サムライガールの幼馴染みは王様を目指す(裏) 作:ボルメテウスさん
夜の駒王学園に足を踏み入れた瞬間、俺は自分の目を疑った。いや正確には鷹の視力が捉えた光景を脳が拒絶したのだ。校庭の芝生は無惨に抉られ、至る所に大小のクレーターが穿たれている。正門の鉄柵はねじ曲がり、まるで巨人が玩具のように握りつぶしたかのように無残な姿を晒していた。校舎の窓ガラスは粉砕され、冷たい夜風が割れた穴からヒュウヒュウと吹き込んでいる。その風に混じるのは土の匂い、焦げた金属の臭い、そして微かにだが確かに鼻をつく血の鉄錆のような匂いだった。
空気が震えていた。物理的に震えているのだ。目に見えない魔力の波が校庭を中心に同心円状に広がり、俺の肌をピリピリと刺している。鷹の視力をフル稼働させずとも、ここが戦場であることは火を見るよりも明らかだった。
「王様…これ…」
レイスが息を呑む。彼女の翼が緊張に震え、オレンジ色の羽毛が逆立った。ダチョウの脚が無意識に地面を一度強く蹴り、いつでも走り出せる準備を整えている。俺も同感だった。戦場はすでに開かれている。そして俺たちの到着より前に、すでに決着がつきかけていた。ただしこちらの圧倒的な不利に。
校庭の中央で、紅の髪の女──リアス・グレモリーがその眷属たちと共にコカビエルと対峙していた。いや対峙という言葉は正しくない。一方的に追い詰められていたのだ。蹂躙され、踏みにじられ、虫のように踏み潰されようとしている。それは戦いと呼ぶにはあまりにも惨い光景だった。
「あははっ! どうした悪魔の姫君よ! その程度か? あのグレモリー家の力とやらは!」
コカビエルの閧笑が夜の校庭に木霊する。その笑い声は狂気そのものであり、夜空に浮かぶ満月すら歪めて見せるほどの禍々しさを含んでいた。
リアスの眷属たちはボロボロだった。金髪の男剣士は剣を杖がわりにやっと立っている。その表情は苦痛に歪み、息をするたびに肩が大きく上下している。
「くっ…!」
リアスが歯を食いしばり破壊の魔力を放とうとする。紅い光が彼女の手のひらに集束するが、コカビエルの圧倒的な魔力がそれを押し潰す。まるで暴風の前のロウソクの炎のように、リアスの魔力はあっけなく掻き消された。
コカビエルがエクスカリバーを振り下ろした。聖なる光の刃が一直線にリアスへと迫る。彼女は庇うように前に出ようとした金髪の男剣士を背後に押しやり紅い魔力を展開した。だがその障壁は蜘蛛の巣のように脆い。先ほどからの連戦で魔力は底をつきかけている。今の彼女にあの一撃を防ぐ力は残っていない。
「消えろ悪魔!」
コカビエルの叫びと共に光の刃が迫る。リアスの青い瞳が絶望に染まる。金髪の男剣士が必死に走るが間に合わない。眼鏡の女が悲痛な声で何かを叫ぶが言葉になる前に空気を焼く音にかき消された。
その瞬間だった。
俺は思ったよりも速く動いていた。いや正確には動く前に既に体が跳んでいたのだ。脳が判断するより先に王の本能が命じたのだ。「守れ」と。肋骨の激痛も傷口の疼きも今は関係ない。俺の国で俺の知る者が殺されるのを黙って見ているわけにはいかない。
赤い閃光が夜空を切り裂いた。
「なっ…!?」
コカビエルの表情が初めて驚愕に歪む。彼の放った聖なる一撃は赤い装甲に覆われた翼によって真っ二つに裂かれたのだから無理もない。光の破片が火花のように散り校庭を照らし出す。その残光の中で俺はリアスの前に着地した。アスファルトを蹴る衝撃が全身を走り裂けた傷口に電流のような痛みが走る。だが膝など折れるものか。王が膝をつくのは命を落とす時だけだ。
「大空…の王者…?」
リアスが驚きに目を見開いている。その紅い瞳に俺の姿が映っている。赤き翼赤き装甲鷲の鋭い眸。先日路地裏で遭遇した時と同じ姿。だが今夜の俺はあの時とは違う。王の駒が胸の奥で猛然と脈打ち全身に熱を送り込んでいる。負傷した身体に鞭打つその熱こそが王の証なのだ。
「お前…確かあの時の…」
「話は後だリアス・グレモリー。今はこいつを止めるのが先だ」
俺は振り返らずに言った。背後でリアスが息を呑む気配がする。金髪の男剣士が驚きの表情でこちらを見つめている。巫女の女もまた膝をつきながら顔を上げた。倒れていた猫耳の少女が微かに動き意識を取り戻したのかうめき声を漏らす。全員ボロボロだ。だが生きている。まだ間に合った。
女王は誰にする?
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アルファ
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ララ·サタリン·デビルーク
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エミリア