サムライガールの幼馴染みは王様を目指す(裏) 作:ボルメテウスさん
窓の外の赤が薄れていく
教室の隅の影だけが長く伸びて、椅子の脚が床をこする音がやけに大きい……そんな夜の手前だ
流子は「分かったよ」と言ったあとも視線を逸らしたまま、頬を掻いていた
照れ隠しの癖、たぶんそれ
式が立ち上がる
動きは小さいのに、空気がすっと締まる
「確認する、合図は東郷が出せ」
「え、私が…ですか」
東郷の声は丁寧なのに、肩が少しだけ固い
その瞬間、流子が噛みつく
「なんでその丁寧なやつが号令担当なんだよ!」
「静かだからだ」
「理由になってねえだろ!」
式は表情ひとつ変えない
言い返せば返すほど、自分だけ熱くなるタイプの相手だと流子も分かってきたのか、歯を噛んで言葉を飲み込む
東郷が小さく息を整え、机の上に指先を揃えて置いた
その仕草が落ち着きすぎていて、流子はますます居心地が悪そうに眉を寄せる
「……合図の言葉は短い方がいいですね、誤解が少ないので」
「短いの頼む、俺も覚えるから」
「では…『今』にします、手も添えます、こう」
掌が上がり、指先がすっと折れる
地味なのに、目に刺さる
「地味すぎんだろ…」
「地味でいいです、派手だと相手にも分かりますから」
柔らかいのに引かない返し
流子が椅子の背を指で叩く、苛立ちというより飲み込み方を探す音
「じゃあ、あたしが前に出たい時はどうすんだよ」
「言え」
「言うだけでいいのかよ…」
「言わないなら切る」
「物騒すぎんだろ!!」
声が跳ねて、東郷の肩が少し揺れる
笑いそうになって堪えた顔だ、流子はそれを見て余計にむっとする
俺は椅子を引いて立ち上がった
斬月は出さない、今日は約束を体に落とす日だ
「試すぞ、俺が標的役でいく、流子は行きたいって気持ちが出たところで止まれ、東郷は合図、式は見ててくれ…頼む」
流子も立ち上がる
鮮血は出さないまま構えだけ真似るが、拳が先に出そうになるのを指先で押し戻しているのが見えた
勢いを畳むのは、たぶん一番苦手だ
「命令口調だな」
「嫌なら言い換える、でも今日はこれでいく!」
流子が鼻で笑う
足は動かない、やる気だけはある
東郷が掌を上げる
一度だけ深呼吸してから、静かに落とした
「……今」
その一言で、流子の重心が前へ落ちる
落ちたのに踏み込みは一歩で止まる、止まった勢いが床に吸われて靴先が小さく鳴った
式が頷く
「一歩で止まれるなら死なない」
褒めてるのか切ってるのか分からない声
流子が舌打ちしかけて飲み込んだ、悔しさを噛み砕くみたいに
「もう一回」
「ええ、いきます」
二度目は止まり方が少し滑らかだった
勢いが消えたんじゃない、勢いを畳めるようになった感じだ……それが逆に怖い
その瞬間、窓がコツ、と鳴った
風じゃない、乾いた硬さ
全員の視線が同じ場所へ向く
窓枠に、小さな黒いものが刺さっている
羽根の形をした何かで、焦げた紙みたいな匂いが遅れて鼻に届いた
式が歩み寄り、指先で摘まむ
触れた途端、黒い欠片は粉のように崩れて落ちた
「来たな」
流子の肩が一瞬だけ上がり、すぐ落ちる
東郷は呼吸を整えて掌を握り直した
俺の胸の奥が、静かに熱を持つ
「病院の残りか…」
「同種だろう、近い」
流子が低い声で吐く
「合図が遅かったら、あたしは行くからな」
「行く前に言え、言ったら受け止める」
流子は一瞬だけこっちを見て、すぐ逸らす
けど座り方はさっきより深い、逃げる形じゃない
東郷が小さく手を上げる
「では動きます、まず確認と避難導線、それから追います…大丈夫ですね」
「その通り、太郎は前に出るな」
頷きかけて、途中で止めた
頷くだけじゃ足りない、ここは言葉で返す
「分かった、王として順番を守る!」
流子が小さく鼻で笑う
笑ったのに目は真剣だった
厄介な敵が来る、その前に、厄介な仲間が揃っていく
女王は誰にする?
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アルファ
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ララ·サタリン·デビルーク
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エミリア