※この作品はR-18です。

サムライガールの幼馴染みは王様を目指す(裏)   作:ボルメテウスさん

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拳と砲と、獣の咆哮

三体のキューブを召喚した。

 

赤い巨体。白い巨体。緑の巨体。

 

「マンモスマン! ガーフィール! 出番だ!」

 

俺は叫んだ。

 

「待ってたぜェ大将!」

 

ガーフィールがチェンジャーを構える。白い縞模様のキューブが空中で展開し、虎の姿へと変わる。キューブタイガー。白を基調に黒い縞模様が刻まれた鋼の猛獣だ。

 

「ボスの号令だ。従う」

 

マンモスマンが低く言った。緑のキューブが空中で展開し、象の姿へと変わる。キューブエレファント。緑の装甲に覆われた重量級の鋼の巨獣。長い鼻が空気を裂く。

 

そして俺の前に赤い大型キューブが降りてきた。

 

キューブゴリラ。赤い装甲に覆われた巨体。太い両腕。巨大な拳。右肩にはビッグワイルドキャノンが装備されている。

 

「三体召喚!」

 

チェンジャーが音声を発した。

 

『キューブゴリラ!』

 

『キューブタイガー!』

 

『キューブエレファント!』

 

三体の巨大獣が、紫の空の下に君臨した。

 

赤いゴリラが大地を叩く。白い虎が低く構える。緑の象が鼻を振るう。三体の咆哮が重なり、冥界の森を震わせる。

 

「乗るぞ!」

 

俺はキューブゴリラの背に飛び乗った。操縦席の感覚が身体を包む。ゴリラの視界が俺の視界になる。太い両腕が俺の腕になる。重い拳が俺の拳になる。

 

マンモスマンがキューブエレファントに搭乗した。緑の巨体がズシンと大地を踏みしめる。四〇〇キロの男が四〇〇キロの巨獣に乗る。重量感が倍増する。

 

ガーフィールがキューブタイガーに飛び乗った。白い虎の背に跨る。虎の俊敏さがガーフィールの身体に染み込む。

 

「行くぞ! 動物合体!」

 

*  *  *

 

三体のキューブが動いた。

 

最初に、緑の象が変形を開始した。キューブエレファントが立方体形態へと戻りながら、両脚を展開する。四角い装甲が開き、巨大な二本の脚が形成される。重量感あふれる緑の脚部だ。大地を踏ん張るための太い柱。

 

その上へ、白い虎が降下する。キューブタイガーが立方体形態へと戻りながら、象の脚部の上に接続される。虎の胴体部分が腰部のパーツへと変形する。白と黒の縞模様が、腰部の装甲に刻まれる。

 

最後に、赤いゴリラが上から降ってきた。キューブゴリラが立方体形態を経て、胴体と両腕を形成する。太いゴリラの腕が左右の arm へ。赤い装甲が胸部を覆う。ゴリラの顔が胸部の意匠へと刻まれる。

 

三つの立方体が、縦一列に積み重なるように結合した。

 

エレファントが最下部で両脚を形成。

 

タイガーがその上で腰部を形成。

 

ゴリラが最上部で胴体と左右の腕を展開する。

 

完全に接続された瞬間、頭部が展開した。ゴリラの意匠を残したまま、角張ったフェイスガードが開き、中から顔が現れる。赤い基調の猛獣の顔。ジュウオウワイルドの顔だ。

 

右肩のビッグワイルドキャノンが、そのまま腕部と接続され、巨大な砲身として構えられる。

 

合体完了。

 

『6!5!4!ジュウオウワイルド!』

 

電子音声が冥界の空に響き渡った。

 

*  *  *

 

ジュウオウワイルド。

 

赤を中心に白と緑の巨大な立方体を積み重ねたような独特の体型。上半身と両腕はキューブゴリラ。腰はキューブタイガー。下半身と両脚はキューブエレファント。

 

胸部にはゴリラを思わせる赤い意匠。各部には元となったキューブの数字が刻まれている。エレファントの脚部には「4」。タイガーの腰部には「5」。ゴリラの腕部には「6」。

 

