※この作品はR-18です。

サムライガールの幼馴染みは王様を目指す(裏)   作:ボルメテウスさん

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メダル、砕け散るとき

## 四章 メダルと呼ばれる厄介の種

 

巨体が崩れ落ちた後、紫色の粒子となって散っていく。

 

残されたのは、一つのメダルだった。

 

銀色に輝く円盤。中心には不気意な紋章が刻まれている。コンティニューメダル。デスガリアンが宇宙のあちこちにばら撒いた、厄介な再生装置だ。

 

俺はジュウオウキングの操縦席からそのメダルを見ていた。床に転がっている。光を反射してキラリと光る。ただの金属片に見えるが、放置すればあの化け物が蘇る。

 

「あれは」

 

アザゼルが動いた。

 

堕天使総督の背中から光翼が展開し、一瞬でメダルの傍へ降り立つ。屈み込み、指先でメダルを拾い上げた。眉をひそめている。

 

「何だ、これは。妙な波動を感じるぞ」

 

アザゼルの指が、メダルの表面をなぞる。その瞬間、メダルが微かに脈動した。中から低い唸り声が漏れる。まだ生きている。こいつは、まだ完全に死んでいない。

 

「壊せ!」

 

俺は叫んだ。

 

ジュウオウキングの外部スピーカーが声を拾い、広間全体に響き渡る。アザゼルが顔を上げ、ジュウオウキングを見上げた。

 

「壊せ、と言ったのか? ジュウオウジャー」

 

初めて呼ばれたその呼称。まあ、正体を知られるわけにはいかないからな。今はジュウオウジャーでいい。

 

「ああ。そのメダルを破壊しろ。放置すれば、さっきの化け物が再生する」

 

アザゼルの目が細くなった。メダルを握り込む手に力がこもる。

 

「再生……だと?」

 

「そうだ。あれはコンティニューメダル。敵の残骸から再生装置を起動させる仕掛けだ。砕かない限り、何度でも蘇る」

 

アザゼルは一瞬黙った。堕天使総督の瞳が、メダルとジュウオウキングの間を行き来する。考えている。信じるかどうかを。

 

「……いいだろう」

 

アザゼルが握り込んだ手に光を集めた。堕天使の光がメダルを包み込む。バキリ、と硬い音が響いた。手の中で銀色の破片が散る。メダルの波動が、ぷつりと消えた。

 

完全に砕けた。

 

「……消えたな」

 

アザゼルが掌を開く。粉々になった銀色の破片が、光の粒子となって溶けていく。何も残らない。

 

俺は操縦席で息を吐き出した。

 

(間に合った。あのまま放置していたら、またあの化け物とやり直しだったぞ)

 

「太郎さん」

 

ユキカゼの声が、念話で届く。

 

「メダル、破壊されましたね」

 

「ああ。アザゼルって奴、なかなか手際がいい」

 

「……ほっとした」

 

エレンの声も念話越し。短い。だが安堵が滲んでいた。サメの尻尾が、ふにゃりと垂れ下がるのが視界の端に見えた。

 

*  *  *

 

ジュウオウキングを解除する。

 

三体のキューブが光の粒子となって消え、操縦席の感覚が途切れる。身体が元のサイズに戻る錯覚。目の前に広がっていた巨大な視界が、一瞬で縮んだ。

 

俺たち三人は広間の床に降り立った。変身は解かない。今はまだ、ジュウオウジャーのままでいい。

 

アザゼルがこちらへ歩いてくる。その後ろに、三大勢力の代表たちの視線が突き刺さっている。まあ、無理もない。いきなり巨大ロボが出てきて化け物を斬り伏せたんだからな。

 

「ジュウオウジャー、と呼べばいいのか?」

 

アザゼルが問うた。腕を組み、少し離れた位置で俺たちを見ている。距離を取っているのは警戒の証だ。

 

「ああ。そう呼べ」

 

「……名前を名乗らないつもりか」

 

「今はな」

 

俺は肩をすくめた。まあ、変身した姿で名前を聞かれても困る。というか、正体を明かすつもりもない。

 

アザゼルの眉がピクリと動いた。不服そうだ。だが追求はしない。賢い判断だ。今は情報のやり取りが先決だと分かっているんだろう。

 

