サムライガールの幼馴染みは王様を目指す(裏) 作:ボルメテウスさん
## 四章 メダルと呼ばれる厄介の種
巨体が崩れ落ちた後、紫色の粒子となって散っていく。
残されたのは、一つのメダルだった。
銀色に輝く円盤。中心には不気意な紋章が刻まれている。コンティニューメダル。デスガリアンが宇宙のあちこちにばら撒いた、厄介な再生装置だ。
俺はジュウオウキングの操縦席からそのメダルを見ていた。床に転がっている。光を反射してキラリと光る。ただの金属片に見えるが、放置すればあの化け物が蘇る。
「あれは」
アザゼルが動いた。
堕天使総督の背中から光翼が展開し、一瞬でメダルの傍へ降り立つ。屈み込み、指先でメダルを拾い上げた。眉をひそめている。
「何だ、これは。妙な波動を感じるぞ」
アザゼルの指が、メダルの表面をなぞる。その瞬間、メダルが微かに脈動した。中から低い唸り声が漏れる。まだ生きている。こいつは、まだ完全に死んでいない。
「壊せ!」
俺は叫んだ。
ジュウオウキングの外部スピーカーが声を拾い、広間全体に響き渡る。アザゼルが顔を上げ、ジュウオウキングを見上げた。
「壊せ、と言ったのか? ジュウオウジャー」
初めて呼ばれたその呼称。まあ、正体を知られるわけにはいかないからな。今はジュウオウジャーでいい。
「ああ。そのメダルを破壊しろ。放置すれば、さっきの化け物が再生する」
アザゼルの目が細くなった。メダルを握り込む手に力がこもる。
「再生……だと?」
「そうだ。あれはコンティニューメダル。敵の残骸から再生装置を起動させる仕掛けだ。砕かない限り、何度でも蘇る」
アザゼルは一瞬黙った。堕天使総督の瞳が、メダルとジュウオウキングの間を行き来する。考えている。信じるかどうかを。
「……いいだろう」
アザゼルが握り込んだ手に光を集めた。堕天使の光がメダルを包み込む。バキリ、と硬い音が響いた。手の中で銀色の破片が散る。メダルの波動が、ぷつりと消えた。
完全に砕けた。
「……消えたな」
アザゼルが掌を開く。粉々になった銀色の破片が、光の粒子となって溶けていく。何も残らない。
俺は操縦席で息を吐き出した。
(間に合った。あのまま放置していたら、またあの化け物とやり直しだったぞ)
「太郎さん」
ユキカゼの声が、念話で届く。
「メダル、破壊されましたね」
「ああ。アザゼルって奴、なかなか手際がいい」
「……ほっとした」
エレンの声も念話越し。短い。だが安堵が滲んでいた。サメの尻尾が、ふにゃりと垂れ下がるのが視界の端に見えた。
* * *
ジュウオウキングを解除する。
三体のキューブが光の粒子となって消え、操縦席の感覚が途切れる。身体が元のサイズに戻る錯覚。目の前に広がっていた巨大な視界が、一瞬で縮んだ。
俺たち三人は広間の床に降り立った。変身は解かない。今はまだ、ジュウオウジャーのままでいい。
アザゼルがこちらへ歩いてくる。その後ろに、三大勢力の代表たちの視線が突き刺さっている。まあ、無理もない。いきなり巨大ロボが出てきて化け物を斬り伏せたんだからな。
「ジュウオウジャー、と呼べばいいのか?」
アザゼルが問うた。腕を組み、少し離れた位置で俺たちを見ている。距離を取っているのは警戒の証だ。
「ああ。そう呼べ」
「……名前を名乗らないつもりか」
「今はな」
俺は肩をすくめた。まあ、変身した姿で名前を聞かれても困る。というか、正体を明かすつもりもない。
アザゼルの眉がピクリと動いた。不服そうだ。だが追求はしない。賢い判断だ。今は情報のやり取りが先決だと分かっているんだろう。
「さっきの化け物。お前たちは何を知っている?」
核心を突く問い。鋭い。
「あれはデスガリアンの手によるものだ」
俺は答えた。嘘はつかない。ただ、全部を話す必要もない。
「デスガリアン……?」
