※この作品はR-18です。

サムライガールの幼馴染みは王様を目指す(裏)   作:ボルメテウスさん

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集う刀

影は、まだそこにあった。

 

海坊主の気配が引いたわけじゃない。

溺霊の数が減ったわけでもない。

それでも、さっきまでとは空気の質が違う。

 

それだけで分かる。

あの人は――普通の人間だ。

 

力が爆発しているわけでもない。

光を纏っているわけでもない。

ただ、日本刀を一本、当たり前のように手にして立っている。

 

それなのに。

 

溺霊が、近づけない。

 

式は一歩前に出る。

踏み込みは浅い。

構えも派手じゃない。

 

それでも、刃が走った次の瞬間、

俺の視界の端で、溺霊が“切れていた”。

 

悲鳴はない。

抵抗もない。

 

まるで、最初からそこに無かったみたいに、

成立だけを断たれて、消える。

 

「……なんだよ、それ」

 

思わず呟いた。

 

剣術だ。

力じゃない。速さでもない。

 

迷いが、一切ない。

 

式は振り返らずに言う。

 

「さっきまでの動き、悪くない」

 

淡々とした声。

評価とも、励ましとも取れない。

 

「だが、温い」

 

胸の奥に、ぐっと何かが刺さる。

 

「出し惜しみしてる自覚はあるか」

 

……ある。

あるから、何も言い返せない。

 

式は、溺霊を切り続けながら続ける。

 

「技はな、使い切って初めて“武器”になる」

 

一振り。

また一体、溺霊が消える。

 

「極限まで使え」

 

その言葉で、斬月が応えた。

 

『聞いたか、太郎』

 

低く、重い声。

 

『今のお前は、まだ刃を“振っているだけ”だ』

 

俺は歯を食いしばる。

 

「……分かってる」

 

視線を、絶花に向ける。

 

絶花は、もう迷っていなかった。

 

天聖が、はっきりと光っている。

恐怖じゃない。覚悟の光だ。

 

「太郎」

 

名前を呼ばれる。

 

「私の力、使って」

 

即答だった。

 

「いいのか」

 

「最初から、そのつもり」

 

天聖が、彼女の胸元から浮かび上がる。

柔らかな光が、斬月へと流れ込む。

 

その瞬間。

 

斬月が、鳴いた。

 

刃が、光を喰う。

力と天聖の力が混ざり合い、

月牙が、形になる前の“圧”として膨れ上がる。

 

『来い』

 

斬月の声が、はっきりと響く。

 

『今だ』

 

俺は、構えた。

 

今までで、一番深く。

 

足を踏み込み、

身体の芯から、力を引き出す。

 

「……月牙天衝!!」

 

放たれた斬撃は、今までと違った。

 

三日月じゃない。

月そのものを引きずるような一撃。

 

海面が裂け、

溺霊の大軍が、まとめて薙ぎ払われる。

 

消えない。

だが、押し返される。

 

式は、その隙を逃さない。

 

踏み込み、斬る。

また踏み込み、斬る。

 

一体ずつじゃない。

“流れ”を断ち切るように、切り続ける。

 

普通の人間。

並外れた剣術。

 

それだけで、ここまでやるのか。

 

「……すげぇな」

 

思わず漏れた言葉に、式は一瞬だけ口元を歪めた。

 

「褒めてる暇があるなら、もう一発だ」

 

背中越しに言われる。

 

「王だろ」

 

その一言で、迷いが消えた。

 

俺は、斬月を構え直す。

 

絶花の天聖の光を、確かに感じながら。

女王は誰にする?

  • アルファ
  • ララ·サタリン·デビルーク
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