サムライガールの幼馴染みは王様を目指す(裏) 作:ボルメテウスさん
会議は、静かに始まった。
円卓を挟んで三勢力の代表が座している。悪魔のリアス・グレモリー。天使のミカエル。堕天使のアザゼル。それぞれが、この世界の秩序を背負った顔で並んでいる。
俺たちは円卓の外周に立ったままだ。座る席は用意されていない。いや正確には椅子はある。だが変身した戦士が椅子に座るというのは、なんというか、座り心地が心配だ。尻尾のあるユキカゼに至っては論外だ。
「では、まずは現在の状況確認から入りましょうか」
リアス・グレモリーが口を開いた。赤い唇が蝋燭の光を受けて艶めかに動く。可憐な声だが内容は事務的だ。
「悪魔側の現状を報告いたします。現在、我々悪魔勢力は駒システムの安定運用を最優先課題としています。転生悪魔の増加に伴う眷属管理の徹底および、人間社会との接触ルールの再整備を進行中です」
駒システム。その単語が出た瞬間、俺の背筋が伸びた。
(悪魔の駒の話か)
ユキカゼが右側で微かに気配を変えたのが分かる。狐耳――いや、ヘルメットの狐装飾がぴくりと動いている。彼女もこの単語に反応している。
「駒システムの安定運用とは具体的には?」
アザゼルが頬杖をついたまま問いかけた。興味なのか確認なのか分からない軽い口調だ。
「転生悪魔の適正判定の厳格化および、駒の消費バランスの最適化です。近年、転生悪魔の数が増加傾向にあり、駒の不足が懸念されています」
「駒の不足か。それは深刻だな」
アザゼルが大して深刻そうじゃない声で言った。
俺は黙って聞いていた。悪魔の駒の仕組み。他の種族から悪魔に転生する際に与えられる駒。資質に応じた適正数。それが不足している。つまり、悪魔の勢力は拡大しているが、それを支えるシステムに限界が見え始めているということだ。
(俺の王国の駒と同じなのかどうか。まだ分からない。だが似すぎている)
胸の奥で、王国の駒が微かに脈動した。まるで呼応するように。
「続いて、天使側の報告をお願いします」
ミカエルが穏やかに頷いた。
「天使側は、信仰の回復を最優課題としております。人間社会における信仰心の低下が続いており、これにより天使の戦力低下が懸念されています。また、堕天使との協定に基づく聖地管理の共同を継続しています」
信仰。天使の力の源が信仰なのか。人間の信仰心が低下すれば天使が弱くなる。なるほど。それは厄介だ。人間が天使を信じなくなれば天使は消滅するのか、それとも単に弱体化するだけなのか。
「次に堕天使側の報告を」
アザゼルが、だらりと手を挙げた。
「堕天使側は平和です。目立った問題はない。強いて言えば、神器保有者の監視体制の更新くらいかな」
神器保有者の監視。
その単語に、俺の拳が握られた。
(監視。つまり俺たちも監視対象ってことか)
アザゼルの視線が、俺に流れた。ニヤリと笑う。やはりそうだ。この男は俺たちを監視している。いや、もっと正確に言えば、俺の神器を観察している。
「アザゼル。あなたの組織の問題は、いつも個人的な関心と公的な職務の境界が曖昧なことです」
ミカエルが穏やかに、だが容赦なく指摘した。
「はは。商売と趣味が一致してるだけだろ。羨ましいか?」
「羨ましくありません」
即答したミカエル。天敵同士の会話だ。だがこの二人のやり取りには、長い歴史に裏打ちされた奇妙な信頼関係があるように見える。
「…それで」
リアス・グレモリーが、俺たちに向き直った。
「そろそろ、貴方がたのお話も伺いたいのですが」
来た。
俺は覚悟を決めた。
「貴方がたはいずれの勢力にも属さない。しかし、この会議に出席するだけの立場がある。ヴァーリ・ルシファーからの推薦状も届いています。だが、我々は貴方がたが何者なのか、まだ理解していません」
正論だ。俺たちが何者か。それを説明しない限り、この会議にいる意味がない。
「ジュウオウイーグル殿」
ミカエルが続いた。
「あなた方の持つ力は、我々の知るいかなるシステムにも該当しません。神器に似て非なるもの。かといって悪魔の駒でもない。堕天使の技術でもない。あなた方は、どこから来たのですか?」
どこから来た。
その問いの核心を突く鋭さに、俺は一瞬言葉を失った。
(どこから来た。答えは一つだ)
俺はヘルメットの中で深呼吸をした。肺の奥まで空気を取り込む。吐き出す。
震えが止まる。いや止まない。だが、声は出る。
「俺たちは――」
声が、広間に響いた。変声機能を通した低い声だが、俺の意志は確かに込められていた。
「俺たちは、ジューマンワールドから来た」
沈黙。
広間が、完全に静止した。蝋燭の火すら揺らぐのを止んだように見えた。
「ジューマンワールド…?」
リアス・グレモリーが首を傾げた。
「聞いたことがない名前です」
「当然だ」
俺は言った。
