※この作品はR-18です。

サムライガールの幼馴染みは王様を目指す(裏)   作:ボルメテウスさん

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神と戦乙女の評価

 戦場の余韻が、ようやく静まり返り始めた頃。崩れた結界は修復され、ロキの残した神話的干渉も次第に薄れていく。戦闘そのものは終わったが、世界が受けた衝撃はまだ完全には消えていない。そんな中、少し離れた場所で、二人の声が静かに交わされていた。

 

「いやはや……実に愉快だ」

 

「オーディン様……“愉快”で済ませてよろしい状況ではないと思いますが……」

 

 ロスヴァイセの声には疲労と戸惑いが混じっている。無理もない。神話の終末を担う存在を前にし、その常識が次々と裏切られたのだから。一方でオーディンは、杖に手を置いたまま、楽しげに空を見上げていた。

 

「そうか? 北欧神話の悪神が敗れ、世界は壊れず、しかも未知の力が観測できた。これ以上、神として楽しいことがあるかね」

 

「未知……というより、理解不能です。あの“謎のヒロインXX”という存在……神話体系にも、魔力理論にも属していない……」

 

 ロスヴァイセは視線を落とし、思い返すように言う。魔法でも神術でもない力が、戦場を制圧した光景。その異質さは、彼女の価値観に深く刻み込まれていた。

 

「だからこそだ。神話の外から来た観測者。しかも、太郎の判断一つで戦場をひっくり返す」

 

「……正直に申し上げますと、私は怖いです」

 

「ほう?」

 

 オーディンが、わずかに興味深そうに眉を上げる。

 

「太郎さんは、あまりにも自然に“切り札”を切りました。躊躇も、慢心もなく……まるで、それが当然だというように」

 

 それは事実だった。俺自身、振り返ってみても迷いはなかった。選択肢としてそこにあり、必要だったから使った。それだけだ。

 

「王とは、そういうものだ」

 

「ですが……あの二つの力。闇と光を同時に扱うなど……均衡を失えば、本人が壊れてしまう可能性も……」

 

 ロスヴァイセの声がわずかに揺れる。護衛として、戦士として、そして一人の人間としての不安が滲んでいた。

 

「それでも、彼は踏みとどまった」

 

「……はい」

 

「恐れず、しかし溺れず。使い切らず、押し切った。

 実に見事だ」

 

 オーディンの評価は、迷いがない。それは賛美というより、事実の確認に近かった。

 

「オーディン様は……本当に、これから起こる出来事を楽しみにしておられるのですね」

 

「もちろんだ。彼は必ず、この世界に“まだ誰も知らない問い”を持ち込む」

 

「問い……ですか」

 

「神とは何か。正義とは何か。

 そして――王とは、何を壊し、何を残す存在なのか」

 

 その言葉に、ロスヴァイセはしばらく黙り込んだ。やがて、ゆっくりと息を吐く。

 

「……私は、不安です」

 

「だが?」

 

「それ以上に……太郎さんなら、最後に“残す側”を選ぶと、信じています」

 

 護衛としての覚悟。戦士としてではなく、王に仕える者としての信頼。その言葉には、揺るがない芯があった。

 

「ふふ……それが護衛というものか」

 

「はい。

 戦士としてではなく……一人の王に仕える者として」

 

「ならば安心だ。王が進み、護衛が信じ、未知が道を拓く。

 これほど美しい展開はない」

 

「……オーディン様」

 

「なんだね」

 

「どうか……太郎さんを、“試す”だけで終わらせてください」

 

「約束はできん。だが――」

 

「?」

 

「壊れる前に、必ず“面白く”なる。

 それだけは保証しよう」

 

「……本当に、困ったお方です」

 

「神とは、そういうものだよ」

 

 二人の会話を聞きながら、俺は遠くで修復されていく空を見ていた。

 未知は、まだ始まったばかりだ。

 だが少なくとも――信じてくれる者がいる限り、進む理由は十分だった。

女王は誰にする?

  • アルファ
  • ララ·サタリン·デビルーク
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