サムライガールの幼馴染みは王様を目指す(裏) 作:ボルメテウスさん
縁側に並んで座っていた。
麦茶を手に、二人で夕暮れの空を見上げている。ユキカゼは庭で寝転がって星空を待っているし、エレンは部屋でまた丸くなって寝ている。
絶花の隣は昔からこうだった。
何も特別なことをしなくても、ただそこにいるだけで空気が変わる。剣の才も異質な強さも関係ない。幼馴染みという、ただそれだけの距離感。
「でな、アザゼルって奴がメダルを握り潰した瞬間にな」
「うんうん」
「あの顔だ。メダル見た瞬間、眉間に皺寄せて何だこれはって。まるで腥い魚を拾ったみたいな顔だ」
「似合いそう」
「似合ってた。あの男、堕天使総督だろう。羽出して飛んできたんだぞ。いきなり」
「うん」
「で、メダル拾い上げてグルグル回して。うん、こりゃ厄介だって顔してた。面白かったぞ」
「太郎が楽しそうで何より」
絶花は呆れたように笑った。
その笑い方が、昔と全く同じで少し安心した。
「それで? その後は」
「メダルのことを説明した。放置すれば再生するって。あのデカい化け物がな」
「あのメダルの化け物と戦ったの?」
「ああ。ジュウオウキングで」
「…出したの。あれを」
「出した。初陣だ。いきなり本番」
「太郎らしいね」
「俺のせいかよ」
「半分は太郎のせい」
「どっちだよ」
絶花は麦茶を一口飲んでから、ふうと息を吐いた。
「でも、ちゃんと勝ったんだね」
「当たり前だ。俺は王になる男だぞ。負けるわけがない」
「…うん。そうだね」絶花が夕日を背に笑う。その顔に、あの夏の面影が重なった。
* * *
向こうでの話をしばらく続けた。
三大勢力の会談に乱入した巨大な化け物。エレンの俊敏な動き。ユキカゼの援護。三人で召喚したキューブの熱。メダルが砕けた瞬間の光。それからアザゼルに王として教えた後始末の話。
絶花は時折相槌を打ちながら、静かに聞いていた。口元に笑みを浮かべて。でも真剣に。そういう聞き方をする女だ。昔から変わらない。
「いいな」
と絶花が言った。
「何がだ」
「三人で戦ってる太郎。なんだか楽しそうに見える」
「楽しくなんかない。疲れた。肩が痛くなった」
「ふふっ。それでも、仲間と戦うのは楽しいでしょ」
「…まあ、そういうことにしておいてやる」
「素直じゃないなあ」
「お前よりは素直だ」
「それはない」
「ある」
幼稚な言い合いだった。でもこの時間が懐かしい。
* * *
日が沈む。
空が藍色に変わり始めた。
縁側から見える庭に
ユキカゼが寝転がって尻尾をゆらゆらさせている。もう完全に野生の狐の顔をしていた。エレンは部屋から出てきて、縁側の柱に寄りかかって眠っている。サメの尾が壁にもたれかかって垂れ下がっていた。器用に眠る女である。
「そう言えば」
絶花が呟いた。
「最近、見てないね。ジュウオウザワールドの」
風が止まった。
ジュウオウザワールド。
懐かしい名前だった。
「あぁ、そう言えば」
俺は空を見上げながら記憶を探る。
「あいつも夏休みだから、こっちに来たりするのか?」
「かもね。あの子、自由奔放だから」
「自由奔放? 王を満足させた宣教師を呼び捨てか」
「あの子って呼んだことない」
絶花は少しだけ笑った。
「…あいつは、今どうしてるんだろうな。向こうで何かやってるかも。ほら、あの子もこう見えて責任感あるから」
「お前が言うと説得力が違うな」
「どういう意味?」
「言葉の通りだ」
「太郎ね」
絶花が睨む。だがその目は笑っている。
「お前こそ、あいつと会ったら真っ先に用件を言うから挨拶ぐらいしなよ」
「失礼な。できる」
「できない。あの子、逃げるから」
「追いかけろ」
「王さまらしくね」
「王は追いかけない。いいから来いって言う」
「それで来たら苦労しないわ」絶花はそう言って、また笑った。
女王は誰にする?
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