※この作品はR-18です。

サムライガールの幼馴染みは王様を目指す(裏)   作:ボルメテウスさん

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夏の風と懐かしい話

縁側に並んで座っていた。

 

麦茶を手に、二人で夕暮れの空を見上げている。ユキカゼは庭で寝転がって星空を待っているし、エレンは部屋でまた丸くなって寝ている。

 

絶花の隣は昔からこうだった。

 

何も特別なことをしなくても、ただそこにいるだけで空気が変わる。剣の才も異質な強さも関係ない。幼馴染みという、ただそれだけの距離感。

 

「でな、アザゼルって奴がメダルを握り潰した瞬間にな」

 

「うんうん」

 

「あの顔だ。メダル見た瞬間、眉間に皺寄せて何だこれはって。まるで腥い魚を拾ったみたいな顔だ」

 

「似合いそう」

 

「似合ってた。あの男、堕天使総督だろう。羽出して飛んできたんだぞ。いきなり」

 

「うん」

 

「で、メダル拾い上げてグルグル回して。うん、こりゃ厄介だって顔してた。面白かったぞ」

 

「太郎が楽しそうで何より」

 

絶花は呆れたように笑った。

 

その笑い方が、昔と全く同じで少し安心した。

 

「それで? その後は」

 

「メダルのことを説明した。放置すれば再生するって。あのデカい化け物がな」

 

「あのメダルの化け物と戦ったの?」

 

「ああ。ジュウオウキングで」

 

「…出したの。あれを」

 

「出した。初陣だ。いきなり本番」

 

「太郎らしいね」

 

「俺のせいかよ」

 

「半分は太郎のせい」

 

「どっちだよ」

 

絶花は麦茶を一口飲んでから、ふうと息を吐いた。

 

「でも、ちゃんと勝ったんだね」

 

「当たり前だ。俺は王になる男だぞ。負けるわけがない」

 

「…うん。そうだね」絶花が夕日を背に笑う。その顔に、あの夏の面影が重なった。

 

*  *  *

 

向こうでの話をしばらく続けた。

 

三大勢力の会談に乱入した巨大な化け物。エレンの俊敏な動き。ユキカゼの援護。三人で召喚したキューブの熱。メダルが砕けた瞬間の光。それからアザゼルに王として教えた後始末の話。

 

絶花は時折相槌を打ちながら、静かに聞いていた。口元に笑みを浮かべて。でも真剣に。そういう聞き方をする女だ。昔から変わらない。

 

「いいな」

 

と絶花が言った。

 

「何がだ」

 

「三人で戦ってる太郎。なんだか楽しそうに見える」

 

「楽しくなんかない。疲れた。肩が痛くなった」

 

「ふふっ。それでも、仲間と戦うのは楽しいでしょ」

 

「…まあ、そういうことにしておいてやる」

 

「素直じゃないなあ」

 

「お前よりは素直だ」

 

「それはない」

 

「ある」

 

幼稚な言い合いだった。でもこの時間が懐かしい。

 

*  *  *

 

日が沈む。

 

空が藍色に変わり始めた。

 

縁側から見える庭に

 

ユキカゼが寝転がって尻尾をゆらゆらさせている。もう完全に野生の狐の顔をしていた。エレンは部屋から出てきて、縁側の柱に寄りかかって眠っている。サメの尾が壁にもたれかかって垂れ下がっていた。器用に眠る女である。

 

「そう言えば」

 

絶花が呟いた。

 

「最近、見てないね。ジュウオウザワールドの」

 

風が止まった。

 

ジュウオウザワールド。

 

懐かしい名前だった。

 

「あぁ、そう言えば」

 

俺は空を見上げながら記憶を探る。

 

「あいつも夏休みだから、こっちに来たりするのか?」

 

「かもね。あの子、自由奔放だから」

 

「自由奔放? 王を満足させた宣教師を呼び捨てか」

 

「あの子って呼んだことない」

 

絶花は少しだけ笑った。

 

「…あいつは、今どうしてるんだろうな。向こうで何かやってるかも。ほら、あの子もこう見えて責任感あるから」

 

「お前が言うと説得力が違うな」

 

「どういう意味?」

 

「言葉の通りだ」

 

「太郎ね」

 

絶花が睨む。だがその目は笑っている。

 

「お前こそ、あいつと会ったら真っ先に用件を言うから挨拶ぐらいしなよ」

 

「失礼な。できる」

 

「できない。あの子、逃げるから」

 

「追いかけろ」

 

「王さまらしくね」

 

「王は追いかけない。いいから来いって言う」

 

「それで来たら苦労しないわ」絶花はそう言って、また笑った。

女王は誰にする?

  • アルファ
  • ララ·サタリン·デビルーク
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