サムライガールの幼馴染みは王様を目指す(裏) 作:ボルメテウスさん
バングレイの殺気が森全体を包んでいた。
だが俺は笑った。
(来たか)
森の奥から、気配が近づいていた。一つじゃない。四つ。
馴染み深い気配だ。王国の駒が、俺の頭の中で名前を告げる。
レオーネ。
マンモスマン。
ガーフィール。
レイス。
木々の間から、次々と姿が現れた。
「よう大将。ちったあ待たせやがったなァ!」
金髪を逆立てた小柄な男が、一番乗りで広場へ飛び込んできた。ガーフィールだ。虎ジューマンの青年は、着の身着のままで俺たちの前に立ちはだかる。額の傷跡が月光に光った。
「ハッ! 笑わッせんじゃァねェよ。『目の中のザグレー』ってなァ! 大将が呼ぶから飛んできてやったんでェ!」
「お前、その謎慣用句どうにかならないのか」
「うるせェ! 来てやった事に感謝しろよォ!」
次に現れたのは、巨大な影だった。
ズシン。
地面が揺れる。二メートル七九の巨体。四〇〇キロの体重。マンモスマンが、木々を押し分けて顔を出した。長い鼻がフンと鳴る。二本の巨大な牙が月光を反射する。
「ボス。呼んだか」
低い声。短い言葉。だがその目は、俺を真っ直ぐに見ている。
「ああ。来てくれたか」
「オレはボスの戦士だ。呼べば来る。それだけだ」
「相変わらずだな」
「時間がない。なら語る必要もない」
マンモスマンはバングレイを一瞥した。六つの目が、巨体を見上げる。鼻が短く唸る。戦士の目が、相手を値踏みしている。
「ふん。デスガリアンの残党か。面倒だが、やるしかないな」
「お前、さっき時間がないって言ってたよな」
「やる時間はある。無駄話の時間がないだけだ」
言い返せなかった。
三番目に現れたのは、金色の髪を風に靡かせた女だった。
「やっぱり騒ぎになってたじゃないか! アタシの鼻は嘘つかないよ!」
レオーネ。ライオネルを宿すライオンジューマンの女。百獣王の名に恥じない迫力で、広場へ踏み込んでくる。金髪が揺れる。黄色い瞳がバングレイを捉えた。
「あんた、あのバングレイだっけ? あの夏に大将が倒した奴だね」
「バリバリ。女まで増えてやがるか。バリカユ〜」
「減らず口を叩く元気はあるみたいだね。好都合だよ。殴る前に喋ってくれるなら楽でいいからね」
レオーネが拳をポキリと鳴らした。その音だけで、空気が変わる。百獣王化・ライオネルの持ち主は、普段の酒場の姉御面とは別人の顔をする。
最後に、羽音が近づいた。
「はいはい、来た来た! マジで頼むよ、もう走りっぱなしでござるよ!」
淡い灰白色の短髪。黒と灰と白の羽毛に覆われた翼腕。太く頑丈なダチョウの脚。レイスが、森を駆け抜けて滑り込んできた。人間の少女に近い胴体と顔だが、腰から下は完全にダチョウだ。
「お前ら、勝手に先走らないでよ! 私の群れも連れてくる途中だったんだからさ!」
「レイス、群れは」
「後ろで待機させてる。いきなり全員突っ込ませるわけにはいかないでしょ。リーダーが先に状況見ないと」
「賢明だ」
「まあね。ダチョウの頭は悪いって言われるけど、私には前世の記憶があるから。こういう時は別物なのよ」
レイスは翼の肘で額を拭いながら、バングレイを見上げた。
「あれがバングレイ。…デカいね。話に聞いてたよりデカい」
「触るなよ。バリカユ〜」
「触んないよ! なんで触るの!」
* * *
八人が揃った。
俺。絶花。ユキカゼ。エレン。シンジ。レオーネ。マンモスマン。ガーフィール。レイス。
いや、八人か。絶花は変身しない。だが剣はある。
「全員、揃ったな」
俺はバングレイに向き直った。バングレイの六つの目が、俺たちを順に眺めていく。
「バリバリ。随分と増えたな、ジュウオウジャー。前は三人だったろ」
「人は増える。仲間もな。それが俺の国だ」
「バリカユ〜。国だァ? 笑わせるぜ。お前ら全員でかかってきても、俺様には勝てねェよ」
「勝てるかどうかは、やってみなきゃ分からん」
俺は右手を腰のジュウオウチェンジャーにかざした。
「全員、用意しろ」
* * *
全員が前に出た。
太郎を先頭に、八人が横一列に並ぶ。バングレイとメーバを正面に捉える。
「本能覚醒!」
全員の声が重なった。
太郎、ユキカゼ、エレン、レオーネ、マンモスマン、ガーフィール、レイス。七人の右手が腰のジュウオウチェンジャーへ伸びる。
そしてシンジだけが、右手にジュウオウザライトを握っていた。
* * *
ジュウオウチェンジャーの画面が一斉に輝いた。
