サムライガールの幼馴染みは王様を目指す(裏) 作:ボルメテウスさん
戦いが終わった海は、妙に静かだった。
クラーケンが沈んでいった海域をジュウオウキングで見下ろしながら、俺はひとつ大きく息を吐く。勝った。だが、何かが引っかかる。あの触手の動き、暴れ方。まるで何かに急かされているような、焦燥のようなものを感じた。
「なぁ、あのクラーケン……なんか変じゃなかったか」
俺の問いに、ユキカゼが冷静に応える。
「変、というと?」
「いや、明確には言えないんだけど。あいつ、最初から最後まで俺たちを見てたってより、何かを守ろうとしてた気がする」
ユキカゼが少し考えるように首を傾げた。柚葉はといえば、ジュウオウキングの肩の上に座り込んで海を眺めている。こいつ、巨大ロボットの上を自分の庭みたいに扱ってるな。
「クラーケンはデスガリアンの残党……いや、違うか」俺は独り言ち呟む。
デスガリアンとの戦いは終わっている。あの宇宙の無法者集団は壊滅したはずだ。だとすれば、クラーケンは何者なのか。なぜここにいたのか。
「とりあえず、クラーケンについて調べる必要があるな」
俺がそう言うと、ユキカゼが頷く。
「バングレイもだ。あの海域にいたはずのバングレイの反応が消えている」
バングレイ。クラーケンと行動を共にしていたもう一つの存在。俺は視力強化で海面を走査した。ズーンと目を走らせる。だが、どこにも反応がない。
「……いない」
確信を持って俺は言った。戦いの最中からずっとバングレイの姿を見ていなかった。今になって気づいたが、あいつはいつの間にか姿を消していた。
「逃げた、のか」
「あるいは最初からいなかった、という可能性もある」
ユキカゼの言葉に俺は眉をひそめる。最初からいなかった?だとすれば、クラーケンは単独で俺たちに挑んできたことになる。いや、それは不自然だ。あの規模の怪物を単独で制御するのは難しいはずだ。
「バングレイがいないなら、バングレイの狙いを探る方が早い」
柚葉が突然口を開いた。海を見つめたまま、ふにふに足をぶらぶらさせている。
「狙い?」
「バングレイがここにいた理由。それが分かれば、あいつがどこへ行ったかも見えてくるんじゃない?」
……確かに。俺はユキカゼを見る。
「ユキカゼ、データ検索できるか?」
「やってみる」
ユキカゼがキューブフォックスの能力を使い、情報の検索を開始する。狐ジューマンの知略と観察力が合わさったキューブフォックスは、情報戦においても有効だ。キリキリとデータが流れていく。
数分後、ユキカゼが顔を上げた。表情が少し険しい。
「バングレイの過去の行動パターンが出た。あいつはデスガリアン崩壊後、単独行動を取っているが、その目的がどれも一貫している」
「一貫している?」
「強力な力を持つ存在の回収、あるいは捕獲。デスガリアン残党の武装をいくつか回収していた記録もある」
強力な力を持つ存在。その言葉が胸に引っかかる。
「つまり、バングレイは力を集めてるってことか」
「そういうことになる。だとすれば……」
柚葉がぴくりと耳を動かした。ラクーンの敏感な聴覚が何かを捉えたらしい。
「ねぇ、ユキカゼ。冥界の巨獣って知ってる?」
「冥界の巨獣?」
ユキカゼが少し眉を寄せる。俺も聞き覚えがある。ジューマンの世界で語られる伝承の一つだ。
「冥界の巨獣……ジューマンの世界の深部、冥界に眠ると言われる古代の存在。実在性は不明だが、デスガリアンが執着していたという記録があったはず」
「デスガリアンが?」
「ああ。デスガリアンは元々、冥界の巨獣を手に入れるためにこの世界へ来た。だがジューマンたちに阻まれ、目的を果たせずに崩壊した」
ユキカゼが目を細める。
「だとすれば、バングレイはデスガリアンの目的を引き継いでいる可能性がある。冥界の巨獣を狙っている」
「待てよ」俺は割って入った。「バングレイが冥界の巨獣を狙ってるとして、なんで今ここにいたんだ?」
「クラーケンが囮、だったのかもしれない」
柚葉の言葉に、俺はハッとする。クラーケンが俺たちを引きつけている間に、バングレイは別の場所で目的を果たす。そういうことか。
「あいつ、最初からいなかったんじゃない。俺たちをクラーケンに引きつけるためにクラーケンをけしかけた後、先に動いてたんだ」
「そう考えると辻褆が合う。バングレイの行動パターンからしても、自分の目的のためなら手段を選ばない」
ユキカゼが冷静に分析する。その声に少し緊張が混じった。
「問題は、冥界の巨獣が実在するかどうかだ。もし実在するなら……」
「もし実在するなら?」
「デスガリアンが手に入れられなかった力を、バングレイが手に入れることになる」
海風が吹く。静かだった水面に、ザアッと波が立った。
俺は拳を握る。クラーケンは倒した。だが、本当の戦いはまだ始まっていないのかもしれない。
「バングレイがどこへ向かったか、特定できるか?」
「不完全だが、ある程度の推測はできる。冥界への入口はいくつかあるが、バングレイの規模からして使えるのは限られている」
ユキカゼがデータを展開する。柚葉が身を乗り出した。
「じゃあ、追いかける?」
「当然だ」
俺は即答する。バングレイを放置すれば、何が起きるか分からない。デスガリアンでさえ手に負えなかった存在だ。あいつにそれを渡すわけにはいかない。
「ユキカゼ、推測できる入口を洗い出してくれ。柚葉、お前はラクーンの能力でバングレイの痕跡を探せ」
「了解」
「にひひっ、お使い犬ご苦労様って感じだねぇ」
「犬じゃない」
ツッコミ返しながら、俺はジュウオウキングを反転させる。海を背にして、新たな目的地へ。
バングレイ。お前が何をしようとしているのか、俺たちが止めてやる。
女王は誰にする?
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アルファ
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ララ·サタリン·デビルーク
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エミリア