※この作品はR-18です。

サムライガールの幼馴染みは王様を目指す(裏)   作:ボルメテウスさん

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駒の引き渡し

 試練の残滓が潮風に乗って消えていくなか、砂浜に散った木片と硝煙の匂いだけが濃く残っていた。

 

「んっ、これは」

 

 呻くように呟くと同時に、《斬月》が応える。

 

『――渡せ』

 

 ざわりと背筋を逆撫でるような低い声。斬月はいつもこうだ。必要なときしか喋らないくせに、言うべきことは逃さない。

 

『その二人を強化したいんだろう。だったら貸してもらうしかない。……代償分だ』

 

「……まァいいけどよ」

 

 俺は苦笑しながら首肯した。確かにここまでの戦いで王国の駒は大きく揺らいだ。式という未知数と絶花という“予定外”を抱え込みすぎた結果かもしれない。

 

「絶花、式。これを預けたい」

 

俺はポケットを探り二つの宝石を取り出した。騎士の駒と女王の駒――王国の中枢を担う証。

 

絶花の紫がかった瞳が怯えたように揺れた。

 

「なによこれ……キラッキラしてるじゃない。そんなもの急に渡されても困るんだけど」

 

「そう言わずに。お前の肩甲骨あたりの力はもう開いている。この宝石が呼んでるのはそこなんだぜ」

 

「……! どうしてわかるのよ」

 

「わかるさ」

 

本当はただの当て推量だったけれど。しかし斬月が肯定も否定もしないということは“通る道”なんだろう。

 

一方式は何も聞かず掌を開いただけだった。まるで既に受け取ることが運命づけられたように。

 

「俺からは何も訊かない。君が必要だから渡すのであって、僕が好き好んで握っているわけじゃないんだよね。そういう態度は嫌いじゃない」

 

「ありがとう、式さん」

 

礼を述べながらも、どこか虚しい気分になった。

 

そして俺は――それぞれの宝石をふたりに押し当てる。

 

瞬間、

 

絶花の胸部に光が爆ぜた。

 

「ひゃっ……!」

 

悲鳴とも嬌声ともつかぬ音色。淡く輝く柔肌。宝石自体が溶け込むように浸透すると同時に。

 

「てっ天聖、何が起きたのっ」

『さぁな、分からないけどな。でも、絶花の身体は結構強化されたようだな』

「確かにそうかもしれないけどって」

 

そうしていると、式さんの持つ王国の駒が変化した。

 

「へぇ、これは」

 

すると、式さんは、その手に持つ王国の駒が変化した。

それは、一言で言えば、日本刀。漆黒の中に妖しく揺らめく波紋を浮かべ、鍔は無い。柄糸を緩慢に巻いていて独特の趣がある。

 

『それが新しい斬月か。面白いな』

「斬月? これが?」

『そうだ。式の王の駒があまりにも純粋で高潔であったゆえに、新たな形を成したのだ』

「はあ……よくわからないけど、とりあえず納得しておく」

 

 

夕暮れが迫ってきていた。

水平線は黄金と紅に燃え上がり、海鳥たちが最後の啼き声を響かせて西に向かっていく。

 

絶花はまだ胸元をおさえ呼吸を整えていた。

「ちょっと眩暈がする……」

「悪い。痛むか?」

「いや……痛みっていうか……熱っぽい? ドキドキしちゃってるのかなぁ私?」

 

「慣れてくれば大丈夫だと思うぞ」

 

言いながら振り返ると式さんが静かに微笑していた。

 

「ねえ太郎くん」

「ん?」

「これからも試されるよ。きっとね。王っていう生き物は常に問われるから」

「承知していますよ。でもまぁ……逃げる気もないんでね」

 

すると式さんは満足げに目を細め、「それでこそ」と呟いて踵を返した。

 

夕陽の陰影が三人のシルエットを重ねる。

 

「絶花」

「んー?」

「守るから。お前のことも。だから怖がらなくていいぜ」

「うっさいバカ! こっちだって迷惑かけないようにするわよ!」

 

怒鳴るように返しながらも頬は朱色。いつもの絶花だ。

 

遠雷のように轟く波の音。

そこに重なる斬月の微かな低吟。

 

――王よ

 

背中に感じるプレッシャー。しかし怯えなど感じなかった。

 

「さて、二人共、家に来い」

「えっ、でも」

「良いから」

 

その事に、俺と絶花は疑問に思いながらも、そのまま誘われるように向かう。

女王は誰にする?

  • アルファ
  • ララ·サタリン·デビルーク
  • エミリア
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