サムライガールの幼馴染みは王様を目指す(裏) 作:ボルメテウスさん
「さあ、行くぞ。変な臭いさせたままじゃ、店に入れねぇからな」
俺はレイスの翼からゴミの欠片を取り除き、食堂へと促した。彼女は鼻を啜りながら、嬉しそうについてくる。その足取りは、再会の喜びと空腹の悲鳴が入り混じった、奇妙なリズムを刻んでいた。
目的地は、近くの「大盛り食堂」。看板には「チャレンジメニュー完食で無料!」の文字。読者諸君、ここで一つの疑問が浮かぶかもしれない。なぜ、わざわざチャレンジメニューなどという、胃袋を破裂させるような代物を選ぶのかと。答えは簡単だ。目の前にいるのが、かつて砂漠の高原を統べた、底なしの胃袋を持つダチョウ獣人だからである。彼女の食欲は、人間の常識の枠には収まらない。
店に入ると、暖簾をくぐった瞬間に濃厚な醤油と出汁の香りが鼻を突いた。深夜に相応しい、脂っこい、しかし抗いがたい誘惑の香りだ。客はまばらで、カウンターの奥には眠そうな店長が座っている。
「いらっしゃい。あんた、また来たのか?」
店長が俺を見て、あきれたように言う。俺はこの店の常連…というわけではないが、ガーフィールたちを連れてきたことはある。
「今日はこいつの相手だ。チャレンジメニュー、一つ頼む」
俺がレイスを指さすと、店長は目を丸くした。無理もない。レイスは今にも倒れそうなほどやつれているが、その眼光には飢えた獣の色が宿っている。
「へぇ…お嬢ちゃん、食えるのか? あれ、普通の3倍はあるぜ」
「食えます! お腹空いて死にそうなんです! 早く! 早くご飯を!」
レイスがカウンターをバンと叩く。翼の衝撃で、割り箸が飛び散った。店長は「ひぃっ」と声を上げつつ、厨房へと逃げ込んだ。
数分後、運ばれてきたのは、まさに異常であった。
「うわぁ…」
俺は思わず声を漏らした。丼が、テーブルを埋め尽くしている。いや、丼などという可愛いものではない。それは桶だ。山盛りの白米の上に、これでもかと煮込み十足の牛スジが乗っている。湯気がもうもうと立ち上り、甘辛いタレが滝のように縁から溢れ出している。まるで、食欲という名の活火山がテーブルの上で噴火を起こしたかのような光景であった。
「これ…全部私の?」
レイスの目が、輝いた。涙でぐしゃぐしゃだった顔が、一瞬にして歓喜に歪む。翼が震え、ダチョウの脚が落ち着きなく床を掻いた。
「ああ、全部お前のだ。食えよ」
俺が言うが早いか、レイスは箸を手に取った。いや、掴んだという表現の方が正しいか。彼女は箸を槍のように構え、肉と米の山へと突撃した。
「いただきまーーーす!!」
叫び声と共に、彼女の口が開いた。限界まで開かれた顎が、巨大な肉の塊を一息で呑み込む。咀嚼などしていない。まるで蛇が獲物を丸呑みするかのような、原始的な捕食行動だ。喉が大きく膨らみ、肉の塊が食道を滑り落ちていくのが外からでもわかる。グプッ、グプッという嚥下音が、静かな店内に響き渡った。
「うまっ! うまい! じゅるる!」
彼女は叫びながら、米をかき込む。口の端からタレが垂れ、頬に米粒がついているのも構わず、次々と流し込んでいく。その姿は、上品な女性の食事とは対極にある。生きるために食う、という生存本能の塊だ。だが、その必死さが、どこか愛おしくもある。
「おい、噛めよ。腹壊すぞ」
俺が注意しても、彼女の耳には入っていないようだ。次々と山を削り、あっという間に半分まで胃袋に収めた。周囲の客が、驚愕の目でこちらを見ている。「あんな細い子が…」「吸い込んでるぞ…」という囁き声が聞こえるが、気にする余裕などないだろう。
「ぷはぁ…! これ、人間の世界のご飯ですか!? ジューマンワールドのなんかより、ずっと美味しい!」
レイスは口の周りをタレだらけにしながら、幸せそうに叫んだ。そして、残りの半分も、猛烈な勢いで平らげていった。最後の一粒まで綺麗に掃い、丼をひっくり返して見せる。
「完食!!」
彼女は大きく息を吐き、満足げに腹をさすった。ダチョウの脚の上、腹部がぽっこりと膨らんでいる。そこへ手を当てると、中で消化活動が始まったのか、グゥゥゥと大きな音が鳴った。
「…すげぇな、お前」
俺は呆れるしかなかった。人間離れした食欲。だが、それがレイスだ。彼女は涙を拭い、へにゃりと笑った。
「ごちそうさまでした、王様。お腹いっぱい…生き返った」
その笑顔を見て、俺は思った。こいつを家に置くのは、食費がかさむぞと。だが、王の懐は広い。一人や二人、食い扶持が増えたところで、どうということはない。
「さて、腹も膨れたし、行くか。俺の家に」
「はい! お邪魔します!」
レイスは立ち上がり、翼を広げた。その顔には、再会の安堵と、これからの生活への期待が浮かんでいた。俺たちは連れ立って、夜の街を歩き出した。彼女の満腹の腹が、月明かりに照らされて、妙に頼もしく見えた。
女王は誰にする?
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アルファ
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ララ·サタリン·デビルーク
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エミリア