サムライガールの幼馴染みは王様を目指す(裏) 作:ボルメテウスさん
三体のキューブを召喚した。
赤い巨体。白い巨体。緑の巨体。
「マンモスマン! ガーフィール! 出番だ!」
俺は叫んだ。
「待ってたぜェ大将!」
ガーフィールがチェンジャーを構える。白い縞模様のキューブが空中で展開し、虎の姿へと変わる。キューブタイガー。白を基調に黒い縞模様が刻まれた鋼の猛獣だ。
「ボスの号令だ。従う」
マンモスマンが低く言った。緑のキューブが空中で展開し、象の姿へと変わる。キューブエレファント。緑の装甲に覆われた重量級の鋼の巨獣。長い鼻が空気を裂く。
そして俺の前に赤い大型キューブが降りてきた。
キューブゴリラ。赤い装甲に覆われた巨体。太い両腕。巨大な拳。右肩にはビッグワイルドキャノンが装備されている。
「三体召喚!」
チェンジャーが音声を発した。
『キューブゴリラ!』
『キューブタイガー!』
『キューブエレファント!』
三体の巨大獣が、紫の空の下に君臨した。
赤いゴリラが大地を叩く。白い虎が低く構える。緑の象が鼻を振るう。三体の咆哮が重なり、冥界の森を震わせる。
「乗るぞ!」
俺はキューブゴリラの背に飛び乗った。操縦席の感覚が身体を包む。ゴリラの視界が俺の視界になる。太い両腕が俺の腕になる。重い拳が俺の拳になる。
マンモスマンがキューブエレファントに搭乗した。緑の巨体がズシンと大地を踏みしめる。四〇〇キロの男が四〇〇キロの巨獣に乗る。重量感が倍増する。
ガーフィールがキューブタイガーに飛び乗った。白い虎の背に跨る。虎の俊敏さがガーフィールの身体に染み込む。
「行くぞ! 動物合体!」
* * *
三体のキューブが動いた。
最初に、緑の象が変形を開始した。キューブエレファントが立方体形態へと戻りながら、両脚を展開する。四角い装甲が開き、巨大な二本の脚が形成される。重量感あふれる緑の脚部だ。大地を踏ん張るための太い柱。
その上へ、白い虎が降下する。キューブタイガーが立方体形態へと戻りながら、象の脚部の上に接続される。虎の胴体部分が腰部のパーツへと変形する。白と黒の縞模様が、腰部の装甲に刻まれる。
最後に、赤いゴリラが上から降ってきた。キューブゴリラが立方体形態を経て、胴体と両腕を形成する。太いゴリラの腕が左右の arm へ。赤い装甲が胸部を覆う。ゴリラの顔が胸部の意匠へと刻まれる。
三つの立方体が、縦一列に積み重なるように結合した。
エレファントが最下部で両脚を形成。
タイガーがその上で腰部を形成。
ゴリラが最上部で胴体と左右の腕を展開する。
完全に接続された瞬間、頭部が展開した。ゴリラの意匠を残したまま、角張ったフェイスガードが開き、中から顔が現れる。赤い基調の猛獣の顔。ジュウオウワイルドの顔だ。
右肩のビッグワイルドキャノンが、そのまま腕部と接続され、巨大な砲身として構えられる。
合体完了。
『6!5!4!ジュウオウワイルド!』
電子音声が冥界の空に響き渡った。
* * *
ジュウオウワイルド。
赤を中心に白と緑の巨大な立方体を積み重ねたような独特の体型。上半身と両腕はキューブゴリラ。腰はキューブタイガー。下半身と両脚はキューブエレファント。
胸部にはゴリラを思わせる赤い意匠。各部には元となったキューブの数字が刻まれている。エレファントの脚部には「4」。タイガーの腰部には「5」。ゴリラの腕部には「6」。
右肩には巨大なビッグワイルドキャノン。砲身が空を向いている。赤い光が砲口の奥で脈動している。
手にはワイルドキャノンが構えられていた。ゴリラの右腕から展開した巨大な砲。握りが操縦席の感触と直結している。俺の意志が、砲の向きを変える。
「行くぞ」
俺は操縦席で握りを握り直した。
ジュウオウワイルドの巨体がズシンと前に踏み出した。
* * *
巨大化した怪物が動いた。
屋敷の残骸を踏み砕きながら、ジュウオウワイルドに向かって突っ込んでくる。六つ目の目玉が一斉に俺を凝視している。異常なまでの殺意。ジューマンの因子が暴走しているのだろう。本来の猫の姿など微塵も残っていない。筋肉の塊。目玉の塊。苦痛の塊。
「来るでござる!」
マンモスマンの声が操縦席の向こうから響く。
「分かってる!」
怪物が突進してくる。速い。巨体に似合わず速い。ジューマンの因子を持っているからだ。ライオンの因子を移植された猫。本来の俊敏性にライオンの瞬発力が加わっている。
ドガアアッ!
怪物が体当たりしてきた。ジュウオウワイルドの巨体が揺れる。衝撃が操縦席に伝わる。俺は歯を食いしばった。
「ぐっ…!」
重い。だが耐える。エレファントの脚部が大地を噛んでいる。四〇〇キロの巨体を支える脚は、そう簡単には動かない。
「マンモスマン、脚を支えろ!」
「任せろ。オレの重量も加わっている。そう簡単には動かない」
マンモスマンの重量がエレファントの脚部に加わっている。操縦席の感覚が重くなる。だが安定する。四〇〇キロのアンカーだ。
「ガーフィール、腰部のバランスを取れ!」
「おォ! 任せろ大将! 虎のバランス感覚は天下一品だァ!」
ガーフィールがタイガーの腰部パーツを操作する。ジュウオウワイルドの重心が調整される。揺れが収まる。
「よし。このまま押し返す」
俺はゴリラの左腕を振った。
ドガッ!
