※この作品はR-18です。

サムライガールの幼馴染みは王様を目指す(裏)   作:ボルメテウスさん

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八色の覚醒

バングレイの殺気が森全体を包んでいた。

 

だが俺は笑った。

 

(来たか)

 

森の奥から、気配が近づいていた。一つじゃない。四つ。

 

馴染み深い気配だ。王国の駒が、俺の頭の中で名前を告げる。

 

レオーネ。

 

マンモスマン。

 

ガーフィール。

 

レイス。

 

木々の間から、次々と姿が現れた。

 

「よう大将。ちったあ待たせやがったなァ!」

 

金髪を逆立てた小柄な男が、一番乗りで広場へ飛び込んできた。ガーフィールだ。虎ジューマンの青年は、着の身着のままで俺たちの前に立ちはだかる。額の傷跡が月光に光った。

 

「ハッ! 笑わッせんじゃァねェよ。『目の中のザグレー』ってなァ! 大将が呼ぶから飛んできてやったんでェ!」

 

「お前、その謎慣用句どうにかならないのか」

 

「うるせェ! 来てやった事に感謝しろよォ!」

 

次に現れたのは、巨大な影だった。

 

ズシン。

 

地面が揺れる。二メートル七九の巨体。四〇〇キロの体重。マンモスマンが、木々を押し分けて顔を出した。長い鼻がフンと鳴る。二本の巨大な牙が月光を反射する。

 

「ボス。呼んだか」

 

低い声。短い言葉。だがその目は、俺を真っ直ぐに見ている。

 

「ああ。来てくれたか」

 

「オレはボスの戦士だ。呼べば来る。それだけだ」

 

「相変わらずだな」

 

「時間がない。なら語る必要もない」

 

マンモスマンはバングレイを一瞥した。六つの目が、巨体を見上げる。鼻が短く唸る。戦士の目が、相手を値踏みしている。

 

「ふん。デスガリアンの残党か。面倒だが、やるしかないな」

 

「お前、さっき時間がないって言ってたよな」

 

「やる時間はある。無駄話の時間がないだけだ」

 

言い返せなかった。

 

三番目に現れたのは、金色の髪を風に靡かせた女だった。

 

「やっぱり騒ぎになってたじゃないか! アタシの鼻は嘘つかないよ!」

 

レオーネ。ライオネルを宿すライオンジューマンの女。百獣王の名に恥じない迫力で、広場へ踏み込んでくる。金髪が揺れる。黄色い瞳がバングレイを捉えた。

 

「あんた、あのバングレイだっけ? あの夏に大将が倒した奴だね」

 

「バリバリ。女まで増えてやがるか。バリカユ〜」

 

「減らず口を叩く元気はあるみたいだね。好都合だよ。殴る前に喋ってくれるなら楽でいいからね」

 

レオーネが拳をポキリと鳴らした。その音だけで、空気が変わる。百獣王化・ライオネルの持ち主は、普段の酒場の姉御面とは別人の顔をする。

 

最後に、羽音が近づいた。

 

「はいはい、来た来た! マジで頼むよ、もう走りっぱなしでござるよ!」

 

淡い灰白色の短髪。黒と灰と白の羽毛に覆われた翼腕。太く頑丈なダチョウの脚。レイスが、森を駆け抜けて滑り込んできた。人間の少女に近い胴体と顔だが、腰から下は完全にダチョウだ。

 

「お前ら、勝手に先走らないでよ! 私の群れも連れてくる途中だったんだからさ!」

 

「レイス、群れは」

 

「後ろで待機させてる。いきなり全員突っ込ませるわけにはいかないでしょ。リーダーが先に状況見ないと」

 

「賢明だ」

 

「まあね。ダチョウの頭は悪いって言われるけど、私には前世の記憶があるから。こういう時は別物なのよ」

 

レイスは翼の肘で額を拭いながら、バングレイを見上げた。

 

「あれがバングレイ。…デカいね。話に聞いてたよりデカい」

 

「触るなよ。バリカユ〜」

 

「触んないよ! なんで触るの!」

 

*  *  *

 

八人が揃った。

 

俺。絶花。ユキカゼ。エレン。シンジ。レオーネ。マンモスマン。ガーフィール。レイス。

 

いや、八人か。絶花は変身しない。だが剣はある。

 

「全員、揃ったな」

 

俺はバングレイに向き直った。バングレイの六つの目が、俺たちを順に眺めていく。

 

「バリバリ。随分と増えたな、ジュウオウジャー。前は三人だったろ」

 

「人は増える。仲間もな。それが俺の国だ」

 

「バリカユ〜。国だァ? 笑わせるぜ。お前ら全員でかかってきても、俺様には勝てねェよ」

 

「勝てるかどうかは、やってみなきゃ分からん」

 

俺は右手を腰のジュウオウチェンジャーにかざした。

 

「全員、用意しろ」

 

*  *  *

 

全員が前に出た。

 

太郎を先頭に、八人が横一列に並ぶ。バングレイとメーバを正面に捉える。

 

「本能覚醒!」

 

全員の声が重なった。

 

太郎、ユキカゼ、エレン、レオーネ、マンモスマン、ガーフィール、レイス。七人の右手が腰のジュウオウチェンジャーへ伸びる。

 

そしてシンジだけが、右手にジュウオウザライトを握っていた。

 

*  *  *

 

ジュウオウチェンジャーの画面が一斉に輝いた。

 

赤。青。紫。黄。緑。白。橙。

 

