サムライガールの幼馴染みは王様を目指す(裏) 作:ボルメテウスさん
焚き火が爆ぜる音だけが響いている。
絶花が静かに口を開いた。
「碇くん」
「…はい」
「無理にとは言わないよ。でも、太郎は本気だと思う」
「…分かってます」
「分かってるなら?」
「でも…僕が一緒にいて、足手まといになるかもしれない」
「足手まといかどうかは一緒にいてから決めることでしょ」
絶花の声は穏やかだった。優しくもないが、冷たくもない。事実だけを言う声だ。
「宮本さんでも…そう思いますか」
「私は剣が得意なだけだよ。他は全部ダメ。友達作りも、人付き合いも。碇くんと同じで得意じゃない」
シンジは絶花を見た。初めてまっすぐに誰かの目を見た気がする。
「…宮本さんでも、そうなんですか」
「そうだよ。だから分かるんだよ。一緒にいるのが怖い気持ち」
シンジの握った手が、少しだけ緩んだ。
エレンが目を開けた。
「おい碇」
「…はい」
「お前、あの夏一人で化け物と戦った時、逃げたか?」
シンジは一瞬黙った。
「…逃げなかった」
「だろう。ならいい」
エレンは目を閉じた。それだけだった。エレンの短い言葉の中には、いろいろな意味がある。「逃げないならいい」。つまり、逃げる奴なら要らないが、逃げないなら仲間だということだ。
シンジはエレンの方を見ていた。少しだけ驚いたような顔をして、それから少しだけ肩の力が抜けた。
ユキカゼが包帯を巻き終えて、シンジの隣に座った。
「シンジさん」
「…はい」
「あなたはあの時、最後に来てくれたでござるよ。遅かったけど、来てくれたでござる」
「…でも、遅かったから」
「遅くても来た人が一番大事でござる。途中で来なくなった人より、最後に来た人の方がずっと信用できるでござる」
ユキカゼの尻尾がゆらりと揺れた。
「私たちは、あなたを待っていたでござるよ」
シンジは下を向いた。
唇が微かに震えているのが分かった。泣くのかと思ったが、泣かなかった。ただ唇を噛んで、何かを堪えている。
長い沈黙の後だった。
シンジが顔を上げた。
「…僕にできることなら」
小さな声だった。
だが確かにそう言った。
「メダルの場所を知ってるのは僕だけなら…教えるよ。一緒に回るのも…いいと思う」
「良し」
俺は短く言った。
それ以上は言わなかった。これ以上言葉を重ねると、シンジは引いてしまう。「良し」だけで十分だ。
夜が深まった。
焚き火が小さくなり始めた頃、ユキカゼが薪を足した。火がまた勢いを取り戻す。
俺たちはテントの周りでそれぞれの場所を確保した。ユキカゼはテントの中。エレンはテントの外で丸くなる。絶花はテントの中で刀を枕にして横になる。
シンジは、テントから一番遠い木の根元に座っていた。
「碇」
「…はい」
「テントの中で寝ろよ」
「…ここでいいです」
「虫が出るぞ」
「別に…平気だから」
俺はそれ以上言わなかった。無理にテントに入れようとすると逆効果だ。シンジにはシンジのペースがある。
焚き火の光が揺れている。
シンジは膝を抱えて炎を見つめていた。その背中は小さく丸まっている。孤独な姿だ。
だが、帰らなかった。
帰ることもできたはずだ。用件だけ伝えて消えることもできた。「僕には関係ない」と言って背を向けることもできた。
それをしなかった。
炎を見つめる横顔に、不安と安堵が混じっているのが分かった。ここにいていいのかという不安と、ここにいてもいいのかもしれないという微かな安堵。
俺も火を見つめた。
(完全に打ち解けるには時間がかかるだろう)
それは分かっている。一度再会して仲間に入れたからといって、すぐに心を開く人間じゃない。シンジはそういうやつだ。
だが帰らなかった。ついてきた。
それだけで今は十分だ。
翌朝、俺たちは動き出すことになる。メダルの場所へ向かうために。
シンジは皆より少し後ろを歩くのだろう。離れた位置で、それでもついていくのだろう。
それでいい。
王の歩幅に合わせられない家臣もいる。合わせる必要はない。ついてくるなら、それでいい。
焚き火が静かに燃えていた。
夏の夜が深まっていく。
女王は誰にする?
-
アルファ
-
ララ·サタリン·デビルーク
-
エミリア