※この作品はR-18です。

サムライガールの幼馴染みは王様を目指す(裏)   作:ボルメテウスさん

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波間の静寂と影の行方

戦いが終わった海は、妙に静かだった。

 

クラーケンが沈んでいった海域をジュウオウキングで見下ろしながら、俺はひとつ大きく息を吐く。勝った。だが、何かが引っかかる。あの触手の動き、暴れ方。まるで何かに急かされているような、焦燥のようなものを感じた。

 

「なぁ、あのクラーケン……なんか変じゃなかったか」

 

俺の問いに、ユキカゼが冷静に応える。

 

「変、というと?」

 

「いや、明確には言えないんだけど。あいつ、最初から最後まで俺たちを見てたってより、何かを守ろうとしてた気がする」

 

ユキカゼが少し考えるように首を傾げた。柚葉はといえば、ジュウオウキングの肩の上に座り込んで海を眺めている。こいつ、巨大ロボットの上を自分の庭みたいに扱ってるな。

 

「クラーケンはデスガリアンの残党……いや、違うか」俺は独り言ち呟む。

 

デスガリアンとの戦いは終わっている。あの宇宙の無法者集団は壊滅したはずだ。だとすれば、クラーケンは何者なのか。なぜここにいたのか。

 

「とりあえず、クラーケンについて調べる必要があるな」

 

俺がそう言うと、ユキカゼが頷く。

 

「バングレイもだ。あの海域にいたはずのバングレイの反応が消えている」

 

バングレイ。クラーケンと行動を共にしていたもう一つの存在。俺は視力強化で海面を走査した。ズーンと目を走らせる。だが、どこにも反応がない。

 

「……いない」

 

確信を持って俺は言った。戦いの最中からずっとバングレイの姿を見ていなかった。今になって気づいたが、あいつはいつの間にか姿を消していた。

 

「逃げた、のか」

 

「あるいは最初からいなかった、という可能性もある」

 

ユキカゼの言葉に俺は眉をひそめる。最初からいなかった?だとすれば、クラーケンは単独で俺たちに挑んできたことになる。いや、それは不自然だ。あの規模の怪物を単独で制御するのは難しいはずだ。

 

「バングレイがいないなら、バングレイの狙いを探る方が早い」

 

柚葉が突然口を開いた。海を見つめたまま、ふにふに足をぶらぶらさせている。

 

「狙い?」

 

「バングレイがここにいた理由。それが分かれば、あいつがどこへ行ったかも見えてくるんじゃない?」

 

……確かに。俺はユキカゼを見る。

 

「ユキカゼ、データ検索できるか?」

 

「やってみる」

 

ユキカゼがキューブフォックスの能力を使い、情報の検索を開始する。狐ジューマンの知略と観察力が合わさったキューブフォックスは、情報戦においても有効だ。キリキリとデータが流れていく。

 

数分後、ユキカゼが顔を上げた。表情が少し険しい。

 

「バングレイの過去の行動パターンが出た。あいつはデスガリアン崩壊後、単独行動を取っているが、その目的がどれも一貫している」

 

「一貫している?」

 

「強力な力を持つ存在の回収、あるいは捕獲。デスガリアン残党の武装をいくつか回収していた記録もある」

 

強力な力を持つ存在。その言葉が胸に引っかかる。

 

「つまり、バングレイは力を集めてるってことか」

 

「そういうことになる。だとすれば……」

 

柚葉がぴくりと耳を動かした。ラクーンの敏感な聴覚が何かを捉えたらしい。

 

「ねぇ、ユキカゼ。冥界の巨獣って知ってる?」

 

「冥界の巨獣?」

 

ユキカゼが少し眉を寄せる。俺も聞き覚えがある。ジューマンの世界で語られる伝承の一つだ。

 

「冥界の巨獣……ジューマンの世界の深部、冥界に眠ると言われる古代の存在。実在性は不明だが、デスガリアンが執着していたという記録があったはず」

 

「デスガリアンが?」

 

「ああ。デスガリアンは元々、冥界の巨獣を手に入れるためにこの世界へ来た。だがジューマンたちに阻まれ、目的を果たせずに崩壊した」

 

ユキカゼが目を細める。

 

「だとすれば、バングレイはデスガリアンの目的を引き継いでいる可能性がある。冥界の巨獣を狙っている」

 

「待てよ」俺は割って入った。「バングレイが冥界の巨獣を狙ってるとして、なんで今ここにいたんだ?」

 

「クラーケンが囮、だったのかもしれない」

 

柚葉の言葉に、俺はハッとする。クラーケンが俺たちを引きつけている間に、バングレイは別の場所で目的を果たす。そういうことか。

 

「あいつ、最初からいなかったんじゃない。俺たちをクラーケンに引きつけるためにクラーケンをけしかけた後、先に動いてたんだ」

 

「そう考えると辻褆が合う。バングレイの行動パターンからしても、自分の目的のためなら手段を選ばない」

 

ユキカゼが冷静に分析する。その声に少し緊張が混じった。

 

「問題は、冥界の巨獣が実在するかどうかだ。もし実在するなら……」

 

「もし実在するなら?」

 

「デスガリアンが手に入れられなかった力を、バングレイが手に入れることになる」

 

海風が吹く。静かだった水面に、ザアッと波が立った。

 

俺は拳を握る。クラーケンは倒した。だが、本当の戦いはまだ始まっていないのかもしれない。

 

「バングレイがどこへ向かったか、特定できるか?」

 

「不完全だが、ある程度の推測はできる。冥界への入口はいくつかあるが、バングレイの規模からして使えるのは限られている」

 

ユキカゼがデータを展開する。柚葉が身を乗り出した。

 

「じゃあ、追いかける?」

 

「当然だ」

 

俺は即答する。バングレイを放置すれば、何が起きるか分からない。デスガリアンでさえ手に負えなかった存在だ。あいつにそれを渡すわけにはいかない。

 

「ユキカゼ、推測できる入口を洗い出してくれ。柚葉、お前はラクーンの能力でバングレイの痕跡を探せ」

 

「了解」

 

「にひひっ、お使い犬ご苦労様って感じだねぇ」

 

「犬じゃない」

 

ツッコミ返しながら、俺はジュウオウキングを反転させる。海を背にして、新たな目的地へ。

 

バングレイ。お前が何をしようとしているのか、俺たちが止めてやる。

 

女王は誰にする?

  • アルファ
  • ララ·サタリン·デビルーク
  • エミリア
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