サムライガールの幼馴染みは王様を目指す(裏) 作:ボルメテウスさん
妖怪たちに導かれて辿り着いたのは、人の京都から完全に切り離された屋敷だった。外見は古い町家の延長線にあるようでいて、門をくぐった瞬間に空気が変わる。結界の密度が濃く、時間の流れさえゆっくりになったような感覚がある。ここが、京都妖怪社会の中枢の一つ――裏京都の屋敷だ。
広間に通されると、そこにいたのは一人の少女だった。小学生の低学年ほどにしか見えない幼い外見。淡い金色の髪は柔らかく肩に落ち、頭にはぴょこんと狐の耳が生えている。腰の後ろには、感情に合わせて揺れるふさふさの尻尾。愛らしい見た目とは裏腹に、屋敷全体が彼女を中心に機能しているのが分かる。京都を取り仕切る大妖怪・八坂の娘、九重。名を聞くだけで、妖怪たちが一歩距離を置く理由も理解できた。
だが、当の本人は落ち着かない様子で、畳の上に正座したまま尻尾をそわそわと動かしている。その視線が俺に向けられた瞬間、年相応の不安が滲んだ。
「……あの、太郎」
九重の声は小さく、けれど必死だった。
「母さまが……八坂が、いなくなったの」
その一言で、屋敷の空気が張り詰める。周囲に控えていた妖怪たちが息を詰めたのが分かった。行方不明。それは妖怪社会にとって、ただの失踪では済まされない。
「須弥山の神々と会うために、出かけたきり……帰ってこないの」
九重は膝の上で拳を握りしめる。幼い手が震えていた。
「護衛もいたはずなんだけど……誰も、何も覚えていないって……」
記憶の欠落。嫌な響きだ。禍の団のやり口とも重なる。俺は一度、深く息を吸った。
「それで、俺を呼んだのか」
九重はこくりと頷いた。
「みんな、動けないって言うの。動いたら、戦争になるって……でも、母さまがいないままなんて……」
言葉の最後は、声にならなかった。九重は必死に泣くのを堪えている。京都を預かる立場であっても、彼女はまだ子供だ。母を失った不安を、誰かに頼りたかっただけなのだろう。
俺は畳に手をつき、九重と視線の高さを合わせた。
「分かった。八坂を探そう」
即答だった。計算も、駆け引きもない。今ここで必要なのは、それだけだ。
「いいの……?」
「須弥山との会談は延期できる。
でも、行方不明者は待ってくれない」
九重の目が大きく見開かれる。次の瞬間、溜め込んでいた感情が溢れたように、尻尾が大きく揺れた。
「ありがとう……!」
屋敷の空気が、わずかに和らぐ。控えていた妖怪たちも、安堵の色を隠さない。彼らが動けなかった理由も理解できた。八坂の失踪は、あまりにも大きな火種だ。誰かが責任を持って動かなければ、全てが燃え広がる。
「手がかりは?」
「最後に向かったのは、結界の境界付近。
それから……何か、変な感じがしたって」
「変な感じ?」
「うん。
世界が、ズレたみたいな……」
九重の言葉に、背筋がわずかに冷える。世界線の歪み。青子の言葉が脳裏をよぎった。偶然とは思えない。
「俺が探す。
九重はここで待っていてくれ」
「……うん」
不安は消えていない。それでも、彼女は信じると決めた顔をしていた。京都を預かる者としてではなく、母を想う娘として。
こうして俺は、須弥山へ向かうはずだった足を、八坂の行方へと向けることになった。京都の裏側で進むこの探索が、禍の団との戦いにどう繋がるのかは分からない。だが一つだけ確かなのは、ここで見捨てる選択肢は存在しない、ということだった。
女王は誰にする?
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アルファ
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ララ·サタリン·デビルーク
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エミリア