サムライガールの幼馴染みは王様を目指す(裏) 作:ボルメテウスさん
窓の外が藍に沈むほど、教室の空気は白く整っていく。整いすぎる静けさは、刃物と同じで、触れたら切れる気がする。
胸の奥で斬月が黙っている。黙り方が、こちらの呼吸を数えているみたいで落ち着かない。
「……なんだよこの空気、上品すぎて胃がむずむずする」
流子が椅子の背を指で叩き、笑って誤魔化した。誤魔化し方が下手だ。怖い時ほど口が強くなる。
式は窓際に座ったまま、目線だけで切ってくる。
「黙れ」
それだけ。言葉が短いほど、余計なものが混ざらない。混ざらない分、刺さる。
東郷は背筋をほどかず、こちらの顔を見てから小さく息を吸う。
「さっきの羽根、匂いが残ってます、焦げた紙みたいな…」
丁寧なのに、言い切りが少なくて、逆に現実味が増す。事実だけが静かに積もる。積もったところで、逃げ場がなくなる。
俺は机の上に指を置き、言葉を整えるふりをした。王様になると言い続けてきたくせに、こういう時の声の出し方はまだ練習中だ。
「偵察に出る、今夜で片をつける気で動く」
言った瞬間、流子が眉を上げた。
「お前、即決戦が好きだな」
皮肉の形をしているのに、どこか安心してる声だ。突っ込む側の人間は、決める言葉が好きだ。決めないと、足が勝手に前へ出るから。
東郷が掌を小さく上げる。
「合図は『今』でいいですね、見えた瞬間に揃えた方が事故が減ります」
「……地味だな」
流子がぼそっと言い、でも否定はしなかった。地味な合図ほど、本番で残る。
校舎裏へ出ると、夜の匂いが骨にしみた。風は冷たいのに、肌が粟立つのは別の理由だ。影の縁が、妙にくっきりしている。黒が濃い。濃いのに、軽い。まるで影が影を抱きしめて、縫い止めている。
「……嫌な静けさだな」
流子の声が落ちる。強い言葉が消えた時、こいつの本音が見える。
東郷が靴音を殺し、壁際の配管を見た。
「ここ、音が戻らないです…反響が吸われてる」
式が一歩だけ前に出る。
「結界じゃない、縫いだ」
縫い。縫い合わされるのは布じゃない。空間と、視線と、逃げ道。
俺の喉が乾いた。病院で見た光の針が、今度は校舎の影で生まれ直す予感がする。
守る順番を間違えたら、また誰かが器扱いされる。器って言葉を思い出すだけで、胃の底が冷える。
角を曲がった瞬間、廊下の先に白い光が走った。槍の形だ。光が空気を刺し、刺さった場所に細い糸が残る。糸が床と壁を結び、結んだまま、静かに引き絞る。
「……来るぞ」
俺が言う前に、東郷の指が上がる。
「今」
その一言で、三人の呼吸が同じ温度になる。怖さが揃うと、動きが揃う。
流子が歯を見せた。
「やっとだな」
光の槍が、こちらの影を縫いに来た。
女王は誰にする?
-
アルファ
-
ララ·サタリン·デビルーク
-
エミリア