右肩には巨大なビッグワイルドキャノン。砲身が空を向いている。赤い光が砲口の奥で脈動している。

 

手にはワイルドキャノンが構えられていた。ゴリラの右腕から展開した巨大な砲。握りが操縦席の感触と直結している。俺の意志が、砲の向きを変える。

 

「行くぞ」

 

俺は操縦席で握りを握り直した。

 

ジュウオウワイルドの巨体がズシンと前に踏み出した。

 

*  *  *

 

巨大化した怪物が動いた。

 

屋敷の残骸を踏み砕きながら、ジュウオウワイルドに向かって突っ込んでくる。六つ目の目玉が一斉に俺を凝視している。異常なまでの殺意。ジューマンの因子が暴走しているのだろう。本来の猫の姿など微塵も残っていない。筋肉の塊。目玉の塊。苦痛の塊。

 

「来るでござる!」

 

マンモスマンの声が操縦席の向こうから響く。

 

「分かってる!」

 

怪物が突進してくる。速い。巨体に似合わず速い。ジューマンの因子を持っているからだ。ライオンの因子を移植された猫。本来の俊敏性にライオンの瞬発力が加わっている。

 

ドガアアッ!

 

怪物が体当たりしてきた。ジュウオウワイルドの巨体が揺れる。衝撃が操縦席に伝わる。俺は歯を食いしばった。

 

「ぐっ…!」

 

重い。だが耐える。エレファントの脚部が大地を噛んでいる。四〇〇キロの巨体を支える脚は、そう簡単には動かない。

 

「マンモスマン、脚を支えろ!」

 

「任せろ。オレの重量も加わっている。そう簡単には動かない」

 

マンモスマンの重量がエレファントの脚部に加わっている。操縦席の感覚が重くなる。だが安定する。四〇〇キロのアンカーだ。

 

「ガーフィール、腰部のバランスを取れ!」

 

「おォ! 任せろ大将! 虎のバランス感覚は天下一品だァ!」

 

ガーフィールがタイガーの腰部パーツを操作する。ジュウオウワイルドの重心が調整される。揺れが収まる。

 

「よし。このまま押し返す」

 

俺はゴリラの左腕を振った。

 

ドガッ!

 

巨大な拳が怪物の頭部を横から叩く。怪物がよろめく。だが倒れない。六つ目の目玉がギョロリと俺を睨む。打たれ強い。ライオンの因子が耐久力も上げている。

 

「硬いぞ」

 

「ボス。相手の動きを見ろ。力任せじゃ倒せない」

 

マンモスマンの声。冷静だ。巨体の男は戦闘でも冷静だ。

 

「分かってる。なら砲でいく」

 

俺はワイルドキャノンを構えた。

 

巨大な砲が怪物に向けられる。赤い光が砲口の奥で集束し始める。

 

「ワイルドキャノンビーム!」

 

俺は引き金を引いた。

 

ドゴオオン!

 

赤い光い光弾が砲口から放たれた。巨大な光の塊が怪物の胴体に向かって飛んでいく。

 

だが。

 

「避けやがった!」

 

ガーフィールが叫ぶ。

 

怪物が横に跳んだ。巨体に似合わない横方向への跳躍。光弾が怪物の背後の森を薙ぎ払う。木々が爆発し地面が砕ける。だが怪物には当たっていない。

 

「速いでござる!」

 

「ライオンの瞬発力か。巨体なのにあの速度だと」

 

「追いつけねェぞ大将!」

 

「追いつかなくていい」

 

俺はワイルドキャノンを構え直した。

 

「逃げ道を塞ぐ。一発じゃ当たらないなら複数撃てばいい」

 

俺は連射した。

 

ダダダダッ!

 

ワイルドキャノンから光弾が連続で放たれる。右へ。左へ。正面へ。怪物の逃げ道を塞ぐように散らす。

 

光弾が地面を砕き、森を爆発させ、空気を焼く。着弾点の爆風が怪物の逃げ場を狭めていく。

 

「ガーフィール、逃げ道を予測しろ。虎の本能で次の跳躍先が分かるだろ」

 

「任せろ! 虎は獲物の逃げ道を読むのが得意だァ! 次は右だぜェ!」

 

「右か」

 

俺は右へ光弾を放った。

 

ドゴオン!

