サムライガールの幼馴染みは王様を目指す(裏) 作:ボルメテウスさん
翌朝。
太陽が昇りきらない時間帯。窓の向こうはまだ薄青い。
昨夜の円卓会議――いや六畳一間の作戦会議の後、俺はほとんど眠れなかった。布団の中で天井を見つめながら、三大勢力の会議とアザゼルのこととを行ったり来たりしていた。結論は出ない。出ないまま朝が来た。
キッチンから物音がする。誰か起きたのか。まあ七人暮らしだ。誰かしら早起きしている。
俺は縁側に出た。
冷たい朝の空気が頬を撫でる。昨日の深夜とは違う種類の冷たさだ。清々しい。少しだけ頭が軽くなる気がする。
(三大勢力の会議か…)
縁側に腰を下ろし、ぼんやりと庭を見渡す。狭い庭。雑草が生い茂っている。手入れする暇がない。王の家は王らしくない。
(ガーフィールとレイスが動きを追っている。ユキカゼが情報を集めている。あとは結果を待つだけだ)
待つ。また待つ。王の仕事は待つことだと言い聞かせているが性に合わない。
「おはよう太郎殿。早起きでござるな」
背後からユキカゼの声。振り返ると狐耳をぴこぴこさせながら彼女が立っていた。既に活動モードだ。朝から元気すぎる。
「お前こそ早いな。昨日の夜も出歩いてたのに」
「狐は朝夕が得意でござるよ」
「なるほど」
会話が途切れる。沈黙。また思考が三大勢力の会議に向かう。
(会議に介入するかしないか。アザゼルが来たらどうするか。情報が足りない。やっぱり情報が)
思考がグルグルと同じ場所を回り始めた。その時だ。
「あ」
ユキカゼが小さな声を上げた。狐耳が一斉に前に傾く。何かを感知したのだ。
「太郎殿。前方に気配。一人。こちらに向かってくるでござる」
「!?」
俺は立ち上がった。縁側から庭を見渡す。朝もやの中から、人影が近づいてくる。
迷いのない足取り。まるで最初からここが目的地だと分かっていたかのような直線的な歩み。
人影が朝もやを抜けた。
白い。
銀髪。
長身。
青いコートを翻し、何食わぬ顔で俺の家の庭を歩いてくる。そう堂々と。門も塀もないから別に不法侵入ではないが、この時間にこの場所にこの男が現れること自体が異常だ。
「…ヴァーリ」
名前が口をついて出た。
一度だけ会ったことがある。謎の男。俺たちの正体を探るような問いかけをしてきて、それきりだった。だが忘れないあいだに二度目が来た。しかも朝から堂々と。
「よう、唯我太郎」
ヴァーリが立ち止まった。庭の真ん中で。雑草を踏みしめて。相変わらず涼しい顔をしている。朝の散歩のついでに寄ったような軽さだ。
「朝から何の用だ」
警戒心が即座に戻ってくる。昨夜のアザゼルの件で俺の警戒レベルは常にマックスだ。ユキカゼも後ろで臨戦態勢に入っている。狐耳が伏し、尻尾がぴんと伸びている。
「用事は一つだ」
ヴァーリがコートの内ポケットから何かを取り出した。
封筒だ。
白い封筒。上品な封蝋が施されている。どこかの舞踏会の招待状みたいだ。
「三大勢力の会議への招待状だ」
「…は?」
俺の声が裏返った。
「三大勢力の会議に、お前を招待する。俺が持ってきた」
ヴァーリが封筒を俺に向かって差し出した。朝もやの中、白い封筒が微かな朝日を受けて輝いている。
(待て待て待て)
思考が追いつかない。三大勢力の会議に俺が招待される? 昨日の夜、会議の動きを追えと言った矢先に、今度は招待状だと? 展開が早すぎる。まるで誰かが俺たちの会話を聞いていたかのようなタイミングだ。
「なぜ俺が招待される。俺は三大勢力の人間じゃない」
「だからだ」
ヴァーリがあっさりと言った。
「三大勢力以外の勢力が動いている。無視できない存在になりつつある。お前たちのことを調べる声が各勢力から上がっている」
(バレているのか。やはりバレているのか)
背筋が冷たくなる。ユキカゼが後ろで微かに息を呑んだのが分かった。
「会議にお前が来れば、お前の立場を説明できる。来なければ、不在を理由に各勢力が好きに判断する」
つまり来ないと勝手に敵認定される可能性があるということか。
「正体を明かしたくない場合もあるだろう」
ヴァーリが付け加えた。
「変身した状態で来てもいい。顔を見せたくないならそれで通せばいい。会議は正体の確認が目的じゃない。お前たちが何者で何を考えているか、それを確認することが目的だ」
(変身した状態でいい、か)
俺は目の前の白い封筒を見つめた。昨日の夜、ユキカゼが持ち帰った情報。アザゼルとの接触。そして今朝の招待状。全てが繋がり始めている。
(行くべきか)
判断が迫られている。王として、仲間を危険に晒すか。それとも会議に出て正体を守りつつ立場を明確にするか。
俺はユキカゼを一瞥した。彼女は俺の判断を待っている。狐耳が伏せたままだが、尻尾の揺れが「拙者は太郎殿に従う」と告げている。
俺は封筒に手を伸ばした。
白い紙の冷たい感触。
「受ける」
短く言った。
「俺は会議に出る。変身した状態でいいと言ったな。それで行かせてもらう」
ヴァーリが小さく頷いた。
「いい判断だ。会議の日時と場所は封筒の中に入っている。日時は明後日。場所は旧校舎の地下だ」
「分かった」
「じゃあな」
ヴァーリは背を向けた。あっさりと。来た時と同じように。
銀髪が朝風に揺れる。コートの裾が翻る。その背中が朝もやの中に消えていく。
「太郎殿」
ユキカゼが口を開いた。
「本当に受けるでござるか」
「ああ。受ける。逃げたらそれまでだ。王が逃げてどうする」
「…左様でござるな」
ユキカゼの狐耳が、ゆっくりと立ち上がった。
俺は白い封筒を握りしめた。
明後日。三大勢力の会議。変身した状態で出席する。
王として、姿を隠しながらも姿を示す。
矛盾しているが、今の俺にできる最善の選択だ。
「皆に伝えなきゃな」
俺は縁側から立ち上がった。
白い封筒を握りしめたまま、俺は家の中へ戻っていった。
女王は誰にする?
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アルファ
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ララ·サタリン·デビルーク
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エミリア