※この作品はR-18です。

サムライガールの幼馴染みは王様を目指す(裏)   作:ボルメテウスさん

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トリックスターと混沌

 数日間、聖書圏の結界保全と巡回を続けていた。

 緊張は解けないままだったが、XXの手腕もあり、秩序は保たれていたはずだった。

 

 だが、空気が突如として歪んだ。

 祈りの気配――信仰の波形が、引き裂かれるように乱れる。

 

「……来たな」

 

 ロスヴァイセの声が低くなる。

 直感で分かる。この“破壊の気配”は、ただの侵略者ではない。

 

 天を見上げた瞬間、黒いローブが風もなく舞った。

 

「――来客とは珍しい」

 

 声は静かで、人を侮るような余裕すらある。

 現れたのは、若々しい男。目つきは鋭く、どこか邪悪な微笑を湛えていた。

 

 ――ロキだ。

 

 その存在感は、“神”の体躯ではない。だが眼光と気配は確実に異界の支配者を示していた。

 俺は息を飲む。

 

(オーディンの予感通りだ……)

 

 ロキはオーディンと聖書神話圏の協調を「誤り」と断じる。

 聖書の神々――この土地にもたらされた信仰を、根底から否定し、排除せんとしていたのだ。

 その思想はただの憎悪ではない。“混沌として混じり合うことへの嫌悪”でもあった。

聖書圏の結界が、音もなく歪んだ。

 破壊ではない。侵食だ。

 

「……ふうん」

 

 その向こう側。

 空中に腰掛けるように、男が現れる。

 

 黒衣。軽薄な笑み。

 神としてはあまりに人間的な佇まい。

 

「真面目だねぇ、北欧の乙女。

 でもさ、それ“守ってるつもり”?」

 

 ロキだ。

 声には余裕があり、嘲りが混じっている。

 

「聖書の神々はさ、

 もうこの世界に馴染みすぎた。

 だから――壊すと、音が綺麗なんだ」

 

 結界が軋む。

 意味が削がれ、信仰が“ノイズ”に変えられていく。

 

「混ざり合う神話? 協調?

 気持ち悪いだろう?」

 

 ロキは笑う。

 計算された狂気。

 これが、原作で語られる“ラグナロクを楽しむ悪神”だ。

 

「だから僕は、踏み込む。

 壊して、選ばせる」

 

 その瞬間――

 空が、壊れた。

 

 音も予兆もなく、

 “現れる”という概念を無視した何かが、空間に割り込んだ。

 

 光でも闇でもない。

 座標がずれ、因果がねじれ、

 そこにあってはいけないものが、そこにある。

 

「……?」

 

 ロキの笑みが、止まった。

 

 理解しようとしたのだろう。

 だが、神話的知識にも、未来視にも、分類不能。

 

 ――完全な想定外。

 

『……あ』

 

 間の抜けた声が、場違いに響いた。

 

『すみません、到着座標……ちょっとズレました』

 

 そこに立っていたのは、

 銀色のアーマーを纏った存在。

 

 謎のヒロインXX。

 

 だがその登場は、英雄的でも劇的でもない。

 ただひたすら、混沌だった。

 

「………………」

 

 ロキが、完全に黙り込む。

 

 数秒。

 いや、神にとっては“思考停止”に等しい一瞬。

 

「……え?」

 

 素で呆けた声だった。

 

 神話でも、終末でも、悪戯でもない。

 “宇宙規格の異物”が、神の盤面に落ちてきた。

 

『あー……あなたが北欧のロキさんですね?』

 

 XXが首を傾げる。

 

『すみません、

 あなたの今の行動、

 銀河警察的には“非常に迷惑”です』

 

 ロキは、初めて表情を崩した。

 

 怒りでも笑みでもない。

 困惑だ。

 

「……君、どこの神話?」

 

『神話じゃありません』

 

「じゃあ、どこの世界?」

 

『正確には――

 あなたの“外側”です』

 

 ロキの目が、俺を見た。

 

「……なるほど」

 

 口元が、歪む。

 

「君か。

 “王候補”が、

 こんな狂った一手を用意するとは」

 

 ようやく、ロキは笑った。

 だがそれは、楽しげなものではない。

 

「いいよ。今日は退こう」

 

 幻影が薄れる。

 

「でもね太郎――

 次は、

 君自身を壊しに行く」

 

 気配が消える。

 

 残されたのは、軋む結界と、

 呆然とした空気。

 

「……太郎さん」

 

 ロスヴァイセが、剣を下ろさずに言った。

 

「今のは……

 北欧神話の想定範囲を、完全に超えています」

 

「だろうな」

 

 XXがアーマーを解除しながら、気の抜けた声を出す。

 

『えっと……

 あの神様、

 すごく驚いてましたね』

 

「そりゃそうだ」

女王は誰にする?

  • アルファ
  • ララ·サタリン·デビルーク
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