サムライガールの幼馴染みは王様を目指す(裏) 作:ボルメテウスさん
## 二十章 立方の門
森を抜けた先、川の上流にそれはあった。
巨大な立方体。
森の中にそびえる石の塊。人の背丈をはるかに超える。木々の間から突然現れたその姿は、まるで古代の遺跡がそのまま置き去りにされたようだった。
「これが…リンクキューブ」
絶花が呟いた。刀を握る手が少し強くなる。初めて見るわけじゃない。あの夏、ジューマンワールドで見た。だがこうして改めて対面すると、やはり圧倒される。
石肌を思わせる面には無数の区切りが刻まれている。直線的な模様。幾何学的な窪み。人工物だ。だが自然の中にあまりにも自然に溶け込んでいる。古代の叡智が作り出した装置。
「デカいでござるな」
ユキカゼが尻尾を膨らませて見上げた。狐耳がピンと立っている。
「太郎さん、これが世界を繋ぐ装置でござるか」
「ああ。あの夏、これでジューマンワールドと人間の世界を行き来した」
「どうやって使うんでござるか」
「それが…」
俺は口ごもった。
「覚えてない」
「覚えてないでござる!?」
「あの時はタスクがやってくれた。俺は見ていただけだ」
「太郎さん、それじゃあ使い方が分からないでござるよ!」
「分かってる。今思い出そうとしてる」
俺はキューブの表面に手を触れた。冷たい。石の冷たさだ。だがその奥に微かな温もりがある。生きている。この装置は眠っているだけだ。
「太郎」
絶花が横に立った。
「使い方、私も覚えてない。あの時はタスクさんが一人でやってたから」
「だよな」
「でも」
絶花はキューブの表面を見つめた。
「王者の資格を収める場所があるはずだよ。あの時、タスクさんが何かを差し込んでた」
「差し込んでた?」
「うん。小さな何かを。キューブのどこかに窪みがあって、そこに入れてた」
俺は目を凝らしてキューブの表面を見た。区切り。窪み。直線的な模様。その中に、小さな窪みが一つだけある。他の窪みより一回り小さく、四角い形をしている。
「あった」
俺は指を差した。キューブの側面、ちょうど胸の高さほどの位置に小さな四角い窪みがある。周囲の模様と同化していて見落としそうだが、確かにそこだけ形が違う。
「あれでござるか」
ユキカゼが近づいて覗き込んだ。
「小さなキューブがぴたりと収まる形でござるな」
「王者の資格を入れる場所だ」
俺は掌を見た。王国の駒と融合した王者の資格。チェスの駒の形をした光が掌の中で脈動している。
「試すか」
「待って太郎」
絶花が俺の腕を掴んだ。
「もし違ったら。何か起きたら」
「何か起きたらお前が守れ。俺の最強の侍だろ」
「…そうだけど」
「ならいい」
俺は絶花の手を振りほどき、掌をキューブの窪みに近づけた。王者の資格が掌から浮かび上がる。チェスの駒の形をした光が、窪みの形に合わさるように収まっていく。
カチリ。
小さな音がした。
小さなキューブが窪みにぴたりと収まる。
瞬間、空気が変わった。
* * *
頭上で、立方体の上部が回り始める。
ゴゴゴゴゴ。
低い音が森に響き渡る。石の塊が動く音。地面が微かに振動する。周囲の木々がざわめき、鳥たちが一斉に飛び立った。
「動いてるでござる!」
ユキカゼが叫ぶ。
「凄い…」
レイスが翼を広げて後ずさる。
「何だこれは」
マンモスマンが低く唸る。
「王様、何が起きてるんで」
ガーフィールが珍しく真面目な声を出す。
「分からん。だが動いてるのは確かだ」
立方体の上部が回転する。ゆっくりと。確実に。ゴゴゴという音が徐々に大きくなる。巻き起こる風が森の木々を揺らす。
それと共に、俺達は、あの時の夏休みの出来事の再現が。
「・・・なんだか、懐かしい」
女王は誰にする?
-
アルファ
-
ララ·サタリン·デビルーク
-
エミリア