サムライガールの幼馴染みは王様を目指す(裏) 作:ボルメテウスさん
歩きながら柚葉が懐から何かを取り出した。
「あ、そうだ。太郎にこれ渡そうと思ってたの」
「何だ。また悪戯道具か」
「違うよ。情報。悪戯じゃなくて正規の情報」
柚葉が取り出したのは、折り畳んだ紙だ。手書きだ。文字がぎっしりと書き込まれている。俺は紙を受け取った。広げて目を通す。
「…何だこれは」
「バングレイの情報」
俺は歩くのを止めた。
紙には、バングレイの特徴、行動範囲、確認された出現場所、それから推測される能力の一部が書き込まれていた。詳細だ。驚くほど詳細だ。
「柚葉。これ」
「バングレイの情報だって。読んでるでしょ」
「読んでる。だからどこで集めたんだこれを」
「色々とね」
「色々って何だ。お前ジューマンワールドにいたんだろ。いつ集めたんだ」
「最近よ。人間界に来てから」
「人間界に来てから? お前いつから人間界にいるんだ」
「二週間くらいかな」
「二週間。その間にこれだけ集めたのか」
「うん」
俺は紙をもう一度見た。バングレイの出現場所。確認された日時。被害状況。それから過去の戦闘記録。俺たちが遭遇したコカビエルの実体化についての記述まである。
「…お前、俺たちがコカビエルと戦ったことまで書いてあるぞ」
「見てたから」
「見てた? どこから」
「木の上から」
「木の上から戦闘を見てたのか」
「見てた。面白かったよ。トウサイジュウオーかっこよかった」
「かっこいいとかそういう問題じゃない。戦闘中に民間人が近くにいたら危ないだろ」
「民間人じゃないよ。家臣だもん」
「家臣なら戦え」
「戦ったら太郎の反応見られないでしょ」
「戦えながら見ろ」
「無理。戦うと集中しちゃうから」
「狸の集中力どうなってんだよ」
「悪戯に集中してるの。戦闘には集中できないの」
「そりゃダメな家臣だな」
「ダメじゃないよ。情報収集係だから。戦う係じゃないから」
「係とかいつ決めたんだ」
「今決めた」
「今かよ」
俺はため息をついた。だが紙は詳しい。とても役に立つ。バングレイの行動パターンが書いてある。メダルを使うタイミングの傾向も分析されている。記憶読取り能力についての記述もある。
「柚葉。この記憶読取り能力についての記述。これどうやって知ったんだ」
「太郎が言ってたでしょ。冥界で」
「冥界で? お前冥界にもいたのか」
「いた。木の上から」
「お前木の上にばかりいるな」
「木の上は安全で見晴らしがいいの。狸の特等席」
「特等席かよ」
「特等席。冥界の木の上は風が気持ちよかったよ。紫の空がきれいだった」
「紫の空を観光してる場合じゃないだろ」
「観光じゃないよ。偵察。狸の偵察」
「偵察結果がこれか」
「そう。偵察結果。太郎たちが屋敷で何を見たか、何と戦ったか、全部見てた」
「全部見てたのか」
「全部。太郎が黒歌さんと話してるのも見てた。太郎がコカビエルと戦ったのも見てた。トウサイジュウオーがワイルドキャノンビーム撃ったのも見てた」
「全部見てたなら助太刀くらいしろ」
「太郎たち強かったから助太刀いらないでしょ」
「いらないけど。いたら安心だろ」
「安心できる顔してたら助太刀しないよ。狸は余裕のある時しか動かないの」
「狸の余裕って何だよ」
「情報。情報に余裕があれば狸は動かないの。戦闘は体力使うから」
「使え」
「嫌。情報収集に専念するの」
俺はまたため息をついた。
だが認める。この情報は有用だ。バングレイの行動範囲が分かれば、次のメダルの出現場所を予測できるかもしれない。
「柚葉」
「何」
「この情報、正確か」
「正確だよ。狸の目は節穴じゃないの」
「節穴じゃないなら何で毎回悪戯を見抜けないんだ」
「悪戯は自分でやってるから見抜く必要ないの。情報収集は別。情報収集は真剣にやってるの」
「真剣にやってるならもっと早く出せよ」
「タイミング見てたの。冥界から戻ってきたタイミングが一番いいと思って」
「タイミングまで計算してたのか」
「計算。狸は計算高いの」
「計算高いなら悪戯に使えよその頭を」
「使ってるよ。太郎の反応を計算して悪戯仕掛けてるの」
「そういう計算の使い方じゃないだろ」
「狸の計算の使い方は狸が決めるの」
「決めるな」
「決める。太郎の許可なんていらないの。家臣だけど自由よ」
「自由な家臣って何だよ」
「自由な家臣。忠義はあるけど自由。太郎に従うけど悪戯は止めない。それが柚葉流の家臣道」
「家臣道聞いたことないぞそんなの」
「今聞いたでしょ。柚葉流家臣道。第一条、太郎の反応を楽しむ。第二条、情報収集は真剣に。第三条、悪戯は止めない」
「三条全部問題あるだろ」
「問題ないよ。太郎が笑ってるから問題ないの」
「笑ってない」
「笑ってる。さっきから口角が微かに上がってるの。狸の目は誤魔化せないの」
俺は口元を引き締めた。笑ってない。笑ってない。
だた確かに微かに緩んでいたかもしれない。柚葉のやり取りはいつもそうだ。腹が立つのにどこかで笑っている。それが柚葉のやり方だ。
「で、この情報を集めた方法は何だ。木の上から見ただけじゃここまで詳細にはならないだろ」
「ならない。見ただけじゃ」
「じゃあ他に何かしたのか」
「ネット」
「は?」
「ネット。インターネット。人間界のネットは便利だねぇ。冥界の情報もそこそこ出てるし、ジューマンワールドの痕跡も見つかるし。バングレイの噂もあったよ」
「お前ネット使えるのか」
「使えるよ。狸は新しいもの好きなの。人間界に来て最初に覚えたのがネット」
「最初に覚えることそれじゃないだろ。言語とか
女王は誰にする?
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