※この作品はR-18です。

サムライガールの幼馴染みは王様を目指す(裏)   作:ボルメテウスさん

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3人の家臣の会話

扉を開けた。

それだけで、空気が変わった。

その日、俺は王国の駒である三人が会う事になる。

 

「……なんだよ、この空気」

 

隣で、流子が小さく吐いた。

強がる時の声だ。低いくせに、少しだけ上ずる。無理もない。窓際に座る式は、相変わらず人を寄せつけない顔をしているし、向かいの東郷は背筋を伸ばしたまま、言葉を選ぶみたいに静かにこちらを見ていた。絶花の柔らかさとも違う。病院の時より、さらに整った空気だ。流子みたいな、まず拳から入るやつには、たしかに居心地が悪いだろう。

 

「入れよ。立ったままだと余計に落ち着かないぞ」

 

そう言うと、流子は俺をじろりと見た。

 

「お前んとこ、こういうのばっかりなのか?」

 

「どういうのだよ」

 

「どういうの、って……」

 

言いかけて、流子は式と東郷を見比べた。

それから、わざとらしく肩をすくめる。

 

「妙に上品っていうか、近づきにくいっていうか。お嬢様空間みたいで、調子狂う」

 

「うるさい」

 

式が短く切った。

それだけで、流子の眉が跳ねる。

 

「ほら、そういうとこ!」

 

「騒ぐな。耳障りだ」

 

ぴしゃりと落ちた言葉に、流子の口元が引きつった。噛みつき返す寸前、東郷が困ったように小さく笑う。

 

「驚かせたなら、すみません。そんなつもりはなかったんですが」

 

「……いや、お前はお前で丁寧すぎんだよ」

 

「そう、ですか?」

 

「そこ、“そうですか?”で返すのがもうそうなんだって」

 

噛みついているようで、流子の勢いはさっきより少し弱い。東郷みたいに、柔らかく受けられる相手には、うまく怒鳴りきれないらしい。そこが、いかにもこいつだ。

 

俺は椅子を引いた。

わざと大きな音は立てない。今の部屋には、それだけで余計な緊張が増える。

 

「座れ。今日は顔合わせだけじゃない」

 

流子はひとつ息を吐き、乱暴に椅子へ腰を下ろした。背もたれには寄りかからない。すぐ立てる座り方だ。式はそこを見ていたし、東郷も気づいている。たぶん、俺も同じ顔をしていた。

 

「……で?」

 

流子が言う。

短い。けど、さっきまでの茶化しとは違う。もう、聞く気はある声だ。

 

「昨日の路地裏のことだ」

 

そう言った瞬間、部屋の空気がもう一段だけ締まった。

 

「お前が前に出た件を、ここで揃える」

 

「またその話かよ」

 

「また、じゃない。ここで決める」

 

言い切ると、流子は舌打ちしかけて、飲み込んだ。

式が先に口を開く。

 

「放っておけなかった、は理由にならない」

 

「なるだろ」

 

「ならない。死ぬだけだ」

 

まっすぐだった。

遠回しがないぶん、刺さり方も容赦がない。流子の目が細くなる。けれど、今はそこで爆発しない。相手の言葉が正しいと、自分でも分かっている時の顔だった。

 

「……分かってるよ。危ねえのは」

 

「分かっていて、先に突っ込む」

 

「目の前でやられてんのに、順番なんか考えてられるか」

 

低い声だった。

怒鳴らない分、本音だけが残る。聞いてるこっちの胸に、妙に重く落ちた。

 

東郷が静かに口を挟む。

 

「流子さんの動き自体が駄目、という話ではありません」

 

その一言で、流子の視線が東郷へ向く。

反発しきれなかったのは、その言い方に否定がなかったからだ。

 

「ただ、順番です。まず庇う。次に止める。それでも足りない時に、前へ出る」

 

「……同じようで、全然違うな」

 

「違います。突っ込むと、相手が流子さんを使う可能性が上がる」

 

その言葉に、流子の肩がわずかに強張った。

自分が足を引っ張る側に回る、という想像だけは、たぶん一番嫌なんだろう。

 

「だから、ルールを作る」

 

俺はそこで、三人を順に見た。

 

「流子が前に出るのは前提にする。止める気はない」

 

「……おい」

 

流子が眉を上げる。

意外だったらしい。そこは、少しだけ口元が緩んだ。

 

「その代わり、順番を揃える。まず庇う。次に止める。東郷か俺が合図を出したら、その時に突っ込め」

 

「単独追跡は禁止だ」

 

式が被せる。

冷たい声だ。けれど、今のは釘というより、線引きだった。

 

「破ったら切る」

 

「物騒すぎんだろ!」

 

ようやく、流子が声を荒げた。

その反応に、東郷が小さく息を漏らす。笑いそうになって、堪えた顔だ。

 

俺は、そこで少しだけ肩の力を抜いた。

 

「切られるのが嫌なら、言え」

 

「何を」

 

「行く前に、行くって」

 

流子が黙る。

言い返しそうで、言えない。意地の強いやつが、本当に考えてる時の間だ。

 

やがて、視線を逸らしたまま、ぼそっと吐く。

 

「……分かったよ」

 

短い。

でも、それで十分だった。

 

「合図が遅かったら、あたしは行く。それだけは変えねえ」

 

「その時は、俺が受け止める」

 

俺がそう返すと、流子は一瞬だけこっちを見た。

照れた時みたいに、すぐ逸らす。そのくせ、さっきよりは座り方が少しだけ深くなっていた。完全には馴染んでいない。でも、さっきみたいな“いつでも喧嘩できる形”じゃない。

 

「……ほんと、調子狂う連中だな」

 

その呟きは、もう最初の“なんだこのお嬢様空間”とは少し違っていた。

やりにくい。けど、嫌いじゃない。そんな温度だ。

 

窓の外で、最後の赤が沈んでいく。

女王は誰にする?

  • アルファ
  • ララ·サタリン·デビルーク
  • エミリア
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