サムライガールの幼馴染みは王様を目指す(裏) 作:ボルメテウスさん
後日談というには、俺の背中はまだ熱かった。戦場の匂いが消えたわけじゃない。消えたのは“皇帝の命令”で、残ったのは“皇帝の残滓”だ。胸の奥で闇が寝返りを打つたび、俺は呼吸の形を思い出す。絶花の声、青子の縫い、そして自分で決めた順番。最悪にも最高にも逃げない――その宣言は、勝ったから言えたんじゃない。勝ったあとも削られ続けるから、言い続ける必要がある。
結界の後始末は静かだった。静かなほど怖い。英雄派は自分の正当化の言葉を拾い集める余裕もなく退き、メフィラスは執事みたいな礼儀正しさのまま、こちらに“結果”だけ残して去った。あいつは、どちらが生き残ってもいいと言った。たぶん本気だ。俺が生き残れば器が確定し、先代が戻れば皇帝が継続する。どっちでも“次のページ”はめくれる。俺はその本を閉じたつもりはない。ただ、勝手に読まれるのが嫌だから、自分でページをめくる側に回っただけだ。
問題は、ここからだ。三大勢力――天使、堕天使、悪魔。今までは巻き込まれながらも、なんとか隙間を縫って動けた。でもエンペラ星人の一件で状況が変わった。神話の争いだけで世界が回っているわけじゃない、と証明されてしまったからだ。宇宙人の介入。怪獣カード。外宇宙の理屈。誰が最初に扉を開けたかはもうどうでもいい。扉が開いた以上、次に来るのは“来訪者”じゃなく“侵入者”だ。しかも侵入者は、善悪や正義の看板で動かない。動くのは利害と実験と観測――そして、面白さだ。
青子は「縫い」を点検しながら、俺の胸元を一度だけ見て、何も言わなかった。言葉にしたら固定される何かが、まだ固定されていない。絶花は避難ルートの改善案を淡々とまとめていて、俺はそれを見て、日常は勝利じゃなく手順で守るものだと再確認した。俺の中の闇は相変わらず甘い声で囁く。もっと強くなれ、もっと速く終わらせろ。だが今は、その囁きに返事をしない方法を知っている。返事をしないのは弱さじゃない。返事をしないで前に進むのが、たぶん王の仕事だ。
「太郎、次はどこへ行くの」
「三大勢力に会いに行く。味方を増やすっていうより、被害を減らすための順番を作る」
口にした瞬間、胸の奥で闇が一度だけ笑った。笑ったまま眠らないのが厄介だ。だから俺は、笑わせたまま働かせる。道具にするんじゃない。責任として管理する。光と闇の混ざった鎧は、勝利の勲章じゃない。時間を買うための制服だ。その制服がいつまで持つかは分からない。分からないから、急ぐ。焦って壊すんじゃなく、急いで整える。
世界は広い。神話だけでも十分広いのに、その外側があると分かった。最悪だし、最高でもある。だから俺は、どっちにもならない。最悪と最高を越える。越えて、誰かの帰る場所を残す。国はまだない。けれど、守るべき日常はもうある。
今回で無事に最終回を迎えました。ウルトラシリーズという事で皇帝。ウルトラマンベリアルだけではなく、最も皇帝としてのエンペラ星人を選ばせて貰いました。かなり複雑な話になりましたが、ここまで、付き合って貰い、本当にありがとうございました。
もしかしたら、また別の形で新シリーズが始まるかもしれませんが、またいつか
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