「その世界は、お前たちの知るどの勢力にも属していない。人間界とも天使の領域とも悪魔の領域とも繋がっていない。全く別の世界だ」
「別の世界…」
ミカエルが、その言葉の意味を咀嚼するように復唱した。
「いわゆる平行世界、あるいは異次元層の存在を示唆しているのですか?」
「詳しくは知らない。だが、俺たちがそこから来たのは事実だ。俺たちはその世界で戦った。その世界の仲間と共に。そして今、この世界にいる」
「なぜこの世界に?」
アザゼルが問うた。だがその目は笑っている。もう知っているくせに。
「訳があって残ることになった。詳しくは言えない。だが、この世界に害をなすつもりはない」
「害をなさない、と言われても、判断材料が乏しいのですが」
リアス・グレモリーの指摘は正当だ。
「だから俺は、ここに来た。会議に出席した。正体を明かしたくないが、立場だけは明かす。俺は――」
俺は一歩前に出た。赤いアーマーが蝋燭の光を受けて、影を長く伸ばす。
「俺はジュウオウイーグル。ジューマンワールドの代表だ」
宣言。
その言葉が広間の空気を物理的に変えた。
「代表、と言うと…」
ミカエルが、その言葉の重みを量るように言った。
「ああ。俺は王になる男だ。ジューマンワールドの仲間たちを率いる者だ。だからここに来た。個人としてではなく、代表として。三大勢力の代表者たちと対等に話すために」
広間が、ざわめいた。
三勢力の側近たちが、一斉にざわめき始めた。 whisper が波紋のように広がっていく。
「対等…だと?」
悪魔の側近の一人が、低い声で呟いた。
「無名の、いずれの勢力にも属さない者が、我々と対等だと?」
「名前など関係ない」
俺は遮った。
「お前たちが三大勢力と呼ばれるように。俺たちにも俺たちの世界がある。そこでの実績がある。名前を知らないからといって無視していい理由にはならないはずだ」
「…ふっ」
アザゼルが、短く笑った。
「言うじゃないか。ジュウオウイーグル」
その目は、相変わらずの神器マニアの目だ。だがその奥に、別の光が見えた。評価の光だ。
「異世界の代表か。悪くない立場だ。少なくとも、名乗りもしない透明人間よりはよっぽどマシだ」
それは、俺たちに会議に出席する資格を認める言葉だった。
「アザゼル。あなたが認めるということは、堕天使側は彼らの参加を了承すると?」
ミカエルが確認した。
「ああ。俺は気に入ったよ。異世界の代表。面白いだろ。それに――」
アザゼルが、意味深に俺を見た。
「彼の持ってる神器に興味がある。これは正直に言っておく」
正直すぎるだろ。この男。
「私も異論はありません」
ミカエルが頷いた。
「異世界からの代表者。前例はありませんが、前例がないことは否定の理由にはなりません」
「リアス・グレモリー。悪魔側は?」
アザゼルが問いかけた。
リアス・グレモリーは、俺をじっと見つめていた。紅い瞳が、俺のヘルメットの向こうを透かそうとしている。
「…分かりました」
彼女が口を開いた。
「悪魔側も、ジュウオウイーグル殿の参加を了承します。ただし、条件があります」
「条件?」
「この会議の中で、貴方がたの目的を明確にすること。そして、三大勢力のいずれにも与しない中立の立場を維持すること。この二点を守っていただけるなら、我々は貴方がたを第四の代表として認めます」
第四の代表。
それが、今この瞬間、この世界の秩序に新たに作られた席だ。
俺は、頷いた。
「受ける。俺たちは中立だ。どの勢力にも属さない。ただし、この世界を脅かすものがあれば戦う。それが俺たちの目的だ」
「…承知しました」
リアス・グレモリーが、微かに微笑んだ。
「ようこそ、ジュウオウイーグル殿。三大勢力会議へ」
その言葉が、俺たちの参加を正式に告げる言葉だった。
「拙者もよろしく頼むでござるよ」
ユキカゼが軽く頭を下げた。狐の戦士らしくない挨拶だが、それが逆に好意的に受け取られたようだ。
「…はい。よろしくお願いします。面倒ですが」
エレン。お前、最後の三文字余計だ。
だが広間の空気は、確実に変わった。
三つの席に、四つ目の席が加わった。
異世界からの代表。ジュウオウイーグル。
それが、この会議における俺の立ち位置だ。
(やった。一歩前進だ)
ヘルメットの中で、俺は小さく息を吐いた。
まだ終わりじゃない。これからだ。だが、少なくとも。王として、一歩を踏み出した。
女王は誰にする?
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アルファ
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ララ·サタリン·デビルーク
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エミリア