※この作品はR-18です。

サムライガールの幼馴染みは王様を目指す(裏)   作:ボルメテウスさん

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悪魔の屋敷と猫又の告白

黒歌が、玄関ホールの中央に立った。

 

着物の袖を静かに揺らしながら、周囲を見回す。全員がホールに集まっている。ユキカゼ、エレンレオーネ、マンモスマンガーフィール、レイス絶花、シンジ。それから俺。

 

「調べ終えた?」

 

「ああ。大方な」

 

「なら、そろそろ答えを言うわね」

 

黒歌は壁にもたれかかった。腕を組んで、黄色い目を俺たち全員に向ける。

 

「ここは、とある上級悪魔の屋敷よ」

 

「上級悪魔」

 

「ええ。冥界の中でも相当な位階の悪魔の所有物。今は誰も住んでいないけど、所有権はまだその悪魔にあるわ」

 

「誰だ」

 

「名前は言えない」

 

「また言えないのか」

 

「言えないの。名前を口にすると、その悪魔に気づかれるから」

 

俺は眉をひそめた。

 

「気づかれる? 俺たちがここにいることをか」

 

「そういうことよ。上級悪魔は自分の屋敷に感覚を張り巡らせている。誰かが入れば分かる。でも私が名前を呼ばなければ、あいつも誰が入ったかまでは特定できない」

 

「お前、その悪魔とどういう関係だ」

 

黒歌は少しだけ間を置いた。

 

「かつての依頼人よ」

 

「依頼人」

 

「猫又は色々な仕事をするの。暗殺も、諜報も、護衛も。その中で私は一度この屋敷に雇われた」

 

「何の仕事で」

 

「中身の掃除よ」

 

黒歌の声が低くなった。

 

「この屋敷で行われていた実験の後始末。私が来た時にはもう実験は終わっていた。残されていたのは、一階の手術台と二階の拘束部屋と、地下の何かと屋根裏の資料だけ」

 

「お前は何を見た」

 

「全てよ」

 

黒歌は腕を組んだまま、天井を見上げた。

 

「五つの台。五人同時に何かをされていた。管で体から何かを抜き出して、瓶に集めていた。二階のベッドには鎖で拘束された痕があった。地下には…」

 

言葉が途切れた。

 

「地下には何がある」

 

「まだ見てないでしょ。あなたたち」

 

「ああ。マンモスマンが床の補強を確認しただけだ」

 

「なら、地下は見ない方がいいかもしれない」

 

「なぜ」

 

「見ると後戻りできなくなるから」

 

黒歌の黄色い目が、静かに俺を見ている。冗談じゃない。警告だ。

 

「俺たちはもう触れてしまったんだろ。お前が言った」

 

「そうね。触れたわね」

 

「なら後戻りできない。地下を見る」

 

黒歌は微かに息を吐いた。ため息に近い。猫が諦めた時のような息だ。

 

「分かったわ。でも覚悟してから行きなさい」

 

「覚悟はできてる」

 

「本当に?」

 

「俺は王になる男だ。覚悟のない王はいない」

 

黒歌は少しだけ笑んだ。その笑みは、いつもの妖艶なものじゃなかった。

 

「そう。なら行きましょう」

 

*  *  *

 

「待って太郎」

 

絶花が声を上げた。ホールの端から俺へ歩み寄る。刀を握る手が微かに震えている。

 

「地下に行く前に確認したいことがあるの」

 

「何だ」

 

「この屋敷は上級悪魔の所有物なんでしょ。なら私たちが勝手に地下に入っていいのかな。所有者の許可なく」

 

「今更だろ。もう一階も二階も屋根裏も調べた」

 

「それは…そうだけど」

 

「なら地下も同じだ。どうせ怒られるなら全部見てからだ」

 

「太郎らしいね。無茶だけど」

 

「無茶じゃない。調査だ」

 

絶花は少しだけ笑った。緊張の中の笑みだ。

 

ユキカゼが俺の横に来た。尻尾が落ち着きなく揺れている。

 

「太郎さん。地下から匂いがするでござる」

 

「何の匂いだ」

 

「血でござる。それと…何か、生々しい匂いでござる。薬品と、それから…女の匂いでござる」

 

「女の匂い」

 

「はい。複数の女の匂いでござる。でも古いでござる。今そこにいる匂いじゃないでござるよ」

 

ユキカゼの鼻が正確だ。複数の女の匂い。古い血。生々しい何か。

 

(地下には何がある)

 

俺はマンモスマンを見た。

 

「床の補強は地下の構造を支えるためだと言ったな」

 

「ああ。相当な重量物を支える補強だ。オレの体重でも抜けなかった」

 

「何か大きなものがあるということだな」

 

「間違いない」

 

俺は黒歌を見た。

 

「案内しろ」

 

「分かったわ」

 

黒歌が廊下の奥へ歩き出す。隠し扉の前に立つ。

 

ガーフィールが見つけた隠し扉だ。壁と同化していて、普通に見れば気づかない。だが虎の爪で叩けば空洞の音がする。

 

黒歌が壁に手を当てた。微かに魔力を流す。すると壁が動いた。石の壁が横へ滑り、地下への階段が現れる。

 

暗い。石段が下へ続いている。青い炎の燭台が壁に沿って点々と並んでいる。

 

「行くわよ」

 

黒歌が最初に階段を降りた。

 

俺が続く。絶花ユキカゼ、エレンレオーネ、マンモスマンガーフィール、レイスシンジが後ろからついてくる。

 

階段は長かった。

 

十段、二十段、三十段。まだ続く。地下深くだ。空気が冷たくなる。湿った匂いが強くなる。薬品の匂いも濃くなる。

 

四十段目で、階段が終わった。

女王は誰にする?

  • アルファ
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