アザゼルの眉間に皺が寄った。聞き覚えのない単語。当然だ。三大勢力の誰も知らない名前。異世界の宇宙無法者集団など、この世界の人間が知るはずもない。
「知らなくて当然だ。あいつらはこの世界の住人じゃない」
「……異世界の、侵略者だと?」
アザゼルの声が低くなった。背後で誰かが息を呑む気配。
「そうだ。デスガリアンは宇宙を渡り歩き、気に入った星を侵略して遊ぶ連中だ。あのメダルも、奴らの仕掛けの一部だ」
俺は砕けたメダルの残骸が消えた場所を顎でしゃくった。
「倒した敵をメダルで再生・巨大化させる。それが奴らのやり方だ。だからメダルを砕かなければ、戦いが終わらない」
アザゼルが黙った。考え込んでいる。情報が多すぎて整理が追いついていないのだろう。
「……ジュウオウジャー」
アザゼルがもう一度その名前を口にした。今度は呟きではなく、確認するような声だった。
「お前たちは、そのデスガリアンとやると言うのか」
「ああ。俺たちの目的は、メダルの破壊だ」
俺は答えた。
「さっきの化け物がメダルを持っていた。つまり、この世界にもうメダルがばら撒かれている可能性がある。俺たちはそれを探して、壊す」
「……」
アザゼルが腕を組んだまま、俺を見ている。その目が、探るように細められた。
「お前たちは何者だ。この世界の者ではないのか」
「……」
俺は一瞬黙った。
(来たか。一番答えにくい質問だ)
嘘をつくのは得意じゃない。だが真実を全部話すわけにもいかない。
「俺たちは、この世界の者だ」
嘘じゃない。俺もエレンも、今はこの世界にいる。
「だが、あちらの世界とも関わりがある。だからデスガリアンのことを知っている」
「あちら、とは?」
「異世界だ」
短く答えた。それ以上は言わない。言う必要もない。
アザゼルが鼻を鳴らした。答えに不満があるのは分かる。だが、これ以上は掘るな。今の俺たちにそれ以上の情報はない。
「……いいだろう。今は」
アザゼルが言った。
「だが、メダルとやらを見つけたらどうする。お前たちだけで回るつもりか」
「見つけ次第、破壊する。それが俺たちの仕事だ」
「協力は求めないのか」
「……」
俺は少し考えた。
協力。この世界の三大勢力は強い。
「……あんたがメダルを砕いたのは助かった。あれくらいの力があるなら、俺たちが不在の時にメダルが出たら破壊してくれ」
「ほう」
アザゼルの目が少し開いた。予想外の答えだったらしい。
「あんたたちの世界の話は俺たちが担う。だが、メダルが出た時の対応は頼む。俺たちだけじゃ、全部は回れない」
「……分かった」
アザゼルが頷いた。短い返答だが、その目には好奇心と警戒が同居している。
「メダルの破壊。それがお前たちの目的、というわけか」
「そうだ」
俺は言った。
「俺たちはメダルを壊すために来た。それが終わるまで、ここにいる」
エレンが俺の隣で小さく欠伸をした。ジュウオウシャークのヘルメットの下で、眠そうな目が細まっている。
「……長くなりそうなら、休憩挟んでほしい」
「エレン」
ユキカゼが窘めるように名前を呼ぶ。だが彼女も、どこか安心したような顔をしていた。
俺は二人を見て、少しだけ口角を上げた。
(まあ、なんとかなるだろう)
メダルを壊す。デスガリアンの爪痕を消す。それが終わるまで、俺たちはこの世界で戦う。
俺は王になる男だ。膝を折る理由がない。
女王は誰にする?
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アルファ
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ララ·サタリン·デビルーク
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エミリア