サムライガールの幼馴染みは王様を目指す(裏) 作:ボルメテウスさん
一週間という歳月は、砂漠の砂が指の間から零れ落ちるが如く、あるいはダチョウの脚がアスファルトを蹴り飛ばすが如く、瞬く間に過ぎ去った。
レイスが配達業を始めてから七日。結果から言えば、これは大正解だった。ウマ娘の爆発的な脚力と、ダチョウ獣人の異常なまでの持久力。この二つが合わされば、自転車もバイクも真っ青な配達速度が出る。曰く、「タイヤがパンクする前に着いてしまった」、曰く、「客がドアを開ける前に配達完了してしまった」という怪談めいた報告が毎晩俺の耳に入ってきた。まあ、タキオンが「配達ルートの最適化」なる名目で近所のメッシュWi-Fiをハッキングしたり、レイスが「餌を見つけた」と言っては店先の食べかけの惣菜を漁ったりする問題行動はあるにせよ、彼女たちは確かに俺の国の歯車として機能し始めていた。
放課後の夕暮れ時。俺は駒王学園の中等部から高等部の裏手へと続く道を歩いていた。今日は二人の配達終わりに合流し、共に帰る約束をしていたからだ。夕日はアスファルトを赤く染め、どこか血の色に似た不吉さを感じさせる。
「さて、今日もあいつらがどんな騒動を起こしてるか…」
俺が軽く伸びをし、欠伸交じりにそう呟いた瞬間だった。
背中の皮膚が粟立ち、首筋に冷たい蛇が巻き付いたような悪寒が走る。鷹の視力をフル稼働させるまでもなく、俺の本能が叫んだ。「伏せろ」と。
「──ッ!」
俺は地面に向かって身体を投げ出した。次の瞬間、俺の頭上を銀色の閃光が切り裂いていく。風圧だけで頬が切り裂かれ、アスファルトの路面がバターのように溶かされて真っ二つに切断された。もし、あの一瞬の回避が遅れていれば、今頃俺の胴体は綺麗に輪切りになっていただろう。
「あはっ! あはははは! 惜しい、惜しいですねぇ! ギリギリで避けちゃいましたね、このクソガキが!」
耳障りな、金切り声のような笑い声が路地裏に響き渡った。俺は素早く立ち上がり、塀を背にして敵を睨みつける。
そこに立っていたのは、歪んでいた。
「なんだ、お前は」
俺が低く問いかけると、その狂人はだらしなく口元から涎を垂らしながら、下品に舌打ちをした。
「なんだはこっちのセリフですよォ! 私の美しき『光』の実験台にしようと思ったら、避けるなんて野暮なガキだ! ああ、いいんです、いいんですよぉ? 避けるからこそ、追い詰める快感が増すってもんですからねぇ!」
男は剣を舐め回すように舌を這わせ、恍惚とした表情で身悶えした。
「ああ…この剣が肉を焼く音…悲鳴と同じ周波数で泣き叫ぶんですよぉ…。ねぇ、お前の其の小僧も切り落として、代わりにこの剣をブチ込んでやりましょうかねぇ? さぞや気持ちいいでしょうよォ!」
吐き気がする。こいつは堕天使ですらない。ただの狂人だ。信仰を失い、欲望に取り憑かれたはぐれエクソシストの成れの果て。だが、その実力は本物だ。先ほどの斬撃の威力、そして速度。伊達に聖なる剣を振り回しているわけではない。
「俺の股間を狙うとは、趣味が悪すぎるな」
俺はジュウオウチェンジャーに手をかけた。
「俺は王になる男だ。お前のようなゲスに、王の宝を触らせるわけにはいかない」
「王? ぎゃははは! なんですかそれ! 中二病ですかぁ? 殺してあげますよ、楽しく! ギタギタにして、私の聖水で穢してあげますよォ!」
男が叫びと共に突っ込んでくる。剣が不規則に明滅し、熱線を撒き散らす。俺は後ろに跳び退きながら、王者の資格を掲げた。
「本能覚醒!」
赤い光が夕暮れの路地裏を暴力的に照らし出す。ワシの翼が背中から展開し、視界が一気にクリアになる。男の動きが、スロー映像のように捉えられた。
「大空の王者、ジュウオウイーグル!」
変身完了と同時に、俺は地上を蹴った。空へ。大空こそが俺の領域だ。
「逃げるんですかァ! 臆病者め!」
「逃げるんじゃない。有利な位置を取るだけだ」
俺は空中で急制動をかけ、急降下する。男の剣が空を切り、その隙を突いて、俺はイーグライザーを振るった。
「遅いんだよ、お前の振りは!」
赤い剣閃が男の腕を掠め取る。肉が裂け、血が噴き出す代わりに、焼け焦げた臭いが鼻を突いた。
「ぐあぁっ!? ぎぎぎ…! 痛い…痛いですよぉ! でも、イイ…!」
男は傷口を押さえながら、顔を痙攣させて笑った。まさに狂人。痛みすら快楽に変換している。
「やりますねぇ…! なら、本気で行きますよ! このクソムシめがァ!」
男は剣を両手で構え、狂ったような叫び声と共に突っ込んできた。光の剣が先程より鋭く、明らかに殺意の波形を変えている。
俺は翼を広げ、迎え撃つ姿勢を取った。王の威厳にかけて、こんな狂人に遅れを取るわけにはいかないのだ。
女王は誰にする?
-
アルファ
-
ララ·サタリン·デビルーク
-
エミリア