サムライガールの幼馴染みは王様を目指す(裏) 作:ボルメテウスさん
「そのメダルに頼っている時点で、お前の負けだ」
俺の言葉に、レイナーレの顔から余裕の笑みが消えた。彼女は忌々しげに歯ぎしりしながら、銀色のメダルを握りしめる。
「黙れ!このメダルの力があれば、アザゼル様にだって認められる!お前らごときに遅れは取らない!」
レイナーレが叫ぶと同時に、コンティニューメダルがまばゆい光を放った。黒い翼がさらに巨大化し、彼女の全身を闇のオーラが包み込む。光の槍が次々と生成され、その数は優に十本を超えていた。
「これで終わりよ!光の槍、全弾発射!」
無数の光の槍が、雨のように俺たちへと降り注ぐ。さっきまでの比ではない速度と密度だ。コンティニューメダルによって増幅された魔力は、確かに脅威と言える。しかし――
「甘いんだよ」
俺はイーグライザーを構え、飛来する槍を正確に斬り払った。赤い剣閃が闇を切り裂き、光の槍が次々と粉砕されていく。鷹の視力がすべての軌道を捉え、ワシの翼が回避行動を可能にする。一発たりとも、俺の装甲を貫くことはできない。
「なっ…!?」
「アタシたちを誰だと思ってるんだい?」
レオーネが笑みを浮かべ、両腕の爪を振るった。雷を纏った一撃が、残りの光の槍をまとめて粉砕する。彼女の百獣王化の力は、すでに十分に発揮されていた。金髪が逆立ち、獣耳と尾が現れ、全身から獅子の闘気が溢れ出している。
「この程度かよ、大将が言ってた堕天使ってのはよォ!」
ガーフィールが地を蹴り、一瞬でレイナーレの背後に回り込んだ。虎の瞬発力は、コンティニューメダルで強化された堕天使の動体視力すらも凌駕する。彼の拳がレイナーレの背中に叩き込まれ、黒い羽根が舞い散った。
「ぐあっ!」
「まだまだァ!」
ガーフィールは追撃の蹴りを放つ。レイナーレは必死に翼を広げて回避しようとするが、その動きはあまりにも遅い。ジューマンワールドで幾多の死線を潛り抜けてきた戦士の動きは、メダルごときで強化された付け焼き刃の力とは格が違うのだ。
「氷で止める」
エレンの冷ややかな声が響くと同時に、レイナーレの翼が凍りついた。巨大な鋏から放たれた氷の波動が、黒い翼を根元から覆い尽くす。飛行能力を奪われた堕天使は、無様に床へと落下した。
「な、なぜ…!このメダルがあれば、私は…!」
「無駄だ」
マンモスマンが一歩踏み出す。その巨体が放つ威圧感は、さながら氷河期の王者のようであった。彼は長い鼻を唸らせ、レイナーレの身体を絡め取る。
「ぐ…!離しなさい!」
「お前のメダルなど、所詮は借り物の力だ。オレたちは、自分の肉体と本能で戦ってきた。その差がわからぬか」
マンモスマンの鼻が締め上げられ、レイナーレの身体が宙に浮く。彼女は必死にもがくが、四百キロの巨体が生み出す力からは逃れられない。
マンモスマンの鼻が締め上げられ、レイナーレの身体が宙に浮く。彼女は必死にもがくが、四百キロの巨体が生み出す力からは逃れられない。堕天使の女は苦痛に顔を歪め、紫色の瞳が恐怖に見開かれた。
「な、なぜ…!このメダルがあれば…アザゼル様に認められるはずなのに…!」
「そのメダルはお前には過ぎた代物だ」
俺はイーグライザーをレイナーレの喉元に突きつけた。赤い剣先が白い肌に触れ、微かに血が滲む。彼女は悔しさと屈辱に唇を噛みしめながら、俺を睨みつけた。
「お前ら…獣の分際で…この私を…!」
「降伏しろ。そして、そのメダルと少女を渡せ」
「断る!」
レイナーレが叫んだ瞬間、彼女の手の中でコンティニューメダルが異様な輝きを放ち始めた。銀色の光がどす黒い紫に変わり、不気味な波動が周囲に広がっていく。俺は即座に危険を察知し、マンモスマンに叫んだ。
「離せ!何かおかしい!」
マンモスマンが鼻を解くと同時に、レイナーレの身体が黒い靄に包まれた。コンティニューメダルから溢れ出した闇が、彼女の全身を覆い尽くしていく。
「な、なんだ…これは…!?」
レイナーレ自身も予期していなかったのか、驚愕の声を上げる。彼女の身体がみるみる変形していく。白い肌は黒ずみ、紫色の瞳は血走り、長い黒髪が逆立った。背中の翼が何本にも分裂し、歪な形状に変化する。
「ぎ…ああああああっ!!」
絶叫が朽ちた教会に響き渡る。コンティニューメダルは本来、デスガリアンが使用する遺物だ。適性のない堕天使が無理に力を引き出そうとすれば、暴走は必然だったのだろう。
「大将、こいつ…!」
ガーフィールが警戒の声を上げる。レイナーレの身体は、すでに人型を保っていなかった。肉の塊が膨張し、翼が無数に生え揃い、無数の目が全身に開いていく。それはさながら、聖書に描かれた異形の天使――もはや堕天使ですらなく、ただの怪物だった。
「あ…ああ…」
アーシアが恐怖に震え、緑色の瞳から涙がこぼれ落ちる。俺は彼女を庇うように前に立った。
「下がっていろ。ここは俺たちが片付ける」
「ひ、ひどい…これが、コンティニューメダルの真の力…?」
「違う。これは力の暴走だ。奴はメダルに飲まれたんだ」
俺の言葉を裏付けるように、レイナーレだったものはさらに巨大化を続ける。肉塊は天井を突き破り、教会の屋根が崩れ落ちた。瓦礫が降り注ぐ中、俺たちは散開して回避する。
「なんてこった…デスガリアンの残したものが、こんなことになるなんてねぇ」
レオーネが唸るように呟く。かつて俺たちが戦った宇宙の無法者たちは、確かに凶悪だった。だが、その遺物がこの世界で暴走するとは、誰が予想しただろうか。
「やはり、コンティニューメダルは危険すぎる。すべて回収して破壊しなければな」
俺は上空を見上げた。夜の闇を背に、異形と化した堕天使が咆哮を上げる。その巨体は、もはや教会の尖塔よりも高く、全身から放たれる邪悪な波動が周囲の木々を枯らしていく。
「面倒なことになったな」
エレンが鋏を構え直しながら呟く。彼女の言う通りだ。敵は巨大化し、しかも理性を完全に失っている。交渉の余地はない。やるべきことは一つだけだ。
女王は誰にする?
-
アルファ
-
ララ·サタリン·デビルーク
-
エミリア