サムライガールの幼馴染みは王様を目指す(裏) 作:ボルメテウスさん
「なあ、お前ら」
俺は改めて二人の姿をまじまじと見つめた。レオーネもエレンも、見た目はジューランドにいた頃と変わらない。獣耳も尻尾もある。でも、決定的に違うのは、街を歩く人間たちに溶け込めるレベルだということだ。
「お前ら、どうやってその姿になったんだ? ジューランドにいた頃は、もっとジューマンらしい姿だっただろ」
レオーネは自分の金髪を指でくるくるといじりながら笑った。
「なんだい少年、今さら気づいたのかい? アタシらがこうして人間の街を歩けてる理由さ」
「王者の資格だよ」
エレンが枕を抱きしめながら気だるげに答える。サメの尻尾が布団の上でぱたりと揺れた。
「お前がくれたでしょ。あれのおかげ」
俺は胸に手を当てる。王国の駒が静かに輝いているのを感じる。確かに、あの夏の終わりに、俺はレオーネとエレンに王国の駒を託した。王者の資格と融合した駒だ。
「あの駒が、お前たちの姿を変えたってのか?」
「そういうこと」
レオーネが自分の獣耳を指さす。
「完全に人間ってわけじゃないけどね。でも、こうして街を歩いても、周りは『ちょっと変わったコスプレしてる連中』くらいにしか思わないみたいだよ。実際、さっきまでこの街を歩いてたけど、誰にも通報されなかったし」
「すごいでしょ」
エレンが枕に顔を埋めたまま言った。
「私たち、もうジューランドだけの存在じゃない。お前の駒のおかげで、人間の世界にも来れるようになったんだ」
俺はしばらく言葉を失った。王者の資格と融合した王国の駒には、そんな力もあったのか。ジューマンの本能と力を引き出すだけでなく、人間の世界に適応する能力まで与えていたとは。
「でもよ、それってお前らにとってはどうなんだ? ジューマンとしての誇りとか、そういうのは」
「あんた、相変わらず余計なことばっか気にするね」
レオーネが俺の頭を軽く叩いた。
「ジューマンとしての誇りは変わらないさ。アタシは獅子のジューマン、レオーネだ。それはこの姿になっても変わらない。ただ、選択肢が増えただけさ。ジューランドにいることもできるし、こうして人間の街に来ることもできる」
「私も同じ」
エレンが顔を上げて、赤い瞳で俺を見つめた。
「サメのジューマンとしての本能も力も、ちゃんと残ってる。でも、それだけじゃなくて、お前みたいな人間の世界も見れるようになった。面倒だけど、悪くない」
俺は少しだけ口元を緩めた。そうか、こいつらは俺の駒をただの力としてじゃなく、新しい可能性として受け取ってくれたのか。
「ならいい。で、その駒はちゃんと持ってるんだろうな?」
「当然だろ」
レオーネが胸元から王国の駒を取り出す。獅子の紋章が刻まれた駒が、静かに光っている。エレンも同じように、サメの紋章の駒を見せてくれた。
「これがある限り、アタシらはお前さんの家臣だ。王サマ、よろしく頼むよ」
「面倒だけど、私も。お前の国のサメ担当」
俺は笑って、二人の肩を叩いた。
「良かろう。なら、その姿でこの街を楽しめ。ただし、枕は返せ」
「嫌」
「返せっつの!」
「王様のくせに器が小さい」
「うるせぇ!」
レオーネがまた豪快に笑う。その笑い声が部屋に響き渡る中、俺は思う。
「ちょっと話があるんだ、お前ら」
俺は枕を取り返すのを諦め、真面目な顔で二人に向き合った。窓から差し込む夕日が部屋をオレンジ色に染め、棚に並べたジューランドの写真を浮かび上がらせている。
「ついさっき、この街で変なのに遭遇したんだ。正体不明で、黒い靄を纏ってて、見た目は悪魔みたいな感じだった。最初はデスガリアンの残党かとも思ったんだが……どうも違う気がする」
レオーネが獣耳をピンと立て、笑顔を引っ込めた。
「デスガリアンに似てるけど違う、か」
「ああ。でも、もしかしたら関係があるかもしれねぇ」
エレンが枕から顔を上げ、赤い瞳を細める。サメの尻尾が警戒するようにぴたりと止まった。
「……いてもおかしくない」
「どういうことだ、エレン?」
「デスガリアンは元々、宇宙の無法者集団でしょ。ジューランドだけに来たわけじゃない。いろんな星を侵略してた。なら、残党が地球にいてもおかしくない。宇宙から来たんだから、地球に来てても不思議じゃない」
俺は腕を組み、エレンの言葉を頭の中で転がした。確かに、デスガリアンはジューランドだけの敵じゃなかった。宇宙を股にかける連中だったからな。
「その通りだ」
レオーネが腕を組み、珍しく真面目な口調で続ける。
「アタシらがジューランドで倒したのは、あくまでジューランドに来てた連中だけだ。全滅させたわけじゃない。宇宙にはまだ残党がいるかもしれない。そいつらが地球に流れ着いてても、なんら不思議じゃないよ」
俺は無言でうなずいた。さっき戦ったあの異形は、確かにデスガリアンそのものではなかった。でも、何か引っかかるものを感じたのは事実だ。あの黒い靄、理性のない暴走状態、人間の街への出現。全部が嫌な予感を呼ぶ。
「もしそうなら、面倒なことになりそうだぜ」
「だろうね」
レオーネがニヤリと笑う。でもその目は笑っていなかった。
「でも、面倒だからこそアタシらがいるんだろ、少年? お前さんの家臣として、な」
「面倒だけど、私もいる。王様が困ってるなら、仕方なく助ける」
エレンが枕をぎゅっと抱きしめながら言った。その尻尾が、やる気なさそうに見えて実は戦闘態勢に入っている証拠だってことは、俺にはわかる。
「良かろう」
俺は立ち上がり、胸に手を当てた。王国の駒が静かに輝き、王者の資格が熱を帯びる。
「まだ確証はねぇ。でも、もしデスガリアンの残党がこの街にいるなら、俺は王として見過ごせねぇ。ジューランドを守ったように、今度はこの駒王街を守る」
レオーネが立ち上がり、俺の肩をポンと叩いた。
「そうこなくっちゃ。で、どうする? 今からその正体不明の野郎を探すかい?」
「いや、今はまだ情報が足りなすぎる。それに、絶花がまだこっちに来てねぇ。お前らも来たばかりだしな」
俺は窓の外を見た。駒王街の夜景が広がり始めている。この街には何かが潛んでいる。でも、焦る必要はない。王として、じっくりと地盤を固めるべきだ。
「まずはこの街のことをもっと知ろう。どんな勢力がいて、どんな脅威があるのか。お前らも、人間の世界に慣れるついでに情報を集めてくれ」
「了解、王サマ」
「めんどいけど、やる」
俺は笑みを浮かべた。ジューランドで共に戦った仲間が、今ここにいる。あの夏の冒険は終わったが、新たな戦いの予感がすでに始まっている。
「よし、じゃあまずは飯だ。腹が減っては戦はできねぇからな」
「お、いいねぇ! 人間の世界のメシってのを食ってみたかったんだよ!」
「私も。特に魚料理が気になる。サメとして、同族の味は気になる」
「おい、それ共食いじゃねぇか!?」
レオーネが豪快に笑い、エレンが枕を放り投げて立ち上がる。俺はそんな二人を連れて、駒王街の夜へと繰り出すのだった。
女王は誰にする?
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アルファ
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ララ·サタリン·デビルーク
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エミリア