サムライガールの幼馴染みは王様を目指す(裏) 作:ボルメテウスさん
森を進んで二時間。
紫の空の下、冥界の木々は赤みを帯びた幹と緑の葉でできている。不思議な色彩だ。紫と緑と赤。目が慣れない。
「太郎さん、何か匂うでござる」
ユキカゼが立ち止まった。狐耳がピクリと動く。鼻が空気を震わせている。
「何だ」
「猫でござる」
「猫?」
「猫の匂いでござる。一つじゃない。いや、一つでござるか。紛らわしいでござる」
ユキカゼの鼻が混乱している。珍しい。狐の嗅覚が混乱するとは。
「どういう意味だ」
「猫の匂いがするでござる。でもそれは、ただの猫じゃないでござる。何ていうか…人間の匂いも混じってるでござる」
「猫又か」
「たぶん。あの時の黒猫と同じ匂いでござるよ」
黒歌だ。
俺は足を止めた。全員が止まる。
「警戒しろ。黒歌だ」
「了解でござる」
ユキカゼの尻尾が膨らむ。戦闘態勢。
エレンが尻尾をピンと張る。レオーネが拳を握る。マンモスマンが鼻を唸らせる。ガーフィールが牙を見せる。レイスが翼を広げる。絶花が刀に手を添える。シンジが一歩下がる。いつもの位置だ。
紫の霧が森の中を流れている。視界が悪い。五メートル先が見えない。
その霧の中から、影が現れた。
ゆっくりと。音もなく。猫のように足音を消して。
「やっと見つけたわ」
声がした。低く、少し掠れた声。あの時と同じ声。
霧が晴れる。
黒い着物。長い黒髪。黄色い目。
黒歌が、木の幹に寄りかかって立っていた。
「…黒歌」
俺は名前を呼んだ。
黒歌は微笑んだ。妖艶な笑みだ。口元だけが緩んで、目は細められている。猫が餌を見つけた時のような顔だ。
「ご無沙汰ね、王様」
「王様じゃない。王になる男だ」
「あら、言い直したのね。根に持つタイプかしら」
「根に持つんじゃない。訂正してるだけだ」
「同じようなものでしょ」
「お前の基準はどうでもいい」
俺は一歩前に出た。黒歌との距離は五メートル。霧が俺たちの間を流れている。
「何の用だ。俺たちをここへ呼んだのはお前だろ」
「そうよ。呼んだのは私」
「理由を聞く」
「ここじゃなんだから。もう少し落ち着いた場所へ案内するわ」
「案内だと」
「ええ。冥界を知らない人間がうろつくのは危険よ。私が案内してあげる」
黒歌はそう言って、体を幹から離した。着物の袖が揺れる。黒髪が風に流れる。黄色い目が俺をじっと見ている。
「ついて来てくれるかしら」
「信用できるのか」
絶花が俺の後ろから声を上げた。刀の柄に手をかけたままだ。
「信用できない相手についていくなんて、危険すぎるよ」
「お前がそう思うのは当然よ。宮本絶花、でしょう? 剣士の子孫」
絶花が息を呑んだ。自分の名前を知られていることに驚いている。
「何で私の名前を」
「冥界にも噂は届くのよ。英雄の血筋は目立つもの」
黒歌は絶花を見て、ふふっと笑った。
「安心して。あなたの剣に興味はあるけど、今は奪いに来たんじゃないから」
「…本当か」
「本当よ。私が今興味があるのは、そこの王様だけ」
俺を指差した。黄色い目が俺を捉えている。
「王様の記憶。王様の力。それに…王様の仲間たち。色々と知りたいことがあるの」
「知りたいこと。それが俺を冥界に呼んだ理由か」
「一つはね」
「もう一つは何だ」
「ついて来れば分かるわ」
黒歌は背を向けた。霧の中へ歩き出す。黒い着物が紫の霧に溶け込みそうになる。
「待て」
「何? ついて来るの?」
「条件がある」
俺は黒歌の背中に声をかけた。
「俺の仲間を傷つけるな。それが条件だ」
黒歌は振り返った。半分だけ。肩越しに。黄色い目が俺を覗き込む。
「私がそんなことすると思ってるの?」
「思わない。だが約束はしておく。お前が俺たちを裏切らない保証が欲しい」
「保証なんてないわよ。言葉だけ」
「言葉だけでいい。お前が嘘をつく女じゃないことは、あの時の目で分かった」
黒歌は一瞬止まった。それから微かに笑った。
「面白い人ね。本当に面白い」
「面白くない」
「面白いのよ。私の基準では」
「お前の基準はどうでもいいと言っただろ」
「ふふ。じゃあ約束する。あなたの仲間には手を出さない。私の言葉で足りる?」
「足りる」
「じゃあ行くわよ。ついてきて」
黒歌が歩き出した。
女王は誰にする?
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アルファ
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ララ·サタリン·デビルーク
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エミリア