※この作品はR-18です。

サムライガールの幼馴染みは王様を目指す(裏)   作:ボルメテウスさん

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来訪者は壁際に立つ

焚き火が爆ぜる音だけが響いている。

 

絶花が静かに口を開いた。

 

「碇くん」

 

「…はい」

 

「無理にとは言わないよ。でも、太郎は本気だと思う」

 

「…分かってます」

 

「分かってるなら?」

 

「でも…僕が一緒にいて、足手まといになるかもしれない」

 

「足手まといかどうかは一緒にいてから決めることでしょ」

 

絶花の声は穏やかだった。優しくもないが、冷たくもない。事実だけを言う声だ。

 

「宮本さんでも…そう思いますか」

 

「私は剣が得意なだけだよ。他は全部ダメ。友達作りも、人付き合いも。碇くんと同じで得意じゃない」

 

シンジは絶花を見た。初めてまっすぐに誰かの目を見た気がする。

 

「…宮本さんでも、そうなんですか」

 

「そうだよ。だから分かるんだよ。一緒にいるのが怖い気持ち」

 

シンジの握った手が、少しだけ緩んだ。

 

エレンが目を開けた。

 

「おい碇」

 

「…はい」

 

「お前、あの夏一人で化け物と戦った時、逃げたか?」

 

シンジは一瞬黙った。

 

「…逃げなかった」

 

「だろう。ならいい」

 

エレンは目を閉じた。それだけだった。エレンの短い言葉の中には、いろいろな意味がある。「逃げないならいい」。つまり、逃げる奴なら要らないが、逃げないなら仲間だということだ。

 

シンジはエレンの方を見ていた。少しだけ驚いたような顔をして、それから少しだけ肩の力が抜けた。

 

ユキカゼが包帯を巻き終えて、シンジの隣に座った。

 

「シンジさん」

 

「…はい」

 

「あなたはあの時、最後に来てくれたでござるよ。遅かったけど、来てくれたでござる」

 

「…でも、遅かったから」

 

「遅くても来た人が一番大事でござる。途中で来なくなった人より、最後に来た人の方がずっと信用できるでござる」

 

ユキカゼの尻尾がゆらりと揺れた。

 

「私たちは、あなたを待っていたでござるよ」

 

シンジは下を向いた。

 

唇が微かに震えているのが分かった。泣くのかと思ったが、泣かなかった。ただ唇を噛んで、何かを堪えている。

 

長い沈黙の後だった。

 

シンジが顔を上げた。

 

「…僕にできることなら」

 

小さな声だった。

 

だが確かにそう言った。

 

「メダルの場所を知ってるのは僕だけなら…教えるよ。一緒に回るのも…いいと思う」

 

「良し」

 

俺は短く言った。

 

それ以上は言わなかった。これ以上言葉を重ねると、シンジは引いてしまう。「良し」だけで十分だ。

 

夜が深まった。

 

焚き火が小さくなり始めた頃、ユキカゼが薪を足した。火がまた勢いを取り戻す。

 

俺たちはテントの周りでそれぞれの場所を確保した。ユキカゼはテントの中。エレンはテントの外で丸くなる。絶花はテントの中で刀を枕にして横になる。

 

シンジは、テントから一番遠い木の根元に座っていた。

 

「碇」

 

「…はい」

 

「テントの中で寝ろよ」

 

「…ここでいいです」

 

「虫が出るぞ」

 

「別に…平気だから」

 

俺はそれ以上言わなかった。無理にテントに入れようとすると逆効果だ。シンジにはシンジのペースがある。

 

焚き火の光が揺れている。

 

シンジは膝を抱えて炎を見つめていた。その背中は小さく丸まっている。孤独な姿だ。

 

だが、帰らなかった。

 

帰ることもできたはずだ。用件だけ伝えて消えることもできた。「僕には関係ない」と言って背を向けることもできた。

 

それをしなかった。

 

炎を見つめる横顔に、不安と安堵が混じっているのが分かった。ここにいていいのかという不安と、ここにいてもいいのかもしれないという微かな安堵。

 

俺も火を見つめた。

 

(完全に打ち解けるには時間がかかるだろう)

 

それは分かっている。一度再会して仲間に入れたからといって、すぐに心を開く人間じゃない。シンジはそういうやつだ。

 

だが帰らなかった。ついてきた。

 

それだけで今は十分だ。

 

翌朝、俺たちは動き出すことになる。メダルの場所へ向かうために。

 

シンジは皆より少し後ろを歩くのだろう。離れた位置で、それでもついていくのだろう。

 

それでいい。

 

王の歩幅に合わせられない家臣もいる。合わせる必要はない。ついてくるなら、それでいい。

 

焚き火が静かに燃えていた。

 

夏の夜が深まっていく。

女王は誰にする?

  • アルファ
  • ララ·サタリン·デビルーク
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