サムライガールの幼馴染みは王様を目指す(裏) 作:ボルメテウスさん
「ただいま。それと、連れ帰ったぞ」
俺がアパートのドアを開けると、部屋の中から漂うポテトチップスとビールとサメの気配の混ざった空気が、一瞬にして凍り付いた。いや、正確には時が止まったのだ。読者諸君、信じがたい光景を目の当たりにした時、人間というものは思考を停止させるものである。だが、ジューマンとてそれは同じことらしい。
ソファでビールを煽っていたレオーネの手が止まり、床で寝転がっていたエレンのサメの尻尾がピタリと静止し、ポテトチップスを貪っていたガーフィールが口を大きく開けたまま固まり、窓の外から顔を突っ込んでいたマンモスマンでさえ、その巨大な鼻の動きを止めたのだ。
彼らの視線が、俺の背後の影、すなわち薄暗い路地裏でゴミを漁っていたダチョウ獣人、レイスに釘付けになった。
「……え?」」
レオーネが間の抜けた声を上げた。
「レイス…か? お前、レイスだよね?」
「は、はい! レイスです! お久しぶりです、みなさん!」
レイスが俺の背中からひょっこりと顔を出し、翼をパタパタさせて挨拶をする。その姿は、かつてジューマンワールドで群れを率いていた威厳あるリーダーというよりは、親に見つかってしまった問題児のそれであった。口元にはまだキャベツの千切りがついている。
「なんでお前がここにいんだよ!?」
ガーフィールがようやく口を閉じ、代わりに驚愕の叫び声を上げた。ポテトチップスの袋が床に落ち、カサカサと音を立てる。
「それは私も聞きたいですねぇ。まさか、ゴミ箱の住人になったとか?」
エレンが冷ややかな視線でレイスを見つめる。サメの尻尾がゆらりと揺れ、嫌味と好奇心が入り混じった波動を放っていた。
「ち、違います! それはその…腹が減って…いや、人間の世界の食糧事情を調査してたんです!」
レイスが顔を真っ赤にして反論するが、説得力のかけらもない。
「調査って、ゴミ箱を? 漁ってただけじゃない」
「めんどい言い訳だねぇ」
レオーネとエレンの冷徹なツッコミが突き刺さる。レイスはシュンと翼を縮こまらせた。だが、ここで最も重要な疑問が投げかけられることとなる。
「待てよ」マンモスマンが低い唸り声で言った。「お前は群れのリーダーだったはずだ。なのに、なぜ一人でこんなところにいる?」
その言葉に、部屋の空気が再び緊張した。リーダー。ダチョウ獣人の群れを統べる者。それがレイスだ。だが、今の彼女は、どう見ても頼りなげな一人の少女に過ぎない。
「それが…気がついたらここにいたんです。他のみんなはどうなったのか、私もわからなくて…」
レイスの声が震え、褐色の瞳に再び涙が浮かぶ。リーダーとしての威厳は、見知らぬ世界に放り出された恐怖の前では無力だったのだ。
「なるほどな。お前も俺たちと同じってわけか」
俺は腕を組み、レイスの前に立った。彼女は不安そうに俺を見上げる。
「安心しろ。ここは俺の城だ。お前の群れじゃないが、ここにいれば安全は保証する。飯も食わせてやる。ゴミ箱の残飯じゃなく、ちゃんとしたな」
「王様…」
レイスの目が輝いた。涙が引っ込み、代わりに信頼と安心の光が宿る。
「というわけだ。こいつも今日から俺の家臣だ。文句あるか?」
俺は全員を見渡した。レオーネはビールを一口飲み、ニヤリと笑った。
「いやね、王サマがそう決めるなら異議はないよ。それに、賑やかなのは嫌いじゃないしね」
「めんどいけど、まあいいわ。鋏の手入れの相手が増えただけ」
エレンがぼそりと言い、布団に潛り直す。
「俺様のポテトチップス勝手に食うなよ!?」
ガーフィールがレイスに指を突きつける。
「それは約束できないな…」
「約束しろよ!」
「時間がない。我々はこれからどう動くかだ」
マンモスマンが静かに言った。その言葉に、俺は頷いた。
「ああ。レイスが来たってことは、他のジューマンもこの世界に来ている可能性がある。探索の範囲を広げるぞ。それに、こいつの脚力は伊達じゃない。配達業も人手不足だ」
「配達? 私が?」
レイスが目を丸くする。
「ああ。お前のダチョウの脚なら、バイクより速く走れるだろ。ウーバーイーツ、始めるぞ」
「ウーバー…イーツ? なにそれ、美味しいの?」
「仕事だ。働かざる者食うべからずだ。ゴミ箱漁りはもう終わりだぞ」
俺はレイスの肩を叩いた。彼女は驚きつつも、やがて強く頷いた。
「わかりました! 私、リーダーとして、王様の期待に応えてみせます! 絶対に!」
「よし。なら歓迎する。ようこそ俺の国へ、レイス」
こうして、俺の家にまた一人、厄介で、食費のかさむ、だが頼れる家臣が加わったのだった。窓の外からマンモスマンが「狹くなるな」と呟き、エレンが「うるさい」と言い、ガーフィールが「俺様のベッドは死守する!」と叫び、レオーネが笑い転げる。
王の城は今日も騒がしい。だが、その騒がしさこそが、俺の国の証だ。
女王は誰にする?
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アルファ
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ララ·サタリン·デビルーク
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エミリア