サムライガールの幼馴染みは王様を目指す(裏) 作:ボルメテウスさん
光の槍は刺さらない。刺すふりをして、空間を縫い留める。
一歩動くたび、足首の周りに透明な糸が絡み、絡んだ糸が“正しい位置”を押し付けてくる。正しい位置なんて、敵が決めるものじゃない。
「おい太郎、動くなって言うなよ、動かないと死ぬぞ!」
流子が吐き捨てる。強がりの中に焦りが混じる。
「動く、でも順番は守る!」
言い返しながら、腹の底で自分に言い聞かせた。王の言葉は味方を動かす、同時に自分の足も縛る。縛られて、ようやく判断が遅れない。
式が一歩、光の縁へ踏み込む。
「線が見える」
それだけで、光の槍が一瞬ためらった。ためらいは命だ。敵の迷いを一息ぶん借りる。
東郷が腕を上げ、息を整える。記憶の穴が揺れるのが見えた。怖さが喉へ上がる前に、言葉が落ちる。
「軌道が…縫い目の角度が一定です、返せます」
返せる。そう言った瞬間、病院の階段の匂いが蘇る。鏡面、反射、角度。あの時の背中。あの時の一言。東郷の中で何かが繋がり、繋がったぶんだけ表情が硬くなる。
「鮮血、切れ!」
俺が叫ぶと、流子の喉が鳴った。照れじゃない。覚悟の音。
「人衣一体…神衣・鮮血!」
言葉と同時に、片太刀バサミが夜を裂く。布じゃないものが、肌に馴染む。馴染みすぎて怖いのに、怖いからこそ切る。流子の刃は信念に似ている。真っ直ぐで、乱暴で、引かない。
光の糸が鮮血の刃に触れた瞬間、糸がほどけた。ほどけた糸は、空気に戻る前に震え、別の結び目へ逃げようとする。
「逃がすかよ!」
流子が追いかけそうになる。
東郷の指が上がる。
「今」
合図が刺さり、流子の足が止まる。止まった勢いが床に残り、残った勢いを刃に乗せ直す。突撃じゃない。庇いだ。前に出る熱を、守る形に畳む。
堕天使が笑った気配がした。姿は見えない。見えないまま糸だけが増える。
「王国の結び目は美しい、縫い留め甲斐がある」
声が空間の隙間から漏れる。優しい調子で、器を語る時と同じ温度だ。腹の底が煮えた。優しさの形をした支配ほど醜いものはない。
式が目線を上げる。
「成立を切る」
次の瞬間、白い光が一閃した気がした。切ったのは肉じゃない。逃げ道と、成立と、笑い声の居場所。
堕天使の糸が一瞬だけ宙に迷う。その迷いを、東郷が撃ち抜いた。
「撃ち抜け、禍神」
短い言葉。銃声は派手じゃない。むしろ乾いて、淡い。氷結の魔弾が糸の結び目に触れ、空間がきしむ。縫い目が凍って割れ、割れた隙間から堕天使の輪郭が浮いた。白衣の影、黒い翼、光の槍を握る手。
流子が唾を飲む。
「……やっぱり、変な医者だな」
皮肉で怖さを隠す。その癖、嫌いじゃない。
俺は斬月を呼ぶ。巨刀の重さが手に落ちた瞬間、心が少しだけ静かになる。刃物は嘘をつかない。嘘をつくのは、臆病な俺の方だ。
「終わらせる」
終わらせるのは敵じゃない。支配の形だ。縫い留められた誰かの呼吸だ。
堕天使が光の槍を振り、最後の糸でこちらを縛ろうとする。
流子が庇い、東郷が角度を読む。
式が逃げ道を切る。
合図が刺さる。
「今」
その瞬間、俺は叩きつけた。斬月の腹が空気ごと落ち、白衣の影が床へ沈む。沈むのは俺たちじゃない。沈めるのは、支配だ。
堕天使の目が揺れ、意識が途切れた。
勝った、より先に、息が漏れた。
倒れそうになる。けど倒れない。倒れそうな自分を、独りで抱えない。
「太郎、肩」
東郷の声が近い。
「触るな、別に…」
流子がぶっきらぼうに言い、でも反対側から支えてくる。
式が鼻で笑った。
「王様、学んだな」
俺は、悔しいのに笑いそうになって、喉の奥で息を噛んだ。
女王は誰にする?
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アルファ
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ララ·サタリン·デビルーク
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エミリア