サムライガールの幼馴染みは王様を目指す(裏) 作:ボルメテウスさん
俺は川岸の岩から立ち上がった。
黒歌の誘いを頭の中で反芻する。冥界。あそこへ来いと言われた。理由は分からない。だが断る選択肢はなかった。バングレイが俺の記憶を読める以上、放置すれば次は何が出るか分からない。それに黒歌の目は嘘をついていなかった。あいつは何かを知っている。
テントに戻ると全員がいた。
焚き火のそばでユキカゼが魚の下ごしらえをしている。エレンが木陰で丸くなっている。レオーネが何か食べている。マンモスマンが黙座している。ガーフィールが寝転がっている。レイスが翼を手入れしている。絶花が刀の手入れをしている。シンジが膝を抱えて座っている。
「戻ったでござるか太郎さん」
ユキカゼが顔を上げた。狐耳がピクリと動く。
「ああ。戻った」
「顔が変わってるでござる。何かあったでござるか」
鋭い。何も隠せないな。
「相談がある。全員集まってるか」
「全員いるでござるよ」
俺は焚き火のそばに座った。全員の視線が集まる。
「黒い猫が来た」
「猫?」
絶花が手を止めた。刀の柄から顔を上げる。
「ああ。黒猫だ。だがただの猫じゃなかった。人間の姿になった」
「猫が人間に?」
レオーネがかじっていたものを止めた。
「化け猫でござるか」
ユキカゼが首を傾げる。尻尾が止まっている。
「化け猫じゃない。正体は自分で名乗った。黒歌という」
「黒歌」
絶花がその名前を繰り返した。顔が少し硬くなった。
「知ってるのか」
「聞いたことがある。冥界の……猫又。上位の妖怪。姉妹がいるはずだ。白音という妹が」
「お前よく知ってるな」
「宮本家は剣士の家系だから。妖怪の類いには詳しいの」
「なるほどな」
俺は頷いた。絶花の知識は役に立つ。
「その黒歌が何しに来たんでござるか」
ユキカゼが問うた。尻尾が少し膨らんでいる。警戒しているのか。それとも。
「冥界に来いと言われた」
「冥界!」
全員の声が重なった。レオーネが立ち上がりかけた。マンモスマンが初めて顔を上げた。ガーフィールが寝転がったまま目を開けた。レイスが翼の手入れを止めた。エレンは目を開けたまま動かない。シンジが膝を抱える力を強めた。絶花が刀を握りしめた。
「冥界だと? あの冥界か」
レオーネの声が高い。
「ああ。死者の世界。悪魔の領域だ」
「何しにでござるか」
「分からない。だが来いと言われた。行く」
「待て太郎」
絶花が声を上げた。珍しくはっきりとした声だ。
「冥界は生者が安易に足を踏み入れていい場所じゃない。私の知る限り、冥界への渡航は悪魔か天使の助力がなければ不可能だ」
「黒歌が案内すると言っていた」
「黒歌が? 猫又が冥界への道を知っているのか」
「知っているようだった。少なくともあいつは冥界と繋がりがある」
絶花が唇を噛んだ。不安だ。小心者の絶花にとって冥界という単語は相当に怖いのだろう。だが逃げ出さない。そこが絶花だ。
「太郎さん」
ユキカゼが静かに言った。
「その黒歌という者は、信じていい相手でござるか」
「分からない。だが敵意はなかった。それにバングレイが俺の記憶を読める以上、放置するわけにはいかない。何か知っているなら聞き出す必要がある」
「それはそうでござるが」
ユキカゼの尻尾がゆらりと揺れた。心配している。分かる。だが止まるつもりはない。
* * *
「冥界への行き方だが」
俺は言った。
「黒歌は自分が案内すると言っていた。だが俺たちは全員で動く。一人で行くつもりはない。問題はどうやって全員で冥界に行くかだ」
「悪魔の助力が必要だとしたら、私たちの中に悪魔はいないでござる」
ユキカゼが言った。正しい。俺たちの中に悪魔はいない。全員がジューマンか人間だ。
「魔法陣はどうだ」
レイスが翼を畳みながら言った。
「魔法陣? お前使えるのか」
「使えない。前世の記憶にはない。でも冥界への転移魔法陣って存在するんでしょ。どこかに残ってるかもしれない」
「探す時間がないな」
「ないね」
「他に方法はないか」
俺は考え込んだ。
冥界への移動手段。悪魔の助力。魔法陣。他に何がある。
「太郎」
絶花が口を開いた。
「ん」
「リンクキューブは」
その単語が出た瞬間、俺の頭の中で何かが繋がった。
リンクキューブ。
あの夏、俺たちがジューマンワールドと人間の世界を行き来するために使った巨大な立方体。王者の資格と連動して、世界と世界を繋ぐ門を開く装置。
「リンクキューブか」
「うん。あれが使えれば世界と世界を繋げられるかもしれない。ジューマンワールドと人間の世界は繋げた。なら人間の世界と冥界も繋げられるかもしれない」
「可能性はあるか」
「少なくとも他の方法よりは現実的だよ。あれは世界を繋ぐ力を持ってる。次元の壁を越える装置なんだから」
「だがリンクキューブはジューマンワールドにある。ここから呼べるか」
「王者の資格と融合してるんでしょ。太郎が呼べば来るかもしれない」
俺は自分の掌を見た。
王者の資格。王国の駒と融合した力。チェスの駒の形をした光が、掌の中で微かに脈動している。
(リンクキューブ。あれがあれば冥界へ行けるかもしれない)
だがリンクキューブは巨大だ。一人で抱えられるサイズじゃない。世界を繋ぐ門を開くには相応のエネルギーが必要だ。
「やってみるか」
俺は立ち上がった。
女王は誰にする?
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アルファ
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ララ·サタリン·デビルーク
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エミリア