※この作品はR-18です。

サムライガールの幼馴染みは王様を目指す(裏)   作:ボルメテウスさん

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冥界への道とリンクキューブ

俺は川岸の岩から立ち上がった。

 

黒歌の誘いを頭の中で反芻する。冥界。あそこへ来いと言われた。理由は分からない。だが断る選択肢はなかった。バングレイが俺の記憶を読める以上、放置すれば次は何が出るか分からない。それに黒歌の目は嘘をついていなかった。あいつは何かを知っている。

 

テントに戻ると全員がいた。

 

焚き火のそばでユキカゼが魚の下ごしらえをしている。エレンが木陰で丸くなっている。レオーネが何か食べている。マンモスマンが黙座している。ガーフィールが寝転がっている。レイスが翼を手入れしている。絶花が刀の手入れをしている。シンジが膝を抱えて座っている。

 

「戻ったでござるか太郎さん」

 

ユキカゼが顔を上げた。狐耳がピクリと動く。

 

「ああ。戻った」

 

「顔が変わってるでござる。何かあったでござるか」

 

鋭い。何も隠せないな。

 

「相談がある。全員集まってるか」

 

「全員いるでござるよ」

 

俺は焚き火のそばに座った。全員の視線が集まる。

 

「黒い猫が来た」

 

「猫?」

 

絶花が手を止めた。刀の柄から顔を上げる。

 

「ああ。黒猫だ。だがただの猫じゃなかった。人間の姿になった」

 

「猫が人間に?」

 

レオーネがかじっていたものを止めた。

 

「化け猫でござるか」

 

ユキカゼが首を傾げる。尻尾が止まっている。

 

「化け猫じゃない。正体は自分で名乗った。黒歌という」

 

「黒歌」

 

絶花がその名前を繰り返した。顔が少し硬くなった。

 

「知ってるのか」

 

「聞いたことがある。冥界の……猫又。上位の妖怪。姉妹がいるはずだ。白音という妹が」

 

「お前よく知ってるな」

 

「宮本家は剣士の家系だから。妖怪の類いには詳しいの」

 

「なるほどな」

 

俺は頷いた。絶花の知識は役に立つ。

 

「その黒歌が何しに来たんでござるか」

 

ユキカゼが問うた。尻尾が少し膨らんでいる。警戒しているのか。それとも。

 

「冥界に来いと言われた」

 

「冥界!」

 

全員の声が重なった。レオーネが立ち上がりかけた。マンモスマンが初めて顔を上げた。ガーフィールが寝転がったまま目を開けた。レイスが翼の手入れを止めた。エレンは目を開けたまま動かない。シンジが膝を抱える力を強めた。絶花が刀を握りしめた。

 

「冥界だと? あの冥界か」

 

レオーネの声が高い。

 

「ああ。死者の世界。悪魔の領域だ」

 

「何しにでござるか」

 

「分からない。だが来いと言われた。行く」

 

「待て太郎」

 

絶花が声を上げた。珍しくはっきりとした声だ。

 

「冥界は生者が安易に足を踏み入れていい場所じゃない。私の知る限り、冥界への渡航は悪魔か天使の助力がなければ不可能だ」

 

「黒歌が案内すると言っていた」

 

「黒歌が? 猫又が冥界への道を知っているのか」

 

「知っているようだった。少なくともあいつは冥界と繋がりがある」

 

絶花が唇を噛んだ。不安だ。小心者の絶花にとって冥界という単語は相当に怖いのだろう。だが逃げ出さない。そこが絶花だ。

 

「太郎さん」

 

ユキカゼが静かに言った。

 

「その黒歌という者は、信じていい相手でござるか」

 

「分からない。だが敵意はなかった。それにバングレイが俺の記憶を読める以上、放置するわけにはいかない。何か知っているなら聞き出す必要がある」

 

「それはそうでござるが」

 

ユキカゼの尻尾がゆらりと揺れた。心配している。分かる。だが止まるつもりはない。

 

*  *  *

 

「冥界への行き方だが」

 

俺は言った。

 

「黒歌は自分が案内すると言っていた。だが俺たちは全員で動く。一人で行くつもりはない。問題はどうやって全員で冥界に行くかだ」

 

「悪魔の助力が必要だとしたら、私たちの中に悪魔はいないでござる」

 

ユキカゼが言った。正しい。俺たちの中に悪魔はいない。全員がジューマンか人間だ。

 

「魔法陣はどうだ」

 

レイスが翼を畳みながら言った。

 

「魔法陣? お前使えるのか」

 

「使えない。前世の記憶にはない。でも冥界への転移魔法陣って存在するんでしょ。どこかに残ってるかもしれない」

 

「探す時間がないな」

 

「ないね」

 

「他に方法はないか」

 

俺は考え込んだ。

 

冥界への移動手段。悪魔の助力。魔法陣。他に何がある。

 

「太郎」

 

絶花が口を開いた。

 

「ん」

 

「リンクキューブは」

 

その単語が出た瞬間、俺の頭の中で何かが繋がった。

 

リンクキューブ。

 

あの夏、俺たちがジューマンワールドと人間の世界を行き来するために使った巨大な立方体。王者の資格と連動して、世界と世界を繋ぐ門を開く装置。

 

「リンクキューブか」

 

「うん。あれが使えれば世界と世界を繋げられるかもしれない。ジューマンワールドと人間の世界は繋げた。なら人間の世界と冥界も繋げられるかもしれない」

 

「可能性はあるか」

 

「少なくとも他の方法よりは現実的だよ。あれは世界を繋ぐ力を持ってる。次元の壁を越える装置なんだから」

 

「だがリンクキューブはジューマンワールドにある。ここから呼べるか」

 

「王者の資格と融合してるんでしょ。太郎が呼べば来るかもしれない」

 

俺は自分の掌を見た。

 

王者の資格。王国の駒と融合した力。チェスの駒の形をした光が、掌の中で微かに脈動している。

 

(リンクキューブ。あれがあれば冥界へ行けるかもしれない)

 

だがリンクキューブは巨大だ。一人で抱えられるサイズじゃない。世界を繋ぐ門を開くには相応のエネルギーが必要だ。

 

「やってみるか」

 

俺は立ち上がった。

女王は誰にする?

  • アルファ
  • ララ·サタリン·デビルーク
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