サムライガールの幼馴染みは王様を目指す(裏) 作:ボルメテウスさん
試練の残滓が潮風に乗って消えていくなか、砂浜に散った木片と硝煙の匂いだけが濃く残っていた。
「んっ、これは」
呻くように呟くと同時に、《斬月》が応える。
『――渡せ』
ざわりと背筋を逆撫でるような低い声。斬月はいつもこうだ。必要なときしか喋らないくせに、言うべきことは逃さない。
『その二人を強化したいんだろう。だったら貸してもらうしかない。……代償分だ』
「……まァいいけどよ」
俺は苦笑しながら首肯した。確かにここまでの戦いで王国の駒は大きく揺らいだ。式という未知数と絶花という“予定外”を抱え込みすぎた結果かもしれない。
「絶花、式。これを預けたい」
俺はポケットを探り二つの宝石を取り出した。騎士の駒と女王の駒――王国の中枢を担う証。
絶花の紫がかった瞳が怯えたように揺れた。
「なによこれ……キラッキラしてるじゃない。そんなもの急に渡されても困るんだけど」
「そう言わずに。お前の肩甲骨あたりの力はもう開いている。この宝石が呼んでるのはそこなんだぜ」
「……! どうしてわかるのよ」
「わかるさ」
本当はただの当て推量だったけれど。しかし斬月が肯定も否定もしないということは“通る道”なんだろう。
一方式は何も聞かず掌を開いただけだった。まるで既に受け取ることが運命づけられたように。
「俺からは何も訊かない。君が必要だから渡すのであって、僕が好き好んで握っているわけじゃないんだよね。そういう態度は嫌いじゃない」
「ありがとう、式さん」
礼を述べながらも、どこか虚しい気分になった。
そして俺は――それぞれの宝石をふたりに押し当てる。
瞬間、
絶花の胸部に光が爆ぜた。
「ひゃっ……!」
悲鳴とも嬌声ともつかぬ音色。淡く輝く柔肌。宝石自体が溶け込むように浸透すると同時に。
「てっ天聖、何が起きたのっ」
『さぁな、分からないけどな。でも、絶花の身体は結構強化されたようだな』
「確かにそうかもしれないけどって」
そうしていると、式さんの持つ王国の駒が変化した。
「へぇ、これは」
すると、式さんは、その手に持つ王国の駒が変化した。
それは、一言で言えば、日本刀。漆黒の中に妖しく揺らめく波紋を浮かべ、鍔は無い。柄糸を緩慢に巻いていて独特の趣がある。
『それが新しい斬月か。面白いな』
「斬月? これが?」
『そうだ。式の王の駒があまりにも純粋で高潔であったゆえに、新たな形を成したのだ』
「はあ……よくわからないけど、とりあえず納得しておく」
*
夕暮れが迫ってきていた。
水平線は黄金と紅に燃え上がり、海鳥たちが最後の啼き声を響かせて西に向かっていく。
絶花はまだ胸元をおさえ呼吸を整えていた。
「ちょっと眩暈がする……」
「悪い。痛むか?」
「いや……痛みっていうか……熱っぽい? ドキドキしちゃってるのかなぁ私?」
「慣れてくれば大丈夫だと思うぞ」
言いながら振り返ると式さんが静かに微笑していた。
「ねえ太郎くん」
「ん?」
「これからも試されるよ。きっとね。王っていう生き物は常に問われるから」
「承知していますよ。でもまぁ……逃げる気もないんでね」
すると式さんは満足げに目を細め、「それでこそ」と呟いて踵を返した。
夕陽の陰影が三人のシルエットを重ねる。
「絶花」
「んー?」
「守るから。お前のことも。だから怖がらなくていいぜ」
「うっさいバカ! こっちだって迷惑かけないようにするわよ!」
怒鳴るように返しながらも頬は朱色。いつもの絶花だ。
遠雷のように轟く波の音。
そこに重なる斬月の微かな低吟。
――王よ
背中に感じるプレッシャー。しかし怯えなど感じなかった。
「さて、二人共、家に来い」
「えっ、でも」
「良いから」
その事に、俺と絶花は疑問に思いながらも、そのまま誘われるように向かう。
女王は誰にする?
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アルファ
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ララ·サタリン·デビルーク
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エミリア