七色の光が、七人の身体を包み込む。

 

「ジュウオウチェンジャー!」

 

七人の声が重なった。

 

チェンジャーの画面が激しく明滅する。七つの光が空中に躍り、それぞれの動物の紋章を描く。鷹。鮫。狐。獅子。象。虎。駝鳥。

 

光が身体を覆い、装甲が形成されていく。

 

赤い猛禽の戦士が、俺の姿を覆っていく。翼の意匠が胸部に刻まれ、鷹の嘴を模したマスクが顔を包む。腕に赤い手甲。脚に赤と白のブーツ。ジュウオウイーグルの姿。

 

エレンの身体を青い光が包む。鮫のヒレを思わせる装甲が腕と脚に形成される。流線型のヘルメットが頭部を覆い、鋭い牙の意匠が口元に浮かぶ。青い鮫の戦士、ジュウオウシャーク。

 

ユキカゼの身体を紫の光が包む。狐の耳を模したマスクが形成され、しなやかな装甲が四肢を覆う。紫の霊獣の戦士、ジュウオウフォックス。

 

レオーネの身体を黄色い光が包む。獅子のたてがみを思わせる装甲が胸部に展開し、金色の爪が両手に形成される。黄色い百獣王の戦士、ジュウオウライオン。

 

マンモスマンの巨体を緑の光が包む。象の意匠が全身に刻まれ、重量感のある装甲が形成される。緑の巨影、ジュウオウエレファント。

 

ガーフィールの身体を白い光が包む。虎の縞模様を思わせる装甲が展開し、鋭い牙の意匠が口元に浮かぶ。白い虎の戦士、ジュウオウタイガー。

 

レイスの身体を橙色の光が包む。駝鳥の嘴を模したマスクが形成され、翼を象った装甲が肩から腕へ展開する。橙色の走鳥戦士、ジュウオウオーストリッチ。

 

七つの変身が、ほぼ同時に完了した。

 

*  *  *

 

そして、最後の一人。

 

シンジが、ジュウオウザライトを構えた。

 

「本能覚醒!」

 

他の七人とは、違う変身アイテム。違う光。

 

シンジの指が、ジュウオウザライトのスイッチを押した。

 

カチリ。

 

小さな音が、静寂の中で響く。ライトの中央にあるキューブ部分が回転を始めた。

 

カチカチカチカチ。

 

キューブが回る。六面のマークが、高速で入れ替わる。狼。鱷。そして

 

サイ。

 

シンジの指が止まった。サイのマークが、ライトの正面に固定される。

 

再びスイッチを押した。

 

カチリ。

 

光が、放たれた。

 

黒い光だ。

 

他の七人の色とは違う、漆黒の輝き。光がシンジの身体を包み込む。サイの角を模したマスクが頭部に形成され、黒を基調とした装甲が全身を覆う。銀のラインが身体の側面を走り、重量感のあるプロテクターが胸部と肩に展開する。

 

黒い犀の戦士。

 

ジュウオウザワールド。ライノスフォーム。

 

*  *  *

 

八人の変身が完了した。

 

月光の下、八色の戦士が並んでいる。

 

赤。青。紫。黄。緑。白。橙。黒。

 

全員がバングレイに向き直る。

 

太郎が一歩前に出た。赤い翼を広げ、イーグライザーを逆手に構える。

 

「大空の王者! ジュウオウイーグル!」

 

右へ半歩、エレンが前に出る。青い鮫の戦士が、長槍を構え直す。

 

「荒海の王者! ジュウオウシャーク!」

 

更に右、レオーネが拳を合わせる。黄色い獅子の戦士が、金色の爪を月光にかざす。

 

「サバンナの王者! ジュウオウライオン!」

 

隣にマンモスマンが並ぶ。緑の巨体がズシリと大地を踏みしめる。象の牙を模した武器を構える。

 

「森林の王者! ジュウオウエレファント!」

 

ガーフィールが、マンモスマンの隣で虎の構えを見せる。白い縞模様の装甲が月光に光る。

 

「雪原の王者! ジュウオウタイガー!」

 

レイスが、翼腕を広げる。橙の装甲が、駝鳥の羽根のように展開する。

 

「ジュウオウオーストリッチ!」

 

ユキカゼが、紫の狐戦士として静かに立つ。忍びの構え。影のように音がない。

 

「ジュウオウフォックス」

 

そして最後に。

 

シンジが、一歩だけ前に出た。

 

他の七人より、半歩遅れて。だが確かに前に出た。黒い犀の戦士が、漆黒の装甲を月光に照らさせる。

 

「世界の王者! ジュウオウザワールド!」

 

八人の声が重なった。

 

「「「「「「「「動物戦隊ジュウオウジャー!」」」」」」」」

 

*  *  *

 

八色の戦士が、バングレイとメーバに向き直った。

 

俺はイーグライザーを構えたまま、バングレイの六つの目を真っ直ぐに見据える。

 

「バングレイ」

 

「バリバリ。何だ」

 

「この星をなめるなよ!」

 

八人の殺気が、森を震わせた。

 

バングレイが、バリブレイドを肩から担ぎ直した。六つの目が、細くなる。

 

「バリカユ〜。生意気な口を叩きやがって。なら、やってみろ」

 

森が、震えた。

 

八人のジュウオウジャーが、同時に地を蹴った。

女王は誰にする?

  • アルファ
  • ララ·サタリン·デビルーク
  • エミリア
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