赤。青。紫。黄。緑。白。橙。
七色の光が、七人の身体を包み込む。
「ジュウオウチェンジャー!」
七人の声が重なった。
チェンジャーの画面が激しく明滅する。七つの光が空中に躍り、それぞれの動物の紋章を描く。鷹。鮫。狐。獅子。象。虎。駝鳥。
光が身体を覆い、装甲が形成されていく。
赤い猛禽の戦士が、俺の姿を覆っていく。翼の意匠が胸部に刻まれ、鷹の嘴を模したマスクが顔を包む。腕に赤い手甲。脚に赤と白のブーツ。ジュウオウイーグルの姿。
エレンの身体を青い光が包む。鮫のヒレを思わせる装甲が腕と脚に形成される。流線型のヘルメットが頭部を覆い、鋭い牙の意匠が口元に浮かぶ。青い鮫の戦士、ジュウオウシャーク。
ユキカゼの身体を紫の光が包む。狐の耳を模したマスクが形成され、しなやかな装甲が四肢を覆う。紫の霊獣の戦士、ジュウオウフォックス。
レオーネの身体を黄色い光が包む。獅子のたてがみを思わせる装甲が胸部に展開し、金色の爪が両手に形成される。黄色い百獣王の戦士、ジュウオウライオン。
マンモスマンの巨体を緑の光が包む。象の意匠が全身に刻まれ、重量感のある装甲が形成される。緑の巨影、ジュウオウエレファント。
ガーフィールの身体を白い光が包む。虎の縞模様を思わせる装甲が展開し、鋭い牙の意匠が口元に浮かぶ。白い虎の戦士、ジュウオウタイガー。
レイスの身体を橙色の光が包む。駝鳥の嘴を模したマスクが形成され、翼を象った装甲が肩から腕へ展開する。橙色の走鳥戦士、ジュウオウオーストリッチ。
七つの変身が、ほぼ同時に完了した。
* * *
そして、最後の一人。
シンジが、ジュウオウザライトを構えた。
「本能覚醒!」
他の七人とは、違う変身アイテム。違う光。
シンジの指が、ジュウオウザライトのスイッチを押した。
カチリ。
小さな音が、静寂の中で響く。ライトの中央にあるキューブ部分が回転を始めた。
カチカチカチカチ。
キューブが回る。六面のマークが、高速で入れ替わる。狼。鱷。そして
サイ。
シンジの指が止まった。サイのマークが、ライトの正面に固定される。
再びスイッチを押した。
カチリ。
光が、放たれた。
黒い光だ。
他の七人の色とは違う、漆黒の輝き。光がシンジの身体を包み込む。サイの角を模したマスクが頭部に形成され、黒を基調とした装甲が全身を覆う。銀のラインが身体の側面を走り、重量感のあるプロテクターが胸部と肩に展開する。
黒い犀の戦士。
ジュウオウザワールド。ライノスフォーム。
* * *
八人の変身が完了した。
月光の下、八色の戦士が並んでいる。
赤。青。紫。黄。緑。白。橙。黒。
全員がバングレイに向き直る。
太郎が一歩前に出た。赤い翼を広げ、イーグライザーを逆手に構える。
「大空の王者! ジュウオウイーグル!」
右へ半歩、エレンが前に出る。青い鮫の戦士が、長槍を構え直す。
「荒海の王者! ジュウオウシャーク!」
更に右、レオーネが拳を合わせる。黄色い獅子の戦士が、金色の爪を月光にかざす。
「サバンナの王者! ジュウオウライオン!」
隣にマンモスマンが並ぶ。緑の巨体がズシリと大地を踏みしめる。象の牙を模した武器を構える。
「森林の王者! ジュウオウエレファント!」
ガーフィールが、マンモスマンの隣で虎の構えを見せる。白い縞模様の装甲が月光に光る。
「雪原の王者! ジュウオウタイガー!」
レイスが、翼腕を広げる。橙の装甲が、駝鳥の羽根のように展開する。
「ジュウオウオーストリッチ!」
ユキカゼが、紫の狐戦士として静かに立つ。忍びの構え。影のように音がない。
「ジュウオウフォックス」
そして最後に。
シンジが、一歩だけ前に出た。
他の七人より、半歩遅れて。だが確かに前に出た。黒い犀の戦士が、漆黒の装甲を月光に照らさせる。
「世界の王者! ジュウオウザワールド!」
八人の声が重なった。
「「「「「「「「動物戦隊ジュウオウジャー!」」」」」」」」
* * *
八色の戦士が、バングレイとメーバに向き直った。
俺はイーグライザーを構えたまま、バングレイの六つの目を真っ直ぐに見据える。
「バングレイ」
「バリバリ。何だ」
「この星をなめるなよ!」
八人の殺気が、森を震わせた。
バングレイが、バリブレイドを肩から担ぎ直した。六つの目が、細くなる。
「バリカユ〜。生意気な口を叩きやがって。なら、やってみろ」
森が、震えた。
八人のジュウオウジャーが、同時に地を蹴った。
女王は誰にする?
-
アルファ
-
ララ·サタリン·デビルーク
-
エミリア