※この作品はR-18です。

サムライガールの幼馴染みは王様を目指す(裏)   作:ボルメテウスさん

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黒き着物の女と川の音

女は笑ったまま、俺の隣に腰を下ろした。

 

川岸の岩の上。俺との距離が近い。肩が触れそうなほどに。黒い着物の袖が風に靡いて、俺の腕を掠める。

 

近い。わざと近い。

 

「お前、距離が近い」

 

「にゃあに。嫌なの?」

 

女が小首を傾げて俺を見上げた。黄色い目が細められている。楽しむような目だ。

 

「嫌とかじゃなく。正体も分からない女にいきなり寄られても対応に困る」

 

「ふふ。正体が分かったら寄ってもいいのかしら」

 

「そういう話じゃない」

 

「じゃあどういう話なの」

 

俺はため息をついた。

 

この女、話が通じるような通じないような。ペースが完全に向こうにある。俺は王になる男だが、こういうタイプは苦手だ。ユキカゼとは違う種類の掴みどころがない。

 

「名前くらい教えろ」

 

「名前」

 

女が指を口元に当てた。すぐには答えず、俺の顔を眺めている。

 

「黒歌」

 

「……黒歌、か」

 

「そう。覚えておいてね」

 

黒歌は口元を緩めた。

 

聞き覚えがあるような気もする。どこで耳にしたのか、思い出そうとしても出てこない。

 

「黒歌。お前は何者だ」

 

「何者、か。難しい質問ね」

 

「難しくないだろ。人間か、悪魔か、天使か、堕天使か。どれかだろ」

 

「どうしてその四つだけなの? 他にもいろいろいるのに」

 

「他? 何がある」

 

「秘密」

 

また秘密だ。ユキカゼと同じだ。年齢も秘密、正体も秘密。秘密だらけの女たちに囲まれるのが俺の運命なのか。

 

「お前、さっきの黒猫だろ。なぜそこだけ認めない」

 

黒歌は瞬きをした。一度。ゆっくりと。猫の仕草そのままだ。

 

「認めてないわけじゃないわよ。ただ、猫から人間になったなんて言ったら、あなたが驚くでしょ」

 

「もう驚いてる。とっくに驚いてる」

 

「ふふ。素直なのね。王様って割と正直なのかしら」

 

「王様じゃない。王になる男だ」

 

「同じようなものでしょ」

 

「同じじゃない。まだなってないからな」

 

「なろうとしてる時点で王様よ。私の基準では」

 

「お前の基準を知らん」

 

「知りたい?」

 

黒歌が少し身を乗り出した。着物の襟が開いて、白い鎖骨が見える。わざとだ。いや、わざとなのか。自然なのか。分からない。だが近い。近すぎる。

 

俺は少し身体を引いた。

 

「知りたくない」

 

「冷たいのね」

 

「冷たいんじゃない。警戒してるだけだ」

 

「何に警戒してるの? 私が何かすると思ってる?」

 

「さっきから正体を隠してる時点で警戒して当然だろ」

 

「正体は隠してないわよ。黒歌って言ったでしょ」

 

「名前だけだ。種族も所属も目的も言ってない」

 

「細かいのねえ」

 

黒歌はふふっと笑って、少しだけ距離を取った。少しだけだ。まだ近い。だがさっきよりはマシだ。

 

「あなた、面白いわね」

 

「面白くない」

 

「面白いのよ。王になりたいって言ってたでしょ。この時代に王を目指す人間なんて珍しいわ」

 

「珍しいだけだ。面白くはない」

 

「珍しいものは面白いの。私の基準では」

 

「お前の基準はどうでもいい」

 

「ひどいわねえ」

 

黒歌は口を尖らせた。猫が拗ねたような顔だ。いや、猫そのものか。

女王は誰にする?

  • アルファ
  • ララ·サタリン·デビルーク
  • エミリア
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