サムライガールの幼馴染みは王様を目指す(裏) 作:ボルメテウスさん
朝の駒王学園は、いつも通り騒がしい。
「聞いたかよ、昨日の夜、また変な光が校庭にあったって話」
「ああ、噂になってるよな。最近この街物騒だよな」
校門をくぐるなりそんな会話が耳に入ってくる。俺はあえて表情を変えず、そのまま中等部の校舎へ向かおうとした。昨日の夜の戦いの余波はやはり噂になっているらしい。コカビエルとの決戦の場となった校庭は、朝になっても魔力の残滓が漂っていてそれが「変な光」とやらの正体だろう。
「……ん?」
ふと、視線を感じた。鷹の視力が無意識に反応し周囲をスキャンする。校門の脇、銀杏の木の下に一人の男が立っていた。
白髪。年の頃は二十代前半か。学生服を着ているがどう見ても高校生には見えない。いや、この街には悪魔やら堕天使やらが學校に潛んでいるんだ。年齢がどうこう言っても仕方ないか。
問題は、その男が真っ直ぐに俺を見ていることだった。
しかも、その口元には笑みが浮かんでいる。好意的なのか挑発的なのか、どちらとも取れる不気味な笑みだ。
俺は少しだけ足を止め、男を見つめ返した。向こうは俺が足を止めたのを確認するとゆっくりとこちらに歩いてくる。その歩き方には一切の隙がない。まるで、戦場を歩くのが日常であるかのような自然な身のこなしだった。
「やあ」
男は俺の前に立つと、気軽な調子で声をかけてきた。
「君が、唯我太郎くんだね」
「……誰だ、お前」
俺は警戒を解かずに問い返した。王たる者初対面の相手に簡単に気を許すわけにはいかない。こいつからは、明らかに只ならぬ気配がする。それも先日の白銀の鎧の男と同類の。
「俺はヴァーリ。まあ、通りすがりの戦闘狂ってところだ」
男はあっさりと名乗った。ヴァーリ。聞いたことのない名前だが。
「戦闘狂が何の用だ」
「用、というほどでもない。昨夜は見事だったなと思ってね」
男の言葉に、俺の背筋が凍った。
「……昨夜、何のことだ」
「とぼけなくていい。校庭で、堕天使の幹部を倒したんだろ。あのゴリラの姿悪くなかった」
こいつ、知っている。俺がジュウオウイーグルでありジュウオウゴリラに変身して戦ったことまで。さらに言えば、昨夜のあの戦いをどこかで見ていたということだ。
「お前、まさかあの白銀の鎧の男か」
「おや、わかるか」
ヴァーリは嬉しそうに笑った。その目に宿っているのは、純粋なまでの戦闘への渇望だ。俺が警戒を強めれば強めるほど彼の笑みは深くなっていく。
「あの時は、面白いものを見た。聖剣を砕き堕天使を素手で打ち倒す。ああ、君は強い。まだまだ強くなれる器だ」
「お前も戦いたいだけか」
「もちろん。だが、今すぐとは言わない。君はまだ俺と戦うには準備が足りない」
ヴァーリはそう言うと軽く首を傾げた。まるで、獲物を品定めする肉食獣のような視線だ。俺はその視線を受けても一歩も引かない。
「お前みたいなのを待たせるつもりはない。俺は王になる男だ。戦いたいならいつでも相手をしてやる」
「ふっ……いいね、その目だ」
ヴァーリは満足そうに笑みを深めた。そして、俺の肩を軽く叩くと校門の外へと歩き出した。
「また会おう、唯我太郎。次はもっと面白い場所でな」
一方的に言い残して、男は去っていった。
俺はしばらくその背中を睨みつけていたがやがて小さく息を吐いた。白銀の鎧の男の正体がわかった。そして、その男は確実に俺を狙っている。戦闘狂の視線がこれからもつきまとうのだろう。
「上等だ。王の道は、強敵で舗装されている」
俺は呟き、背筋を伸ばして校舎へと歩き出した。
女王は誰にする?
-
アルファ
-
ララ·サタリン·デビルーク
-
エミリア