた白い首筋、鎖骨のライン。
鎧の下では完全に隠れていた“女性”の部分が、無防備に晒されている。
「……すみません……酔ってしまって……」
「無理もない。ここ数日、気を張りっぱなしだったしな」
俺は彼女を横にして、毛布を掛ける。
指先が一瞬、太腿に触れてしまい、はっとする。
筋肉の張りと、その下の柔らかさ。
ロスヴァイセが微かに身じろぎした。
「……冷たい手ですね……」
「外に出てたから」
誤魔化すように答え、立ち上がろうとした――その時だった。
きゅっ、と。
予想以上に強い力で、彼女が俺の手を引いた。
「……行かないで……」
酔いに任せた声。
だが、その瞳は真っ直ぐで、どこか切実だった。
「少しだけ……そばに……」
引かれるまま、体勢を崩し、俺はベッドに腰を下ろす。
そのまま、自然と横並びになる形になった。
距離は、吐息が触れるほど近い。
ロスヴァイセの体温が、はっきり分かる。
肩が触れ、腕が触れ、柔らかな感触が意識を否応なく刺激する。
彼女は天井を見つめたまま、静かに呟いた。
「……太郎さんは……安心します……
強いのに……押し付けない……」
「……それは、褒め言葉か?」
「はい……」
そう答えて、彼女は小さく身を寄せてきた。
胸元が、腕に当たる。
意識しない方が無理だった。
それでも、俺は動かない。
静かな寝室で、互いの呼吸だけが重なっていた。
ロスヴァイセの体温が、すぐ隣で確かにある。肩が触れ、腕が触れ、逃げ場のない近さが、思考を鈍らせる。
「……太郎さん……」
呼ばれて、視線が合った。
灯りに照らされた瞳は潤み、酒に浮いた熱が、まだ消えていない。
言葉はなかった。
ただ、自然に距離が詰まり――触れるか触れないかの間で、迷いがほどけた。
唇が重なる。
一瞬。
けれど確かに、はっきりと。
酒の苦みが、わずかに舌先に残る。
それと同時に、女性特有の柔らかさが、驚くほど穏やかに伝わってきた。力は要らない。ただ、受け止めるだけでいい。
ロスヴァイセの息が、微かに震える。
胸元が上下し、寄せた身体が、さらに近づく。
長くは続かない。
互いに分かっている。今は、ここまでだと。
唇が離れ、視線が逸れた。
それだけで十分だった。
静寂が戻る。
彼女は小さく息を吐き、目を閉じた。
――何も言わず、何も約束しない。
ただ、その一瞬だけが、確かにそこにあった。
女王は誰にする?
-
アルファ
-
ララ·サタリン·デビルーク
-
エミリア