「さっきの化け物。お前たちは何を知っている?」

 

核心を突く問い。鋭い。

 

「あれはデスガリアンの手によるものだ」

 

俺は答えた。嘘はつかない。ただ、全部を話す必要もない。

 

「デスガリアン……?」

 

アザゼルの眉間に皺が寄った。聞き覚えのない単語。当然だ。三大勢力の誰も知らない名前。異世界の宇宙無法者集団など、この世界の人間が知るはずもない。

 

「知らなくて当然だ。あいつらはこの世界の住人じゃない」

 

「……異世界の、侵略者だと?」

 

アザゼルの声が低くなった。背後で誰かが息を呑む気配。

 

「そうだ。デスガリアンは宇宙を渡り歩き、気に入った星を侵略して遊ぶ連中だ。あのメダルも、奴らの仕掛けの一部だ」

 

俺は砕けたメダルの残骸が消えた場所を顎でしゃくった。

 

「倒した敵をメダルで再生・巨大化させる。それが奴らのやり方だ。だからメダルを砕かなければ、戦いが終わらない」

 

アザゼルが黙った。考え込んでいる。情報が多すぎて整理が追いついていないのだろう。

 

「……ジュウオウジャー」

 

アザゼルがもう一度その名前を口にした。今度は呟きではなく、確認するような声だった。

 

「お前たちは、そのデスガリアンとやると言うのか」

 

「ああ。俺たちの目的は、メダルの破壊だ」

 

俺は答えた。

 

「さっきの化け物がメダルを持っていた。つまり、この世界にもうメダルがばら撒かれている可能性がある。俺たちはそれを探して、壊す」

 

「……」

 

アザゼルが腕を組んだまま、俺を見ている。その目が、探るように細められた。

 

「お前たちは何者だ。この世界の者ではないのか」

 

「……」

 

俺は一瞬黙った。

 

(来たか。一番答えにくい質問だ)

 

嘘をつくのは得意じゃない。だが真実を全部話すわけにもいかない。

 

「俺たちは、この世界の者だ」

 

嘘じゃない。俺もエレンも、今はこの世界にいる。

 

「だが、あちらの世界とも関わりがある。だからデスガリアンのことを知っている」

 

「あちら、とは?」

 

「異世界だ」

 

短く答えた。それ以上は言わない。言う必要もない。

 

アザゼルが鼻を鳴らした。答えに不満があるのは分かる。だが、これ以上は掘るな。今の俺たちにそれ以上の情報はない。

 

「……いいだろう。今は」

 

アザゼルが言った。

 

「だが、メダルとやらを見つけたらどうする。お前たちだけで回るつもりか」

 

「見つけ次第、破壊する。それが俺たちの仕事だ」

 

「協力は求めないのか」

 

「……」

 

俺は少し考えた。

 

協力。この世界の三大勢力は強い。

 

「……あんたがメダルを砕いたのは助かった。あれくらいの力があるなら、俺たちが不在の時にメダルが出たら破壊してくれ」

 

「ほう」

 

アザゼルの目が少し開いた。予想外の答えだったらしい。

 

「あんたたちの世界の話は俺たちが担う。だが、メダルが出た時の対応は頼む。俺たちだけじゃ、全部は回れない」

 

「……分かった」

 

アザゼルが頷いた。短い返答だが、その目には好奇心と警戒が同居している。

 

「メダルの破壊。それがお前たちの目的、というわけか」

 

「そうだ」

 

俺は言った。

 

「俺たちはメダルを壊すために来た。それが終わるまで、ここにいる」

 

エレンが俺の隣で小さく欠伸をした。ジュウオウシャークのヘルメットの下で、眠そうな目が細まっている。

 

「……長くなりそうなら、休憩挟んでほしい」

 

「エレン」

 

ユキカゼが窘めるように名前を呼ぶ。だが彼女も、どこか安心したような顔をしていた。

 

俺は二人を見て、少しだけ口角を上げた。

 

(まあ、なんとかなるだろう)

 

メダルを壊す。デスガリアンの爪痕を消す。それが終わるまで、俺たちはこの世界で戦う。

 

俺は王になる男だ。膝を折る理由がない。

女王は誰にする?

  • アルファ
  • ララ·サタリン·デビルーク
  • エミリア
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