 

光弾が怪物の右側で炸裂。爆風が怪物を左へ押し出す。予測通りだ。

 

「次は左でござる! 右に逃げたから次は逆でござるよ!」

 

ユキカゼの声が念話で届く。外から見ているユキカゼの分析だ。

 

「左へ撃て!」

 

俺は左へ光弾を放った。

 

ドゴオン!

 

光弾が怪物の左側で炸裂。爆風が怪物を正面へ押し出す。逃げ場が消えた。

 

「今だ! 正面に逃げ道しかない!」

 

マンモスマンの声。

 

「そこを撃つ!」

 

俺は正面へワイルドキャノンを向けた。

 

怪物が正面に飛び出した。逃げ場がない。左右は爆風で塞がれている。後ろは屋敷の残骸。前にしか行けない。

 

前には、ジュウオウワイルドがいる。

 

「終わりだ」

 

俺は引き金を引いた。

 

*  *  *

 

ワイルドキャノンビーム。

 

砲口の奥に集束していた赤い光が、一筋の奔流となって放たれた。

 

太い。巨大な。光の柱。空気を焼き尽くし、地面を焦がし、紫の空を赤く染める。

 

光線が怪物の胴体を正面から捉えた。

 

ドゴオオオン!

 

命中。

 

光線が怪物の体を貫く。全身の目玉が一斉に見開かれる。六つ、いや八つの目玉が光に染まる。口から断末魔のような唸り声が漏れる。だがそれは悲鳴じゃない。もう悲鳴を叫ぶ自我すらないのだろう。

 

光線が押し込む。怪物の体が後方へ押される。巨体が浮く。地面から足が離れる。光の圧力が怪物を空中に持ち上げている。

 

「押せェ!」

 

ガーフィールが叫ぶ。

 

「さらに押すでござる!」

 

ユキカゼが念話で叫ぶ。

 

「オレの重量を乗せろ。ボス」

 

マンモスマンが低く言った。

 

俺は全員の力を感じた。ゴリラの腕。タイガーの腰。エレファントの脚。三つの力が一つになっている。俺はそれを光線に込めた。

 

「これで終わりだ。楽になれ」

 

光線が最大出力に達した。

 

赤い光が紫の空を埋め尽くす。冥界の空が一瞬だけ赤く染まる。森が揺れる。地面が震える。衝撃波が周囲の木々をなぎ倒す。

 

怪物の体が、光の中で砕けた。

 

内側から。外側から。全方位から。光が怪物の体を粉砕していく。筋肉が千切れ飛び。骨が砕け。目玉が弾ける。一つ、二つ、三つ。全ての目が光に溶ける。

 

最後に残ったのは、砕けたコンティニューメダルの破片だけだった。

 

銀色の破片が空中に舞う。光の粒子となって散っていく。

 

光線が止まった。

 

*  *  *

 

静寂が戻った。

 

紫の空の下、ジュウオウワイルドが立っている。ワイルドキャノンから煙が上がっている。砲身が熱い。赤い光の余韻が砲口の奥で揺らめいている。

 

「…倒したか」

 

マンモスマンの声。低い。だが確信がある。

 

「倒した」

 

俺は答えた。

 

「反応がないでござる。メダルも砕けたでござるよ」

 

ユキカゼの念話。外から確認しているのだろう。

 

「よし」

 

俺はワイルドキャノンを下ろした。腕が重い。全身の力を使い切った感覚。だが戦いは終わった。

 

ジュウオウワイルドの巨体がゆっくりと構えを解く。

 

俺は操縦席から地上を見下ろした。

 

黒歌が立っていた。

 

屋敷の残骸の前。紫の空の下。黒い着物が風に揺れている。

 

黄色い目が、怪物が消えた場所を見つめている。

 

何も言わなかった。ただ見ていた。

 

かつて同じ主に仕えた猫が消えた場所を。

 

俺は何も言わなかった。

 

言葉はいらなかった。

女王は誰にする?

  • アルファ
  • ララ·サタリン·デビルーク
  • エミリア
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