巨大な拳が怪物の頭部を横から叩く。怪物がよろめく。だが倒れない。六つ目の目玉がギョロリと俺を睨む。打たれ強い。ライオンの因子が耐久力も上げている。
「硬いぞ」
「ボス。相手の動きを見ろ。力任せじゃ倒せない」
マンモスマンの声。冷静だ。巨体の男は戦闘でも冷静だ。
「分かってる。なら砲でいく」
俺はワイルドキャノンを構えた。
巨大な砲が怪物に向けられる。赤い光が砲口の奥で集束し始める。
「ワイルドキャノンビーム!」
俺は引き金を引いた。
ドゴオオン!
赤い光い光弾が砲口から放たれた。巨大な光の塊が怪物の胴体に向かって飛んでいく。
だが。
「避けやがった!」
ガーフィールが叫ぶ。
怪物が横に跳んだ。巨体に似合わない横方向への跳躍。光弾が怪物の背後の森を薙ぎ払う。木々が爆発し地面が砕ける。だが怪物には当たっていない。
「速いでござる!」
「ライオンの瞬発力か。巨体なのにあの速度だと」
「追いつけねェぞ大将!」
「追いつかなくていい」
俺はワイルドキャノンを構え直した。
「逃げ道を塞ぐ。一発じゃ当たらないなら複数撃てばいい」
俺は連射した。
ダダダダッ!
ワイルドキャノンから光弾が連続で放たれる。右へ。左へ。正面へ。怪物の逃げ道を塞ぐように散らす。
光弾が地面を砕き、森を爆発させ、空気を焼く。着弾点の爆風が怪物の逃げ場を狭めていく。
「ガーフィール、逃げ道を予測しろ。虎の本能で次の跳躍先が分かるだろ」
「任せろ! 虎は獲物の逃げ道を読むのが得意だァ! 次は右だぜェ!」
「右か」
俺は右へ光弾を放った。
ドゴオン!
光弾が怪物の右側で炸裂。爆風が怪物を左へ押し出す。予測通りだ。
「次は左でござる! 右に逃げたから次は逆でござるよ!」
ユキカゼの声が念話で届く。外から見ているユキカゼの分析だ。
「左へ撃て!」
俺は左へ光弾を放った。
ドゴオン!
光弾が怪物の左側で炸裂。爆風が怪物を正面へ押し出す。逃げ場が消えた。
「今だ! 正面に逃げ道しかない!」
マンモスマンの声。
「そこを撃つ!」
俺は正面へワイルドキャノンを向けた。
怪物が正面に飛び出した。逃げ場がない。左右は爆風で塞がれている。後ろは屋敷の残骸。前にしか行けない。
前には、ジュウオウワイルドがいる。
「終わりだ」
俺は引き金を引いた。
* * *
ワイルドキャノンビーム。
砲口の奥に集束していた赤い光が、一筋の奔流となって放たれた。
太い。巨大な。光の柱。空気を焼き尽くし、地面を焦がし、紫の空を赤く染める。
光線が怪物の胴体を正面から捉えた。
ドゴオオオン!
命中。
光線が怪物の体を貫く。全身の目玉が一斉に見開かれる。六つ、いや八つの目玉が光に染まる。口から断末魔のような唸り声が漏れる。だがそれは悲鳴じゃない。もう悲鳴を叫ぶ自我すらないのだろう。
光線が押し込む。怪物の体が後方へ押される。巨体が浮く。地面から足が離れる。光の圧力が怪物を空中に持ち上げている。
「押せェ!」
ガーフィールが叫ぶ。
「さらに押すでござる!」
ユキカゼが念話で叫ぶ。
「オレの重量を乗せろ。ボス」
マンモスマンが低く言った。
俺は全員の力を感じた。ゴリラの腕。タイガーの腰。エレファントの脚。三つの力が一つになっている。俺はそれを光線に込めた。
「これで終わりだ。楽になれ」
光線が最大出力に達した。
赤い光が紫の空を埋め尽くす。冥界の空が一瞬だけ赤く染まる。森が揺れる。地面が震える。衝撃波が周囲の木々をなぎ倒す。
怪物の体が、光の中で砕けた。
内側から。外側から。全方位から。光が怪物の体を粉砕していく。筋肉が千切れ飛び。骨が砕け。目玉が弾ける。一つ、二つ、三つ。全ての目が光に溶ける。
最後に残ったのは、砕けたコンティニューメダルの破片だけだった。
銀色の破片が空中に舞う。光の粒子となって散っていく。
光線が止まった。
* * *
静寂が戻った。
紫の空の下、ジュウオウワイルドが立っている。ワイルドキャノンから煙が上がっている。砲身が熱い。赤い光の余韻が砲口の奥で揺らめいている。
「…倒したか」
マンモスマンの声。低い。だが確信がある。
「倒した」
俺は答えた。
「反応がないでござる。メダルも砕けたでござるよ」
ユキカゼの念話。外から確認しているのだろう。
「よし」
俺はワイルドキャノンを下ろした。腕が重い。全身の力を使い切った感覚。だが戦いは終わった。
ジュウオウワイルドの巨体がゆっくりと構えを解く。
俺は操縦席から地上を見下ろした。
黒歌が立っていた。
屋敷の残骸の前。紫の空の下。黒い着物が風に揺れている。
黄色い目が、怪物が消えた場所を見つめている。
何も言わなかった。ただ見ていた。
かつて同じ主に仕えた猫が消えた場所を。
俺は何も言わなかった。
言葉はいらなかった。
女王は誰にする?
-
アルファ
-
ララ·サタリン·デビルーク
-
エミリア