サムライガールの幼馴染みは王様を目指す(裏) 作:ボルメテウスさん
「おーい、大将!見てくれよ、今日の給料だぜェ!」
ガーフィールがドアを勢いよく開けて駆け込んできた。その手には数枚の一万円札が握られている。彼の全身は埃と汗にまみれ、作業着のあちこちが破れていた。おそらく虎の力で暴れすぎたのだろう。
「おう、やるじゃねぇか」
俺が札を受け取ると、ガーフィールは得意げに牙を剥いて笑った。
「へへっ、建設現場じゃ俺様の怪力が重宝されんだよ。鉄骨だって軽々運べるし、壊れかけの壁なら素手で壊せる。親方も『お前みたいなガテン系は初めてだ』って褒めてたぜェ!」
「そりゃあ良かったな。だが、加減は忘れるなよ。また壁を余計に壊したら給料から天引きだぞ」
「わ、わかってるって…」
ガーフィールがばつが悪そうに頭をかいた。どうやらすでに何かやらかしたらしい。まあ、彼の性格なら仕方ないか。
「ところで、マンモスマンはどうした?」
「あいつなら現場でまだ残業だ。『時間がない』って言ってな」
俺は窓の外を見た。遠くの建設現場で、巨大なクレーンが動いている。よく見ると、そのクレーンの先端にマンモスマンがぶら下がり、長い鼻で資材を器用に運んでいる姿が見えた。彼の怪力と鼻の器用さは、まさに建設現場の申し子である。人間の作業員たちは彼を「伝説のガテン系」と呼んで崇めているらしい。
「あいつ、時給いくらもらってるんだ?」
「さあな。でも、親方が『こんな逸材は初めてだ』って言って、特別手当をつけてくれたぜ」
「そりゃあ良かった」
俺がそう言った瞬間、今度は玄関のドアが勢いよく開かれた。
「ただいまー!王サマ、聞いてくれよ!」
レオーネが酒の匂いを漂わせながら、ご機嫌な様子で帰宅した。彼女の服装は、昼間の作業着とは打って変わって、派手なドレス姿である。胸元は大きく開き、太ももが惜しげもなく露出している。
「どうした、その格好」
「へへっ、スナックのママにスカウトされちまったよ。『あんた、顔とスタイルがいいからウチで働かないか』ってね。で、試しに今夜だけ手伝ったら、売り上げが三倍になったんだ!」
「三倍…」
俺は思わず額に手を当てた。無理もない。レオーネは身長百七十センチのグラマラスな美女で、しかも酒豪で話し上手。スナックのママとしての適性は抜群だろう。客たちは彼女の豪快な笑い声と色気にやられ、大枚をはたいて通い詰めるに違いない。
「それで、給料は?」
「これだよ!」
レオーネが封筒を取り出す。中には分厚い札束が入っていた。俺は目を丸くする。
「おいおい、一晩でこれかよ」
「だって、アタシが注いだ酒は特別だって、みんな喜んでくれたんだよ。それに、ちょっと肩をポンって叩くだけで、男たちが何杯もおかわりしてくれてね。商売って楽しいねぇ!」
レオーネは豪快に笑いながら、冷蔵庫からビールを取り出した。俺はため息をつきながらも、彼女の適応力には感心する。人間社会に来てまだ一週間も経っていないのに、すでに夜の世界で成功を収めているとは。
「で、エレンはどうした?」
俺が尋ねると、レオーネは苦笑しながら奥の部屋を指さした。
「あの子、今日も仕事見つからなかったみたいだよ。履歴書を書くのも面倒くさがるし、面接に行っても『めんどいから無理』って言って早々に帰ってくるし。さすがのアタシもお手上げさ」
俺は立ち上がり、エレンの部屋へと向かった。ドアをノックすると、中から気だるげな声が返ってくる。
「入っていいよ…」
ドアを開けると、エレンは布団にくるまりながら、枕に顔を埋めていた。サメの尻尾がだらりと垂れ、床の上で力なく揺れている。
「エレン、仕事探しはどうなった?」
「…無理」
「無理って、お前な」
「だって、めんどいんだもん。履歴書書くのも、面接行くのも、全部めんどい。人間の社会はめんどくさすぎる」
俺は彼女の隣に腰を下ろした。エレンは顔を上げず、枕に埋もれたまま呟く。
「私、どうせ接客とか無理だし。愛想笑いもできないし。尻尾も隠さなきゃいけないし。めんどくさい」
「そうか…」
俺はしばらく考え込んだ。確かに、エレンは無口で気だるげな性格だ。接客業は向いていないだろう。だが、彼女には他の三人にはない才能がある。
「エレン、お前の得意なことは何だ?」
「…寝ること」
「それ以外で」
「…鋏の手入れ」
「もっと他に」
そうして、俺達の仕事探しはまだまだ続きそうだ。
女王は誰にする?
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エミリア