※この作品はR-18です。

サムライガールの幼馴染みは王様を目指す(裏)   作:ボルメテウスさん

496 / 513
夏休みの冒険を再会

## 二十章 立方の門

 

森を抜けた先、川の上流にそれはあった。

 

巨大な立方体。

 

森の中にそびえる石の塊。人の背丈をはるかに超える。木々の間から突然現れたその姿は、まるで古代の遺跡がそのまま置き去りにされたようだった。

 

「これが…リンクキューブ」

 

絶花が呟いた。刀を握る手が少し強くなる。初めて見るわけじゃない。あの夏、ジューマンワールドで見た。だがこうして改めて対面すると、やはり圧倒される。

 

石肌を思わせる面には無数の区切りが刻まれている。直線的な模様。幾何学的な窪み。人工物だ。だが自然の中にあまりにも自然に溶け込んでいる。古代の叡智が作り出した装置。

 

「デカいでござるな」

 

ユキカゼが尻尾を膨らませて見上げた。狐耳がピンと立っている。

 

「太郎さん、これが世界を繋ぐ装置でござるか」

 

「ああ。あの夏、これでジューマンワールドと人間の世界を行き来した」

 

「どうやって使うんでござるか」

 

「それが…」

 

俺は口ごもった。

 

「覚えてない」

 

「覚えてないでござる!?」

 

「あの時はタスクがやってくれた。俺は見ていただけだ」

 

「太郎さん、それじゃあ使い方が分からないでござるよ!」

 

「分かってる。今思い出そうとしてる」

 

俺はキューブの表面に手を触れた。冷たい。石の冷たさだ。だがその奥に微かな温もりがある。生きている。この装置は眠っているだけだ。

 

「太郎」

 

絶花が横に立った。

 

「使い方、私も覚えてない。あの時はタスクさんが一人でやってたから」

 

「だよな」

 

「でも」

 

絶花はキューブの表面を見つめた。

 

「王者の資格を収める場所があるはずだよ。あの時、タスクさんが何かを差し込んでた」

 

「差し込んでた?」

 

「うん。小さな何かを。キューブのどこかに窪みがあって、そこに入れてた」

 

俺は目を凝らしてキューブの表面を見た。区切り。窪み。直線的な模様。その中に、小さな窪みが一つだけある。他の窪みより一回り小さく、四角い形をしている。

 

「あった」

 

俺は指を差した。キューブの側面、ちょうど胸の高さほどの位置に小さな四角い窪みがある。周囲の模様と同化していて見落としそうだが、確かにそこだけ形が違う。

 

「あれでござるか」

 

ユキカゼが近づいて覗き込んだ。

 

「小さなキューブがぴたりと収まる形でござるな」

 

「王者の資格を入れる場所だ」

 

俺は掌を見た。王国の駒と融合した王者の資格。チェスの駒の形をした光が掌の中で脈動している。

 

「試すか」

 

「待って太郎」

 

絶花が俺の腕を掴んだ。

 

「もし違ったら。何か起きたら」

 

「何か起きたらお前が守れ。俺の最強の侍だろ」

 

「…そうだけど」

 

「ならいい」

 

俺は絶花の手を振りほどき、掌をキューブの窪みに近づけた。王者の資格が掌から浮かび上がる。チェスの駒の形をした光が、窪みの形に合わさるように収まっていく。

 

カチリ。

 

小さな音がした。

 

小さなキューブが窪みにぴたりと収まる。

 

瞬間、空気が変わった。

 

*  *  *

 

頭上で、立方体の上部が回り始める。

 

ゴゴゴゴゴ。

 

低い音が森に響き渡る。石の塊が動く音。地面が微かに振動する。周囲の木々がざわめき、鳥たちが一斉に飛び立った。

 

「動いてるでござる!」

 

ユキカゼが叫ぶ。

 

「凄い…」

 

レイスが翼を広げて後ずさる。

 

「何だこれは」

 

マンモスマンが低く唸る。

 

「王様、何が起きてるんで」

 

ガーフィールが珍しく真面目な声を出す。

 

「分からん。だが動いてるのは確かだ」

 

立方体の上部が回転する。ゆっくりと。確実に。ゴゴゴという音が徐々に大きくなる。巻き起こる風が森の木々を揺らす。

 

それと共に、俺達は、あの時の夏休みの出来事の再現が。

 

「・・・なんだか、懐かしい」

女王は誰にする?

  • アルファ
  • ララ·サタリン·デビルーク
  • エミリア
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。